アイランドシティでの新しいまちづくりの試み
2005年8月15日発行の創刊6号より
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「アイランド花どんたく」の幕開けは、一般市民にとって、アイランドシティに足を踏み入れる、はじめての一歩となる。アイランド花どんたくとともに照葉のまちもいよいよ本格的にまちびらきをする。
アイランドシティを会場に花どんたく開催
『はじまる、花と緑の幸せ物語 ―風・博多からアジアへ―』の開催テーマで、アイランドシティ中央公園を会場に第22回全国都市緑化フェア(愛称・アイランド花どんたく)が開催する。全国都市緑化フェアとは、建設省(現国土交通省)の呼びかけで83年から毎年、都道府県および政令指定都市で開催されている催しだ。福岡県内では、91年の北九州市・響灘緑地で催されて以来、2回目の開催となる。
会場となるアイランドシティ中央公園(愛称・グリッピの森)および周辺地区24ヘクタールの敷地を1000種類・150万株の花と緑で埋め尽くし、9月9日から11月20日までの73日間の会期で100万人の入場者を見込む。
このアイランド花どんたくの目玉のひとつは、世界初の「青いバラ」の展示だ。英語でBLUE ROSE(青いバラ)とは、「実現不可能」「ありえないもの」「できない相談」を意味しており、これまで存在しない花だと考えられていた。しかし、この青いバラをサントリーが、オーストラリアのバイオベンチャー企業フロリジン社と提携し、14年の歳月をかけ、最先端のバイオテクノロジーである遺伝子組み換え技術で青色色素が花びらにある正真正銘の「青いバラ」の誕生に成功した。青いバラは会期中、大阪にあるサントリーの研究所から随時取り寄せ、テーマ館に切花にして展示する。
花と緑をテーマに多彩な催し
《花・緑のめぐみ》に関する展示をしていくテーマ館では、「エミール・ガレ展」、「植物画世界の至宝展」、「九州古陶磁・花と緑の名品展」も開催する。
アール・ヌーヴォーの華・エミール・ガレ展では、19世紀後半のフランスにおいて、アール・ヌーヴォー芸術の巨匠といわれ、植物をあしらったガラス工芸品を数多く製作したエミール・ガレの作品を紹介していく。没後100年にあたる今年開かれる展示会は、福岡市では初めての開催となる。
500年の大系「植物画世界の至宝展」は、エリザベス女王が総裁を務める英国王立園芸協会が所蔵する2万数千点におよぶ植物画のなかから、16世紀の植物図譜をはじめとする厳選された作品を体系的に見ることができる。今回の展示作品のなかには、英国本国でも閲覧が困難な作品も含まれており、このような展示会が開催されるのは、日本初だ。
一方、田中丸コレクション「九州古陶磁・花と緑の名品展」では、陶磁のふるさとでもある九州の伊万里、唐津をはじめとする古陶磁の名作の数々を楽しむことができる。財団法人田中丸コレクションの所有する400点もの収集作のなかでも「花と緑」のテーマで選ばれた43点を紹介する。
幻の花・ハカタユリを復活展示
自然環境に配慮したかたちで誕生したアイランドシティを会場とするアイランド花どんたくでは、幻の花といわれるハカタユリを復活展示する。
鎌倉時代に中国から渡来したといわれているハカタユリは、日本とアジアとの交流を物語る花のひとつといえる。咲き始めの花は黄色で、その後少しずつ白っぽくなり、花の外側に薄い紫の筋ができ、上品な芳香が特徴といわれている。しかし、ハカタユリはウイルスに弱く、絶滅寸前だったが、今回復活に向けての取り組みが実を結び、展示にこぎつけた。
これらの催しや展示以外にもテーマ館では、姉妹都市であるマレーシア・イポー市から貴重なランの出展があるほか、「世界の都市と花・緑」をテーマに国内外における花と緑の先進都市に暮らす人々の姿や文化を映像やパネルで紹介する。来場者は緑の大切さや環境と共生することの意味を学ぶことができる。
アイランド花どんたく会場のほぼ中央部にはアジアンタウンを設け、アジア各国の「食」や「物販」を楽しむことができるにぎわいの空間を演出している。また、一流のフラワーデザイナーや愛好家らによる花と緑の作品を楽しむことができる花の美術館、立体映像や実物で体験学習ができるこども夢未来館などもある。
環境と一体となったユニークなぐりんぐりん
アイランド花どんたくのテーマ館となっているのが、グリッピの森の中核施設である「ぐりんぐりん」だ。
世界的に有名な建築家・伊東豊雄氏の設計によるぐりんぐりんは、らせん状のうねりで一面を緑で覆い、屋上にも花や木、芝生が植えられなど、地面と建物が一体となったユニークな構造物だ。屋上庭園のある「緑の建築」ともいえ、花や緑に彩られた建物の屋上は、散策できる小道や花壇なども設けられている。
ぐりんぐりん自体は鉄筋コンクリート造で、形態解析手法と呼ばれるユニークな設計を用いた自由曲面シェル構造となっている。ぐりんぐりんは、建築面積にして5162平方メートルの規模で、建物内部に柱が一本もなく、広々とした空間をつくり出している。
このぐりんぐりんは、グリッピの森の建築物として独立した存在ではなく、周りのランドスケープと一体になっており、環境とも共生したユニークなデザインだ。
アイランド花どんたくの終了後も、ぐりんぐりんはグリッピの森の中核施設として、屋内緑化やアジアについて学べる体験学習施設、多目的ギャラリー、ワークショップコーナー、緑の相談所などを備える建物として活用される。ユニークなぐりんぐりんをはじめ、グリッピの森の15・6ヘクタールの敷地には、福岡市の姉妹関係にある各都市による国際交流庭園、公園内外に植栽する樹木を育てる圃場であるグリーナリー、汐入の池、多目的広場などがある。
なかでもグリッピの森にある1・25ヘクタールの大規模な池は、雨水循環・生物ろ過システムを採用している。水量にして約5800トンの池水は、雨水のリサイクルでまかなって、市民が憩える親水空間をつくりだしている。
市民が自然を楽しみ、環境と共生していく空間であるグリッピの森の基本計画については、コンペ形式による採択で採用している。基本計画は、指名プロポーザル形式と設計コンペ形式による2段階選抜方式で選考した。応募があった23グループから5グループに絞り込み、そして、総合設計研究所・伊東豊雄建築設計事務所から提案があったコンセプト「拡がる波紋/緑の環」が最優秀案に選ばれた。
再利用可能な再生レンガ住宅も登場
アイランド花どんたくの会場の一角にたたずむおしゃれなレンガ造りの2階建ての建物が来場者の目をひく。
一見すると普通のレンガ住宅にみえる建物が、九州大学21世紀COEプログラム「循環型住空間システムの構築」が研究フィールドとして活用している。
世界的な研究拠点をつくることを目的に文部科学省が重点的に支援していく21世紀COEプロジェクトで、機械・土木・建築・その他の工学系において採択されたのが、この循環型住空間システムの構築だ。
循環型住空間システムの一環として、松藤泰典・九州大学名誉教授率いるSORTプロジェクト「スループットを最大化する住空間システム」により建築された実験住宅は、石炭灰を混入した再生レンガを用いている。さらに通常のレンガ造りでは、モルタルセメントで接着するのに対して、この再生レンガ住宅では、ボルトでつなぎ合わせ、鉄板で固定して積み上げていることが特色となっている。

循環型住空間システムにおける再生レンガ住宅のメリットのひとつとして、長寿命化が挙げられる。再生レンガ住宅の寿命としては50年を想定し、将来的には100年を目標に研究開発に取り組む。また、ボルトでつなぎ合わせ、鉄板で固定して積み上げて、建築していく再生レンガ住宅では100パーセント近い再利用が可能となる。
一方、レンガ自体の高い断熱性に加え、再生レンガ住宅では、構造上において内壁・外壁の二層となるのを生かし、通気性、断熱性を高めた省エネ住宅としての側面もある。COEの研究チームは、この実験住宅に対して、燃料電池システムを導入して、そのエネルギー効率を実測している。また、地中熱を利用した空調システムを導入して、ヒートアイランド現象の緩和を目指し、取り組んでいる。
九州大学21世紀COEプログラム循環型住空間システムの拠点リーダーである川瀬博・九州大学人間環境研究院教授は、「建物自体もライフサイクルの視点で捉えることが重要であり、環境への負荷を最小限にし、豊かさを最大限にしていく“スループット”を方程式として導き出していきたい」と、環境にやさしい住まいづくりの実用化に向けて、あらたな夢を膨らませる。
アイランドシティ・照葉のまちづくりが動き出す
今回のアイランド花どんたくの開催に合わせて、会場の陸側に隣接するエリアにおいて、アイランドシティ「照葉まちびらきフェア」が幕開けする。
アイランドシティ住宅開発事業では、福岡市住宅供給公社と博多港開発による事業コンペの結果、積水ハウスを中核とする企業連合の提案が採択された。採択された開発理念では、「『照葉のまちづくり』として、自然環境と共生する『緑の島』を実現する」ことを謳っている。計画にあたっては、「環境共生」「健康」「子ども」をキーワードに「みんなで関わる」まちづくりをコンセプトとして挙げている。
『照葉のまちづくり』として、積水ハウスを中核とする企業連合が取り組むのは、事業面積で18ヘクタール、総事業費として約500億円を投じて、2011年度までの事業期間で、総戸数1514戸(戸建住宅236戸、集合住宅1178戸、賃貸住宅100戸)の住宅供給を計画している。
『海の上の森に暮らそう』―――、照葉のまちづくりでは、緑豊かな住宅環境の実現を目指す。事実、アイランドシティ環境配慮指針にもとづき、集合住宅地内における緑地の割合は30パーセント以上となっている。通常の集合住宅は10パーセント前後が平均であり、特に今回のまちびらきフェアが開催されるエリアでは、「照葉の森(仮称)」も含めると、緑地率は実に60パーセントにも達するほどだ。
さらに照葉のまちのシンボルとなる、外周3メートル以上の幹をもつ大きな楠木が、照葉のまちの中心部にどっしりと根をおろしている。文字通り、アイランドシティの「鎮守の森」ともいえる趣だ。
「自然、健康、子どもをキーワードにみんなが関わっていく」をモットーとする照葉のまちでは、まちづくりの視点から集合住宅と戸建住宅を合わせたひとつの管理組織として、住民が主体的に取り組んでいく。
また、照葉まちづくり協会(TCA)を発足させる。緑の管理や安全・安心をテーマにした住まいづくりに加えて、24時間警備員がまちに常駐するなど、タウンセキュリティ面にも力を入れていく。アイランドシティでは、居住人口は約1万8000人、住宅供給戸数は約6000戸、就業人口2万2000人を想定しており、その第一歩である照葉のまちづくりが、いよいよ本格的に動き出す。
「公園のなかにまちをつくる」という逆転の発想
「従来の住宅地開発では居住区画を優先して、残った場所に公園を設けていた。これからのまちづくりは、公園のなかに居住空間として住宅を建てるという、ランドスケープとしてのまちづくりの発想が求められる」。九州大学大学院人間環境学研究院助教授であり、弊誌『フォーラム福岡』編集委員でもある出口敦氏は、こう指摘する。
これまでの住宅開発において、尊重されてきた田園都市というスタイルは、19世紀末にイギリスのエベネザー・ハワードが唱えた「ガーデンシティ(田園都市)」の考え方にもとづく。この考え方が、全世界に普及し、日本の住宅開発にも大きな影響を与えた。ガーデンは直訳すると、「庭園」となり、人工的な自然を指す。これに対して、同じ自然でもネイチャーは、神が創造した自然となる。この点を踏まえると、ガーデンシティの考え方を推しすすめ、さらにガーデンシティという枠も超えた「公園のなかの住居」という、いわば“逆転の発想”も、これからのまちづくりでは注目される。
ガーデンからネイチャーへ、田園都市から公園都市へ―――。環境と共生したまちづくりを追及すると、公園のなかの居住空間という発想にも行き着く。田園都市としてつくられた人工的な自然であるガーデンが長い年月を経て、周囲の自然環境とも溶け込み、ネイチャーとなって、文字どおり自然に息づく都市の事例としては、前述のボストン市が挙げられる。100年前に建設されたボストン市は、いま自然と共生したまちづくりが根付いた都市のひとつといえる。
ボストン市の例を見るまでもなく、都市自体が、いわば、ひとつの生きものであり、生態として常に変化していくといえる。そのため、都市としての完成はありえない。行政的な考え方では、「つくったら、終わり」となりがちだが、まちづくりに関しては、「まちを育てる」という発想が重要だ。まちを育てる主役は、そこに暮らす住民であり、彼らによる主体的な取り組みと積極的に参画できる仕組みが必要となる。( 近 藤 益 弘 )
「アイランドシティでの新しいまちづくりの試み」に対する皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
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