フォーラム福岡

九州の観光戦略が動き出す九州国立博物館写真

九州観光推進機構 村山紘一事業本部長に聞く

2005年6月30日発行の創刊5号より

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村山事業本部長

九州観光推進機構は「九州がひとつ」になる第一歩である

全国でも前例のない官民連携の取り組みである「九州観光推進機構」は、「九州観光戦略」の49施策を着々と実行している。その実行部隊の指揮を執る事業本部長兼観光プロデューサーの村山紘一氏は、「単なる九州観光産業の活性化だけでなく、県境、業種間の境界を超えた『超域連携』こそが九州の活性化につながる」と主張する。

『九州はひとつ』を観光で具現

九州観光戦略の49施策を実施する「実行部隊」の指揮を執られてみて、手応えはいかがですか。

「九州経済同友会で数年前に『九州のグランドデザイン』を検討して以来、『九州はひとつ』を具体的にやるとすれば、テーマはまず観光だろうという意見が多く、私もその考えには同意したことを覚えています。今回の九州観光戦略の策定にも委員として参加させてもらいましたが、まさか自分がその実施機関の指揮を執らされようとは思ってもみなかったので、びっくりしています。観光推進機構は、何をやるかを決めるところではなく、やることはすでに九州観光戦略で決まっているので、それを『どんなふうにやるか』が問題です。一般の人は戦略1の『旅行先としての九州を磨く』を、観光地の開発や改善をこの機構が権限を持ってやるとイメージされがちですが、個々の観光地のレベルアップは各市町村でやっていただく訳で、われわの仕事はあくまで九州に観光客を誘致するため一体となってやるべきことを中心に実行する組織です。まず、機構の役目をよく理解していただくことが最初の仕事です」

心強い観光関係者外からの支援

官民が一体となって、こういう実行部隊ができたことのインパクトは大きいですね。

「中央官庁だけでなく、特にメディアの反応は敏感ですね。6月上旬に東京、名古屋、大阪、福岡で『ウェルカム九州キャンペーン』の説明会を行いましたが、従来の3倍の出席がありました。推進機構の会員の募集では、直接観光に関係のない企業も入会され、関心が高いことに驚いています。『九州がひとつ』になるためのプロジェクトの第1号として観光プロジェクトが動くのなら、自分も応援しようということではないかと思っております。そういう意味では『九州はひとつ』を目指して動き出せる体制ができたことの意義は大きいですよ」

「5月に九州各県をつなぐ物語性のある『広域観光モデルルート』を作成し、さらに3年間で150の新しいモデルルートを作っていきます。この事業は国土交通省の『観光みらいプロジェクト』事業に選定されました。北海道、東北など観光のライバル地域も、九州が一つにまとまり、向こう3年間に15億円という予算をつけて何かをやるということに注目していると思います」

海外での反応はどうですか。

「中国や韓国などの説明会でも、旅行会社などには『とにかく推進機構に話せば九州のことは全部わかる』という便利さを感じ取ってもらっているようです。これまでは海外の展示会でも、県ごとにバラバラに出していましたからね。外国の関係者への推進機構の認知度は確実に広がってきています。推進機構ができたことで利用する方が便利になったということは、国内のキャンペーンでもまったく同じことがいえます」

東アジアと3大都市圏のシニア層に的を絞る

49の施策を実施していく段階で、22人のスタッフでは足りなくなる心配はありませんか。

「仕事を大きくしていけば、組織が大きくなるという考え方もありますが、地域自体に問題を解決するグループが増えていくという考え方もできます。推進機構の考え方が地域に浸透していけば、自主的に県境を越えた動きが期待できます。例えばキリシタン文化の旅で長崎県と熊本県が手を組み、古代日本文化で福岡県、佐賀県、長崎県がまとまったり、いろいろな広域連携のグループができてくれば、活動自体はそういう組織にまかせ、こちらは情報提供や支援をしていくというやり方も増えるでしょう。推進機構ができたことで、そういうような派生効果が出てくるような気がします」

49施策の中で当面の最優先施策はなんですか。

「まず集客事業です。集客事業の本質は、まず誘いをかけてたくさんの人に来てもらうこと、それと来てもらった人に満足や感動を与えてもう一度来てもらうことの2つです。この2つのどちらが欠けてもいけない。2つ目のリピーターをつくるのは、各市町村の地域づくりの成果による部分が多く、機構としては誘致事業に力を入れています。現在いちばん旅行をしているといわれている東京、大阪、名古屋の3大都市圏のアクティブシニア層(元気な中高年層)にターゲットを絞って誘致活動を展開しているところです。それと東アジアからの観光客の誘致。当面はこの2つに全力投球していきます」

まとまったPR活動やキャペーン活動だけでなく、地域の力だけではできない仕事もあります。

「そこをカバーして支援していくのが私たちの仕事です。観光地のミシュラン(評価基準)策定やネットワークづくりだけでなく、インフラ的なものは積極的に支援していきます。例えば九州人は人情が厚くて明るくて、ホスピタリティーは全国的に高い評価を得ていますが、ガイドや標識、言葉の問題などホスピタリティーの中でもインフラ的なものはまだまだの状態です。そういうこれから磨かねばならないものがたくさんあります。IT(情報技術)を活用したPRやサービスなども、これから開発していかねばなりません」

九州域内の回遊性を高める

「九州をひとつ」と見た場合、回遊性の向上は重要な課題になります。

※クリックすると大きく表示。
屋久島の縄文杉

「例えば飛行機の場合、東京から来たお客さまが福岡空港で降りて福岡空港で乗らなければ、往復割り引きはありません。これではお客さまから見たら『九州はひとつ』ではない。これを福岡空港で降りて、鹿児島空港で乗っても往復割引相当のサービスができるように働きかけていかねばなりません。また県境にまたがる高速バスで3日間乗り放題で6000円というチケットがありますが、これも南九州が外されているので、改善の余地があります。県単位の今の交通体系がおかしいのです。レンタカーの乗り捨ての問題も含めて、九州域内の回遊性を良くするために解決すべき課題が多くあります」

観光推進機構が従来の体系を変えていくのですか。

「変えるというより、問題点があれば変えるために働きかけていくことができるというべきでしょう。これまでは問題があっても、どこに言ったらいいかわからなかった。また許認可の問題などで、お役所に対して言いにくい立場にあった民間企業や団体もあります。観光推進機構は、そういうことを改善していくためにお役所が認めてつくったものですから、どんどんお役所に働きかけていくのが仕事になります」

県境と業種間の境を越えた『超域連携』の推進

一つにまとまることで九州域内の交流も活発になってきます。

※クリックすると大きく表示されます
平戸

「佐賀に来た観光客から人吉のことを聞かれて、なにも知らないのでは本当の意味で『九州はひとつ』ではありません。『九州はひとつ』という意識が浸透していけば、当然、域内交流も盛んになる。域内交流で自分の地域の長所や短所が見えてきます。県境を越えて考えることで、今までになかった新しいものを創出することができます」

観光産業は複合産業でもあります。

「あらゆる産業の人たちが観光という目で自分たちの事業を見直して、組み立て直していくことが大切です。それが農業におけるグリーンツーリズムであり、工業における産業観光になるのです。今まで観光でないと思われた産業の人たちも、観光という視点で自分の業界を眺めてみると、新しい展開が図れると思います。県境と業種間の境、この2つの境界を超えることで新しい何かを生み出す切り口になると思います。県境を越えた広域連携だけでなく、業種間の境も超える『超域連携』こそが、これからの九州のテーマだと信じています」(渋田哲也)

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