企業、大学、地域の個性を生かした振興戦略づくりへ
2008年7月31日発行の21号より
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大学、企業、地域が一体となった産学官連携による「ヒトづくり」において、福岡/九州の“特性”と“強み”を生かした地域振興策や都市戦略をどのように考えたらいいのだろうか。「ヒトづくり」を真ん中に置いた福岡/九州の未来について考える。
理工系に強みをみせる九州の人材育成事情
九州には約70の大学、約50の短大、そして9つの高専がある。そして、高専以上の理工学系学生の割合は4割を超え、全国平均を上回っている。
九州は理工系の学校が多い地域であり、技術系の人材が豊富に輩出していることも特徴といえる。そして、理工系のなかでも電気工学系の学科が多く、エレクトロニクス産業だけでなく、電子化が進む自動車産業にとっては有望だ。
このように九州に電気工学系学科が多い理由のひとつとして、半導体の生産拠点として「シリコンアイランド」と呼ばれてきた九州の産業構造を反映している点が挙げられる。半導体産業が活発だったことが、九州内の理工系も人材育成を特色付けたといえる。地域性が人材育成に反映する点では、自動車の一大生産地である東海地区が、機械工学を主体となっている状況とは対照的だ。
ハイブリッド車に代表される自動車のエレクトロニクス化において、半導体で発展してきた九州における電気工学系学科の多さは、機械主体の東海地区に本社を構える自動車関連メーカーにとっても魅力的に映るであろう。
動き出す産学官によるヒトづくり
従来、「真理の追究」を掲げる大学と「利潤の追求」を求める企業では、共同研究や共同事業は相容れない面もあった。事実、「大学側は産業界のニーズを掴んでいない」「大学での教育が専門化し過ぎて、モノづくりの即戦力になりえない」と、厳しい声も聞かれた。
しかし、独立法人化を機に自助努力が求められようになった国公立大学、全入時代を迎えて生き残りを掛けた取り組みが必要となった私立大学など、取り巻く環境は大きく変わった。かつて、象牙の塔と揶揄された大学自体もいま、変革が求められている。
北九州市にキャンパスを構える九州工業大学、北九州市立大学、早稲田大学大学院は、日本で初めてとなるバーチャル連携大学院をスタートさせた。北九州市のカー・エレクトロニクスセンターがコーディネートして、学生の企業での派遣教育をはじめ、3大学のテキストや教材を共同開発、さらに相互受講による単位の相互認定などを実現した。
一方、北部九州自動車150万台生産拠点推進構想を掲げる福岡県では、「生産台数150万台」「地元調達率70パーセント」「アジアの最先端拠点」「次世代のクルマ開発拠点」を目指して、金型やめっき、ゴム加工、プラスチック、3次元設計などの技術者人材育成事業を産学官で取り組む。大学、企業、行政によるヒトづくりも本格化しつつある。
シリコンバレーにおける産学連携の取り組み
世界的なIT企業の集積地・シリコンバレーのほぼ中心に位置するスタンフォード大学は、アメリカ屈指の名門校であり、アメリカにおける産学連携の雄としても知られる。
スタンフォード大学では、産学連携を手掛ける専門のコーディネーターの採用などで幅広いネットワークに取り組み、積極的に人材スカウトを進めていく戦略を採る。
スタンフォード大学のダッシャー教授の考えによると、「大学がもつ強みは、人材的なネットワークができている」点を挙げ、ひいてはシリコンバレーの強みにもなっている。そして、産学が連携していく意義について、「大学の研究者は、自分の研究が世の中に役立っているかどうか検証する義務がある」(ダッシャー教授)。
これまでの産学連携においては知的財産をベースにした取り組みが多かった。産学連携における企業と大学とのギャップが存在したのも事実だ。今後において、ヒトを介した産学連携、あるいはヒトづくりをベースとした産学連携が、より重要になってくるのではないだろうか。
ヒトを中心とした地域振興を考える
「せっかく育てた人材が中央の大手企業に就職してしまい、地元に根付かない」―――。難関大学の理工系学生らの就職先に象徴されるように、優秀な学生の多くが中央の大手企業や研究所へ流出していることを危惧する声は長年聞かれてきた。優秀な学生が域外へ流出してしまう原因は、地元・九州で「受け皿」となる企業や研究機関が少ないという状況にある。
たしかに受け皿づくりとして、九州大学学術研究都市や北九州学術研究都市、ソフトリサーチパークをはじめとするシーサイドももちなどがあるものの、まだ不十分といえる。
全国の地方自治体のなかには工場や企業誘致でなく、研究機関の誘致に先鞭をつけて取り組んでいるところもあるだけに地元でも産学官の連携による誘致に力を入れていく必要がある。また、地元大学の教員採用においても、国内外で評価の高いユニークな人物を積極的にスカウトしていくことは、重要な戦略といえる。そして、大学の集積を生かして、大学と企業、そして市民とが接点を持てる場を行政が整備していくべきではなかろうか。
ヒトがヒトを呼び、ヒトの集積はヒトづくりにも寄与していく―――。将来を見据えたヒトづくりにおいては、仕組みだけでなく、いかにユニークな人材を集める魅力づくり、個性的なヒトが集まる場づくりは重要だ。人材育成に留まらず、都市や地域の振興を考える上で重要なポイントになるのではないだろうか。(近藤益弘)
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※当ページの内容は、2008年7月31日発行の21号に掲載されたものです。




