フォーラム福岡

福岡の未来を決める 新「福岡空港」アイランドシティ

「にぎわいの場」・センター地区を設定、あらたに船出するアイランドシティ

2007年12月1日発行の17号より

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福岡市の「アイランドシティ整備事業及び市立病院統合移転事業検証・検討結果報告」が9月に出された。事業計画の度重なる見直しに、〈負〉のイメージとともに語られがちだった開発だが、今回の検証・検討の結果、新たな市民の財産としての明るい方向性が打ち出せたのだろうか?

港湾・住宅・教育の整備が進むアイランドシティ

アイランドシティ整備事業は、博多港の港湾機能強化を目的に、航路整備で生じた浚渫土砂などを活用して1994年に着手した。全401ヘクタールの約62%の埋め立てが完了している。

大きく「みなとづくり」エリア(209・5ヘクタール)と「まちづくりエリア」(191・8ヘクタール)に分かれている。「みなとづくりエリア」では、2003年に国際コンテナターミナルが一部供用開始し、「上海〜博多高速貨物船(RORO船)」が就航した。06年8月から水深15メートルの国際コンテナターミナル事業に着手、2010年度から順次供用する予定だ。

一方、「まちづくりエリア」では、「照葉のまち」住宅への入居が05年度からスタートした。07年4月には照葉小学校が開校、08年には中学校も開校予定で、市立初の小中連携校として注目されている。また、07年4月には「サイバー大学」が開学、6月には「福岡ビジネス創造センター」がオープンした。

難産続きだったアイランドシティ事業の軌跡

こう見てくると、まさに、新しい国際港湾と先進的な都市づくりが着々と進行しているようだが、これは、ヤフードーム100個分に相当する全401ヘクタール、博多駅から天神までがすっぽりと入る規模のアイランドシティのごく一部に過ぎない。

もともと、「みなとづくりエリア」は南側6・1ヘクタールが国の工区であり、残る203・4ヘクタールが市の1〜4工区、「まちづくりエリア」は博多港開発が担当することになっていた。

ところが、01年にアイランドシティ事業の進捗を危ぶむ一部銀行団が博多港開発への新規融資を停止した。市が緊急融資や増資などの新事業計画を策定したが、土地の売却が思うように進まない中で、04年度には「まちづくりエリア」の北半分約94・6ヘクタールの埋立権を福岡市が譲り受け、直轄工区(市5工区)とした。その間、ケヤキ・庭石事件が発覚し、アイランドシティには〈負〉のイメージがつきまとうことになった。

多様な都市機能でまちの熟成を図る

アイランドシティ整備事業の見直しは、昨年の市長選での吉田宏市長の公約にもとづく。今年4月に、検証・検討チームがスタート、6月の中間報告で進捗状況と経過を振り返り、課題をリストアップした。9月の結果報告で一定の結論と方向性を示した格好だ。


福岡市総務企画局アイランドシティ事業検討担当 光山裕朗課長

「アイランドシティに、市民の理解が得られていない。市民への情報提供が少なかったという問題をまず前提として、見直し作業はスタート。できる限りの情報を提供しながら、市民意見の募集やアンケート調査、市民説明会などを経て、まとめあげた」と、福岡市総務企画局アイランドシティ事業検討担当の光山裕朗課長は言う。

検証・検討結果報告では、まず、「まちづくりエリア」の将来像として「環境共生を実感できるまち」「多様な都市機能と良質な住環境が共存する交流のまち」「多彩な人々が学び、新たな産業を創出するまち」の3つのまちの姿を提示する。この中で、新たに打ち出されたのが「多様な都市機能」だ。これに対応するように、エリア中心部にあった「アジアビジネスゾーン」を取り払い、新たに広域から人が集まる「にぎわいとふれあいの場」の形成にして、まちの拠点性や魅力を向上させる「センター地区」を設定している。


アイランドシティは、福岡市都心部に匹敵する規模となる

もともと、「アジアビジネスゾーン」では、中国をはじめとするアジアからの企業誘致を目指していたのだが、現在のアイランドシティの立地環境ではビジネス街の構想は困難と判断した。そこで、商業・業務機能や交通拠点機能、文化芸術・科学技術の創造交流機能などの新たな都市機能の重点的な誘導を図り、福岡市東部地域の新たな都市拠点の形成を目指そうとする。

民活によるまちづくりの熟成を図る

「既に、照葉のまちでは良好な住環境が形成され、小学校も開校したが、次のステップに企業誘致とは、なかなか一足飛びにいかない。にぎわいが生まれ、経済活動が高まると利便性も高まり、まちが熟成することで交通アクセスも充実して、企業が進出しやすい環境が高まる」(光山課長)。

すなわち、住環境が先行したまちへ新たに集客ゾーン=センター地区を設定することで、企業誘致を図ろうというものだ。また、アイランドシティの〈負〉のイメージを払拭するには、実際にまちに来てもらうことから始まるという狙いもある。島外から人が集まる「にぎわいの場」が、アイランドシティのイメージを変え、そこに集う人たちが、さらにプラスの情報を発信して、まちの熟成を狙いとした構想だ。

このセンター地区構想について、まちづくりにノウハウを持つ民間事業者に開発計画の提案を公募していく。これまで一定の区画ごとに民間の進出を募っていたが、まとまりのある規模での民間開発の誘導によって、魅力ある良質なまちの早期形成を図る計画だ。

また、同地区への民間企業の誘致を促すために、立地交付金の拡充や用途地域の変更を実施する。新たに事業用定期借地制度も導入して土地保有リスクの低減も図り、不動産証券化にも柔軟に対応することにした。

自動車道での交通アクセス整備を優先

まちづくりエリア」では、「センター地区」のほか、周辺の和白干潟などエコパークゾーンと一体となった野鳥公園整備構想を掲げ、「新産業・研究開発ゾーン」として、健康・医療・福祉分野、IT・ロボットなどの知識創造型産業や自動車関連分野の研究開発機能などの企業立地促進もうたっている。

交通基盤の整備に関しては、国際海上コンテナの取扱貨物量の増加、市2工区への移転が決まった青果市場の立地などを含めた将来推計にもとづき、自動車交通を優先した。

具体策として、都市高速・香椎浜ランプ付近から香椎パークポートを経てアイランドシティに接続する自動車専用道路の検討に着手する。一方、鉄道は福岡市東部地区の全体的な交通ネットワークの中で長期的に対応することにしている。

〈SHOW ASIA〉、「アジアを見せる」


九州産業大学 落合太郎教授

「アジアビジネスゾーン」に変わるセンター地区の設定、「多様な都市機能」という将来像で幅が広がった観がある今回の結果報告について、九州産業大学の落合太郎教授は、「アジアのキーワードを見出せる」と一定の評価を下す。しかし、一方では「全体的に、ももち地区の開発の成功体験に引きずられて、二番煎じ的な、矮小化された印象が残る」とも言う。

「福岡市のアジアゲートウェイ構想の中で、アイランドシティは外国に開かれた港を持つ地区。まさに、ひとつの出島のようなダイナミズムを持って情報が蓄積する。アジアというキーワードで何ができるのかを原点に返って考えていくことが必要ではないか」。それを落合教授は〈SHOW ASIA〉、「アジアを見せる」という言葉で強調する。そこに行けばアジアの何かがわかる。そこにしかないアジアが見えるまち。そんなイメージだろうか。良好な住宅ゾーンが形成され、中央公園という憩いの空間も生まれた。だが、「日常とはひと味違う、異次元のまちづくりの可能性を真剣に考えるべきではないか」と落合教授は提起する。

「こども病院」はアイランドシティへ単独移転

今回の検証・検討結果報告では、「こども病院・感染症センター」と「市民病院」の統合移転について、「こども病院」に周産期医療を加えて、単独でアイランドシティに移転するとした。

これに対して落合教授は、各移転候補地の評価項目の立て方自体が、患者主体になっておらず、アイランドシティにとって有利になっていると検討手法を批判する。「引っ越しの種地となる仮ビルを近くに設け、現地建て替えで成功した東京大手町の再開発手法が参考になる。病院は患者にとって立地が何より大切だ。他病院等の再開発ニーズと併せ鑑みる発想で福岡でも種地が見つかる。一時的なコストと長期的視点の利便性をどう考えるかが根本的な問題だ。現地建て替えを除外して考えるのは短絡的ではないか」と疑問を呈する。

この検証・検討結果報告については、既に市民意見募集をとりまとめており、最終結論が11月に出される運びだ。吉田市長は、アイランドシティ事業の見直しについて、「決して事業の中止・凍結ではなく、土地を有効活用し、市民の財産とするためにまちづくりを進める方策」と強調する。「センター地区」の中身など、まだ漠として全体の「顔」が見えてこないアイランドシティだが、真に市民の財産となるかどうかは、事業のこれからの進み方にかかっている。(永島順子)

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※当ページの内容は、2007年12月1日発行の17号に掲載されたものです。

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