フォーラム福岡

九州の観光戦略が動き出す九州国立博物館写真

九州の観光戦略が動き出す

2004年6月25日発行の創刊予告号より

ビジターズインダストリー(集客産業)として注目を集める九州における観光分野

九州国立博物館オープンを皮切りに新たな構想が鼓動する

長年の悲願だった九州国立博物館が完成し、2005年秋のオープンに向けて着々と準備がすすむ。国を挙げてビジターズインダストリー(集客産業)の振興に向けての取り組みをみせるなか、九州においては、いかなる戦略を組み立ていくべきか。九州域内外のみならず、日中韓の三国間における新たな観光プロジェクトの可能性についても視野に入れ、アプローチする。

来年秋、太宰府に九州国立博物館が開館

「遠の朝廷」と呼ばれ、7世紀後半から約500年もの長きにわたり、外交・軍事の重要拠点としての機能を果たしてきた太宰府――。2005年秋をめどにオープンする九州国立博物館は、毎年600万人以上の観光客が足を運ぶ太宰府天満宮の東南側に位置する。歩行者用トンネルを潜り抜けると、周囲の山並みの緑を映し込んだ壮麗な建物が姿をあらわす。

九州国立博物館

東京 、京都、奈良に次ぐ国立博物館として、約1世紀ぶりの開設となる九州国立博物館は 、「日本文化の形成をアジア史的な観点から捉える」を基本コンセプトとする。資料の展示のみならず、歴史的背景や社会的事象についても理解でき、「コンセプト、建物ともに全く新しいタイプの国立博物館」(福岡県庁国立博物館対策室)だ。

九州国立博物館の1階のエントランスから2階に上がると、年数回開催される特別展などの企画展示スペースとなる。さらに3階の常設展示室では旧石器期から江戸末期までを主にアジア諸地域との交流という観点から構成している。実物展示を優先しながらも必要に応じてレプリカや模型の展示に加え、最新の映像技術も駆使した展示開設にも力を入れていく。解説言語も日本語に加え、英語、韓国語(朝鮮語)、中国語(北京語)となっている。

「九州における観光戦略のひとつとして、地域づくりの視点からの観光ルート設定に取り組んできた」と、九州運輸局の石崎仁志企画振興部長はコメントする通り、観光政策においてはハード(施設)とソフト(集客力)との相乗効果が不可欠となる。九州国立博物館に関して、〈果たして魅力的な観光資源になるのか〉というテーマについては、いかに九州内外からの観光客を呼び込めるか、そのためにはどのような戦略を組んでいくかが重要になる。

この点に関して、福岡県庁国立博物館対策室では「県をあげて、観光ルートづくりに取り組んでいく。今期は修学旅行の誘致をはじめ、海外からの団体客獲得に積極的に取り組む」。九州国立博物館のオープンは、九州における今後の観光を占う上で、ひとつの試金石といえそうだ。

ワンポイントビュー

観光王国・九州へのノービザ特区構想

温暖な気候、美しい自然、豊かな温泉、アジアとの国際交流で育まれた歴史と文化…、長年九州は、観光王国と言われてきたが、今日ではその地位は低下している。

《九州はひとつ》の理念に基づき、地域における自律的・一体的な発展に向けて官民の協力による具体的な施策を検討し、実践的に取り組むことを目的に九州地域戦略会議が発足した。 九州地域戦略会議では、今年1月下旬、最優先課題のひとつである九州全体の観光戦略策定のための専門組織として九州観光戦略委員会を設置した。

九州商工会議所連合会、九州地方知事会、九州・山口経済連合会などで構成する九州地域戦略会議では、専門組織の開設を契機に官民一体で九州地域の広域観光振興のための短期・中長期の戦略策定、および観光戦略推進体制について取り組む考えだ。

官民を上げての取り組みに期待が高まる半面、「行政が目指す『観光振興 』と経済界が取り組む『観光産業振興』とは必ずしも一致しない。観光産業振興とはいわば地域にお金が落ちることであり、観光振興とは地域が元気になることで温度差がある」と、観光関係者は指摘する。

一方、観光分野においてヒト、カネ、モノをひとつにして、九州における観光戦略づくりにおけるスタンスも揃っていない。《九州はひとつ》という考え自体は、いわば道州制導入の先駆けともいえる。それだけに、自ら存在を否定されかねない知事会のメンバーである県知事の一部からは否定的な発言が飛び出すなど、足並みは揃っていないのも事実だ。取り敢えず、呉越同舟で漕ぎ出したところだろうか。色々な課題を抱えながらもビジターズインダストリー(集 客産業)の流れを背景とした一連の動きと組織が出来上がったことは、最初の一歩として大きな意味がある。

「観光立国」を目指して、政府では2010年までに外国人観光客を倍増の1000万人達成を掲げる。国土交通省が進める外国人観光客誘致事業であるビジット・ジャパン・キャンペーンの達成時の経済波及効果として8兆3000億円が見込まれる。このビジット・ジャパン・キャンペーンの一環として、韓国からの修学旅行を誘致しようという動きが各地で活発化している。今年3月から韓国の修学旅行生に対するビザが免除になったことが大きな要因であり、いち早く教育関係者を招いての視察ツアーを始めたところもある。

韓国とともに近隣国である中国でも最近、海外旅行が解禁された。経済成長が著しい中国から観光客の増加にも期待が高い。中国・韓国への立地の良さに加え、海外からの観光客が喜ぶ温泉やテーマパークなどの集積の高さ、歴史的なつながりを背景として、九州圏域への観光目的の入国に限り、ビザを必要としないノービザ特区構想が浮上している。

「観光旅行でやって来るのは富裕層を中心とした人々であり、ノービザでも構わない」と、観光行政関係者は理解と期待を示す。しかし、ノービザ特区構想の前に立ちはだかるのは、縦割り行政の壁だ。国土交通省は前向きなのに対し、法務省や警察などが反対しているという。このこともあり、「働き掛けても、なかなか動き出さない」と、観光行政関係者はつぶやく。

観光・集客産業の位置づけ

博多町家ふるさと館

九州の主な温泉・既存観光地

現在、海外からの九州への観光客は約53万人だ。今後、九州圏域においてノービザ特区が実現すれば、中国・韓国に近いという地理的優位性も踏まえ、海外から観光客が飛躍的に増加するのは難くない。ビジターズインダストリー(集客産業)を推進していく上でも官民一体となって、ノービザ特区の実現に向けて尽力すべきである。

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※当ページの内容は、2004年6月25日発行の創刊予告号に掲載されたものです。

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