フォーラム福岡

パブリックアクセス誌フォーラム福岡

地方財政の仕組みは、一体どうなっているのか

2008年5月31日発行の20号より

フォーラム福岡20号特集記事に関するアンケートを実施しております。ご協力いただいた方全員にフォーラム福岡20号をプレゼントいたします。皆様のご意見ご感想を心よりお待ちしております。
こちらのページよりご回答ください。» アンケート回答フォーム

税金の流れを追いながら、国と地方との財政的な関係について見てみる。そして、国と地方を合せた「借金」が1000兆円を超える現実をわれわれはどのように考えたらいいのだろうか。三位一体改革による地方財政の影響を踏まえながら、地方財政の健全化に向けた動きを追う。

税金の流れからみる、この国の財政の仕組み

日本国内で個人・企業が支払っている年間の税金総額は、実に87兆1千億円におよぶ(2005年度)。このうち、所得税や法人税、消費税などの国税が52兆3千億円、住民税や固定資産税などの地方税は34兆8千億円で、国と地方自治体の比率は3対2の割合になっている。

明治維新以来、中央集権制を敷く日本では国と地方とは財政においても密接な関係となっており、国税5税(所得税、酒税、法人税、消費税、たばこ税)の3割強が地方交付税という名目で各地方自治体に配分されている。地方交付税の地方財政に占める割合は大きく、2005年度の配分額である15兆8千億円は、地方自治体の総収入の約2割となっている。地方交付税以外にも国から地方へ、補助金や負担金、委託金などの国庫支出金が交付されている。

国や地方自治体は、使い道が自由な自前の収入以外にも、債券発行による借金である起債や手数料収入などの特定財源で資金を調達している。この結果、住民へのサービス還元である国と地方自治体の歳出総額は150兆6千億円となっている。なお、この歳出総額における国と地方自治体との比率は、2対3と逆転している。

つまり、歳出ベースで地方自治体は国に対して、約1・5倍の仕事をこなしながらも、その歳入は国の3分の2しかない。このような矛盾を補うために地方交付税や国庫支出金などのカタチで国が補填しているといえる。しかし、本来、地方の必要に見合う財源を確保するのが筋道であるだけに、財源移譲を通じて、速やかに地方財政の歳入基盤を確立していくことが大いに求められる。

地方交付税とは何か

日本社会が少子高齢化した結果、高齢者向けをはじめとする社会保障費や扶助費は増える一方だが、少子化に代表される通りに納税人口は将来的に減少する。将来的に国や地方自治体の支出である歳出は増加の一途なのに対して、肝心な収入である歳入はこのままでは長期的に先細りしていく一方だ。

その上、地方財政を直撃している要因のひとつが、歳入の約2割を担っている地方交付税の減少だ。2003年時点での福岡県で3873億円あった地方交付税等は、2008年時点で3260億円と、15パーセント余りも減っている。同じく福岡市においても631億円あった地方交付税は、395億円と4割近くも削減されている。

そもそも、最近よく耳にする地方交付税とは、何だろうか。この質問に対して、九州経済調査協会で地方財政を研究する八尋和郎情報研究部長は、「地方自治体間における税源の偏りを調整して、どの地域においても一定の公共サービスを提供できるように、国が地方税収入の少ない地方自治体に対して交付する資金」と、解説する。

日本各地における経済力の違いは、各都道府県・市町村における税収の格差として反映される。たとえば、日本経済の中心地であり、多くの大手企業の本社が集中する東京都の住民一人あたりの地方税収入は、福岡県の住民一人あたりの約4倍であり、産業に乏しい沖縄県と比べると5倍近い額になる。

このように税収における地域間格差の是正を目的に、地方で徴収した国税の一部配分を通じて、調整していく制度が地方交付税だ。各自治体に交付される地方交付税の金額については、人口や面積、世帯数、道路距離などの様々な係数を算入してのモデル計算によって弾き出された、収入予想額と需要予想額とのマイナス額に対して支払われてきた。

三位一体改革で変わる国庫負担、税源移譲、地方交付税

地方交付税の削減は、三位一体改革に端を発する。三位一体改革とは、「国庫補助負担金の削減」「国から地方への税源移譲」「地方交付税改革」の3つを同時に取り組む地方財政の改革だ。

地方自治体が従来、国に頼っていた地方交付金や国庫補助金などの依存財源を減らす一方で、自主財源である地方税を増やしていくことで、地方財政の自立というのが狙いのひとつといえる。そして、国と地方自治体が財政を健全化させることで、持続可能な財政を実現していく意図もある。

また、財政問題に限らず、政治体制全般から三位一体改革をみてみると「地域のことは地域が決める」という地方自治における本来の姿を実現していくための権限と財源を国から地方に移す「地方分権改革」の一環という見方もできる。

しかし、三位一体改革の初年度にあたる2004年度においては地方への国庫支出金が1兆円強、同じく地方交付税が2兆9千億円の削減がなされた半面、地方への税源移譲は7千億円にも満たなかったために地方自治体は予算が組めない事態に陥り、基金の取り崩しや管理職らの給与カットなどでしのぐところが相次いだ。このような事態に「税源移譲が不十分だ」という声が地方自治体から上がり、改革への不信感が募ってきたため、2007年度から3兆円規模となる地方への税源移譲を実施した。

「借金大国」日本、国・地方で1000兆円突破

国の長期債務は615兆円、地方の長期債務は197兆円―――。昨年12月、財務省の発表による2009年度末時点での国・地方の「借金」は、このとおりに膨大な額となっている。国と地方の長期債務の合算は、両者の重複分34兆円を除いた合計778兆円に達する。そして、国、地方の長期債務をそれぞれの年間税収(地方交付税などの移転後)で割ると、国で実に15年分、地方でも3年半となる規模になっている。

国には、長期債務である普通国債・借入金・交付国債などの他に中・短期債務となる財投債(140兆円、2007年度末)、政府短期証券(108兆円、同)、政府保証債務(47兆円、同)が合計295兆円もあり、国・地方全体の借金は1000兆円を突破している。

もっとも、地下鉄や道路、橋、上・下水道などの公共財は、世代を越えて長期間にわたって利用していく。このため、起債というカタチでの長期間にわたる借金は、世代を越えた公平な負担を可能にしているという側面もある。ただし、将来においても負担する額が大きすぎると、問題になる。

G7における長期債務の動向と日本

元号が平成に変わった1989年時点で国の長期債務は161兆円弱、同じく地方は66兆円だった。この20年の間で国は3・8倍、地方も3倍に膨れ上がったのだ。バブル経済崩壊後の1990年代初頭から2000年代初めにかけての、いわゆる「失われた10年」において、景気対策として国債・地方債を大幅増発したツケが回ってきている状態だ。

一国における行政全般の借金を国内総生産(GDP)に比較した場合、日本は80パーセントを下回る比率だったが、いまでは180パーセントに迫るなど、増加の一途をたどっている。一方、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、イタリアなど、他の先進7カ国(G7)がほぼ横ばいを維持しているのとは対照をなす。

地方財政をガラス張りにする地方財政健全化法

相次ぐ市税や公共料金の引き上げ、公共サービスの切り捨て、市職員の大量削減、留まらない人口流出……。かつて、国内有数の産炭地として盛況を誇っていた北海道夕張市は深刻な財政難に陥り、2007年3月6日に財政再建団体に認定されて、自治体の『財政破たん』が現実となった。

このような財政破たんを未然に防ぐため、実に半世紀ぶりに法改正されて、新たに地方財政健全化法が制定された。従来、一般会計と特別会計からなる普通会計だけがチェック対象だった。しかし、地方財政難の原因は、これまで対象外だった公営企業や公社、第三セクターだったため、地方財政健全化法では、これらもガラス張りにしているのが特色だ。

地方財政健全化法では、財政指標が一定以上の数値になると、「財政健全化計画(イエローカード)」、「財政再生計画(レッドカード)」の策定が義務付けられる。実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債比率、将来負担比率の4指標のうち1つでも一定の基準値を超えると、外部監査や財政健全化計画の策定を義務付けて、該当自治体に改善努力を促す。

さらに将来負担比率を除く3指標がさらに悪化して1つでも基準値を超えると、破たんとみなされて、一部起債を制限するなど国の関与を強める。つまり、冒頭にある夕張市の置かれたのと同じ環境になるのだ。2007年度決算から各自治体には4指標のデータ公表が義務付けられた。

地方財政健全化法にもとづく指標データは、今年秋ごろに公開される予定だ。各地方自治体の財政指標が明らかになると、地域住民の話題と関心を呼びそうだ。しかし、大事なのは数字の良し悪しでなく、数字の背景にある地域がおかれた状況や財政事情を知ることであろう。そのためにも、各地方自治体は、財政指標の意味や財政状況を住民に分かりやすく説明していくことが求められる。このような努力の積み重ねが、住民の地方財政への理解を高め、そして、納税者としての監視意識が強めることも期待される。(近藤益弘) 

フォーラム福岡20号特集記事に関するアンケートを実施しております。ご協力いただいた方全員にフォーラム福岡20号をプレゼントいたします。皆様のご意見ご感想を心よりお待ちしております。
こちらのページよりご回答ください。» アンケート回答フォーム

※当ページの内容は、2008年5月31日発行の20号に掲載されたものです。

<< トップページへ

Copyright © 2005-2008 Forum Fukuoka. All Rights Reserved.

推奨ブラウザ:IE6・NN7・Safari・Firefox