フォーラム福岡

天神および博多駅の開発シナリオ天神写真

エリアマネジメントで天神がよみがえる

2005年12月29日発行の8号より

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ワンポイントビュー

九州の商都である天神地区で、「競争+連携」の時代が始まった。福岡市営地下鉄と西日本鉄道、百貨店や地元商店街などがビジネスの壁を超えて、地域の視点からスクラムを組む。郊外型ショッピングセンターの進出による集客力の低下や、交通混雑、違法駐輪などで魅力低下が懸念される天神の再生がテーマである。

画期的な地下鉄と西鉄バスの「天神フリーパス」

『憩いと魅力』に満ちた天神づくりを目指す社会実験「天神ピクニック2005」で、画期的な共通チケット「天神フリーパス」が発売された。市営地下鉄と西鉄バスが合体した1日乗り放題券で、大人600円、小児300円。パスを購入した地下鉄駅から天神エリアまでの往復乗車券と、天神エリアでの地下鉄5駅(天神・天神南・赤坂・中洲川端・渡辺通)、福岡都心100円循環バスが利用できる。天神ピクニック期間中(11月12日〜12月25日)の土・日・祝日に限り、試行的に発売された。

西鉄天神大牟田線乗降人員の推移

市営地下鉄と西鉄はいわばライバル同士。両者で乗り継ぎの共通パスや定期券の開発がかねてから、求められてきたが、なかなか実現しなかった。公共交通の利用促進や天神地区での渋滞緩和を目指す上では、バスと電車を乗り継ぐバス・アンド・ライドなど公共交通機関相互の連携が欠かせない。乗り継ぎの割引率やその負担をめぐっての調整なども必要だが、これをきっかけに是非実現してほしいものだ。

地下鉄乗降人員の推移

「パーク・アンド・ライド」、フリンジパーキング等を実験

車から公共交通機関に乗り換えて天神に行くのを促す「パーク・アンド・ライドde お買い物」という実験も行われた。天神で買い物をするために、地下鉄姪浜・橋本駅周辺の駐車場に車を止め、天神の3つのいずれかのデパートで5000円以上の買い物をした人の駐車料金が、当日に限り無料となる。

同じく天神の道路混雑の緩和を目指した交通システムプロジェクトで、「乗ってエコとく!」とフリンジパーキングも実施された。「乗ってエコとく!」は公共交通機関を使って天神に来た人には、「乗ってエコとく!加盟店」(24店参加)のステッカーのある店で、乗車券を見せ、「社会実験参加希望」を伝えると、期間中、ドリンクまたはデザートプレゼントか、食事代が10%引きとなるサービス。加盟店の増加がこれからの課題だ。

天神地区放置率・収容台数の推移

フリンジ(外縁部)パーキングは、天神周辺の指定駐車場を利用し、そこから西鉄バスや歩いて移動することで、都心への交通量を抑える試み。天神の3つのいずれかのデパートで5000円以上の買い物をしたら、駐車料金5時間分と天神までのバス運賃が無料となる。デパート以外の買い物先や購入金額の検討も課題だ。

サラリーマンやOLに人気だった“朝カフェ”

天神ピクニックでは、「交通システム」に加え、歩行者用道路にカフェがお目見えした「アメニティ」と、快適な歩行空間の実現を目指す「グッドチャリライフ」の2つのプロジェクトも実験された。週末の歩行者用道路、公開空地などに、オープンカフェが登場したほか、岩田屋新館前やイムズ前広場などでは、ビジターズ・インダストリー推進協議会が朝の魅力向上として朝食が食べられる“朝カフェ”をオープン。出勤前のサラリーマンやOLの利用者が多く、常設希望も数多く寄せられた。


朝カフェでのヒトコマ

グッドチャリライフプロジェクトでは、指定の駐輪場でカードにスタンプを押してもらい、その日のうちにカードを協賛店(57店)で提示すると、特典サービスが受けられたり、30日分以上のスタンプがたまったら駐輪場で景品がプレゼントされた。また、自転車を押して歩く「おしチャリロード」も指定された。

学術団体なども参画するエリアマネジメントの「福岡方式」

天神ピクニックは04年に続いて2回目。04年は地元商店街や百貨店、西鉄、福岡市などで結成した「天神社会実験実行委員会」が主催したが、05年6月に実行委を解散して「We Love 天神協議会(仮称)準備会」に移行した。05年春には、正式に協議会として設立される予定で、街づくりの方向やビジョン、組織、事業計画などエリアマネジメントについて検討中だ。行政と企業、経済団体、市民などに加え、学術団体、NPOも参画する「福岡方式」で、プロモーション、公共施設の受託事業、清掃・警備など様々な地域活動をプロデュースしていくことにしている。天神には、西鉄の天神委員会における活動の蓄積や、アジアマンス、ミュージックシティ、ふくこいアジア祭りなどの取り組みもあり、うまくコーディネートして地域の魅力向上につなげていくことも求められる。

協議会としてエリアマネジメントの実践を重ね、天神地区の団体、法人、個人が漏れなく参加するようになって、負担金を徴収して街づくりを進める組織への移行が検討されている。

求められる思い切った社会実験の積み重ね

策定中の新・福岡都心構想(中間報告)は2015年の都心の姿を「オープンカフェなど都心に一休みできる場所が増え、自転車のルールづくりも進むなど、ショッピングや文化・イベントなどを楽しむことができる『快適な都心』が生まれている」とイメージ、「“歩いて楽しい”都心の生活スタイルを創出するため、地区の市民、企業、団体等が参加したエリマネジメント組織と行政が共働で進める新しいまちづくり」を提案している。

しかし、これまでの社会実験と「快適な都心」との間には、かなりの開きがある。交通渋滞緩和を実現するには、都心にある公営駐車場を周辺部に移してフリンジパーキングにするとか、都心の駐車料金を高くして車での来街者を減らすような思い切った政策を執らない限り、実現は難しいだろう。

ドイツに「環境首都」と呼ばれる、フライブルクという町がある。人口19万人の町の交通の主役は、トラム(路面電車)と自転車である。市の中心部への自動車乗り入れを規制、郊外から自動車で来る人はトラムのターミナルにある無料駐車場に駐車し、トラムや自転車で都心に入る。これが「パーク・アンド・ライド」である。町のいたるところに駐輪場があり、レンタサイクルを用意、そこで自転車を借りて、目的地の近くの駐輪場に乗り捨てることもできる。自動車の乗り入れを抑制し、トラム、バスなどの公共交通機関と歩行者、自転車のみが通行できるようにした都心の街路は「トランジットモール」と呼ばれている。ヨーロッパでは、このトランジットモールのシステムを導入する都市が増えている。

天神バイパス道路のインフラ整備も

天神地区渡辺通りの交通渋滞対策で、新・福岡都心構想は「渡辺通りの機能を補完する新たな道路の整備などについても検討する」としている。具体的には、都市高速道路の天神北ランプから、天神地区を南北に貫くバイパス道路を渡辺通りの東西に整備する構想と言う。西側は「親冨孝通り」から「天神西通り」までは整備されているが、舞鶴長浜線の100mと国体道路から南の薬院舞鶴線は手が付けられていない。東側は福岡市役所と天神中央公園の間の通りだけが整備され、明治通りから北側、国体道路から南側の部分はこれから実現できるか、検討される段階のようだ。

福岡市における観光入込客利用交通機関の分担率

また、構想では、計画的な街の更新に合わせたまちのシンボルとなる建物を誘導するとある。具体的には触れられていないが、天神・渡辺通りの“顔”である旧岩田屋本店跡地とこれから更新時期を迎える天神ビル、福岡銀行本店、福岡ビルのある天神四つ角地区の再開発も天神地区の魅力を増すシンボリックな一体開発が期待される。そして、ミーナ天神(旧マツヤレディース)、ショッパ―ズダイエー、福岡中央郵便局周辺も渡辺通りの直線化や賑わいの集積を含めた計画が求められる。

天神北地区は都心ゲート

福岡都市高速道、天神北の利用台数の推移

一方、構想では天神北地区については、「都心ゲートにふさわしいまちづくりと新たな集客・観光拠点づくり」と位置付けている。九州各県やアジアからの観光バスの乗降場や駐車場、待ち合わせ場所などを併設したフリンジパーキング、自動車ターミナルの検討や、スポーツ、文化集客施設と道路基盤整備と合わせたゲートウェイ機能を活用したまちづくり、鮮魚市場の近さを活かした集客・観光拠点づくり、海を活かした都心の居住空間としてのまちづくりを進めることにしている。(神崎公一郎)

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※当ページの内容は、2005年12月29日発行の8号に掲載されたものです。

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