フォーラム福岡

九州の観光戦略が動き出す九州国立博物館写真

“新”世紀・博物館としての九州国立博物館への期待

2005年6月30日発行の創刊5号より

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ワンポイントビュー

『日本文化の形成をアジア史的観点から捉える』をコンセプトとする九州国立博物館も開館まで、いよいよカウントダウンが始まった。《新しい時代の、新しい博物館》としての九州国立博物館の挑戦への期待と注目度も高い。

●SUCCESS POINT
21世紀の博物館に求められる柔軟な運営体制

「太宰府天満宮のトンネルを抜けると博物館だった」―――。かつて「遠の朝廷」と呼ばれ、7世紀後半から約500年もの長きにわたり、外交・軍事の重要拠点としての機能を担ってきた太宰府。毎年600万人以上の観光客が足を運ぶ太宰府天満宮の東南側に登場した歩行者専用トンネルを抜けると、緩やかな曲線を描く屋根と周辺の山並みの緑を鮮やかなに映し込んだ総ガラス張りの壮麗な建物が目に飛び込んでくる。

《新しい時代の、新しい博物館!》をスローガンに約1世紀振りの国立博物館としてオープンする九州国立博物館は、ある意味で財政難のなか、独立行政法人化という時代背景のもとに誕生した博物館といえる。

行財政改革に伴う独立行政法人化によって、国の直接運営から外れるものの、既存の3国立博物館との一体的な運営体制を生かしながら、独立した経営体として柔軟な運用の可能性も含んでいる。

開館記念特別展の「美の国 日本」に続く第2弾として開催される「中国文明の十字路展」(仮称)では、2006年元旦からの開幕を計画している。年初からの開館は、言うまでもなく、隣接する太宰府天満宮の初詣で客を取り込む狙いからだ。実現すれば、国立博物館としては「初めて」となる試みとなる。

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太宰府天満宮

九州国立博物館の「元旦営業」に象徴されるように、九州最大の観光地のひとつである太宰府天満宮との相乗効果が、入館者数の確保において大きなカギといえる。但し、「太宰府天満宮に参拝に来る人と博物館に行く人とでは、本来客層が違う」(行政関係者)という指摘もある。太宰府天満宮への参拝客を含め、広く一般市民からも関心が寄せられ、親しまれる博物館となり得るかが重要だ。そのためにも市民の目線に立った好奇心を満たす、分かり易いテーマによる企画展示やシンポジウムなどの催しを積み重ねて、「敷居の低い博物館」となり得るか。

冒頭の本誌アンケートでも九州国立博物館への期待や要望として「福岡は日本の文化の上陸地点」「九州とアジアの歴史的な関わりを知りたい」「日本における九州の歴史を知りたい」「九州の歴史や文化を映像や展示で学べそう」と、地元・九州の歴史そのものについて関心も意外と高い。これらの市民の声や要望を踏まえ、《新しい時代の、新しい博物館》としての取り組みが今後、期待と注目が集まる。

●SUCCESS POINT
「開かれた博物館」としての地元との連携

今年10月16日の九州国立博物館オープンを控え、太宰府市、太宰府天満宮、太宰府市商工会、太宰府観光協会の4者による太宰府ブランド創造協議会が発足した。

太宰府ブランド創造協議会では、本年度の取り組みとして九州国立博物館を太宰府市における大きなブランドと位置づけ、「九州国立博物館を核としたまちづくりをやっていく」と、前向きに取り組む。

九州国立博物館オープンに際して、市民を挙げて祝う事業として『開館記念奉祝パレード』やアートイベントとして『CO TOCOTOだざいふ』のイベントを開催する。「独自にバラバラでやるのではなく、共有して一緒にやれる分をやっていく」(太宰府市まちづくり企画課)と、国立博物館誕生が地域づくりの核のひとつとしての役割を担いつつある。

一方、〈歴史とみどり豊かな文化のまち〉を提唱する太宰府市では、『太宰府市まるごと博物館』という取り組みを続けている。「『太宰府市まるごと博物館』とは、太宰府市全域を《屋根のない博物館》と見立てて、歴史や文化、その他あらゆる太宰府の魅力を再発見し、再評価しようというまちづくり」と、太宰府市まるごと博物館推進室は解説する。

太宰府天満宮、太宰府政庁跡、観世音寺……。太宰府市内にある遺跡や遺構などの地域資源をいかして、市民・事業者・行政が一体になったまちづくり、市民ネットワークを生み出していこうとする『太宰府市まるごと博物館』では、今秋オープンする九州国立博物館も目玉のひとつとなっている。「太宰府にあるものを活用しながら、『住んでよかった』と言われるようにしていきたい」(まるごと博物館推進室)と意欲的だ。

このような地元での一連の動きを踏まえ、九州国立博物館側も「地域に開かれた博物館として、展示だけでなく、シンポジウム、フォーラム、講演会、さらに企業のパーティなど、多目的に活用していただきたい」(三輪嘉六館長)と、柔軟な姿勢をみせる。九州国立博物館だけでは、成果をあげるには限界がある。地元だけでなく、九州の関係機関と連携し、継続して人が来る仕掛けも必要だ。地域住民はじめ、学校、企業、団体、行政などと共生を通じて、21世紀における新しい博物館像を描き出せるか。そして、いかに情報発信をしていくか、アジアの博物館とも連携も含めた情報発信を工夫する必要がある。新たな挑戦はいま、始まったばかりだ。

●SUCCESS POINT
足回りを克服する魅力ある各種企画を

九州国立博物館の構想が具体的に持ち上がった97年に実施した太宰府市民の意識調査では8割ないし9割が誘致に賛成ながら、その一方で交通渋滞を懸念する声も強かった。

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アクセスマップ

現時点における九州国立博物館への自動車によるアクセスは十分とはいえない面があるのも事実だ。博物館東側へのアクセス道路はできたものの、付近を通る県道35号の4車線化などの要望が地元から県に出されるなど、道路事情に関しては十分とは言えない。また、博物館の駐車場収容台数は隣接する九州歴史資料館と合わせても230台しかなく、公共交通機関もしくは太宰府天満宮周辺の駐車場に依存せざるを得ないのが現状だ。

太宰府天満宮側からの歩行者専用トンネルに加え、太宰府市では西鉄太宰府駅から九州国立博物館正面に至る散策路として『発見の小径』を整備している。かつて、新聞紙上を賑わせた博物館付近でのJR新駅構想については「計画としては依然、残っている。当時は駅の建設だけだったが、現在では区画整理も含めたまちづくりを進めている」と、行政関係者は今後に期待をにじませる。

交通アクセス、特に道路アクセスが弱いだけに多くの市民が文字通り「足を運ぶ」魅力的な博物館にしていくかが問われるといえる。そのためにも市民の目線に立った等身大の展示企画をはじめ、九州国立博物館のファンづくりやリピーター獲得に向けた友の会組織や年間パスポート券、4国立博物館共通券など、利用者の視点から柔軟な運営が今後、より重要になってくるのは間違いない。( 近 藤 益 弘 )

博物館

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※当ページの内容は、2005年6月30日発行の第5号に掲載されたものです。

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