財政リニューアルプランで福岡市債残高2兆円へ
2008年5月31日発行の20号より
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かつて日本一の「元気のあるまち」ともてはやされた福岡市。地下鉄や都市高速が延長され、コンベンション施設も相次いで建設し、アジアと日本を結ぶ国際都市として意気軒昂だった。だが気が付けば一大借金都市になっていた。いま財政健全化へ向けて全力で取り組んでいる。
収入減と借金返済で4年連続の縮減予算
福岡市の2008年度予算は、一般会計、特別会計、企業会計の総額は1兆9113億円。その内訳は、主に税金などを財源として運営し、市民生活に直接かかわりの深い一般会計は6638億円(前年度比1・5%減)。これは政令指定都市の中で大阪、横浜、名古屋、札幌、神戸に次いで6番目の規模になる。国民健康保険事業や港湾整備事業などの特別会計は9542億円。病院経営、下水道事業、高速鉄道事業などの企業会計は2932億円だ。
※実質伸び率がマイナスなのは、補償金免除繰上償還額585億円を除くとマイナスになるため。公的資金補償金免除繰上償還とは、年5%以上の高金利借り入れ金について、補償金が免除された繰上償還で、利子の負担軽減が図られる。(3年間の国の臨時特別措置)
全会計で前年度に比べて802億円、4・4%多い額になっているが、実質伸び率(※)は前年度予算を4・6%下回っている。これで4年連続で前年度を下回るマイナス予算になった。縮小予算を組まなければならない原因は、大ざっぱにいうと市税などの収入(一般財源)が減少傾向にある一方で、借金(市債)の返済や社会保障などの義務的な経費が増加しているため、どうしてもほかの支出(歳出)を抑えなければやっていけないからだ。
収入に関していえば、福岡市の一般財源総額は2004年度までは4000億円を超えていた。2000年度の内訳は市税2514億円に対して地方交付税が819億円。それが国の三位一体改革の影響で地方交付税が大幅に減少され、2007年度は3700億円台に減少している。その内訳は市税2741億円に対して地方交付税は409億円。市税は微増だが、地方交付税はピーク時の半分に減っている。
また財政調整用の3基金(財政調整基金、市債管理基金、庁舎等建設資金積立金)は、ピーク時の1992年度には約942億円の残高があったが、近年では150億円程度の水準に減少している。つまり貯めていた貯金が底をついてきたので、どうしても財布のヒモを引き締めざるを得ない状況になった。
市民1人当たり190万円の借金への不安
2006年度の全会計の市債残高、つまり市の借金は2兆6333億円。これは市民1人あたりにすると政令指定都市の中で大阪市に次いで2番目に多い190万円の借金残高になる。
市は市民の生活に直接かかわりがある2008年度の一般会計予算6638億円について、市の広報紙で次のように説明している。「この額を市の人口で割ってみます。そうして算出された46万4066円(政令指定都市中第5位)という額が市民一人当たりの予算となります。市民一人当たりの予算のうち、9万5514円(構成比20・6%)を保健・医療・福祉に、道路整備や住宅など計画的なまちづくりに7万2901円(同15・7%)を配分。地域経済発展のために6万7468円(同14・5%)、『日本一子育てしやすいまちづくり』を目指し、子どもたちの育成には4万4137円(同9・5%)を計上しました」
しかし1人当たり46万円余の使い道よりも、1人当たり190万円の借金が気になってしかたがない市民も多いだろう。市債残高に対する市民の関心度は年々高まってきている。市が「平成18年度福岡市政に関する信頼度調査」で市の51項目の取り組みについて、その重要度と充足度を調査したら、「市の借金を抑制するなど、財政の健全化を進める」が、最も「重要度」が高く第1位だった。同時に、「充足度」が低い項目においてワースト1であった。このように財政健全化に対する市民ニーズは高まっている。
なぜ、借金が2・6兆円まで膨らんだのか
市債は主に道路整備事業や上下水道事業、地下鉄建設事業などインフラ整備に使われているが、年間の市債発行のピークは2004年度の2255億円(全会計決算ベース)。同年度は市債残高もピークで2兆7092億円もの借金があった。また同年度は返済額(償還元金)もピークで1754億円を返済している。翌2005年度からは、地下鉄3号線の建設事業が終了したため市債発行額も1300億円台と大幅に減少している。
「市債残高がこれほど多くなったのは、1992年ごろから国がバブル崩壊後の景気対策として地方自治体にも積極的な公共事業を推奨してきたことが大きな要因になっている。当市としては近年市債発行額の抑制に努めているものの、これまで国の経済対策などで多額の市債を発行してきたため、元利償還額は大幅に増加している。一般会計だけでみても1992年度は523億円の元利の返済で済んだが、2002年度以降は1000億円を超える水準の返済が必要になる」(福岡市財政調整課・石橋正信課長)
2008年度の一般会計予算でみると市債発行額は530億円と歳入全体の依存度を8%(前年度は8・7%)まで抑えている。依存度のピークは1994年度の18・4%。これと比べると依存度は大幅に低下しており、福岡市が政令指定都市に昇格した1972年の水準に戻った。
しかし、借金返済(公債費)は1022億円(歳出の15・4%)と倍以上になっている。ちなみに1998年度の市債発行額(一般会計決算ベース)は1319億円で、公債費(同)は半分程度の783億円。つまり、これからは借りるお金の倍以上のお金を返していかねばならない時代になる。
これからどうやって借金を返していくのか
福岡市は今年4月、「財政リニューアルプラン」の原案を公表し「プランの最終年度である平成23(2011)年度における一般会計の市債発行額を450〜500億円程度に抑制することを目標として段階的に縮減」という財政健全化目標を掲げた。2008年度の一般会計予算の市債発行額を530億円に抑えたのは、その第一段階である。
仮に2007年度一般会計の市債発行見込額641億円を続けていくとすると、10年後の2018年度の市債残高は全会計で2兆2000億円程度という試算になる。市民1人当たりの借金は155万円超と、10年後でも政令市平均の142万円の水準に達しない。これを450〜500億円に抑えていくと、10年後の市債残高はほぼ2兆円程度に縮減し、市民1人当たりの借金も150万円を下回る水準になるというシュミレーションだ。
「福岡市の一番の弱点は借金。リュックに2・6兆円という重い砂利(借金)を積めて歩いているようなもの。これから山あり谷あり、時にはあらしも来るかも知れない。そのとき砂利を背負っていれば身動きできない。将来世代に過大な負担を残さないためにも早く砂利を捨てて身軽になって、少子高齢化の進展や人口減少社会の到来などの環境変化にも対応できるようにしようというのが財政リニューアルプランです」(財政調整課・石橋課長)
借金を返しながら安定財政を維持するには
「2008年度予算では歳入・歳出の一体的見直しを進めるとともに、資産・債務の圧縮、システム手法の改革などに取り組み、その結果、約109億円の財源を捻出することができ、それを重要施策に回しました」(財政調整課)
しかし今後、一般財源の伸びは期待できないとあっては、努力して捻出する財源にも限界がある。2006年度決算でみると福岡市の義務的経費(人件費、公債費、扶助費)が歳出総額に占める割合は44・8%と政令指定都市の中でも3番目に低い。人件費は11・7%と政令市で一番低いので、今後も大幅に削っていくことは難しいだろう。公債費も市債を発行したときに返済の条件は決まっているので削れない。生活保護費などの扶助費は少子高齢化の進行で、この10年間で1・5倍に拡大、今後も増加していく見通しだ。
学校や市営住宅など市有建造物も、人口急増期の1965年代から1975年代に建てられたものが全体の4割を占め、今後、これらの施設の建て替え時期がくるので、維持更新費用の急増が見込まれる。さらに福岡県西方沖地震の発生により市民の不安は高まっており、小中学校などの公共施設の耐震補強のための費用も加算しなければならない。いずれにしろ、どこを削ってどこを増やすか、来年度以降も苦しい予算編成になることは必至だ。
幸いなことに市財政のプライマリーバランス(公債費を除いた歳出と市債収入を除いた歳入とのバランス)は元利金ベースで8年連続、元金ベースで4年連続の黒字を達成している。また今年4月には国際的格付会社「ムーディーズ・インベスターズサービス」からも高い評価を受けた。国内での格付け「Aa1」は、21段階評価の2番目に高い評価で、地方自治体固有の格付け「BCA:4」は、21段階評価の4番目に高い評価で、名古屋市や静岡県などと同じ格付けになっている。10年前はプライマリーバランスが元金ベースで876億円の赤字だったことを考慮すれば、一応、格付評価はこれまでの市の財政健全化の実績や財政リニューアルプランに基づく新たな取り組みが評価されたと受け取ってよいだろう。(渋田哲也)
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※当ページの内容は、2008年5月31日発行の20号に掲載されたものです。



