フォーラム福岡

福岡の近未来図

博多湾を会場に21世紀型の持続可能なオリンピックに

2006年5月21日発行の10号より

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ワンポイントビュー

2016年のオリンピック招致に向けて、福岡市は博多湾沿岸にコンパクトに会場を配置する基本計画を発表した。目指すのは、世界の人々から理解と共感を得ることができる21世紀型のオリンピックだ。過大投資に陥ることなく、世界のトップアスリートたちに最高の競技環境を提供し、大会後も将来にわたって持続可能であることが重要なポイントとなっている。その概要を見てみよう。

【施設整備計画】
3つのクラスターに競技施設を集約

福岡市による開催概要計画では、競技施設や大会運営関連施設を博多湾沿いに集中させる計画だ。これは、海に抱かれた都市である福岡市の特徴を生かしたもので、自然環境との調和をとると同時に都市部に近い利便性も確保するというメリットがある。加えて、選手村と各競技会場を集中させることで、選手・役員らの移動時間が短くて済む。80%の選手が20分圏内、うち50%の選手が5分圏内で競技会場へ移動できるという、最良のアクセスを実現させる計画だ。

さらに、ただ博多湾沿いに配置するというだけでなく、3つのクラスター(施設集積エリア)を設定し、その中に集中させる計画だ。セキュリティ面や輸送、報道関係などの関連施設をクラスターごとに集約することなどにより、効率化とコストの削減効果が見込まれる。

【メインクラスター=天神・マリンメッセ地区】

選手村やオリンピックスタジアムなどの主要施設を配置するメインクラスターを、「天神・マリンメッセ」地区に配置する。須崎ふ頭から博多、中央ふ頭にかけてのエリアで、▽開閉会式や陸上競技、サッカーなどを行うオリンピックスタジアム(7万人収容)▽体操、バスケットボール(決勝)などを行うメインアリーナ(1万5000人)▽シンクロナイズドスイミング、飛び込みなどの新設プール(8000人)▽カヌー(スラローム)会場を新設。バスケットボール(予選)やバレーボール、新体操などを行う特設パビリオンを5棟設置するほか、福岡国際センターやマリンメッセ福岡、市民体育館も卓球や柔道、レスリングなどの会場として使用する。このメインクラスターには合計12の競技会場が集中する。

選手村は須崎ふ頭に建設され、選手・役員約1万6000人の拠点となる。また、須崎ふ頭の北東エリアと中央ふ頭の先端部分は世界から2万人近くが集まる報道関係者向けの宿泊施設としてメディア村を置く計画だ。各ふ頭に複数の大型客船を接岸させて、宿泊施設として利用することも検討されている。

さらに、オリンピックスタジアム周辺には大会運営施設やメディアセンター(延べ床面積約10万平方メートル)が置かれ、博
多ふ頭はオリンピックセンターゾーンとして、交流の場を設ける構想もある。

天神の都心部から約1キロという距離の近さも重要なポイントで、数万人におよぶ観客の輸送に地下鉄や西鉄電車など既存の交通機関を活用できる。

【海の中道クラスター】

自然豊かな海の中道海浜公園のエリアにあり、雁ノ巣レクリエーションセンターを活用して、屋外競技を中心とした6競技の会場となる。選手村からは20分圏内だ。

福岡にこれまで十分な施設環境がなかったアーチェリーとホッケーの会場を新設、雁ノ巣レクリエーションセンター内に体育館を新設し、フェンシングの会場とする計画だ。ソフトボールが行われる場合は雁ノ巣球場を利用する。馬術とライフル射撃は特設会場を設けて行われる。

【百道・小戸クラスター】

ヤフードームと百道浜、地行浜、小戸ヨットハーバーの4つの競技会場で構成されるのが百道・小戸クラスターだ。ここも都市高速を利用することで選手村から20分圏内となる。

ヤフードームには、世界水泳選手権福岡大会の経験を生かして特設プールを設置し、主要競技である競泳の会場とする計画だ。野球が行われる場合は決勝の舞台にもする。百道浜とその周辺の海を利用してトライアスロンを行い、地行浜はビーチバレーの会場となる。小戸ヨットハーバーを拠点として能古島周辺の海がそのままセーリング会場だ。

【3クラスター以外の競技会場】

博多湾沿いの3つのクラスター以外の福岡市内の競技会場は、博多の森テニス場でテニス、油山牧場で自転車(マウンテンバイク)、今津で自転車(ロード)を行う。市外では遠賀川でボートとカヌー(フラットウォーター)、北九州メディアドームで自転車(トラック)、熊本県総合射撃場で射撃(クレー)が計画されている。野球が行われる場合は春日市、小郡市で予選を行う。既存の専用施設を活用する形となる。

【サッカーの広域開催】

オリンピックが原則1都市開催とされている中で例外なのがサッカーだ。過去のいずれの大会でも開催国内の主要スタジアムに分散して行われており、今回の計画でもオリンピックスタジアムのほか、2002年日韓ワールドカップの会場となったスタジアムを中心に、鳥栖、大分、熊本、広島、大阪、新潟、宮城での開催を計画している。全国にオリンピック・ムーブメイントの輪を広げる役割が期待されている。

【オリンピック施設の「後利用」】
新設7施設は五輪後の利用計画折り込む
民間の資金とノウハウも活用へ

福岡市が招致レースを勝ち抜くポイントとして世界に提案するのが「21世紀型オリンピック」。その重要なキーワードが「持続可能」であることだ。

施設整備の面では、既存の施設や特設(仮設)施設を有効に活用し、新設する施設については将来にわたって市民の財産として「後利用」が可能となる計画とし、さらには民間の資金や運営ノウハウを活用する。

今回の計画では、全37競技施設のうち、新設するのはオリンピックスタジアムやメインアリーナなど7施設。特設会場は8施設で、残り22施設が既存の施設を活用する。

新設する競技施設の「後利用」計画は、次の通りだ。

まず、オリンピックスタジアム。聖火台を中心に五輪開催のシンボルとなる施設だ。オリンピック時は7万人収容の巨大スタジアムだが、3万人分は仮設スタンドとすることで五輪後は4万人収容のスタジアムとなる。陸上競技の国際規格に合致し、サッカーの国際Aマッチも開催できる新たな国際スポーツ拠点とし、Jリーグ・アビスパ福岡のホームグラウンドとする計画だ。これによって、現在、Jリーグ開催のため使用が制限されている博多の森球技場は、ラグビーやアメリカンフットボールなどの高校、大学、社会人などの試合に活用することができるようになる。

オリンピックスタジアムの周辺には、前述の通りメインアリーナとプールも新設される。メインアリーナは五輪時は1万5000人収容だが、固定席は7000席程度とする計画。屋内スポーツの国際大会や市民利用の体育館、コンベンション施設として活用する。プールは老朽化している現在の市民体育館プールと中央市民プールの機能を集約する。五輪時は仮設席を含めて8000人だが、通常は4000人程度とする計画だ。また、大会運営施設として国際放送センターやメインプレスセンターも設けられるが、これらはオフィスや商業施設として民間の力で後利用される。これらを含めたエリア全体を「都心型スポーツ複合エリア」としてスポーツ・コンベンションの拠点とし、スポーツを通じた国際的な青少年の交流機能や五輪開催で蓄積されるスポーツ医学についてのネットワーク機能構築なども構想されている。選手村の後利用として生まれる住宅エリアと合わせて、海に開かれた福岡市の新しいシンボルエリアとする計画だ。

また、カヌーのスラローム会場となる長浜船溜は、福岡競艇場を活用する。(現在の福岡競艇場はオリンピックスタジアムのエリアとなる計画)

海の中道クラスターに新設されるホッケーとアーチェリー会場、体育館は、現在の雁ノ巣レクリエーションセンターの機能をさらに充実させるものとなる。五輪時に併設されるトレーニングセンターやクラブハウスなども活用することで、市民やプロを含めたスポーツ団体の競技やトレーニング・キャンプの場として、本格的なスポーツ拠点を目指す。

こうした形で後利用をきちんと計画した持続可能なオリンピックを実現することができれば、首都クラスの大都市でなくともオリンピックを開催できるという21世紀型五輪のモデルとなる。オリンピック・ムーブメントを世界の多くの都市に広げる可能性を示すもので、世界の共感と理解を得て、招致レースを勝ち抜こうという計画だ。

実施計画のカギ握る須崎ふ頭の再開発

今回の実施計画の最大のポイントは、須崎ふ頭の再開発だ。都心に直結する90ヘクタールもの敷地全体を現在の港湾・物流エリアからスポーツ施設と住宅に変えてしまうという、約3800億円の大型プロジェクトで、これが実現しないとなると開催計画そのものが揺らいでしまう。(事業スキームと資金計画については20ページからの項目参照)

須崎ふ頭を含めた都心部ウォーターフロント地区のまちづくりについては、「海と歴史を抱いた文化の都市」「活力あるアジアの拠点都市」などをめざす福岡市にとっては、長年の課題でもあった。

2003年3月に策定された「福岡市 新・基本計画」では、須崎ふ頭などの都心部ウォーターフロント地区は、海の玄関口としての港湾機能の強化やコンベンション機能、業務機能の充実を図るとともに、海に開かれた快適な空間づくりを進めることとされており、また、概ね10年後の福岡都心部の将来像を描く「新・福岡都心構想」(現在策定中)においては、今後のアジアや九州と一層の交流拡大を視野に入れ、「港と街が一体となった海に開かれたまちづくり」に取り組んでいくことなどが議論されている。

「新・福岡都心構想」とは、九州・アジアの新しい交流時代を迎える中で、福岡の都心部が今後も人をひきつける魅力と活力を持ち続けるために、官民共働で新たな都心像を示すものである。この中で目指す都心づくりの方向性としては、「海に開かれた美しい都心」や「人が動き賑わう都心」などを掲げ、その目指すべき都心構造として「港と街が一体となった海に開かれた新たな拠点の展開」や「天神地区と博多駅地区を結ぶ中央回遊軸」などの形成が提案されている。

この新しい都心構造を実現するため、須崎ふ頭などの都心部ウォーターフロント地区については、次のような具体的な構想が描かれようとしている。
●文化・スポーツ・エンターテインメントなどの広域的な集客施設、業務・サービス関連施設の整備など、海に開かれた新たな都心の展開
●国際・国内旅客ターミナルの機能や陸のゲートとしての広域交通機能の拡充等アジアにつながる人の港としての機能強化
●水辺と緑を活かし、親水性や潤い、開放感を感じられる居住環境など海辺を生かした都市空間の創出
●都市高速ランプを始め、交通基盤の整備・改良などによるゲートウエイ機能の充実

今回のオリンピック招致計画の中で構想されている須崎ふ頭地区の「後利用」は、まさにこの新・都心構想と方向性が一致している。新・福岡都心構想策定委員会の座長を務める樗木武氏(福岡アジア都市研究所理事長)は次のように語る。

「須崎ふ頭の物流施設はいずれも老朽化しており近いタイミングで必ずリニューアルが必要となる。今なら香椎パークポートやアイランドシティに移転先が確保できる。加えて須崎ふ頭には遊休地も多い。このタイミングで須崎ふ頭全体のリニューアルを行うことは、海に開かれた福岡市のまちづくりにとって意味を持つ。オリンピック招致を起爆剤として交通問題を含めた都市が抱える課題を解決し、未来のまちづくりへ一歩を踏み出すことの意義を、一人でも多くの市民や企業に理解していただきたい」(宮崎仁士)

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※当ページの内容は、2006年5月21日発行の10号に掲載されたものです。

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