世界の港湾動向に取り残された日本の港湾
2008年10月1日発行の22号より
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四方を海に囲まれた日本は、物資や貨物のほとんどを海上輸送に頼っている。経済大国であり、貿易国でもある故に日本の海上輸送量は多いにも関わらず、日本の港湾は、アジアの巨大港湾の後塵を拝している。なぜ、このような事態になってしまったのか。
日本への海外物資の99・7%は船で運ばれる
資源に乏しい日本は、原油・石炭・天然ガスなどのエネルギーの9割以上、そして小麦やトウモロコシなどの食料も6割以上を海外からの輸入に依存している。
四方を海に囲まれた日本はエネルギーや食料などの輸入に加え、自動車をはじめとする工業製品などの輸出を合わせると、重量ベースで99・7%を海上輸送に頼っている。
日本の海上貿易量については、財務省貿易統計によると、2007年は9億6406万tにのぼる。このうち、1億5022万tは鉄鋼や機械類、自動車、電気製品などの輸出であり、残り8億1384万tは原油や鉄鉱石、石炭、穀物などの輸入だった。輸入した原材料を国内で加工し、製品として輸出していく貿易構造を反映して、重量ベースでは輸入に偏っている。金額ベースでみると、輸出額が55兆2984億円、輸入額が52兆2557億円と、貿易収支では3兆427億円の貿易黒字を計上している。
上位5港に集中する国内のコンテナ輸送事情
香椎パークポートコンテナターミナル
海上輸送には、鉄鉱石や穀物などの物資をバラ積みのまま運ぶバルク輸送とコンテナを用いて運ぶコンテナ輸送がある。日本に輸入される雑貨のうち、9割以上はコンテナを利用して輸送されている。
海陸における一貫輸送と港湾での荷役時間の短縮を実現したコンテナは、海上輸送において「20世紀最大の物流革命」と称されることが多い。コンテナのサイズに関する世界標準規格として、長さ20フィート(6m)と同40フィート(12m)の2種類がある。このため、コンテナの数量としては20フィート・コンテナ(Twenty-foot Equivalent Units)に換算して個数(TEU)を数えることが多い。
日本国内において、外国貿易における国際コンテナを取り扱う港は2007年12月時点で64港あり、昨年1年間の取扱個数は1716万個(TEU、以下同)だった。東京港(372万個)をトップに横浜港(318万個)、名古屋港(263万個)、神戸港(201万個)、大阪港(197万個)に次いで、第6位が博多港だ。しかし、上位との差は大きく、日本における国際コンテナ貨物の取扱量は上位5港に集中しているのが実情だ。
昨年、世界の海上輸送は75億t
一体、世界中では、1年間にどれだけの物資が海を使って運ばれているのだろうか?
世界の海上輸送統計をまとめたFearnleys社刊「REVIEW2007」によると、昨年の海上輸送量は、過去最高となる75億7200万tだった。
このうち、もっとも多かったのは石油(原油および石油製品)で全体の3分の1近くを占めている。次いで、鉄鉱石、石炭、穀物と続き、これら3品目は全体の4分の1強に匹敵する数量だ。そして、これら海上で輸送される物資は、最近5年間で2割強も増えるなど、順調な伸びをみせている。
世界のコンテナ輸送で半分を占めるアジア
一方、世界で海上輸送されたコンテナの総数については、日本港湾協会の資料によると、2005年は8353万個(TEU、以下同)だった。
このうちの21%となる1833万個強をアジアと北アメリカを結ぶ太平洋航路が占めた。一方、アジアとヨーロッパをつなぐ欧州航路は17%強となる1435万個強を記録した。さらにアジア域内は15%強の1263万個強だった。この結果、アジアを基点とする3航路・地域で世界の過半数を占めるに至っている。
1990年から2005年の15年間で、世界のコンテナ貨物は3・5倍強の伸びをみせた。このうち、アメリカ―ヨーロッパは1・6倍しか増えていないのに対して、アジア―ヨーロッパは5倍弱、アジア―アメリカは3・4倍強も増えている。また、アジア域内においても3・6倍強と大きく伸ばした。
日本の1年半分を取り扱うシンガポール港
いまや、多くの日本の企業が、「世界の工場」と呼ばれる中国をはじめ東南アジアに生産拠点を構えている。日本の製造業が生産拠点の海外移転をした結果、産業構造は大きく変化し、物流そのものも変貌した。
1980年当時、世界のコンテナ取扱個数ランキングは、ニューヨーク・ニュージャージー港(アメリカ)、ロッテルダム港(オランダ)、香港港(香港)、神戸港(日本)の順番だった。
その後、アジアで増え始めたコンテナを取り扱うため、1990年代以降にアジア各国は国を挙げて港湾の整備や拡充、さらにコストダウンや企業誘致などに熱心に乗り出し、猛烈な追い上げをみせる。
そして、2006年にはシンガポール港(シンガポール)が、コンテナ取扱個数でトップに躍り出た。そのシンガポール港の年間取扱個数である2479万個は、実に日本全国における総コンテナ量の1年半分に相当する数量だ。
伸長著しい中国・上海港
以下、香港港、上海港(中国)、深 港(中国)、釜山港(韓国)、高雄(台湾)と、東アジアの港湾が続く。そして、かつて日本とアメリカが主役だった太平洋航路は、今や中国・香港をはじめとするアジア諸国が中心を担っている。
なぜ、日本の港湾は負けたのか
世界のコンテナランキングに象徴されるようにアジアの港湾が躍進したのに対して、日本の港湾はベスト10から完全に脱落してしまった。
2006年のランキングでは、23位に東京港、27位に横浜港と、辛うじてベスト30位に留まっている状況だ。かつて、1970年代にコンテナ取扱個数で世界一に輝いたこともある神戸港は、阪神・淡路大震災で壊滅的なダメージを被ったこともあり、38位まで転落している。
日本の輸出入は世界的にみて多いにも関わらず、港湾に関してみれば、大きく水を空けられた状況だ。なぜ、このような結果になったのか?
ひとつにはコンテナ海運における、流れの変化が挙げられる。かつて、日本の地方港から積み出される海外向け貨物は、横浜港や神戸港などにいったん集められ、アメリカやヨーロッパへ船出していた。
韓国・釜山港
しかし、日本の国内輸送費が高いため、現在では日本の地方港からの荷物は横浜港や神戸港に向かわず、韓国・釜山港などの海外の港湾へ運ばれていく。コンテナ設備がある日本の地方港へ韓国・中国などのコンテナ船が寄港してコンテナを集荷、そして釜山港をはじめとするアジアの巨大港へ向かうのだ。そして、そこで大型コンテナ船に積み替えられて、アメリカやヨーロッパへ海上輸送されていく。
拡張するアジアの巨大港 vs 狭くて古い日本の港湾
九州をはじめとする日本の地方港へ韓国・中国などのコンテナ船が就航して、集荷していく例に見られるように近年、急速に取扱高を伸ばしているアジアの巨大港湾では、必死になって荷物を集めている。
これらの港湾では、戦略的に荷揚げ料を安く設定し、土・日を含めた365日・24時間体制で対応している。
さらに港湾機能の効率化に向けた大規模な設備投資として、規模の拡大や最新設備の導入に熱心だ。港湾スペースに十分な余裕があると、荷捌きに滞りがなく、効率よく作業ができる。また、コンテナの積み下ろしに使う専用クレーンも新しい機種ほど、作動スピードが速く、短時間で積み下ろしができ、港湾間競争においても優位となる。
このような世界的な動向のなか、これまで海上輸送の荷物や物資に恵まれていた日本の港湾は、対照的に規模拡大や設備投資に大きく遅れを取った面がある。また、日本の港湾利用料は、釜山港や高雄港などのアジアの巨大港に比べて約3割高いと言われている。さらにターミナルのオープン時間が短いなどの制約が多いことも指摘されてきた。
つまり、狭くて古い施設が多い日本の港湾では、港湾使用料が高い上に、海外港では時間建ての停泊料が日本では日建てになっているなどの不利な面がある。
さらに日本の港湾では、入港するまでの待ち時間の長さに加えて、通関にも時間がかかる。つまり、規模や設備などのハード面だけでなく、運用面においても世界の主要港に後塵を拝する結果となっている。(近藤益弘)
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※当ページの内容は、2008年10月1日発行の22号に掲載されたものです。


