フォーラム福岡

九州の観光戦略が動き出す九州国立博物館写真

観光王国・九州を目指し、実行を伴う戦略・施策

2005年6月30日発行の創刊5号より

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ワンポイントビュー

観光をキーワードに「九州はひとつ」を実現するために4月、官民一体となって九州観光推進機構が設立された。同機構は先に九州地域戦略会議が策定した「九州観光戦略」を実行する組織だが、官と民が「資金と人材」を出し合う画期的な試みだ。

減りつづける九州への観光客

九州観光推進機構の設立動因になったのは、九州観光の停滞ぶりへの危機感だった。かつて温泉地の別府、新婚旅行のメッカ・宮崎、雄大な阿蘇の風景に代表されるように九州は「観光王国」といわれていた。ところが観光客の目が海外や北海道・沖縄に向き最近の九州の観光産業は停滞気味だ。九州の宿泊客数は1996年の4934万人をピークに年々減少傾向にある。九州、北海道、沖縄の宿泊客数の推移を見ると、1995年から2002年の間に、沖縄では47%増と約5割増、北海道でも6%増加しているのに対して、九州は5%減少している。

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また、旅行大手4社の宿泊券取扱人員からも、北海道、沖縄と比較した九州観光の低迷は顕著だ。1996年から2003年の間に、北海道では611万人・泊から674万人・泊と10・3%の増加、沖縄ではでは217万人・泊から379万人・泊へと74・7%増加しているのに対して、九州では554万人・泊から471万人へと14・9%も減少している。

観光戦略策定と同時に戦略実行組織をつくる

この観光客減少傾向の事態を重く見た九州地方知事会と九州・山口経済連合会などが、2003年10月、官民一体で具体的な施策を検討する「九州地域戦略会議」(議長=麻生渡・九州地方知事会会長)を設立、その中で第一段階として「九州観光戦略」の策定を決議した。これに基づき「九州観光戦略委員会」(委員長=田中浩二・JR九州会長)を設置し、04年1月に第1回委員会を開き、今年2月まで8回の会議を開催。

委員会では、(1)九州全体で取り組んだ方が効果的・効率的なもの、(2)九州一体でなければできないもの、(3)利害を超えて取り組むことが求められるもの、(4)九州というスケールメリットが生かせるものに限定して戦略の策定を検討した。

戦略策定の視点は、(1)魅力ある観光地の創造、(2)協調と競争の促進、(3)施策の選択と集中、(4)連携の促進、(5)速やかな実践と結果のフィードバック―――、の5項目に絞られている。特にこの戦略が他のペーパーだけの戦略と違う点は、(5)の「施策を速やかに実行し、その結果を素早くフィードバックする体制づくりによって、有効な施策展開を加速し、着実な成果を得ることを目指す」だ。これまでの各種調査研究団体やシンクタンクが策定した地域活性化プランなどは、えてして机上のプランが多かったが、同委員会が策定したプランは同時に、その戦略を実行する組織を確立するという画期的なものだ。

極めてシンプルで明確な2つの数値目標

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通潤橋

こうして2004年10月、「九州観光戦略」が出来上がった。「施策の速やかな実践」を掲げているだけに、他のプランと違い、その目標も極めてシンプルで具体的なものになっている。その目標は「2007年に九州7県の入国外国人数を74万人へ」「九州7県の宿泊客を5000万人」の2つだけだ。

国のビジット・ジャパン・キャンペーンでは、2002年の全国の入国外国人数570万人から、2010年に1000万人を目標(年率7・1%増)としており、九州運輸局ではそれに連動し、九州の入国外国人数を2002年の44万人から、100万人を目標(年率10・7%増)を提案している。九州観光戦略でも、この数値を目標とするが、その場合2005年からの短期計画(アクションプラン)が終了する2007年の目標を74万人としている。

宿泊客数の目標は、2005年からの短期計画により減少傾向に歯止めをかけて、それをプラスに転じさせて、1996年の水準である約5000万人にできるだけ早期に到達させることを目指している。なお、この目標に向けて1996年からの減少率を反転させ2005年から順次プラスしていくと仮定すると、短期計画が終了する2007年の目標は2001年の実績4582万人になる。
この宿泊客数5000万人を達成すると、経済波及効果は2002年の2兆6840億円から2兆9612億円、雇用創出効果は同じく21万6000人から23万8000人になると推計している。

極めてシンプルで明確な目標だけに、「下り坂の九州の宿泊客数に歯止めをかけ、少しでも上向きにしなければ、この事業は失敗だと思っている」(田中会長)という厳しいものだ。

戦略4本の柱と49の施策

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この2つの数値目標を達成するため「九州観光戦略」は、「4つの戦略」と「49の施策」を掲げ、向こう3年計画で計15億円の予算をかけて実行する短期計画(アクションプラン)と10年間を目途に取り組む中長期計画によって構成されている。

戦略策定に当たる前に、各種資料や調査結果を分析すると、九州は「首都圏でのTVや雑誌での情報が少なく、イメージが醸成されない結果、旅行需要が少なくなっている」「東アジアでは、九州は観光の目的地としての認知度が低い」という結果がでた。一言でいえば、情報量と認知度の不足に尽きる。

九州観光戦略の4つの柱は、旅行先としての九州を磨く戦略(九州への観光客に満足してもらい、リピーター化、サポーター化するための受け皿づくり)、国内大都市圏から九州に人を呼び込む戦略(国内の巨大市場をターゲットに九州への入込を増大)、東アジアから九州に人を呼び込む戦略(東アジアでの九州の認知度を高めて入込を増大)、九州観光戦略を進める体制づくり(戦略実行の中核組織「九州観光推進
機構」の設立と関係部門間の連携)の4戦略だ。

4つの戦略にはそれぞれ、49に及ぶ具体的な施策が盛り込まれている。その主な具体的施策を列記すれば、次のようになる。

【旅行先として九州を磨く戦略】

各地での自然や景観重視の観光地づくりの促進。食材の源である農業や水産業との連携と仕組みづくり、さらに観光客の満足度を高める評価基準(九州ミシュラン)の制定などの地域間ネットワークの構築。 また、観光ボランティアの育成や4カ国語(日・韓・中・英)会話集の作成、アジア通貨の両替機能の充実など、安心で便利な旅ができる仕組みをつくる。九州から「観光カリスマ」に選定されている専門家の意見を伺いながら、地域ブランド化を演出できる人材の育成を図る。

【国内大都市圏から九州に人を呼び込む戦略】

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由布院

東京・大阪・名古屋の3大都市圏などからの集客増を図るため、新しいテーマによる広域観光モデルルートを開発するなど多様で魅力的な旅行商品の企画・開発・支援をする。 旅行会社や交通会社とタイアップ事業を強化して、九州への旅客吸引力を高める。また、九州観光の情報を的確に発信する広告キャンペーンを展開する。

【東アジアから人を呼び込む戦略】

ターゲットを東アジアの主要市場である韓国、中国、台湾、香港に絞り、現地でのPR活動やキャンペーンを展開する。修学旅行客の誘致促進のため現地説明会や現地教育関係者の招聘事業を実施。 旅行会社や航空会社とタイアップし、九州の広域旅行商品などの開発支援をする。

官と民から少数精鋭の23人体制

この3つの戦略の施策を実行する「実行部隊」が、九州観光推進機構だ。実行のための年間予算は5億円(人件費は含まず)で、九州7県と民間会社が2対1の割合で拠出している。拠出した会社は約110社。組織体制は、意思決定をスピーディーに行うため、総会|理事会|事業本部というシンプルな意思決定ラインで、極力フラット化している。企画部、国内誘致推進部、海外誘致推進部の3部構成で、常勤スタッフは事業本部長以下23人。九州7県から7人が出向、民間から旅行や交通関係などの企業から出向。中国人、韓国人の専従スタッフもいる。

事業本部長に関しては「各県や企業の利害調整を行う統率力、知見の高さ、豊富な経験が必要なので大物を抜擢した」(田中浩二会長)ということで元スペースワールド社長の村山紘一氏が就任した。村山本部長は、観光誘致事業の総合プロデュースを行う観光プロデューサーを兼務している。( 渋 田 哲 也 )

九州観光戦略の体系:戦略の4本の柱と49の施策

戦略1)旅行先としての九州を磨く戦略

●観光地づくりの新展開
1)観光関連の規制緩和・特区、地域再生計画への取組の推進
2)各地での観光地づくりへの取組の支援
3)九州ミシュラン(仮称)の策定
4)地域間のネットワークの構築
5)滞在型観光の促進
6)地域観光まちづくりへの支援
7)九州ブランド観光資源の抽出と普及
8)九州での統一行動による一体感の醸成
●おもてなし度(ホスピタリティ)の向上
9)観光ボランティアガイドの人材育成・地域観光ガイドの拡充
10)四ヶ国語(日・韓・中・英)会話集の作成
11)観光客をもてなす体制づくり
12)わかりやすい観光地案内方式の研究
13)アジア通貨の両替機能の拡充
14)日本語の不自由な外国人旅行者へのサービス
●九州での情報提供機能の強化
15)観光案内所のレベルアップ
16)ITを活用した旅行者へのサービスの充実
17)一般企業の協力促進
●九州域内モビリティ性の向上
18)九州内共通乗り物券、入場券の作成
19)移動手段の多様化の促進
20)交通インフラの整備促進

戦略2)国内大都市圏から九州に人を呼び込む戦略

●ターゲットの明確化
●国内主要市場からの集客増大
21)九州観光イメージ(ロゴ、キャッチフレーズなど)づくり
22)新テーマによる九州広域観光モデルルート及び旅行商品の開発
23)旅行エージェントとのタイアップ事業
24)航空会社とのタイアップ事業
25)鉄道会社とのタイアップ事業
26)九州一体となった宣伝プロモーションイベントの実施
27)広告キャンペーンの展開
28)広報PR展開
29)九州特典付きガイドブックの発行
30)「ウェルカム九州(仮称)」ポータルサイトの設置、運営
31)大規模イベントを活用した集客・周遊観光の促進

戦略3)東アジアから九州に人を呼び込む戦略

●ターゲットの明確化
●東アジア主要市場における九州の認知度アップ
32)九州観光イメージづくり
33)新テーマによる九州広域観光モデルルート及び旅行商品の開発
34)東アジアからの修学旅行客の誘致促進
35)旅行エージェント・航空会社とのタイアップ事業
36)九州観光推進機構のホームページの多言語対応
37)九州一体となったプロモーションイベントの実施
38)大型国際イベントの活用
39)広報PR展開
40)広告キャンペーンの展開
41)「みんなが九州宣伝員」の推進
42)各県・民間海外事務所の連携による情報提供・誘致活動
43)コンベンション・スポーツアイランドとしての情報発信
44)東アジア諸国との連携

戦略4)九州観光戦略を進める体制づくり

●九州全体の官民合同による推進主体の設置
45)「九州観光推進機構」の設立
46)多様な意見を収集し、戦略に反映する仕組づくり
47)九州観光推進機構としての自主財源の確保
●九州観光の動向把握
48)九州観光の現況調査
49)九州統一観光統計の整備

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※当ページの内容は、2005年6月30日発行の第5号に掲載されたものです。

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