国立博物館の機能と役割とは…
2005年6月30日発行の創刊5号より
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実に1世紀振りの国立博物館が九州・太宰府に誕生する。国立博物館とは如何なるものだろうか、そしてその役割とは…。既設である東京・京都・奈良の国立博物館での取り組みと沿革を追いながら、新しい時代における新しい博物館像を探る。
日本における国立博物館の変遷
世界における博物館の歴史は、世界最古・最大の博物館である大英博物館から始まる。内科医であり、博物学者だったハンス・スローン卿から個人コレクション約8万点の寄贈を受けて、宝くじによる収益をもとに1753年、大英博物館は発足した。
現在、1000万件もの収蔵件数を誇り、年間に500万人以上が訪れる大英博物館は、国家機関に準じているものの、イギリス議会に直属する管財人委員会によって運営されており、政府とは独立した組織となっている。
一方、日本における博物館の歴史は浅く、1872年に誕生した文部省博物館が最初だった。1889年に宮内庁所管の帝国博物館となり、その後奈良と京都に相次いで帝国博物館が設立された。
20世紀を目前に控えた1900年、それぞれの帝国博物館は、東京帝室博物館、京都帝室博物館、奈良帝室博物館と改称した。これらの帝室博物館は、文字通り皇室の御物などを保護管理するために開設した施設といえ、のちの社会教育施設としての博物館とはやや性格が異なっていたといえる。
第二次世界大戦後の1951年、「博物館法」が初めて制定されて以降、博物館は図書館とともに社会教育において不可欠な施設と考えられるようになった。施行後、国立と冠された国立博物館は東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、国立科学博物館、国立民族学博物館、国立歴史民俗博物館などがあり、それぞれ別組織として運営されていた。
世紀も改まった2001年の4月1日、国の行政改革の一環として、東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館が統合され、独立行政法人国立博物館として、あらたなスタートを切った。
国博の役割は文化の継承・紹介・発展、国際交流など
独立行政法人化にあたって、独立行政法人国立博物館が取りまとめた中期目標として、「貴重な国民的財産である文化財を良好な状態で後世に伝え、文化の継承をしていく」「文化財を広く国民に紹介し、文化の向上・発展に努める」「我が国の『顔』として国際文化交流を推進する」「ナショナルセンターとして国内外の博物館活動の充実へ寄与する」の4つを基本的な役割として掲げている。
4つの基本的な役割の具体化に向けて、独立行政法人国立博物館では、収蔵品の充実や施設設備の整備などによる収集・保管・展示機能の充実、調査・研究機能および教育普及機能の向上を図るとともに、国際交流や文化発信の拠点としての機能をより拡充していくとしている。
既設の3国立博物館が統合されたことで、運営が一体化され、展示活動とともに人的交流なども可能となり、調査・研究面での相乗効果が期待される。
既設の3国立博物館に加えて、新たに開館する九州国立博物館の展示向けに東京国立博物館から約900件、京都国立博物館から30件、奈良国立博物館から38件の展示品の貸与が予定されている。財政難のなか開館オープンする九州国立博物館が開館当初から常設展示品を一定量確保ができたのは大きいといえる。
また、独立行政法人化にともない、運営に関しても独立した経営体として柔軟な対応できるようになった。既存の3国立博物館では、既に博物館や文化財に広く親しんでもらうために博物館の観覧と一体化した民間企業のイベントや催しなどに博物館施設を貸し出している。これまで、音楽会や演劇公演、映画鑑賞会、落語会、パーティーなどの開催実績がある。九州国立博物館での取り組みと試みにも期待される。
日本を中心に東洋の文化財を収集・展示、我が国を代表する博物館―――東京国立博物館
日本を代表する博物館である東京国立博物館では、日本を中心にした広く東洋諸地域にわたる文化財について、収集・保管・展示、調査研究、教育普及活動に取り組んでいる。
東京都台東区の上野公園内に位置する本館、表慶館、東洋館、平成館、法隆寺宝物館などの施設からなり、収蔵品は国宝91件・重要文化財620件を含め総数は11万1397件となっている。寄託品は国宝65件・重要文化財323件を含めて2447件。(2004年3月末現在)
常設展では今年度、年180回程度の陳列替え、総陳列件数は8000件を予定している。一方、特別展では「世界遺産・博物館島 ベルリンの至宝展」「遣唐使が見た中国唐時代の美術展」「北斎展」などを企画し、今年度の目標入館者数で79万人を見込む。
これらの収蔵品に関しては、本館で日本の美術、東洋館では中国および朝鮮半島を中心としたアジア地域の美術・考古遺物、平成館で考古遺物、法隆寺宝物館で法隆寺献納宝物などを常時展示している。
12万件近い収蔵品を誇る東京国立博物館は、日本で最初の鉄道が新橋―横浜間に開業した1872年に旧湯島聖堂の大成殿で開催された日本初の博覧会を機に発足した文部省博物館を祖とする。1882年には現在地である上野寛永寺本坊跡に移転、その後宮内庁所管の帝国博物館となり、東京帝室博物館に改称した。
戦後、1947年に文部省所管の国立博物館となり、1952年に東京国立博物館と称する。その後元号が平成になって、1999年に法隆寺宝物館、平成館が開館、2001年の独法化を受けて、独立行政法人国立博物館東京国立博物館となり、同年本館が重要文化財に指定された。
東京国立博物館は、今後も引き続き日本および東洋諸地域における有形文化財を収集・保管・展示し、これに関連した調査研究・教育普及活動に積極的に取り組む考えだ。
京都文化を中心に収集・展示―――京都国立博物館
平安時代から江戸時代にかけて、1100年にわたって日本文化の中心地のひとつだった京都―――。京都市東山区の旧恭明宮跡に建つ京都国立博物館では、京都文化を中心とした文化財についての収集、保管、展示、調査研究、教育普及活動に取り組んでいる。
平常展を開催する平常展示館や特別展示を開催する特別展示館をはじめ、技術資料参考館、文化財保存修理所、講堂などから成る。
収蔵品は国宝27件・重要文化財180件を含め総数は6226件となっている。寄託品は国宝85件・重要文化財636件を含めて6130件(2004年3月末現在)。
京都国立博物館の沿革としては、京都帝国大学の創立と同じ1897年に帝国京都博物館として開館した。その後、京都帝室博物館と改称、1924年に皇太子成婚記念として京都市に下賜され、恩賜京都博物館となる。
戦後の1952年に国に移管、文化財保護委員会の付属機関として京都国立博物館と改称した。1969年には特別展示館、表門、表門札売場、袖塀が重要文化財に指定される。そして、2001年には独立行政法人化される。
今年度、常設展では50回程度の陳列替えを実施し、陳列総数は2000件を予定している。また、特別展では「龍馬の翔けた時代」「天台宗開宗1200年記念最澄と天台の国宝」などを企画し、目標入館者で30万9千人を見込む。
長く日本文化の中心地だった京都は豊かな文化遺産に恵まれており、京都国立博物館では、独法化を機に従来とは違う発想も取り入れながら、より広範な国民の方々に親しまれる博物館を目指すとしている。
仏教美術を中心に収集・展示――奈良国立博物館
仏教美術を中心とした文化財について、収集、保管、展示、調査研究、教育普及活動に取り組む奈良国立博物館は、多くの社寺に囲まれた奈良公園に位置する。
開館自体は1895年だが、前史として1874年から1890年まで、ほぼ毎年開催された奈良博覧会の存在は大きいといえる。東大寺大仏殿と周辺回廊を会場とした第1回奈良博覧会には正倉院宝物をはじめ社寺や個人から書画、古器物、標本などが陳列され、80日の期間中に約17万人が訪れるなど大盛況だったという記録が残る。
旧興福寺境内にある奈良国立博物館は開館後、1900年に奈良帝室博物館と改称した。1947年に宮内庁から文部省に移管されて国立博物館奈良分館となり、1950年に文化財保護委員会付属機関に移管する。1952年に奈良国立博物館と改称、1968年に文化庁の付属機関となり、翌1969年に本館が重要文化財に指定される。その後、西新館、東新館、地下回廊が完成し、2001年には独立行政法人国立博物館奈良国立博物館となる。収蔵品は国宝12件・重要文化財95件を含め総数は1710件。寄託品は国宝52件・重要文化財311件を含めて1842件(2004年3月末現在)。
常設展では、「仏教美術の名品」と題し、本館および西新館で開催している。飛鳥時代から鎌倉時代に至る仏像を中心とした日本彫刻および源流となるガンダーラ・中国・朝鮮半島の諸作品、中国古代青銅器のコレクションを本館で展示し、西新館では絵画・書跡・工芸・考古のジャンル別に展示している。
今年度、常設展では19回程度の陳列替えを実施し、陳列総数は600件を予定している。また、特別展では「古密教―日本密教の胎動」「遣唐使が見た中国唐時代の美術展」「第57回正倉院展」などを企画し、目標入館者で29万人を見込む。
開館以来、奈良国立博物館では仏教美術を中心に収集、保管、展示、調査研究などを通して仏教信仰が生み出した、優れた美術の魅力と、背景にある歴史・文化について紹介してきた。今後は、「知と知識と憩い」の場としても開かれた親しみやすい博物館の実現に向けて、取り組むとしている。( 近 藤 益 弘 )
4国立博物館の概要
独立行政法人国立博物館 東京国立博物館
■住 所/東京都台東区上野公園13−9
TEL03−3822−1111 http://www.tnm.jp/
■開 館/1872年 ■館 長/野崎弘
■収蔵品/111,397件(国宝91件、重要文化財620件)2004年3月末現在
■寄託品/2,447件(国宝65件、重要文化財323件)2004年3月末現在
■定 員/127人(一般職46人:技能・労務職27人:研究員54人)2005年1月1日現在
■常設展/総陳列件数8,000件・陳列替え180回程度 ※2005年度予定
■特設展/世界遺産・博物館島「ベルリンの至宝展」
「模写と模造と日本美術−うつす・まなぶ・つたえるー」
「遣唐使が見た中国唐時代の美術展」(仮称)
「江戸のやきもの」(仮称)、「北斎展」
天台宗開宗1200年記念「最澄と天台の国宝」など※2005年度
■入館者/79万人(今年度目標入館者数)
独立行政法人国立博物館 京都国立博物館
■住 所/京都市東山区茶屋町527
TEL075−541−1151 http://www.kyohaku.go.jp/
■開 館/1897年 ■館 長/佐々木丞平
■収蔵品/6,226件(国宝27件、重要文化財180件)2004年3月末現在
■寄託品/6,130件(国宝85件、重要文化財636件)2004年3月末現在
■定 員/42人(一般職20人:技能・労務職6人:研究員16人)2005年1月1日現在
■常設展/総陳列件数2,000件・陳列替え50回程度 ※2005年度予定
■特設展/「曾我簫白ー無頼という愉悦ー」
「龍馬の翔けた時代」
天台宗開宗1200年記念「最澄と天台の国宝」
「京都の18世紀」(仮称) ※2005年度
■入館者/30万9千人(今年度目標入館者数)
独立行政法人国立博物館 奈良国立博物館
■住 所/奈良市登大路町50
TEL0742−22−7771 http://www.narahaku.go.jp/
■開 館/1895年 ■館 長/湯山賢一
■収蔵品/1,710件(国宝12件、重要文化財95件)2004年3月末現在
■寄託品/1,842件(国宝52件、重要文化財311件)2004年3月末現在
■定 員/34人(一般職12人:技能・労務職8人:研究員13人)2005年1月1日現在
■常設展/総陳列件数600件・陳列替え19回程度 ※2005年度予定
■特設展/「曙光の時代−ドイツで開催した日本考古展−」
「古密教−日本仏教の胎動」
「金沢文庫の名宝」
「第57回正倉院展」※2005年度
■入館者/29万人(今年度目標入館者数)
独立行政法人国立博物館 九州国立博物館
■住 所/福岡県太宰府市石坂4−7−2
TEL092−918−2807 http://www.kyuhaku.com/pr
■開 館/2005年 ■館 長/三輪嘉六
■収蔵品/―
■寄託品/―
■定 員/26人(一般職9人:技能・労務職―人:研究員17人)2005年1月1日現在
■常設展/総陳列件数1200件・陳列替え67回程度 ※2005年度予定
■特設展/開館記念特別展「美の国日本」
「中国美の十字路」(予定) ※2005年度
■入館者/17万人(今年度目標入館者数)
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※当ページの内容は、2005年6月30日発行の第5号に掲載されたものです。








