フォーラム福岡

パブリックアクセス誌フォーラム福岡

動き出した、福岡都心における都市再生への潮流

2014年11月30日発行の58号より

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福岡の都心部において、長らく停滞していた機能更新がいま、動き始めている。これまでの行政による容積率緩和に加え、国家戦略特区によって,航空法高さ制限のエリア単位での特例承認が認められた。福岡都心の核である天神、博多駅、ウォーターフロントの各地区における動きを追った。

都心部での機能更新のスピードアップを図る

駅前の一等地に大型ビルが建つ博多駅地区、航空法高さ制限のエリア単位での特例承認が一部認められた天神地区、新展示場を契機に整備が始まるウォーターフロント地区(博多ふ頭・中央ふ頭)――。これら3地区を核に福岡の都心部が再生に向けて動き始めた。「いま正に機運が高まっており、国家戦略特区による規制緩和も生かしながら、都心部の機能更新のスピードアップを図っていきたい」と福岡市都心再生課の町田一彦課長は語る。


左から)福岡市住宅都市局都市づくり推進部都心再生課の光益久美子係長、町田一彦課長、高橋栄治係長

長期的な視点に立った都市の将来像を明確にして、実現に向けた大きな道筋を明らかにしていくのが、都市計画マスタープランだ。福岡市は今年5月、『福岡市都市計画マスタープラン』を改訂し、従来の全体構想と区別構想に加え、新たに地域別構想『都心部編』を設けた。

都心部は、従業員や小売額割合では都市圏全体の約3割を占め、住む人、働く人、訪れる人にとって大事な場所であることに加え,第3次産業が約9割を占める福岡市における活力や創造の源と考える。対象となる都心部は天神、博多駅、博多ふ頭・中央ふ頭を核に、北は博多湾、東は御笠川、南は百年橋通り、西は大正通りに囲まれた約920haだ。都心部は更新期を迎えた民間ビルも多いための開発意欲が高いため、官民連携しながらまちづくりを推進していくことが重要であり,戦略的な指針としてまちづくりに活用していきたいとしている。

博多駅前に日本郵便が大型商業ビルを建設

福岡の都心再生において、先陣を切ったのが博多駅地区だ。JR博多駅の南西側に位置する博多郵便局跡で大型ビルの建設工事が進む。

事業主体の日本郵便は民営化後、東京や札幌、大宮、名古屋の主要駅近くの郵便局跡地等で再開発を手掛ける。今回、博多駅地区で取り組む『博多駅中央街SW計画(仮称)』で建設するビルは地上11階・地下3階(建築基準法上は地上12階・地下4階)の商業ビルだ。同ビルは福岡市の都心部機能更新型容積率特例制度の適用第1号案件で、容積率は従来の800%から1100%に緩和された。

大手小売りの丸井を核店舗とするビルの地上高は約60mで隣接する博多シティと同じ高さだ。福岡空港(標高9・1m)に近い博多駅地区(同4・1m)は航空法上の高さ制限は地上高50mだ。博多シティの建設時に国との協議による個別緩和で、既存ビル上に設けられた避雷針までと同等の地上高約60mが認められた。今回のビル建設でも個別緩和が適用された。


左から)日本郵便商業施設開発室・ビル運営室の立原英樹課長、JR九州事業開発本部開発部の赤木征二担当部長

商業ビルの開発を担当する日本郵便商業施設開発室・ビル運営室の立原英樹課長は、「博多駅前に建つビルとして、多くの方に来ていただき、愛されるビルにしていきたい」と語る。

2016年春、九州最大級のオフィスビルが誕生

SW計画(仮称)で建設するビルの南側、日本郵便の博多郵便局駐車場跡とJR九州所有のビル跡地で両社は地上12階・地下3階の『新博多ビル(仮称)』を共同で建設する。オフィスビルとして九州最大級の同ビルは、地下1階から地上2階までの低層階は商業施設で3階以上はオフィスフロアだ。1階に博多郵便局が入居する新博多ビルの開業は、SW計画(仮称)のビルと同じ2016年春を予定する。

両ビル間は地下通路・貫通道路・回廊デッキという地下・地上・空中の〝三層構造〟で回遊性を高める。中でも2階に設ける回廊デッキは博多交通センター~博多シティ~SW計画(仮称)のビル~新博多ビル(同)を結ぶ。これらの取り組みに福岡市の特例制度が適用され、容積率は1140%に緩和された。また、地上高は隣接ビルと同じ約60mだ。

JR九州でオフィスビル開発プロジェクトを手掛ける赤木征二担当部長は、「南西街区では、関係者が協力しながら、前向きにまちづくりに取り組んでおり、これら先行プロジェクトを起爆剤に都心活性化の一助になれば、非常に嬉しい」と語る。

国家戦略特区で天神地区の高さ制限の特例承認

福岡空港に近い福岡都心部は、航空法に基づいて建物の高さが制限されている。

高さ制限は従来、博多駅地区が地上高50mだ。一方、天神は、空港に近い那珂川付近が地上高65m、空港から離れるほど高くなって天神西通り付近は同75mとなっている。

国家戦略特区に選ばれた福岡市は、『グローバル創業・雇用創出特区』による規制緩和の一環として、建物の高さ制限のエリア単位での特例承認を提案していた。福岡市からの提案を受けて、国土交通省は今年11月、航空法の運用を改善していくことで天神地区の明治通り周辺約17ヘクタールにおいて街区単位で認められる高さの目安を示した。

全国初の適用となるエリアは、東は那珂川、西は天神西通りまでの約700m、南北は明治通りを挟みそれぞれ1街区・約80mの幅を持つ区域だ。

従来でも大型ビルの建設などで高さ制限を超える建物を建てる場合は、周辺に高さ制限を超えた既存建物があれば、その高さを上限に国と個別に協議して緩和されるケースもあったが、今回、高さ制限についてエリア単位で特例的に認められる高さの目安を設定できるようになった。

今後、期待が高まる天神地区での機能更新

明治通り周辺においては、福岡市役所本庁舎(地上高64・5m)の屋上に設置された避雷針の高さである地上高76・1mが最高点だった。この高さを目安に、街区内の他建物についても同76・1mの高さまで建設できるようになった。

明治通り周辺の街区内が、同76・1mへと一律に特例承認を受けられるようになった結果、既存のビルに比べて最大で約10m高、階層で2階分の上積みが可能となった。同街区内には、約100棟の建物があり、このうち半数以上が築40年以上を経過しているとみられる。

福岡市は2008年8月にまちづくりへの取り組み評価などで容積率を緩和する特例措置を設けており、今回、高さ制限の特例承認も加わることで、老朽化で更新期を迎えた都心部の建て替えが促進されることが期待される。福岡市都心再生課は、「エリア単位での承認によって、新たな企業立地などを促す魅力的な環境づくりが可能となった。さらに都心部の機能更新がスピードアップしていくことで、新たなビジネスや価値を生み出す創造的な場づくりを目指していきたい」という。

ウォーターフロントを天神・渡辺通、博多駅周辺に並ぶ第三拠点へ

博多湾から玄界灘を臨む福岡は、国際貿易都市として2000年余の歴史を持つ。博多港の2013年の外国航路船舶乗降人員は約63万3000人で21年連続の日本一だ。外国航路のクルーズ船寄港回数では2010年と2012年に日本一を記録した。また、日本政府観光局(JNTO)がとりまとめた2013年の都市別国際会議開催件数で福岡市は253件を数え、東京に次いで5年連続の2位だ。


福岡市ウォーターフロント再整備推進室 大西信也・調整課長

福岡市は今年9月、中央ふ頭・博多ふ頭で構成するウォーターフロント地区が、〝福岡の顔〟となる都心部の新拠点となることを目指して、『ウォーターフロント地区(中央ふ頭・博多ふ頭)再整備の方向性』を策定した。「ウォーターフロント地区は海の玄関口でもあり、MICEゾーンでもある。ウォーターフロント地区を天神・渡辺通地区、博多駅周辺地区に並ぶ第三の拠点にしていきたい」と、福岡市ウォーターフロント再整備推進室の大西信也調整課長は意欲を示す。

再整備に向けては、まずは短期的な取組みとして、会議場や展示場、新設ホテルで構成する《MICE・賑わいゾーン》、クルーズ船の受け入れ環境を強化する《人流複合ゾーン》など、各地区の特色を出しながら進めていく。

展示場新設で直接効果200億円・波及効果500億円


福岡市観光コンベンション部 冨田久仁彦・課長

現在、マリンメッセ福岡(展示面積約8000㎡)や福岡国際センター(同3500㎡)は稼働率が高く、年間で約50件程度を断っており、経済的な機会損失は約190億円に上るという。このため、両施設の中間の規模となる展示面積約5000㎡の第2期展示場を建設する計画だ。

マリンメッセ福岡南側に建設予定の第2期展示場は概算整備費で約45億円を見込む。新設によって、MICE参加者約65万人増を見込み、直接効果で約200億円、経済波及効果で約500億円と弾く。

福岡市観光コンベンション部で第2期展示場整備を担当する冨田久仁彦課長は、「今回行政サイドで第2期展示場などを整備する一方で、今後民間サイドが手掛けていくホテルや飲食・物販店などのにぎわい施設などと一体的に取り組んでいくことで市民に楽しんでもらえる空間づくりを目指す」としている。

事業者・有識者・地域代表らで交通を考える

大型ビルの建設が始まった博多駅地区と今後の機能更新が期待される天神地区を新たに結ぶ福岡市営地下鉄七隈線の天神南~博多の延伸工事が始まった。同区間はわずか1・4kmながら、福岡都心の回遊性を高める上でも期待は大きい。延伸工事の建設費は約450億円(うち福岡市負担分は約340億円)で、2020年度の開業を予定する。

今後、福岡都心の3拠点をはじめ、市内外とのつながりや交通ネットワークはどのように構築されていくのだろうか。

福岡市における交通施策の基本的方針である『福岡市都市交通基本計画』は今年5月に改訂され、都心部や広域拠点・地域拠点を核に公共交通機関や幹線道路で結ぶことで「都市の骨格を形成する総合交通体系の構築」などを打ち出す。今回の改訂は、『福岡市都市計画マスタープラン』などと同じく、2012年12月に策定された福岡市総合計画(福岡市基本構想・第9次福岡市基本計画)の内容を反映させている。


福岡市交通計画課 徳永博行・政策係長

今後も福岡市は、緩やかな人口増加が続く一方で、高齢化の進展や依然厳しい財政状況、交通空白地帯の増大、自動車・自転車の増加などの課題を抱える。

これらの背景を踏まえた具体的な実施計画や個別計画は、交通事業者・有識者・地域代表らで新たに設けた『福岡市総合交通戦略協議会』で検討を進めており、来年3月までに策定する予定だ。福岡市交通計画課の徳永博行・政策係長は、「協議の場でも一緒にやっていこうという機運が出て来ている。みなさんと連携して、協力しながら公共交通を主軸とした交通体系づくりを推進していきたい」と語る。

いま、福岡都心で始まる〝協働のまちづくり〟

今年11月に国家戦略道路占用事業(通称『ストリート・パーティ』)の第1弾が実施された。会場となった天神地区の『新天町メルヘン広場』『きらめき通り』、博多駅地区の『はかた駅前通り』は、飲食提供や音楽・パフォーマンスの実施、アートオブジェ設置などでにぎわいをみせた。

2012年9月、国際会議のレセプション会場として川端商店街が活用されたことがある。今年9月に国の認定を受けて道路占用の要件が緩和されたことで、国際会議などでMICE関連のパーティや歓迎会をはじめ、にぎわい創出に向けたイベントがより開催されやすくなった。

今回の特区認定によって、福岡観光コンベンションビューロー、We Love天神協議会、博多まちづくり推進協議会、御供所まちづくり協議会は福岡市とともに今後、それぞれ認められた通りにおいて、MICEイベントなどを実施していく。「MICE戦略も絡ませながら、にぎわいをつくり出していきたい。個性あるストリート、楽しめるまちを目指す」(福岡市経済観光文化局の吉田宏幸・MICE推進課長)考えだ。

福岡の都心においては、老朽化した建物の更新や交通インフラなどのハード整備だけでなく、民間・市民・行政・有識者らによるソフト面での創意工夫も重ねている。いま、公・民・学の連携による〝協働のまちづくり〟が始まりつつある。(近藤 益弘)

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※当ページの内容は、2014年11月30日発行の58号に掲載されたものです。

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