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道州制『九州モデル』を読み解く

2009年1月31日発行の24号より

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九州経済連合会など主要経済団体と九州地方知事会でつくる九州地域戦略会議(議長・金子原二郎長崎県知事)は昨年10月、道州制の「九州モデル」を提示した。全国に先駆け国と地方の具体的な役割分担とそれにふさわしい税財政制度まで踏み込んだ地方分権型社会の具体像である。本格的な道州制議論の「たたき台」となるもので、分かりやすく紹介する。

道州制によって目指す国のカタチ

道州制とは、現在の47都道府県を廃し、全国を10前後のブロックに分けて、「道」または「州」という広域的な自治体を設ける制度のことである。同時に、国の権限や財源を道州や市町村に大幅に移譲するため、国のカタチが全く変わる。1871(明治4)年の廃藩置県以来、国と地方との統治機構の抜本的な改革となる。

道州制の導入にあたっては、国と地方の間の役割分担を見直し、国から地方への権限、財源の大幅な移譲とそれぞれの行政組織の解体・再編、再構築を行う。国は技術革新、経済政策、環境問題などさまざまな分野で世界標準、ルール等の提案を行い、グローバル時代に国家として対応すべき分野において責任ある役割を担う。一方、地方は「地方でできることは地方で行う」という原則の下、内政に関して自治行政権、自治立法権(条例制定権)、自治財政権を持つ自治体として、NPOやボランティア団体等と協働し、住民満足度の高い行政サービスを提供する。

複数の都道府県が統合して一つの「道州」となる点では、都道府県合併のようにも見えるが、単なる都道府県合併とは大きく異なる。都道府県合併とは、あくまで現行の都道府県制度を前提に、複数の都道府県が合併して区域を広げるものであり、合併後、規模が大きくなった新・都道府県の持つ機能は、合併前と基本的に変わりがない。これに対して今、論議されている道州制は、新たに導入する広域自治体=道州に、国の権限を大きく移譲することが前提となる。現行制度上の国と都道府県との関係を維持しながら、より効率的な組織・財政運営のために、地方自治体の規模を大きくしようとするのが都道府県合併だ。国と地方との役割・関係を根本から変え、道や州に「地方政府」としての機能を持たせるのが道州制である。

アメリカやドイツなどで採用されている連邦制では、行政権のみならず、立法権や司法権も中央の連邦政府と地方政府が分割して有している。しかし、日本での連邦制導入には現行憲法の改正が必要となるため、現実的な地方分権の在り方として行政権のみを大幅に移譲するものとしている。

住民本位の地域行政と高い解決能力を持つ政府

道州制導入の意義は、従来、国が決定していた政策の多くを地方が決定し、道州内においても住民に身近な政策は基礎自治体(市町村)が決定できるようになることである。政策の意思決定機関が住民に近くなることにより、道州や基礎自治体は、住民の要求を政策に的確に反映し、迅速に実施することが可能になる。これを具体的に整理すると、次の4つにまとめることができる。

(1)基礎自治体が主役の地域づくりを実現する
住民にとって最も身近な行政機関である基礎自治体が、福祉、子育てやまちづくりといった生活に密着した事務を幅広く担い、地域づくりの主役として住民が安心・安全に暮らすことができる住民本位の地域行政を総合的に担うことができるようにする。

(2)多極型国土の形成を通じて国内各地に創造力拠点を構築する
道州は、都道府県単位ではできなかった規模のメリットを活かし、硬直化した中央集権システムの下では実現が難しかった地域の創意工夫を発揮することによって、ダイナミックで効率的な地域経営を実現する。 それによって、国内各地に経済活力の創造力拠点を築き、複数の自立的広域経済圏を形成することを目指す。このような多極型国土の形成を通じて、過度の東京一極集中を是正し、地域の活力と多様性とによってわが国全体の発展を実現する。

(3)国家として対応すべき課題への高い解決能力を持つ政府を実現する
国の役割を外交、安全保障、マクロ経済政策、金融、資源・エネルギー政策、国際競争力の強化、教育の最低限の水準や社会保障の基本理念を示すことなどに限定し、グローバル時代に国家として対応すべき課題への高い解決能力を持つ中央政府を実現する。

(4)国と地方を通じた行財政改革を進め、簡素で効率的な行政を実現する
国の出先機関の廃止など、国と地方の二重行政を解消するとともに、国と地方を通じた行政組織、人員、予算の効率化を実現する。

国と地方の役割分担と地方間の調整

国と道州、市町村の役割分担に関する基本原則として、それぞれの役割については企画から執行までを一貫して行い、災害対策など相互補完する必要のある分以外はお互いに関与しない。広域にまたがる事項については、できるだけ道州間または市町村間で連携して遂行する。国家としての統一性についても、生活に密着した内政事務は原則として地方が担い、国は基本理念や政策大綱を示すのみにとどめる。ただ、全国一律のサービスの確保が求められる例として、公的年金、医療保険、生活保護についてはそれぞれ検討を行い、公的年金は国が担うとされたものの、医療保険と生活保護については国、道州、基礎自治体のどこが担うべきかについて複数案が示されている。

道州または基礎自治体の役割とされた事項のうち、社会保障に関する事務、全国的な統計事務などは独立した執行機関の共同設置を検討、道路や空港などの社会基盤の規格などは相互調整および調査研究にあたる全州会議・全国基礎自治体会議の設置の検討も必要とする。

基本原則に基づく役割分担の具体的イメージは〈表1〉の通りだが、現在の市町村の行政能力の有無ではなく道州制の下において果たすべき役割を基本として検討した。

九州の将来ビジョンと国と地方の役割分担

「九州モデル」では、道州制の効果を分かりやすく提案するために、生活・経済・国際・社会資本・人材・環境・行政の7つの分野を基礎として具体的なテーマを設定してケーススタデイを実施。具体的な九州の将来ビジョンを描いて、その実現のためにあるべき国・道州・基礎自治体の役割分担を検討した。その際、行政を除く6つの分野から住民や企業の関心が高く、道州制のメリットが発揮できると考えられる以下の12のテーマをモデルケースとして設定した。

まず、生活に密着した分野で、

(1)医療制度の充実
医師不足を解消して適性配置、過疎地域の医療サービス向上へ
国が持つ医療に関する権限や財源を地方に移し、九州のどの地域でも地域のニーズや実情に合わせた医療を受けることができる体制にする。大学の医学部の定数を道州が決めて医師を育成したり、過疎地の安定した医療体制のために臨床研修医の過疎地勤務を義務付けたり、単独の県だけでは導入が難しかった救急用の医療専用ヘリコプターを道州で導入するなどの施策を、地方の判断で行う。

(2)安心して子育てができる社会
地域の実情や子育て世帯のニーズに合わせた支援で、安心して子育てができる社会を実現
全国一律ではなく、地域の実情に合った規模・形態の保育所・保育園を設置する。また、子育て世帯のニーズにあった夜間・休日保育などを実施する。さらに、出産・育児にかかる経済的負担の軽減など総合的な子育て支援を実施する。

次に、九州が一体となって取り組む分野では、

(3)対東アジア戦略
東アジア経済文化圏を形成し、貿易や観光など多様な交流を促進
思い切った税制優遇や対外政策を行って企業が投資・進出し、定住者や観光客が集まる、魅力ある自立経済圏九州を形成する。また、近隣諸国の都市や地域と独自にローカル版「経済連携協定」を結び、東アジア圏の成長力を九州に取り込む。

(4)広域的産業政策
九州が一体的に発展する広域的産業政策の実施
九州全体の視点に立った地域特性を生かした戦略的な産業集積拠点を形成する。また、広域的な産官学の連携・ネットワーク化による研究開発を推進し、技術レベルを向上させる。研究機関の編成や広域的な産官学の連携強化により、高度な研究者を育成・確保する。

(5)産業集積の推進
企業誘致を促進して九州を活性化、魅力的な産業クラスター形成へ
国の企業立地の許認可の権限を地方に移譲するとともに、企業立地の窓口を一本化することで活力ある企業の立地促進を図り、産業集積を推進して地域の活性化を進めていく。また、九州が持っている魅力や地域特性を活かしながら、戦略的に圏域を越えた産業クラスターを形成する。

(6)九州独自の雇用施策
地域の実情に応じた地場産業育成、産業需要に即応した能力開発を支援
道州制が導入されて、九州が一体となって、地域の実情に合わせた企業誘致、地場産業の育成を図るとともに、企業等が求める人材需要に即応できる職業教育(訓練)システムを構築し、九州独自の雇用施策を形成する。

(7)「フードアイランド九州」
農林水産業の担い手を育成、九州ブランド食品で競争力強化
九州産の農林水産品に独自の認証マークをつけ、九州の顔とした「九州ブランド」食品を、国内はもとより東アジアを中心とした諸外国に輸出していく。農林水産業の担い手の育成や確保にも力を入れ、全国有数の食料供給基地「フードアイランド九州」を目指す。

(8)効果的な地球温暖化防止
地域特性に応じた温暖化対策で、環境先進地域としての九州へ
部門別温暖化ガス削減目標の設定や排出権取引など、より広域的な視点が求められている。道州となった九州では、新エネルギー関連事業やリサイクル産業の育成・誘致を行い、九州が環境先進地域となることを目指す。

3番目に、生活に密着したこと/九州が一体となって取り組む分野では、

(9)明日の九州を担う人材の育成
地域性を生かした特色ある教育、多様な教育機会の提供
学校教育に関して国が定める範囲を大幅に縮小し、早い段階からアジアの言葉を学ぶなど、九州自らの裁量と責任により、特色ある人材育成を推進する。学校設置主体の多様化、地域の実情に合った学校の整備や柔軟な学級編成など、多様で個性豊かな教育環境を整備する。

(10)豊かな自然と生活環境の保全
九州の自然を守り育てる環境対策、自然災害には広域防災対策で対応
住民が健康で豊かな暮らしができるよう環境保全対策に取り組み、豊かな自然環境を守り育んでいく。また、現在の県境を越えた広域的な防災・減災対策を実施するほか、森林など自然環境を守るための九州環境税を創設して環境に対する意識を育てる。

(11)水資源の確保と、安全安心な河川づくり
渇水時には九州全体で水を供給
国の河川管理の権限を地方に移し、地域住民と連携した地域の個性を生かした安全安心な河川づくりを行う。また、渇水時には九州域内で貯水率の高いダムから優先的に水供給を行うなど、住民に対して安定的な水資源の確保に取り組む。

(12)高速交通ネットワーク整備
住民を第一に考えた道路整備や九州の発展を目指したインフラ構築
九州各地域での産業活動を活性化するため、高速道路・幹線道路の整備や住民のニーズに応じた生活道路の整備を、地域の判断で細かに、スピーディに行う。道路だけではなく、港湾、空港、鉄道の整備も道州が主体となって効率的に行うことができ、九州の一体的な発展を目指す。

「地方共同財源」の創設で財政的自立へ

道州制の下における国と道州、市町村の具体的な役割分担に基づいて、2005年度の国と地方の支出額をベースにそれぞれの支出規模(公債費を除く)を試算し、現行の税目・税率を維持したまま道州制に移行するケースで税源を地方に再配分する手法によって策定した。

現行の税制では、税源の偏在が大きく域内からの税収だけで財政的に自立することが難しい道州や市町村が出てくるため、税収格差の調整財源として「地方共同財源」を創設することとした。財源は地域偏在性が大きい法人税・法人住民税の一部のほか個人所得税の一部、相続税などを充てる。各州への配分は地方間の調整組織で調整する。具体的な税源の再配分案については、各税目ごとにその性格などを踏まえ、医療保険を国と道州のどちらが担うかによって2パターンに分け、シュミレーションした。国から地方への税源移譲は30兆〜38兆円に上り、現在6対4の国税と地方税の割合が道州制導入後は2対8程度になるとしている。〈図1〉(神崎 公一郎)

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※当ページの内容は、2009年1月31日発行の24号に掲載されたものです。

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