道州制で我々の生活が、九州が、どう変わるのか
2006年9月29日発行の12号より
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道州制で変わる九州と我々の生活について
九州地域戦略会議の道州制検討委員会による「経過報告」と九州経済同友会の九州はひとつ委員会『九州自治州構想』の2つのレポートを羅針盤に描き出す。
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道州制によって九州をどう変えたいのか――。
この問いかけに対して、九州の産学官トップで道州制への必要性を確認して、合意した九州地域戦略会議の道州制検討委員会による「経過報告」では、「九州の繁栄のために、九州のポテンシャルを活かしパワーを発揮できる州を実現」をコンセプトに次の5つのビジョンを打ち出している。
■生活 豊かな暮らしができる
■国際 東アジアの拠点として繁栄する
■経済 産業の域内循環を高め一体的に発展する
■行政 透明性の高い民主的で効率的な行政を行う
■人材 優秀な人材と国際人が育つ
まず、生活面においては、個性ある教育、社会福祉、文化政策などによる地域づくりを謳っている。九州独自の雇用政策、若者自立支援、子育て支援などにも力を入れる。一方、九州内の居住者が、一定レベル以上の医療・福祉サービスを受けることができる体制を整備するとしている。さらに大規模地震や風水害などの広域災害に向けた効率的な防災体制も確立していく考えだ。
一方、経済面では自動車、半導体、精密機械、農業、観光に代表される九州の主力産業において、域内での産業循環を高める政策を打ち出す。また、産業の戦略的な拠点を九州各地の特色に応じて配置して、多極的でかつ九州が一体となった発展を目指すとする。そのために大学からの技術移転(TLO)の連携強化や公的研究機関の再編統合なども実施していくことを方針として掲げる。
効率化を図る行政、東アジアとの国際戦略、国際化への人材育成
さらに行政面では自立的に道州や市町村が身近な行政サービスを提供することで、住民の意向を政策に反映させることができるとしている。さらに納められた税金の使い方などに関して住民の監視の目が届き、より透明性の高い民主的な行政運営を期待する。
また、国によるタテ割り行政や県境を越えて総合的な行政を九州規模で取り組み、選択と集中にもとづく効果的で効率的な行政運営や社会資本の整備に取り組む。さらに各県統合による間接部門の人員や行政組織を効率化できることも考えられるというのだ。
次に人材面としては、大学では職業訓練コースを併設して即戦力となる職業人を養成し、高校教育と並行したマエストロ(巨匠)養成などの実践的な教育を図るとする。企業や海外の高等教育機関との交換留学や研修制度を設け、優秀な人材の育成に尽力する考えだ。また、優秀な人材を地元に定着させ、海外の優秀な人材を活用できる政策を実施していきたいという。
一方、国際面においては、新産業支援、観光振興、企業誘致などで九州が一体となって取り組んでいく。そして、国際競争力を高める政策を実施していくことで東アジアの拠点として繁栄する自立経済圏・九州を確立させたい意向だ。
企業誘致に関しても、道州制がもたらす行政の効率化によるワンストップサービスで手続きの短縮を図りたいとしている。そして、海外からの企業や研究機関などの誘致も促進していきたいという。
九州の基幹産業のひとつともいえる農産品についても、九州が一体となって開発・生産・輸出を手掛けていきたいとする。そして、「フードアイランド九州」の構想を実現したい考えだ。また、近隣諸国と自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の実現も視野に入れる。
『九州自治州構想』が描く九州の将来像
道州制への移行によって、具体的に「九州はどのように変わり」、そして「われわれの生活はどのように変化していく」のだろうか?
ここに道州制移行後の九州の将来像を描き出したレポートがある。この『九州自治州構想〜九州からのアピール〜』と題した報告書は、九州経済同友会の九州はひとつ委員会(芦塚日出美委員長)が、2005年6月に発表したものだ。
『九州自治州構想』では、九州・沖縄8県の合併と国の出先機関との統合を骨子とした構想となっている。具体化に向けては、過渡的なステップとして九州自治州特区を導入して、段階的に自治州へ移行させていくプランを打ち出している。
《九州自治州構想》
道州制における九州モデル
『九州自治州構想』では、GDP48兆円、人口1480万人、そして77の大学と35の空港を持つ「自立経済圏九州」の誕生を描いている。
自治州と市町村の2層制とし、議会と首長は公選とする。州議会では、自治州憲章と条例を定める。議員定数に関しては、ヨーロッパでの事例を参考にして200人を想定する。
「地域のことは地域で決める」を基本原則として、国の役割は防衛・外交・通貨管理・国際政策・安全保障などに限定する。一方、地域は内政、さらに住民に直結した行政事務を担う。
市町村は地域主権の基礎単位と位置づけて、住民に身近な行政サービスを提供する。一方、国から大幅な権限移譲を受けた広域自治体である自治州では、市町村で対応できない広域的な事業をはじめ、市町村間における調整、さらに国との調整に徹するとしている。
そのために自治州では歳出の徹底した削減に努める一方、自主財源を確保し、さらに国庫支出金や地方交付税を廃止して地方に移管をすすめる。なお、沖縄に関しては、地理的条件や歴史的な経緯を踏まえ、「特別自治州」あるいは「特別自治区」として検討する必要性も記している。
《九州自治州構想》
道州制移行による九州の経済波及効果は約15兆3千億円
九州自治州のメリットとして可能になる項目について、社会資本整備や産業政策等の効率的な実施、一体化による高次機能の実現、より強力でより効果的な施策の展開、自立的な政策の展開が可能、ローカル外交を進めての国際交流の推進をあげる。
これらのメリットを生かして、九州自治州では、「産業」「社会資本整備」「生活」「環境」「人材」の5つの分野における重点政策と10のアクションプランを掲げている。そして、これらの重点政策とアクションプランの成果としてもたらす経済効果の試算は、次の通りだ。
まず、観光に関しては、九州観光推進機構などの取り組みを踏まえ、九州の年間宿泊客数4532万人(2002年)を6000万人に引き上げることを目標とする。宿泊客増にともなう直接効果として3670億円、経済波及効果8700億円(雇用創出効果7・0万人)を試算する。
一方、企業(工場)立地については現在(2002年〜2004年平均)の年平均133件を倍増の265件/年と想定している。この目標設定に関しては、九州への企業立地が盛んだった1975年から2001年(最高は1990年の601件)の年平均件数である277件を目安に設定したという。企業誘致の倍増による直接効果を1兆5900億円、経済波及効果2兆8400億円(雇用創出効果12・5万人)を見込む。
さらに輸出額においても2004年時点での5兆6750億円をほぼ倍増させた10兆円を目標に掲げる。この数字は、アジア向け輸出が好調な1999年〜2004年の5年間における九州経済圏の伸び率60パーセントを参考にはじき出している。輸出倍増に伴う直接効果は4兆3250億円、さらに経済波及効果を7兆7300億円(雇用創出効果35・3万人)と試算する。
また、東九州自動車道をはじめとする循環型高速交通網が完成した暁には、製造業の輸出が1・8倍、移出が1・2倍に拡大すると九州経済産業局では想定している。その結果、経済波及効果として3兆8600億円(雇用創出効果15・3万人)を見込んでいる。
《九州自治州構想》
財政赤字の改善効果として4兆2千億円を見込む
2002年度における九州の全自治体の歳入は15兆2838億円なのに対して、歳出は19兆7483億円と、4兆4645億円もの赤字になっている。
歳入に関して、所得税・法人税・消費税の基幹3税を各州・市町村に委譲し、その他の国税と従来からの地方税は原則として自治体固有の財源とした場合、2002年度をベースに試算すると、九州自治州では2兆1171億円の税収増が見込まれる。
一方、歳出に関しては、県の合併による行政職員・議会議員の削減で人件費・物件費などを9330億円削減できるとしている。さらに九州の市町村合併をすすめて116程度まで集約したと仮定した場合の職員・議員の削減、行政経費の縮減で1兆2119億円の歳出削減が可能とする。九州の道州制への移行による8県合併と九州内の市町村合併の結果、2兆1449億円の行政コストの削減が見込まれるとしている(九州経済調査協会調べ)。
歳入増と合併効果の結果、九州自治州の財政赤字は2026億円の赤字まで縮小できると『九州自治州構想』では論じている。
また、仮に九州・沖縄8県の合併による行政コスト削減費である9330億円のうち、50パーセントを長期債務返済にあて、残りを個人・法人税の減税と公共投資に25パーセントづつ振り向けると、雇用機会が増え、GDPを押し上げ効果が発生した結果、九州の実質GDPも6200億円増加すると試算している。(近藤益弘)
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※当ページの内容は、2006年9月29日発行の12号に掲載されたものです。


