フォーラム福岡

福岡の近未来図

「道州制」とは一体何か?

2006年9月29日発行の12号より

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道州制とは一体何なのか。第28次地方制度調査会の答申を中心に、道州制の基本的な概念と仕組みを見ていこう。

大幅な権限移譲で国と地方の関係を変革
道・州を「地方政府」として確立

ワンポイントビュー

「道州制」とは、現在の47都道府県を廃し、全国を10前後のブロックに分けて、「道」または「州」という広域的な自治体を設ける制度のことである。複数の都道府県が統合して一つの「道州」となるわけで、この点からは、一見、「都道府県合併」と同様なものと映りかねない。しかし、単なる「都道府県合併」と「道州制」とは、実は大きく異なるものである。

「都道府県合併」とは、あくまで現行の都道府県制度を前提に、複数の都道府県が合併して区域を広げるものであり、合併後、規模が大きくなった新・都道府県の持つ機能は、合併前と基本的に変わりない。これに対し、今、論議されている「道州制」は、新たに導入される広域自治体=道州に、国の権限を大きく移譲することが前提となる。

つまり、現行制度上の「国と都道府県」との関係を維持しながら、より効率的な組織・財政運営のために、地方自治体の規模を大きくしようとするのが都道府県合併であり、「国と地方」との役割・関係を根本から変え、道や州に「地方政府」としての機能を持たせるのが道州制である。逆に言うならば、
国からの大幅な権限委譲が実現しなければ、道州制も単なる都道府県合併と変わりないものになるわけだ。

今年2月に出された政府の第28次地方制度調査会「道州制のあり方に関する答申」でも、「国と地方の双方の政府のあり方を再構築」し、「国の役割を本来果たすべきものに重点化」する一方、「内政に関しては広く地方公共団体が担う」ことを基本とする「新しい政府像」の確立をうたっている。

このように、「道州制」は、現在の国のカタチそのものにメスを入れ、中央集権から「地方分権」「地方主権」へと、国の統治構造そのものを大きく変えるものと言える。近年、環境規制や交通基盤整備、観光振興といった広域的な政策に、都道府県の連携による取り組みが活発化している。だが、そのような都道府県の連携はもとより、複数の都道府県にわたる「広域連合」の形成、さらには先述の「都道府県合併」などといった広域自治体制度と、「道州制」との違いは、ここにある。

立法権・司法権も地方が持つ「連邦制」
「道州制」は行政権のみとの捉え方が主流

それでは、現在の「道州制」論議の中で、国からの権限移譲はどのレベルまで考えられているのだろうか。

アメリカやドイツなどで採用されている「連邦制」では、「行政権」のみならず「立法権」や「司法権」をも中央の連邦政府と地方政府が分割して有することが、憲法に明記されている。「道州制」には明確な定義がなされているわけではなく、「連邦制」と同様に「立法権」「司法権」をも地方に移譲することを主張、あるいは「道州制は連邦制への一里塚」と捉える向きもある。

しかし、連邦制導入には憲法改正が必要であり、また、歴史的にも日本にはなじみにくいと言われている。このため、現実的な地方分権のありようとして、「道州制」とは、「国の持つ行政権・立法権・司法権のうち、行政権のみを大幅に移譲するもの」とする捉え方が一般的である。

地方制度調査会が9〜13道州の3案を例示
人口1335万人の「九州」が一つになるか?



「道州制」については、様々な団体から提言がなされているが、基本的な制度設計を地方制度調査会の答申から見ていこう。まず、道州の位置づけは、現在の都道府県に代わる広域自治体として、地方公共団体は「道州」と基礎自治体である「市町村」との「二層制」となる。その区割りについては、全国を9、11、13の道州に分ける3つの案が例示された。国の出先機関の管轄をもとに、人口などの均衡にも配慮して▽北海道▽東北▽北関東信越▽南関東▽中部▽関西▽中国・四国▽九州▽沖縄|に分けるのが「9道州案」。これに「社会経済的、歴史的にひとつの区域とみなされることが多い」四国と北陸を設けたのが「11道州案」。さらに、九州、東北を南北に分けたのが「13道州案」である。いずれも、東京を南関東から切り離して単独の道州とする考え方が併記されている。

九州エリアでみると、9及び11道州案ならば、九州7県を合わせた人口約1335万人の州が誕生するが、13道州案が採用された場合は、約860万人の北九州と約475万人の南九州に分割されることになる。九州では、知事会、財界とも「九州はひとつ」として、「7県一体」を前提とした道州制論議が進んでおり、13道州案は、まず受け入れにくいだろう。

住民サービスは市町村、広域行政は道州に
国の役割は外交・防衛、通貨などに重点化

制度の要となるのが、国と道州、市町村との役割分担だ。これについて、答申では、現在、都道府県が実施している事務は大幅に市町村へ移譲。道州は「圏域を単位とする主要な社会基本形成の計画及び実施」「広域的な見地から行うべき環境の保全及び管理」「人や企業の活動圏や経済圏に応じた地域経済政策及び雇用政策」など広域事務を担う役割に軸足を移すこと、とされている。同時に、国と地方の事務配分のあり方も抜本的に見直し、「国が本来果たすべき役割」を除き、「できる限り道州に移譲」することが求められる。

具体的に、道州が担う事務とは、どのようなものになるのか。答申では国道や一級河川の管理、大気汚染・水質汚濁対策、職業紹介・職業訓練、農業振興など多くの事務が、国から権限移譲されるべきものとして描かれている。一方、国と道州の事務配分に関する指標として、国が担うものは(1)国家としての存立に直接関わる事務(2)全国的に統一されるべき基本ルールや地方自治に関する事務(3)国家規模でネットワーク形成や事業構築等を図る必要がある事務(4)国家として取り組むべき高度な科学技術や希少な資源等に関する事務(5)国の行政組織の内部管理に関するものなどに限定された。

この「国・道州・市町村」の3者間の役割分担について、九州地域戦略会議の道州制検討委員会では、別表(21ページ)のように、さらに突っ込んだイメージを打ち出している。

たとえば、「外交、防衛、安全保障」といった国の存立を左右する事柄は当然、国が担い、「警察、広域防災、危機管理」は道州、「消防、防災」は市町村が担う。これは、現況の国・都道府県・市町村の役割分担と、さほど変わりない。が、交通・社会資本整備に関しては、国は「国際空港(第一種空港)・新幹線」などに限定。「高速自動車国道、基幹道路・空港など広域交通ネットワーク整備」といった従来、国が担っていたものが道州に移管され、「都市計画、まちづくり」などは市町村が手がけることになる。「通貨・金融」や「農産物などの基幹的研究開発」「経済政策」は国、「農林水産業の振興、中小企業支援、新産業創出促進、観光、企業誘致」は道州、「商店街対策、観光施設の整備」などは市町村といった具合だ。

住民に身近なサービスの大部分は市町村が行い、市町村では処理できない広域的な行政分野は道州が担う。さらに、道州では処理できない外交や防衛、通貨管理、司法などを国が担う、という構造。「地方でできることは地方に」という理念のもと、道州制導入に伴って、市町村も従来の都道府県の権限移譲を受け入れられるだけ、強く、質の高い組織になることが求められるわけだ。

長と議員は直接選挙で選出、長の多選は禁止
現行の都道府県に一定の位置づけも

「地方政府」としての道州には、議決機関と執行機関が必要だ。答申では、道州議会議員と長は住民の直接選挙で選出。自主組織権を重視し、議会の構成については基本的事項のみを法律で定め、現行の選挙区方式のほか比例代表制の採用も想定されている。一方、長については多選禁止とされた。

こうして、道州制が導入され、都道府県が廃止されたとしても、都道府県の概念なり、県民意識が一挙に消滅してしまうことは考えにくい。「福岡県○○」といった名称はもとより、県単位で事業を展開している企業など、現在の都道府県域で区分された各種の社会経済活動は道州制導入後も続くものと考える方が自然だろう。答申では、この点について、「都道府県であった区域あるいは歴史的条件等に鑑をみてこれをさらに区分した区域について、一定の位置づけを与えることも考えられる」という表現に留まっている。

また、「道州と国」「道州と市町村」との関係はどうなるのだろうか。答申では、「機関委任事務制度に類する制度は設けない」ことのみを明示し、「道州に対する関与の仕組みは、基本的に現行制度と同様」として、具体像には踏み込んでいない。これらについては、「道州と国による協議の仕組み」「道州と市町村の関係調整のための仕組み」を設けるとして、先送りされた。

国、道州、市町村の役割分担
[基本的な考え方]

○市町村はさらに合併を進めて基礎自治体としての機能を強化し、そこに都道府県の権限と財源を 移譲し、福祉、介護、医療、教育等の住民サービスの大部分を市町村が担う

○道州は広域自治体として、市町村ではどうしても処理できない広域的な役割を担い、さらに道州 でも処理できない外交、防衛、通貨管理などの役割を国が担う

○国、道州、市町村はそれぞれが担う役割については、計画・企画・立案・執行・評価までを一貫 して自己完結的に行うことを原則とする

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※当ページの内容は、2006年9月29日発行の12号に掲載されたものです。

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