フランスの事例にみる地方分権の"光"と"影"
2006年9月29日発行の12号より
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海外での地方分権の状況を調べるために九州経済同好会「九州はひとつ」委員会が視察した。フランスの事例を参照しながら、今後の道州制のあり方にアプローチする。
スペイン、フランス、ドイツの3カ国を視察
九州経済同友会「九州はひとつ」委員会は2005年1月29日、九州自治州構想を研究するため、スペイン、フランス、ドイツを視察した。
民族的な独立意識が強いスペイン、中央集権から地方分権への移行を果たしたフランス、連邦制を採用して州が国家的な色彩が強いドイツを訪問した欧州視察団(団長 芦塚日出美・「九州はひとつ」委員会委員長)は、その報告書にも「官民一体で『九州自治州』の実現に向け、具体的に動く時期ではないかと、今回強く感じさせられた欧州訪問であった」(芦塚団長)と記している。
視察団が訪れた3カ国のなかでも最も参考になった国としてフランスの名前が挙がる。伝統的にフランスは、中央集権国家的な色彩が強かった。
しかし、1982年の地方制度改革で中央集権から地方分権へと大きく舵を切り、公選議会を持つ26の州と100の県が誕生した。「フランスの地方自治の現状に道州制の光≠ニ影≠みることができる」と、随行員を務めた田嶋典明・九州経済同友会事務局次長はコメントする。
小規模な基礎自治体によるフランスの地方分権
「地方分権のメリットは、現場で主体的に決めることができ、現場で対応できること」という現場からの声が、視察団に寄せられた。
日本の市町村にあたる基礎自治体であるコミューンはフランス国内に約3万6000もあり、平均人口は約1500人の規模となっている。コミューンには任期6年の議員と議長(=首長)がいる。このコミューンの歴史は、実に古代ローマまでさかのぼるなどの背景の下、統合や合併ができなかった経緯もある。
住民に最も身近なコミューンが提供する行政サービスに対して質的な要求に加え、広域的な取り組みが求められるような内容になってきたため、いくつかのコミューンを組織して共同体をつくっている。広域行政体としてコミューン共同体や都市圏共同体では、市コミューンからの権限や財源の移譲を受けて、都市開発、水、環境、住宅および産業振興策を担っている。この共同体にも議会があり、議長が首長として行政にあたる。
州連合で注力する企業誘致
視察団が訪問したナントが属するペイ・ド・ラ・ロワール州(5県、人口320万人)は1982年、地方分権法が施行された時に州として自治権を獲得した。州政府は、国と協定を結び、社会資本整備とともに産業振興政策を主体的にすすめている。州の財源は、固有財源や事業収益はあるものの、大半は国からの交付金で賄われている。
州には州議会が設置され、議長が州知事を務める。州へは国の代表として州地方長官が派遣され、行政上の適法性などを監督している。州に属する県にも同様に議会があり、議長が県知事を務めている。また、県レベルへも国は県地方長官を派遣している。一方、県レベルの広域行政のために県際機構、州レベルでの州間協議会を設けているケースもある。
ペイ・ド・ラ・ロワール州政府での
視察団一行(2004年欧州視察報告より)
ペイ・ド・ラ・ロワール州では、隣接する2州と共同で企業誘致を目的としたウエスト・アトランタ公社を設立、地域特性やインセンティブを打ち出しながら、食品、IT、化学、自動車などの幅広い業種の誘致に成功している。進出の申し出があった案件は、企業の要望をもとに3州内で該当する地域が公正な競争を実施した結果で決定する仕組みとなっている。
改善の余地がある多層的な統治システム
現在のフランスにおける統治システムは、国―州―県―共同体―市町村(コミューン)との構造になっている。国が加盟するEUを含めると、実に6層制となる複雑な構想を成している。
このような屋上屋を架す行政制度は、コスト増につながるだけでなく、業務の非効率さも生み出す問題点がある。この点を指摘した視察団からの質問に対して、現地の行政担当者は「民主主義にもとづいて運営している結果だ」と、苦渋の表情で回答を寄せたという。
フランスにおける中央集権体制から地方分権システムへの移行に際して、「多すぎるコミューンの統合ができなかったのは問題である」「財源の手当てなどの税財政面での改革がなされていないのは、課題として残る」と指摘する声もある。さらに議長が首長を兼ねる点に関して、「ルソーやモンテスキューなどの偉大な思想家を生み出した国にも関わらず、三権分立として行政権と立法権の分離がなされていない」とする向きもある。
フランスにみる道州制移行への懸念事項
地方分権へ移行して約四半世紀を経たフランスの地方分権は過渡期にあるといえる。基礎自治体であるコミューンが合併できない現状を踏まえ、コスト増を承知で連携によるメリットを追及しているのが、自治におけるフランスの選択といえる。
このような対処的につくった広域行政体を含めて、複雑すぎる地方自治の現状をみるにつけて、今後日本が道州制への移行していくなかで、都道府県の統合も含めて安易な妥協を重ねると、フランス型の地方自治になってします可能性もあることも示唆する。
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※当ページの内容は、2006年9月29日発行の12号に掲載されたものです。

