今秋に誕生する二つの新しいまち
2005年8月15日発行の創刊6号より
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「九州大学学術研究都市」と「アイランドシティ・照葉のまち」、二つの新しいまちが福岡に誕生する。環境を重視した、まちづくりに取り組む「九州大学学術研究都市」と「アイランドシティ・照葉のまち」が環境共生都市づくりへの羅針盤を示す。
陸と海、東と西、環境重視の二つのまちづくり
「陸」と「海」、「東」と「西」――。今年秋、福岡市に新しい二つのまちが誕生する。九州大学のキャンパス移転・統合を契機に動き出す「九州大学学術研究都市」と博多湾東部に浮かぶアイランドシティで産声を上げる「照葉のまち」だ。
福岡市・天神から西へ、車で都市高速を利用すれば、約30分で九州大学学術研究都市にたどりつく。今年10月に開校する九州大学新キャンパスは、現地の自然環境をできるだけ残した方向での開発がすすむ。
一方、天神から東へ、同じく都市高速を使えば、約15分で自然環境に配慮したアイランドシティの住宅開発である照葉のまちが顔をみせる。アイランドシティを自然と共生する「水と緑の島」とし、新しい世紀における創造的なモデルとなる実験都市が、この照葉のまちだ。
古来、海に開かれた博多・福岡は、『魏志倭人伝』にも登場する伊都国をはじめとする古代国家群、平清盛が築いた日本最初の人工島である「袖の湊」、繁栄を誇った中世の自治都市・博多、太閤町割などの歴史を経て、今日に至っている。これまでの歴史的な流れを踏まえながら、将来に向けて、自然環境との共生を考えた九州大学学術研究都市とアイランドシティ・照葉のまち、新しいまちづくりが本格的に動き出した。
01年度環境賞を受賞、環境共生の九大学研都市
自然豊かな糸島半島に位置する275ヘクタールの広大な丘陵地に移転・統合する九州大学新キャンパスを中核とするのが、九州大学学術研究都市だ。
知・住・悠の快適空間を形成することをコンセプトとする九州大学学術研究都市は、大きく分けて学術研究都市コアゾーンと自然農業保全・共生ゾーンのふたつからなる。
学術研究都市コアゾーンは九州大学伊都キャンパスと周辺地域に立地し、タウン・オン・キャンパス、市街地形成、地域拠点、田園の各ゾーンから構成されている。一方、自然農業保全・共生ゾーンは、丘陵地・樹林等里山保全と保全・整備の二つのゾーンからなる。
21世紀の新しい学術研究都市にふさわしく、英知を結集して開発にあたる九州大学学術研究都市では、学内外の研究者や専門家によるキャンパス用地の環境分析をはじめ、生態系調査、埋蔵文化財の研究などに汗を流した。調査の結果、課題については検討し、必要に応じて基本計画に反映させた。また、継続的に環境変化を監視していく仕組みづくりにも心砕いている。
このような環境との共生を重視した大学キャンパスの建設プロジェクトについては、土木学会から「大規模開発の範となる画期的、先進的な事例」として高く評価され、開発主体である九州大学と福岡市土地開発公社が2001年度「環境賞」を受賞するに至った。
環境重視の分散型まちづくり
環境重視の姿勢とともに地方分権・地域連携という新しい時代の流れを踏まえ、九州大学学術研究都市では地域の大学と自治体、民間企業が連携して、新しい学術研究都市づくりがすすむ。
既設の筑波研究学園都市はいわば国がつくり、関西文化学術研究都市は関西経済界がつくったと言われるのに対し、九州大学学術研究都市は、産学官が連携してつくっているのが特徴的だ。
緑豊かな自然と古代から歴史に恵まれた糸島半島に立地する九州大学学術研究都市は、自然と調和したスタイルとして分散型立地という新しい開発モデルを提案する。この九州大学学術研究都市づくりは、研究開発型による地域再生プロジェクトという顔も持つ。事実、福岡県・福岡市・前原市・二丈町・志摩町が共同申請した九州大学学術研究都市構想は2005年6月、地域再生本部(本部長・小泉純一郎首相)から地域再生計画として認定されている。
未来志向型を目指す九州大学学術研究都市では、かつての大規模開発に変わる新しいスタイルとして、豊かな自然環境と生活空間を兼ね備えた、分散型地域核・ほたるを提案している。これまでの大規模な「面」的な開発は最小限にとどめ、比較的小規模な開発を分散して手掛ける、「点」的な開発を打ち出す。この環境共生型の地域開発を分散型地域核・ほたると名づけている。
この分散型地域核・ほたるは、国内外からの企業進出、研究開発の現場からの起業家創出、新産業形成などのユニークな取り組みの拠点として期待されている。九州大学学術研究都市構想では、一部移転開始から20年経過した2025年において、人口で5万人増の20万人、工業出荷額で1350億円増の2870億円、卸売小売出荷額で1500億円増の3000億円、企業誘致・創出を200社、雇用創出2200人という経済的・社会的な波及効果を見込む。
環境配慮のアイランドシティ・照葉のまち
日本初の人工島「袖の湊」の現代版ともいえるアイランドシティは、地下鉄七隈線における建設工事で発生した土砂や博多湾の港湾機能を高めるために必要な大水深の航路整備でしゅんせつした土砂などを活用して、博多湾東部に誕生した。
当初は、陸続きの埋立て方式で構想していたが、渡り鳥の渡来地として知られる和白干潟の保護のため、人工島方式に変更した経緯がある。この人工島方式によって生み出された約401ヘクタールの空間は、国際物流拠点としての港湾整備である「みなとづくり」と、高品質な居住環境や新しい産業集積拠点の形成する「まちづくり」の大きく二つにわけることができる。
約192ヘクタールにおよぶ、まちづくりエリアは住宅ゾーンと複合・交流ゾーンからなる。アイランドシティ住宅開発事業に際しては、福岡市住宅供給公社と博多港開発が実施した事業開発コンペの結果、積水ハウスをはじめとする企業連合体の案が採択された。
採択されたアイランドシティの開発理念では、「照葉のまちづくり」として自然環境と共生する「水と緑の島」を実現することを謳っている。計画にあたっての4つのコンセプトとして、「環境共生」のまちづくり、「健康」デザインのまちづくり、「子ども」を中心としたまちづくり、「みんなで関わる」まちづくりを挙げる。
豊かな自然のなかで、子どもたちも健康的に育つ環境の下、住民が主体となって、まちづくりに参画していく仕組みの実現が求められるだけにアイランドシティにおける試みには今後、注目される。(近藤益弘)
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※当ページの内容は、2005年8月15日発行の創刊6号に掲載されたものです。



