スポーツ都市・ふくおかの「いま」をみる
2007年8月1日発行の15号より
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野球、サッカー、相撲、ラグビー、バスケットボール、バレーボール……。四季を通して多彩なスポーツが楽しめるスポーツ都市・ふくおかでは年間、大小500もの大会が開催されている。スポーツ都市の現状や魅力について見てみよう。。
多彩で国際的なスポーツ都市・ふくおかの歳事記
年間を通じて福岡では、多彩なスポーツ大会が開催されている。菜の花が咲き乱れる3月には、海の中道海浜公園(福岡市東区)を舞台に福岡国際クロスカントリー大会が開幕する。世界クロスカントリー大会への日本代表選手選考を兼ねた大会には、国内外のトップアスリートが参加して世界的な評価も高い。

福岡市では年間、大小500ものスポ−ツ退会が開催されている
3月も下旬になると、いよいよプロ野球が開幕を迎える。福岡ソフトバンクホークスの本拠地である福岡ヤフードームでは、ペナント奪還に向けての球音が響く。ほぼ時を同じくして、Jリーグも開幕し、アビスパ福岡のホームグラウンドである博多の森球技場には、熱心なサポーターらが通う。
ゴールデンウィークの期間中に200万人もの見物客があふれる博多どんたく。賑わいをみせた連休明けには博多の森テニス競技場で福岡国際女子テニスが開催される。賞金総額5万ドルと、国内では第3番目の大会には、世界ランキング100位以内入りを目指す中堅・若手が連日熱戦を繰り広げる。
6月には、日本バレーボール界の将来を担う若手選手らが活躍するアジア太平洋カップ福岡国際男子バレーボール大会が開かれる。この大会は、1989年に福岡市で開催された「アジア太平洋博覧会(よかトピア)」を契機に始められた大会で、今年で19年目を迎える。
まちの風物詩となるスポーツイベント
765年もの歴史と伝統をもつ博多祇園山笠が恒例の櫛田入りでフィナーレを飾ると、福博の街に夏の到来を告げる。そして、夏休みに入ると早速、福博の街には全国からの高校生が大挙してやって来る。「柔道・剣道の甲子園」ともいえる、金鷲旗・玉竜旗高校柔剣道大会には全国から男女合わせて1400校が参加する国内最大級の大会である。
毎年10月下旬から11月上旬にかけて開催される九州一周駅伝では、福岡市に設けられたゴールテープを目指して、九州・沖縄・山口9県の選抜選手が健脚を競う。72区間・1100キロにもおよぶ九州一周駅伝は、世界最延長の駅伝といわれている。
秋も深まっていくと、福博の街には雪駄の音と椿油の匂いが香る。半世紀におよぶ大相撲九州場所が11月に福博の街にやって来る。櫓太鼓が鳴り響く福岡国際センターで15日間に渡って土俵上の力士による力と技の熱闘が繰り広げられる。
12月に入って慌しくなると、年の瀬の風物詩ともいえる福岡国際マラソン選手権大会の号砲が上がる。今年、「還暦」を迎える伝統の国際大会はオリンピックや世界選手権大会などの代表選考会を兼ねており、国内外のトップランナーによる熱戦が毎年話題を呼ぶ。 これらの年中行事ともいえるスポーツイベント以外にも今年11月には、4年に1度開催されるワールドカップバレーボール男子福岡国際大会が開かれる。また、今年は新体操国際大会inFUKUOKAも開催される予定だ。
しかし、その一方で、地元出身の谷亮子(旧姓田村)選手が11連覇という大活躍をみせた福岡国際女子柔道選手権大会は昨年限りで終了、男子のみだった加納杯国際柔道と統合の上、東京での開催となっている。
スポーツ都市の礎となったユニバーシアード開催

福岡市での国際的なスポーツ大会を開催す発火点となったユニバーシアード大会1995福岡
国際的な大会をはじめ、年間で大小500余りのスポーツが開催されている福岡のスポーツ大会のルーツは、95年に開催された第18回ユニバーシアード大会1995福岡に行き着く。ユニバーシアード福岡大会は「スポーツはかるく国境を越える」をスローガンに、162の国・地域から 3949人の選手が参加して、12の競技で競った。開会式は福岡ドームを会場とし、オリンピック・ユニバーシアードで初めての屋内開催となった。
期間中灯され続けた聖火台のひとつは、90年のとびうめ国体のメイン会場として建設された博多の森陸上競技場だった。この大会で日本は金メダル24個を獲得して、アメリカと金メダル獲得数トップを分かち合った。
これを皮切りに卓球、ヨット、水泳、陸上、バレーボール、バスケットボール、少年野球、クロスカントリー、ソフトボールなどの多彩な種目による世界大会や国際大会が開かれてきた。なかでも2001年に開催された第9回世界水泳選手権大会福岡2001では、マリンメッセ福岡に仮設プールを設けて開催した。以後、この「福岡方式」と呼ばれる仮設方式は、競技開催のあらたな潮流となっている。
このように立て続けに国際大会を開催してきた都市は国内で他になく、このような大会実績とそのノウハウ、ネットワークなどの蓄積が、昨年のオリンピック候補地の国内選考に名乗りを挙げる裏づけでもあった。
プロ・アマチュアらの人材を輩出するスポーツ王国
プロ野球、Jリーグ、大相撲―――。日本の三大プロスポーツが開催されるのは、東京、大阪、名古屋に次いで福岡のみだ。パ・リーグを代表する人気チームとしてペナント奪還へ突き進む福岡ソフトバンクホークス、J1復活を目指すアビスパ福岡、そして、伝統の国技を目のあたりにできる大相撲九州場所と、折々のスポーツが楽しめる。

博多の森球技場にはアビスパ福岡が本拠地を構える
一方、他のプロスポーツや実業団、大学、高校などのスポーツチームや選手の活躍が目をひく。プロであるラグビーのトップリーグ・14チーム中に九州電力キューデンヴォルテクス、コカ・コーラウエストレッドスパークス、福岡サニックスブルースの3チームが顔を揃える。また、女子プロサッカーのなでしこリーグ所属の福岡J・アンクラス、プロバスケットボールのbjリーグに参戦したライジング福岡がある。
また、実業団チームや大学、高校でも九州全域でみると、陸上の九電工、旭化成、トヨタ自動車九州、安川電機、バレーボールの久光製薬、社会人野球のJR九州、三菱重工長崎、日産自動車九州などが活躍する。また、高校サッカーの東福岡、国見、鹿児島実業、同ラグビーの東福岡、佐賀工業、大分舞鶴、同バスケットボールの福岡大学付属大濠、中村学園女子、同駅伝の大牟田、筑紫女学園、諫早などが全国的に名を馳せる。
地元で生まれ育ったスポーツ選手が、学校や実業団と同様にプロスポーツでも活躍するケースが多い。プロ野球では、12球団の支配下選手819人中、14・9パーセントとなる122人が九州・沖縄出身だ。一方、Jリーグでも同じく31チーム・960人中、11・4パーセントにあたる109人となっている。また、大相撲においても全力士734人中、21・0パーセントとなる154人が占める。プロ野球と大相撲では、九州・沖縄が全国に占める人口比(11・5パーセント)を上回る高い比率を誇る。このように地元で育ったスポーツ選手が地元に留まることなく、プロスポーツをはじめとして、全国的に活躍している点が評価される一方で、「地元の優秀な選手が、東京をはじめ全国に流出している」と指摘する声もある。
パ・リーグの人気球団・福岡ソフトバンクホークス
福岡におけるプロ野球史は、50年の西鉄クリッパースと西日本パイレーツに始まる。翌年両者が統合、西鉄ライオンズが誕生した。かつて日本シリーズ3連覇を成し遂げ「野武士球団」と称されたライオンズも78年に福岡の地を去った。

10年間におよぶプロ野球球団の空白期間を経て、89年にダイエーのプロ野球参入にともない、福岡ダイエーホークスが誕生した。その後、リーグ優勝3回・日本シリーズ優勝2回を記録した。しかし、親会社のダイエーが経営不振となり、2004年10月に産業再生機構へ支援を要請、ソフトバンクが福岡ダイエーホークスの球団株式および興行権を総額200億円で買収した。同時に20年間にわたる福岡ドーム使用契約を年間使用料48億円で結び、福岡ソフトバンクホークスとしてのあらたなスタートを切った。3年連続でプレーオフへ駒をすすめながら日本シリーズ進出を果たせなかったものの、パ・リーグの観客動員では14年連続で首位をキープする人気球団である。
福岡ソフトバンクホークスの決算についてみてみると、球団本体と興行会社である福岡ソフトバンクホークスマーケティングとの2006年度連結決算の売上高は202億円となっている。収益面では球場の年間使用料48億円と球団サイドで負担している球場の固定資産税6億円が大きな負担となり、27億円の営業損失となった。
福岡ソフトバンクホークスが福岡ヤフードームに本拠地を構えることで、年間200万人を超える人々が観戦に訪れる。野球観戦に際して、一人あたり8257円を消費するとの推計(『余暇・レジャー総合統計年鑑2006』)があり、直接的な経済効果だけで約165億円が見込まれる。また、球団と興行会社では社員として約300人を雇用し、さらに球場での試合時には最大1200人のアルバイトを採用するなど、地域での雇用も生み出している。このような経済効果、雇用創出に加えて、球団が選手に支払う年俸の総額は約51億円に達し、このうち約20億円が所得税・住民税として納められているという税収効果もある。プロ球団が存在することはスポーツ面だけでなく、経済や雇用、さらに税収などの面でも地域に貢献している。
地域への定着を図るアビスパ福岡
プロサッカーリーグであるJリーグが開幕した93年、全国でJリーグブームが旋風のように巻き起こった。「福岡にもJリーグチームを」との声が沸き上がり、市民や行政・地元企業を中心に50万人の署名が集まった。この結果、静岡県から藤枝ブルックスの誘致に成功して94年9月、福岡市をはじめ北九州コカ・コーラボトリング(現コカコーラウエストジャパン)、三洋信販など44団体・企業からの出資で福岡ブルックスを設立した。
その後、96年にチーム名をアビスパ福岡としJリーグに参戦した。その後、J1とJ2を行き来するなど、成績は低迷する。昨年3月にはアビスパ福岡へ社名変更、合わせて資本金を大幅減資して、あらたなスタートを切った。
アビスパ福岡の2006年度決算をみても売上高は3割近く伸ばして15億7500万円としたものの、営業損失1億700万円と振るわない。Jリーグの理念にもとづいて、選手・フロント・サポーターらが一体になって、チームとして地域に根付いていくためにも「経営自立」というゴールを目指していくことが求められる。
土俵際に立つ大相撲九州場所
大相撲九州場所は昨年、誕生50周年という節目の年を迎えた。市民や政財界からの熱心な要望で11月場所(福岡市)が新設されたのは57年のことだった。翌58年に7月場所(名古屋市)も加わり、現在の6場所制となる。
大相撲11月場所は、一般的には九州場所と親しまれている。会場も当初の福岡スポーツセンターから74年に九電記念体育館へ、さらに81年からは福岡国際センターへと場所を移して開催されている。この九州場所の開催に伴い、10月下旬から約1カ月間に相撲部屋の親方、力士、行司、床山、呼出ら約1000人の相撲関係者が福岡に滞在する。

毎年11月に大相撲九州場所が開催される福岡国際センター
50年にもおよぶ九州場所の歴史のなかには、若貴人気による平成の相撲ブームで89年11日目から97年2日目までの連続111日間、満員御礼を記録した。しかし、2002年以降、観客動員数は9万4000人、8万人、8万2000人、8万人と定員の6割程度まで凋落している。このような事態に九州場所の存続そのものへの危惧も出始めている。このため、昨年は地元の大手企業が中心となって15日間通しの桝席などを購入して観客動員を図った結果、昨年の観客は8万3000人に回復した。九州場所での観客動員については、まだ予断は許さない状況にあるといえる。
かつて、地元のプロ野球でもライオンズが去って、あらたにホークスがやって来るまでの空白期間を福岡のスポーツファンは、忸怩たる思いで過ごした。失って初めて、その存在の大きさが分かることがあるだけに、あのような苦い思いを二度と味わないためにも今から対応策を考える必要があるのではないだろうか。
軽自動車(乗用・商用)・小型乗用車などを生産する第1工場に加え、建設中の第2工場では軽自動車に特化、両工場の生産能力は年産46万台(2直定時)に達する。ダイハツグループにとって九州は最大の生産拠点だ。
プロスポーツが地域で成り立つ要件とは……

九州経済調査協会
八尋和郎・情報研究部長
福岡には多彩なプロスポーツがあるものの、経営面を見てみると多かれ少なかれ、厳しい現実がある。「それぞれに健全な経営を目指しているが、基本的にプロスポーツの経営そのものは水モノであり、その時の天候や対戦成績に加えて、対戦相手によっても観客動員は左右される。プロスポーツは経営としてだけでなく、地域の文化として育てることが求められる」と、九州経済調査協会の八尋和郎・情報研究部長はみる。
自ら実践「するスポーツ」、スタジアム観戦をはじめとする「見るスポーツ」に加えて、市民をはじめ企業や行政による支援のあり方が最近、注目される。「プロスポーツの経営を地域が支えていく上で、市民、企業、行政がそれぞれに納得できる理由が必要である」と、八尋部長は指摘する。
市民側にとっては、勝ち負けに加え、いかに球団が地域に根付き、球団が愛される存在かがポイントとなる。一方、企業サイドでは、球団が取り組むスポーツの普及や青少年の健全な育成などの社会貢献活動に対して、地域のスポンサーとしてシート購入や協賛広告などで支援するケースが多い。そして、行政においては周辺整備などが求められるものの、市民から理解が得られることが必要となるだけに、球団による教育文化面をはじめとする地域貢献活動が問われるといえる。
つまり、プロスポーツが地域で成立していくためには、その時々の勝ち負けに一喜一憂するだけでなく、スポーツの普及・啓蒙活動などの地道な地域貢献への取り組みが重要である。地域に根付くことで市民・企業・行政から公器として評価され、地域から愛されることがカギといえる。(近藤益弘)
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※当ページの内容は、2007年8月1日発行の15号に掲載されたものです。




