フォーラム福岡

福岡の近未来図

産学官による地球温暖化防止への取り組み

2007年9月29日発行の16号より

フォーラム福岡16号特集記事に関するアンケートを実施しております。ご協力いただいた方全員にフォーラム福岡16号をプレゼントいたします。皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
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地球温暖化対策として、京都議定書にもとづき、日本が義務づけられた温暖化効果ガスの削減目標はマイナス6%だ。しかし、現実は2005年時点で1990年比7.8%と、その道のりは険しい。福岡県下における産学官の取り組みにスポットライトを当てる。

アジアの各環境大臣ら、福岡市で一堂に会す

今年9月、アジア・太平洋地域・17カ国の環境担当大臣や国連環境計画(UNEP)など11国際機関の代表者らが福岡市を訪れ、地球温暖化や廃棄物処理などの環境問題について意見を交わした。今回で15回目を迎えた「アジア太平洋環境会議(エコアジア2007)」は、環境省が主催して1991年から日本各地で開かれている。福岡市での開催は、2000年の北九州市に次いで、九州で2回目となる。


エコアジア2007の模様(円内:吉田宏福岡市長)

会議の席上、廃棄物管理や気候変動対策について各国での取り組みを紹介しながら、国際協力の在り方について議論した。また、会議参加者らは、「福岡方式」の名称で知られる準好気性埋め立てによる廃棄物処理事例として、福岡市の廃棄物埋立場を視察した。

エコアジア2007の開催に先立ち、市民を対象とした環境シンポジウムには、多数の市民が詰め掛けて、会場は熱気に包まれた。アル・ゴア元アメリカ副大統領著『不都合な真実』の翻訳者である環境ジャーナリストの枝廣淳子さんが「地球のためにわたしができること」という演題で講演した。引き続いて、福岡市内の市民団体、事業者による活動報告、さらに有識者らによるパネルディスカッションには、熱心に耳を傾ける姿がみられた。


環境シンポジウムの模様(円内:枝廣順子さん)

福岡県が打ち出す地球温暖化防止策

近年、地球の大気や海洋の平均温度は上昇の一途をたどっている。これらの結果、海面水位の上昇だけでなく、猛暑や台風・ハリケーンの増加 洪水・干ばつなどの異常気象を引き起こす。

このように地球が温暖化していく原因は人間による産業活動の結果、排出されたCO2やメタンガスなどの温室効果ガスが引き起こしているとみられる。

温暖化防止を目的に採択された京都議定書で日本が義務づけられている2008〜2012年の温室効果ガス排出量は1990年比でマイナス6%だ。しかし、現時点、削減どころか逆に増加の事態に陥っている。


全国の部門別CO2排出内訳(2002年度)
福岡県の部門別CO2排出内訳(2002年度)
福岡市の部門別CO2排出内部

このような状況下、福岡県では、あらたに「福岡県地球温暖化対策推進計画」を策定した。計画では家庭1世帯あたり、事業所の床面積あたり、自動車1台あたりのCO2排出削減目標を設けて取り組む。

福岡県におけるCO2の排出構造をみてみると、産業部門の比率が高い。特に工業部門の割合が高く、なかでもセメントや鉄鋼部門のウェイトが高いのが特徴的だ。このため、CO2削減でも、工場の燃料を石炭から石油・天然ガスに転換したことが大きく寄与した。これらの結果、産業部門や工業プロセス部門、エネルギー転換部門では順調に削減が進んでいる。これに対して、家庭部門、オフィスなどの業務部門、自動車などの運輸部門は増加傾向にある。

家庭部門などで増加する理由として、福岡県では過去20年間での人口と自動車の増加を挙げる。人口が増加すれば、廃棄物も増加傾向にあるのは、福岡県に限らず、全国的な傾向だ。また、運輸部門における自家用車の保有台数が1990年に比べて55%も増加している事実がある。

国がCO2の総量規制をしているのに対して、「福岡県では産業部門の規制値達成を前提に2002年比において家庭部門で1世帯あたりマイナス10%、自動車などの運輸部門でマイナス13%、オフィスなどの業務部門でマイナス8%が実現できれば、トータルな結果として国が取り組むマイナス6%に貢献できる」と、福岡県環境部環境政策課では、地球温暖化対策推進計画の意図を説く。

民間企業によるCO2削減の動き

昨今、企業の社会的責任が注目されるなか、企業による環境保全へ取り組みも多様なものになっている。

日本経済新聞が実施した環境経営度調査で2003年の電力・ガス部門で1位を獲得した九州電力は、CO2の排出量を1990年度実績比で約20%削減を達成している。さらに2001年度からの10年間で100万本を植樹する「九州ふるさとの森づくり」にも力を入れている。省エネ分野でもさまざまな取り組みがなされている。ふくおかフィナンシャルグループの中核を担う福岡銀行では新築ビルや店舗での省エネ設備の導入をすすめており、高効率型照明器具や昼光センサーによる自動調光、インバーターによる空調制御などに取り組む。


西部ガスが福岡県知事校舎私邸に設置した家庭用燃料電池

コカ・コーラウエストグループでは、CO2などの削減を目的に天然ガス車やハイブリッド車を積極的に採用している。また、エコベンダーと呼ばれる高冷却効率で電力ピーク時にカットする新型自動販売機が全体の9割を超える。 依然続く燃料費の高騰のなか、日本最大のバス部門を擁する西日本鉄道では、半世紀近いバスのアイドリングストップ運動を続ける一方、般路線バスにもデジタルタコグラフを導入、平均6%の燃費改善の実績を挙げている。

省エネ型車両の導入をすすめるJR九州では、使用済み切符をトイレットペーパーとして再生している。南福岡電車区の車両洗浄水として、隣接のスーパー銭湯「極楽湯」の廃水を再利用するなど、リサイクルに力を入れる。

次世代エネルギーとして期待を集める水素は都市ガス(天然ガス)から効率的に取り出せることができる。西部ガスでは、都市ガス供給による水素を燃料とする家庭用燃料電池の実証試験を福岡県知事公舎でも進めている。

デベロッパーおよび施設所有・運営者の立場から福岡地所ではグループ内に環境・安全推進本部を設けている。エコ仕様や高効率省エネ機器の導入をはじめロングライフ設計の採用、さらに屋上・壁面緑化によるヒートアイランド対策に乗り出している。


九州電力の電気自動車用リチウム電池と急速充電スタンド


コカ・コーラウエストグループが導入を進めるディーゼル・ハイブリッド車


西日本鉄道が導入した圧縮天然ガス(CNG)バス

中小企業にも浸透し始める環境経営


10月18日に開催される中小企業地球環境問題交流会について話し合う福岡県中小企業家同友会地球環境委員会のメンバー(円内:末竹哲委員長)

環境への企業の取り組みは、大企業だけでなく、地場の中小企業においても熱心だ。中小企業経営者らで組織する福岡県中小企業家同友会では、会員企業を対象にしたオフィス古紙のリサイクルシステムを確立、2003年度から2年連続で「福岡市ごみ減量・再資源化優良事業者等表彰特別賞」を受賞した。現在、約70社の会員企業から定期的に回収している。

古紙リサイクル事業に取り組む地球環境委員会の末竹哲委員長は、「企業が選ばれる時代を迎え、中小企業経営者にとっても環境経営は必要である」と力説する。現在、福岡県や福岡市と連携しながら、会員向けにISO14001の中小企業版といえるエコアクション21の取得促進の説明会を開催、さらにコミュニケーションツールとしての環境報告書づくりの啓蒙に取り組む。

世界初、福大にFIFA認定の人工芝サッカー場

今年5月にお目見えした福岡大学の新型人工芝サッカー場は、FIFA(国際サッカー連盟)認定を得た世界初の人工芝サッカー場だ。天然芝感覚の人工芝に加え、土壌改良したグラウンド内に雨水を貯めることができ、集中豪雨時の洪水対策として期待されている。


福岡大学工学部 渡辺亮一講師

コンクリートとアスファルトで形成された現代の都市は、雨天時の保水・遊水能力が大幅に低下している。都市に降り落ちた雨水は、地中に染み込むことなく、直接河川や下水道に流れ込んでしまい、集中豪雨などで処理能力を超えた場合、行き場を失くした雨水が市街地に溢れ出す都市型水害を引き起こしてしまうのだ。

「サッカー場のグラウンド内に水を貯めることで洪水防止だけでなく、コンクリートやアスファルトの保熱による都市のヒートアイランドを抑制することができる」と、新型サッカー場を開発した福岡大学工学部社会デザイン工学科の渡辺亮一講師は解説する。事実、グラウンドへ散水した打ち水効果により、日中で最大15度の温度低下を記録した。また、夜間も周辺に比べて最大10度前後の低くなることが確認されており、ヒートアイランド対策としての期待も出てきている。


福岡大学サッカー場は人工芝サッカー場として世界で初めてFIFA認定を得た

福岡大学の新型人工芝サッカー場で採用した工法は、公園をはじめ学校の校庭、公共施設などの公開空地、さらにビルの屋上緑化へも応用が可能だ。天然芝と異なり、手入れなどのメンテナンス費用が不要なことに加え、土壌改良による保水性と打ち水効果がウリとなっている。都市部に人工的なため池機能を備えた空間が増えれば、集中豪雨が引き起こす都市型洪水を防ぎ、さらにヒートアイランド現象の抑制にも役立ち、まさに一石二鳥のアイデアといえる。

九州大学発の新型風力発電が旋風を巻き起こす


九州大学応用力学研究所 大屋裕二教授

いま、中国・シルクロードでの砂漠緑化の日中共同プロジェクトが動き出そうとしている。

今秋をめどに九州大学が開発した高効率な新型風力発電6基を砂漠内に設置、風力発電による電力で地下水をポンプで汲み上げて緑化していく構想だ。

新型風力発電を研究・開発する九州大学応用力学研究所の大屋裕二教授は、「風力発電は世界的な流れである。風力発電はエネルギー不足を解消し、環境問題を克服できるだけに『追い風』状態にある」と解説する。


リング状のつば付き胴体部を設けた新型風力発電

風力発電用プロペラの周囲にリング状のつば付き胴体部を設けた新型風力発電は「風レンズ」の別名を持つ。胴体部がレンズ状に風の流れを集めるため、従来比で2倍ないし3倍の発電量を誇る。新型風力発電を『Time』英語版(2006年11月20日発行)が誌面で取り上げ、アメリカをはじめ、遠くアフリカ・ケニアからも問い合わせがあった。

風力エネルギーは最もクリーンである半面、風力発電は不規則で、文字通り「風任せ」なのが欠点だった。このため、大屋教授らは風力発電の高効率化を図る一方で、風の流れを精密に予測できる風況予測ソフトを開発した。


『Time』英語版(2006年11月20日)

現在、「順風満帆」状態にある風力発電は陸上の建設確保は一巡した観があり、最近では洋上での風力発電への注目が高まっている。洋上風力発電については、日本の沖合1キロ周囲に設置すると、国内で消費する電力の12%を賄えるという試算もある。さらに同じく3キロ周囲に設置すると、なんと40%も補うことができるというのだ。

九州大学は全学的なプロジェクトとして、洋上風力水素発電の研究にも乗り出す。大学における炭素繊維の研究成果を生かして、風レンズの胴体部や洋上に組むコンクリート浮体の鉄筋替わりに錆びない炭素繊維を採用する考えだ。また、大型風力発電の建設コストも普及とともに下がり、現在では火力発電と同等になっているといわれる。

九州大学の洋上風力水素発電では、低コスト・長寿命の浮体を用いた高効率な風力発電で水素をつくり出す仕組みだ。通常60年で投資を回収するところを10年ないし20年で回収できる経済的なシステムという。

市民の間でも芽生える環境への関心と行動

ローマ・クラブ福岡会議イン九州が福岡市で開催された1992年、有志10人で始めた海岸の清掃活動から現在の形へと姿を変えてスタートしたのが、「ラブアース・クリーンアップ」(主催 NPOクリーンふくおかの会、福岡市)だ。その後、福岡市から九州・山口各県へ、さらに石川県、北海道へと広がり、海を越えて韓国・釜山でも実施されている。


ラブアース・クリーンアップの活動風景

毎年6月に実施されるラブアース・クリーンアップの延べ参加者は800万人を越える。ラブアース・クリーンアップには、市民をはじめ企業、民間団体に行政も取り組み、市民による草の根運動としてのすそ野は広がりをみせる。

一方、福岡大学工学部社会デザイン工学科の学生・院生らで組織するボランティアサークル「はかたわん海援隊」は、地元の「樋井川を楽しむ会」と共同で福岡市内を流れる樋井川の環境調査を実施し、報告書としてまとめている。

5年前から樋井川の清掃に取り組んでいる海援隊は地域住民ら約100人の協力を得て、ゴミ調査や周辺環境を調査した。主催者サイドでは、「来年以降も環境調査を続けて、川の魅力を増やし、川を愛する仲間を増やしていきたい」とする。環境への関心が日々高まるなか、市民の意識のなかにも着実に芽生え始め、そして行動として胎動しようとしているのは、間違いのない事実のようだ。(近藤益弘)

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※当ページの内容は、2007年9月29日発行の16号に掲載されたものです。

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