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地方財政のABCと福岡県にみる財政状況

2008年5月31日発行の20号より

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一体われわれは、年間どれくらいの税金を負担しているのだろうか。そして、どれだけの公共サービス・公共財を受益しているのだろうか。福岡県2008年度一般会計予算を事例に取り上げながら、「負担」と「受益」との関係を軸に財政の基礎と動向について見てみる。

我々の暮らしと日々の税金との関係

日頃なじみ深い所得税・住民税をはじめ、日々の買い物で加算して支払う消費税、ビールや焼酎・日本酒・ウイスキーに含まれている酒税、国会でも紛糾したガソリン税……。日々の生活のなかで、われわれは実にさまざま税金を支払っている。

日本国内において個人・法人が、2005年度に支払った税金の総額は87兆1千億円にもおよぶ。このうち6割となる52兆3千億円が国に支払った国税であり、残り4割の34兆8千億円が都道府県や市町村などの地方自治体に支払った地方税となっている。

このうち、所得税は、収入が多くなるほど税率が高くなる累進課税であり、住民税は2007年度から比例課税となっている。

日本で年収500万円の夫婦と子ども2人からなる家庭の場合、年間で19万5千円の所得税・住民税を支払っているという。同じく年収700万円の場合は同45万9千円、そして同様に年収1000万円の世帯では同113万5千円となる。

所得税主体の日米vs消費税主体の欧州



税金の構造は、各国によってそれぞれ異なる。

日本やアメリカでは所得税・住民税などの所得に税金を課す所得課税が中心で全体の6割近くを占める。これに対して、ドイツやフランスなどのヨーロッパ大陸の国々では、所得課税より消費税や売上税などに代表されるモノやサービスを消費した際に課税される消費課税が主体となっている。

日本における国民所得に対する、所得税・住民税、消費税、固定資産税、事業税、酒税などの課せられる税金の負担率は25・1パーセントとなっている。この租税負担率の割合は、アメリカよりは高いものの、ドイツに比べるとやや低く、フランス、イギリス、スウェーデンなどの負担率を大きく下回る。

ちなみに租税負担に社会保障負担を加えた日本の負担率は4割を若干切る比率だ。租税負担と社会保障負担との合計額について、他国と比較すると租税負担率と似た傾向がみられる。

公的負担は義務教育9年間で一人あたり790万円

日常的なゴミは指定袋に入れて所定の日時・場所に出すと、ゴミ収集車が無料で引き取ってくれる。事件や事故、火事などが起きた場合、警察や消防は手数料不要で安全を確保してくれる。また、日常的な道路や公園、図書館なども料金を払うことなく利用できる。

ゴミ収集や処理、警察や消防、道路の利用・補修・整備などに代表される日常生活に欠かせない公共サービス、誰でも利用できる小中学校や公園・道路、図書館などの公共財については国や都道府県、市町村が提供している。これらの公共サービスや公共財は誰でも同じように利用でき、ある人が利用したから他の人が同時にできないという性質のものではない。

住民一人あたりのゴミ処理費用は1万8千円(市町村の負担総額2兆3千億円、2004年度)、同じく警察・消防費は4万1千円(国・地方公共団体の負担総額5兆2千億円、同)、医療費の公費負担は8万8千円(同11兆2千億円、同)に上る。

また、公立学校における教育費の年間負担額は、小学生一人あたり84万円、同じく中学生は94万円、同じく高校生は91万円となっている。ちなみに義務教育9年間だけでも総額は790万円となる。

すべての住民にとって必要不可欠な公共サービスや公共財は、国や地方自治体が住民から徴収する「税」のなかに日常的なゴミ収集・警察・消防、一般道路・公園・小中学校などの費用も含まれているといえる。また、公共サービスや公共財を市場経済のメカニズムに任せた場合、採算に合わずに供給されないか、あるいは供給されても誰でも平等に使えなくなる問題が生じることも考えられる。

税金への不満で勃発したアメリカ独立戦争

日頃、我々は意識しないうちに「受益」している公共サービスや公共財について、税金を支払うことで「負担」している。ある意味で、税とは、公共サービス・公共財に対する対価という顔をもつといえる。ただし、この「受益」と「負担」のバランスの取り具合が難しいのも事実だ。

かつて、アメリカ独立戦争が起きたきっかけは、宗主国イギリスが戦費調達のために植民地に課した重税だった。「代表なくして課税なし」をスローガンとするジョージ・ワシントン率いる革命軍が1776年、アメリカ独立宣言を成し遂げた。現在もアメリカでは、税徴集を担当する内国歳入庁(日本の国税庁相当)の建物の入り口に「租税は文明社会の対価である」(オリバー・ウェンデル・ホームズ)の語句が刻まれている。

一方、日本でも一万円札の肖像に起用されている福沢諭吉は1872年、著書『学問のすすめ』のなかで、政府が悪人を取り締まって善人の生活や安全を守る費用を税金として負担することを前提として、「これ即ち政府と人民との約束なり」と記している。

財政とは何か、地方財政とは一体何か

われわれが国・地方自治体に税金というカタチで負担して、公共サービスや公共財を受益する――。このような「負担」と「受益」の関係において、国や地方自治体などの行政による活動を数字であらわしたモノが財政といえる。

財政の主体となる行政は、これら公共サービスや公共財を供給しており、地域における縁の下の力持ち的な存在だ。日々の暮らしと経済活動を行う環境やインフラを提供・整備し、当たり前の生活や活動を当たり前にできるように下支えしているのが行政の役割といえる。


久留米大学経済学部 世利洋介教授

つまり、税金とは市民社会における会費ともいえる「負担」であり、公共サービスや公共財として供給していく「受益」との関係そのものが財政ともいえる。これらの点を踏まえて、世利洋介・久留米大学教授は、「地方財政の目的は、住民の公的な欲求充足である」と、端的に説明する。

明治維新以降、中央集権体制を採用する日本では、国と地方の財政は密接な結びつきがあり、国からの補助が地方財政の歳入に占める割合は大きい。国が地方自治体を自分の手足のように使っているため、その仕事量自体が大きいというきらいもある。

福岡県の2008年度予算にみる歳入・歳出

今年2月に福岡県が発表した2008年度当初の一般会計は、予算規模で1兆5千億円余りだ。

歳入面では、県税などが7千2百億円強、諸収入も1千億円弱、さらに各免許申請や施設利用などの手数料・使用料などを含めた、福岡県における自主的な収入となる自主財源は8千9百億円弱で、実に全体の57・7パーセントを占めており、2002年度以降、増加し続けている。

残りの4割強について、国からの地方交付税が2千6百億円強(17・3パーセント)で、同じく国からの資金で使い道が指定された国庫支出金が1千8百億円弱(11・5パーセント)、さらに福岡県の「借金」である県債発行が2千億円弱(12・7パーセント)という構成になっている。

一方、歳出に関しては、知事・警察・教育三部局の県職員総数5万2千人の人件費として歳出全体の3分の1強に相当する5千2百億円強を計上している。医療・福祉・年金分野などで使われる社会保障費は2千2百億円強(14・4パーセント)と100億円近い増加となっている。また、発行済県債への「借金返済」である公債費が1千7百億円強(11・3パーセント)だ。

歳入状況に関係なく支出しなければならない義務的経費である人件費・社会保障費、・公債費の合計額が歳出全体の6割に迫ろうとしている。

公共投資に充てられる普通建設事業費に災害復旧費を加えた投資的経費は2千3百億円弱(14・7パーセント)となっている。残りの約4分の1のうち、各種ソフト事業などの行政施策費、県内自治体向け市町村交付金等が、それぞれ1千8百億円強(約12パーセント)を占める状況だ。

伸び悩む財源、高齢化で増える社会保障負担

福岡県の2008年度一般会計予算は歳入・歳出の総額自体は、ほぼ前年並みの予算規模だが、その中身を見てみると変化がみられる。

歳入面では原油価格高騰が企業などの業績に影響を与え、対前年度当初予算比では5年ぶりの減少となった法人二税(法人事業税と法人県民税)で172億円もの大幅な落ち込みを見込んでいる。一方、収入不足を補う地方交付税については臨時財政対策債も含めて273億円増と5年ぶりに増額された。この中では、あらたに設けられた地方交付税の特別枠である地方再生対策費として28億円が福岡県へ振り向けられた。

一方、歳出面では人件費(前年度比29億円減)や行政施策費(同97億円減)の支出抑制に取り組んだ。しかし、高齢化の進展に加えて今年度からスタートした後期高齢者医療制度や慢性肝炎患者の治療費助成などで社会保障費が増加(同96億円増)。また、2010年度中の全線開通を目指して工事が進む九州新幹線鹿児島ルートの建設費を負担するため、普通建設費も38億円増となった。さらに県債残高が2兆6千億円に膨れ上がった結果としての公債費増加(同42億円増)が重く乗しかかり、財政調整基金等三基金から148億円を取り崩して帳尻を合せた。

また、福岡県には一般会計以外に公債管理をはじめ、流域下水道事業、河川開発事業、県営埠頭施設整備運営事業など15の特別会計があり、その当初予算額は、6300億円余の規模となっている。

福岡県の行財政改革と産業誘致効果の行方

福岡県では今年度からの5カ年計画として『新財政構造改革プラン』を取り組んでいる。

今後5年間で見込まれる歳入不足の総額2000億円に対して、新財政構造改革プランでは職員定員を2500人削減や事業の総点検による見直しなどで歳出を1824億円削減、一方の歳入面でも未利用の遊休地を処分して281億円を確保していく計画だ。また、単に予算のスリム化を図るだけでなく、削減した中から捻出した30億円を毎年の新規事業や重点政策に投じるという布石を打つ。



ストック面でも県債残高について、2003年度以降は県債発行を減らしてきており、残高自体も来期・2009年度をピークに減少に転換させる。「新財政構造改革プランの取り組み、県民一人あたり県債残高(49万円)が全国で7番目に少ない点、さらに自動車やシステムLSIなどの先端成長産業の集積で将来的な県内経済の発展性が高く評価されて、ムーディーズから上位2番目の格付けである『Aa1(安定的)』という高い評価を得た」と、福岡県の服部誠太郎財政課長は解説する。

福岡県においては新財政構造改革プランでの5年間が正念場であることは間違いない。地方自治体として住民の意向や欲求を踏まえた施策に取り組んでいく上でも自前の財源である地方税の確保が求められるだけに、「中小企業の振興、自動車やLSIなど次世代の成長産業の育成、収益性の高い農林水産業の振興など、地域経済を活性化させる、所得の高い雇用を生み出すことが重要になる」(服部課長)。

自動車をはじめとする産業誘致においても福岡県は、積極的に取り組んできたが、市町村の収入となる固定資産税と異なって、県の収入である法人二税は立地した企業が収益を出し始めるまでの期間を要する。財政面においても福岡県における地域経済活性化や産業誘致の真価が、問われるのがこれからだ(近藤益弘)

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※当ページの内容は、2008年5月31日発行の20号に掲載されたものです。

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