道州制実現への懸念材料と課題を考える
2006年9月29日発行の12号より
「道州制実現への懸念材料と課題を考える」に対する皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
コメント受付フォームよりお送りください。>> コメント受付フォーム
いま、注目されている道州制の実現に向けて、どのようなハードルが待ち受けているのだろうか。道州制の課題や懸念を取り上げる。
道州制実現に向けての懸念事項と課題は何か
道州制移行のために改正が必要な法律は500本ないし600本といわれている。また、道州制の実現に向けた期間に関しても、最低10年、場合によっては20ないし30年かかるとする見方もあり、道州制への道は、決して平坦ではない。
道州制移行に向けてハードルとなる「懸念材料」、そして道州制の実現した場合に発生するであろう「課題」に関して、九州地域戦略会議の道州制検討委員会では、次のような項目を挙げている。
■道州制移行に際しての懸念材料
●地方の自主財源の脆弱性
●権限、財源の受け皿としての市町村の行政能力に対する不安
●市民の道州制に対する関心の低さ
●政治家や中央官庁が道州制導入に消極的
■道州制を実現した場合の課題点
●各地域のアイデンティティが消失しないようにするにはどうしたらよいか
●集落消滅の危機を回避するにはどうしたらよいか
●九州全体が画一化しないようにするにはどうしたらよいか
●道州内の地域間格差が拡大しないようにするにはどうしたらよいか
●県単位で事業を展開している企業は県境が無くなったらどうなるか
懸念事項は実現のための仕組みづくりとなる
懸念材料のうち、「地方の自主財源の脆弱性」と「市町村の行政能力に対する不安」に関して、道州制問題に詳しい田島典明・九州経済同友会事務局次長は、「問題点ではなく、道州制を実現させていくために必要な仕組みづくりであり、方策である」とみる。
「脆弱な地方の自主財源」への対処策としては、行財政改革を推し進めるためにもコストダウンに取り組み、民間にできることは民間に委託することが基本になる。
一方、財源自体に関しては現在、国と地方との支出割合は4対6にも関わらず、国税と地方税の徴収割合は6対4という逆転現象になっている。このような矛盾を解消するため、最終的な支出の割合に合わせて、収入をシェアリングさせていく仕組みが求められる。
事実、「道州間での税収格差をどう埋めていくか」という制度設計上での大きな問題となるだけに、財源確保のために全国知事会では地方共有税という構想を提案している。
地方で徴収した税金について国を介して、交付するのではなく、地方の財源は地方で融通し合いながら使っていこうとする発想といえる。従来の国から地方への垂直的な流れではなく、地方から地方へと水平的な流れへ仕組みを変えていこうというのだ。
九州に工場や支店を置く大手企業の多くが、本社機能を本州の大都市に構えているため、九州で徴収している法人税は国内全体の約5%にしか過ぎない。
九州の地場企業を育成し、地元にある産業を振興させないと、道州制に移行した場合の財政は厳しいものとなる。財政構造の制度改革、税収格差への制度設計に加え、地域の産業振興と企業育成という自助努力も必要となることは言うまでもない。
「市町村の行政能力への不安」に対しても市町村合併によるスケールメリットを生かして、専門職員の育成に努めていくことでスキルアップを図ることも可能となる。
この点に関して、九州市長会の九州における道州制等のあり方研究委員会委員長を務める横尾俊彦・多久市長は、「課題が存在することは、改善・改革していく上でのチャンスであると考えており、課題解決に向けて能力を高め、至らない部分は補充改善していくことで、基礎自治体としてのパワーアップを図っていく」との方針を示す。
九州市長会の九州における道州制等のあり方研究委員会では昨年10月以来、委員である21人の市長が論議を重ね、「10年後に九州府を実現させる」ことを目指している。
求められる住民の道州制への理解と支持
「道州制への関心の低さ」に関して、道州制実現を阻む要因は、現行の都道府県制度しか知らず、現行制度が当たり前的な感覚になっている住民に対して、何が不都合なのかを説明しにくい点があげられる。
事実、「道州制と広域連合の違いも含めて、住民にとっては分かりにくいテーマである」と、指摘する声もある。道州制と住民との間に立ちはだかるギャップをいかに埋めていくかが大事である。
九州が一体となった取り組みの例として九州観光推進機構による観光振興事業が挙げられる。観光事業に続く広域的事業として子育て支援などの取り組みを積み重ねていくことで、広域行政の良さを体感してもらうことは、道州制へ繋げていく上での意義は大きいといえる。
「道州制の導入にあたっては、住民の意識を醸成し、理解を得ることが大切である」と、九州地域戦略会議の道州制検討委員会も認めており、住民の意識づけと理解を求めるために道州制のメリットや課題について分かりやすい情報発信をして、幅広く議論していく必要がある。
このため、住民からの生の声を公聴する手段として、九州地域戦略会議内の道州制検討委員会では先日の『経過報告』の誌面において、九州版「道州制タウンミーティング」や「道州制出前講座」の実施、さらに推進団体として「九州道州制推進協議会」(仮)の設立、さらにシンポジウムや講演会などの開催も提唱している。
これらの取り組みとしては一足早く、九州市長会では今年10月12日、長崎市の長崎県立総合体育館を会場に2000人規模の道州制に関するシンポジウムも開催する。このシンポジウムは当日の総会で九州市長会の九州における道州制等のあり方研究委員会が総会で提言書を提出するのに合わせて開催するものだ。
最大のカベは中央省庁と政治家
「道州制導入に消極的な政治家や中央省庁」の存在は、道州制自体が中央省庁や国会議員にとって、いわば既得権益を削ぐ改革となるだけに強い反発と抵抗が予想されるためだ。なかでも中央省庁は権限や財源を地方に手放すことであり、霞ヶ関界隈では、道州制に対して消極的であるといわれている。
その一方で、道州制自体に関しては政党のマニフェストに織り込まれ、さらに政権公約のひとつに位置づけられるようになり、道州制実現に向けての追い風が吹きつつある。中央省庁を動かすのは、最終的には政治であり、なかでも国会議員の存在は大きい。そして、国会議員を選ぶのは、有権者である地域住民となる。
今後、道州制の論議が盛り上がり、選挙の争点のひとつに道州制へのあり方が俎上に上がれば、一気に加速する可能性も大きい。そのためにも主権者としての住民の道州制への関心をいかに高めていくかが重要だ。
一方、道州制実現ともなう課題として挙がっている「地域のアイデンティティ消失の危険性」「集落消滅の危機」「九州全体で画一化する危惧」「道州内における地域間の格差拡大への懸念」「県単位で事業する企業への対応」などは、いわば制度が激変するゆえのことだ。これらのテーマに対して、現状を見据えた柔軟かつ円滑な対処を図るべく、経過措置も含めた運用面での適切な対応が強く求められる。(近藤益弘)
「道州制実現への懸念材料と課題を考える」に対する皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
コメント受付フォームよりお送りください。>> コメント受付フォーム
※当ページの内容は、2006年9月29日発行の12号に掲載されたものです。



