「福岡五輪」は節約型 成長戦略で生み出す財政余力がカギ
2006年5月21日発行の10号より
『「福岡五輪」は節約型 成長戦略で生み出す財政余力がカギ』に対する皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
コメント受付フォームよりお送りください。>> コメント受付フォーム
2016年夏季オリンピックの招致に向け、福岡市が試算した施設・インフラ整備費は総額4864億円。主会場となる須崎ふ頭(中央区)の再開発を民間主体で行い、できるだけ既存施設や仮設を活用することで市負担分を970億円に抑え、財政負担を懸念する市民の理解を得ることを目指している。
五輪開催に伴う市負担の全額は990億円
オリンピック関連整備費4864億円の内訳(表1)は、メーン競技場(オリンピックスタジアム)や選手村など主要施設の用地取得や建設などの須崎ふ頭再開発費用全体が3758億円、それに他の施設や交通インフラ整備費などが1106億円となっている。
新設競技施設整備費は、オリンピックスタジアム355億円、4000人収容のプール74億円、その他の施設を含めた7施設で総額630億円。
ヤフードームに設置する仮設プールをはじめ、8つの特設・仮設施設整備には506億円が必要だが、国際オリンピック委員会(IOC)やスポンサー企業からの協賛金などで賄う大会組織委員会経費に含まれるため市の負担はない。
3500戸、延べ床面積23万平方メートルの選手村は684億円をかけて整備する。交通インフラ整備費は中心市街地・天神を南北に走る渡辺通りの須崎ふ頭までの延伸や、須崎―中央ふ頭間をつなぐ幹線道路、南北方向の新たな幹線道路の整備など合わせて427億円を見込んでいる。
これらの須崎ふ頭再開発を含めた市の負担は、(1)競技施設整備費293億円、(2)交通インフラ整備費254億円、(3)その他再開発に対する市の補助金などの関連事業費423億円――の合計970億円となっている。招致経費は地元経済界からの寄付などを見込んで市負担の限度額を20億円と想定し、これを合わせた990億円がオリンピック開催にかかる福岡市負担の全額ということになる。
国際資本も惹きつける再開発の魅力づくり
再開発する須崎ふ頭は現在、倉庫や製粉工場、物流センターなどが立ち並び、総面積は90ヘクタール。臨港地区に指定され、マンションや商業施設などの建築物や構築物の建設が制限されている。道路などを除くと市有地が32ヘクタール、民有地が36ヘクタールで、地権者は約200人。同ふ頭の再開発はまず地権者である市や民間企業と経済界が共同出資で再開発会社を設立。都市再開発法に基づいて用地を買収し、臨港地区の指定を外した上で、競技施設や選手村などの建設にあたる。施設完成後、新設競技場は市が取得するが、選手村や商業施設などは特定目的会社(SPC)に売却。オリンピック期間中は市が借用し、五輪後は住宅や事務所などとして分譲・賃貸する計画だ。
再開発事業は3800億円近い大型プロジェクトである。SPCが購入する対象物件も図1のように2462億円に上り、民間事業者の参入が前提になっている。この成否が財政面での福岡オリンピック招致の鍵を握っているとも言える。地元金融機関のトップからは、事業の採算性やスキームの検討については時間がかかり、地元企業だけでなく中央大手の参加がないと困難であるという観測も出されている。これに関し、制作総指揮者の磯崎新氏は「国内の資本だけでも間に合わないかもしれません。韓国や中国との連携を踏まえ、その背後の全世界的な資金が入ってくる仕組みが必要です。そのためには、惹きつける魅力を企画とデザインで創らないといけません」と語っている。
今後、福岡・九州オリンピック招致推進委員会において、地元経済界や金融機関、学識経験者等で構成される「事業化検討委員会(仮称)」を設け、事業の採算性や整備手法などについて検証および検討を進めることになっている。
市債発行額を抑えて残高を圧縮中
福岡市の負担額約1000億円の財源は、市債約700億円と一般財源約300億円。オリンピック招致で市債を発行しても、それ以上の額を償還することで、2015年度末の市債残高(一般会計)は05年度末の約1兆3000億円より1000億円減ると市は説明している(図2)。一般財源分は、剰余金から30億円ずつ毎年度積み立てて確保する考え(図3)。剰余金は毎年60億―90億円あり、30億円の積み立ては可能という(図4)。
福岡市の財政健全化プランでは、市債活用のあり方として、「プライマリー・バランス」(注1)の堅持と「市債依存度(注2)10〜12%」という目標を設定している。プライマリー・バランスについては、平成10(1998)年度以降、毎年度当初予算で一般会計の市債発行額を減少させ、当初予算ベースで平成13(2001)年度予算以降、6年連続均衡を達成している(図5)。市債残高を減少させていくためには、市債発行額を元金償還額以下にする必要がある。平成17、18年度と達成し、市債残高を圧縮している(図6)。
市債依存度については、同18(2006)年度当初予算案では9・5%となっており、健全化目標を下回っている(図7)。
[注1]プライマリーバランス 市債関連分を除いた財政収支。市債発行などの借金を除いた歳入(税収・税外収入)と過去の借金の元利払いを除いた歳出の差。公債費以外の基本的事業の歳出を、市債収入を除く税収などの基本的歳入でまかなう状況を「プライマリーバランスの均衡」という。
[注2]市債依存度 歳入総額に占める市債の割合。当該年度の歳入のうち、どれだけの割合を市債発行に依存しているかを表す。
データの取り方で変わる財政の健全度
財政状況は改善されつつあるが、市債残高は平成17年度末で、一般会計1兆2981億円、特別会計2539億円、企業会計1兆235億円ほかを合わせて2兆6887億円に上っている。18年度末でも合計2兆6511億円である。総務省の試算によると、福岡市の実質公債費比率が22・8%で、政令市の中で最悪だった。実質公債費比率は財政規模に対して、借金返済に使う金額を示す割合。また、起債制限比率は16年度決算で17・9%。これは、公債費比率の算定式から事業費補正により交付税措置される公債費を控除して算出するもので、いわば純粋に自治体で負担すべき公債費の比率を表している。この比率が20〜30%になると一般単独事業にかかる地方債が、30%以上になると一般事業債の起債が制限される。
市サイドは、(1)人件費比率(歳出に占める人件費の割合)は11・0%と政令市(14団体)で1位、(2)経常収支比率(一般財源に占める人件費・扶助費・公債費等の割合)は91・2%で同じく6位、(3)財政力指数(標準的な財政需要に対する交付税以外の収入の割合、財政力を示す)は0・768で同9位、(4)実質収支比率(一般財源に対する決算剰余金=黒字額の割合)は2・1%で同3位――などの係数を挙げ、投資情報センター(R&I)の格付けでも17年3月段階で「AA−(ダブルエイマイナス)」から「AA(フラット)」に上がったと説明。あくまでも投資余力を持った財政構造を維持しているという。
投資を呼び込むための投資
こういった財政の説明によって、オリンピックが市の財政を圧迫するという市民の懸念を払拭できるだろうか。オリンピック以外の市債発行額の現状維持が前提で、今後、福祉関連の負担増、職員の退職給与引当金、国の三位一体改革に伴う地方交付税の減少なども予想される。
「財政健全化プラン」で掲げた(1)積極的な財源の確保と効率的・効果的な資金調達(2)社会情勢の変化に対応しうるシステムや手法への大胆な転換(3)行財政運営の効率化(スリム化)と適正化――に取り組むだけでなく、今回のオリンピック招致に関連し、福岡市の成長戦略を明確にすることが望まれる。福岡が注目されるきっかけとなった1989年開催のアジア太平洋博覧会(よかトピア)のように、内外の投資を呼び込む投資であり、市の財政力を高める手立てであることを市民に提示し、議論を巻き起こしていくことを期待したい。(神崎公一郎)
『「福岡五輪」は節約型 成長戦略で生み出す財政余力がカギ』に対する皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
コメント受付フォームよりお送りください。>> コメント受付フォーム
※当ページの内容は、2006年5月21日発行の10号に掲載されたものです。







