人に優しい街・天神への試み 渡辺通り大改造への提言
2004年11月30日発行の創刊2号より
「人に優しい街・天神への試み 渡辺通り大改造への提言」に対する皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
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九州の商都であり、《顔》である天神地区で、魅力ある都心を創ろうと、民間からの提言や社会実験が相次いで実施された。都心の集積がもたらす不便、不潔・不快に加え、郊外の大型ショッピングセンター(SC)の進出による集客力低下の危機感からだ。

いま、注目を集める渡辺通り
渡辺通りを福岡・天神の《顔》に
民間企業・グループ7者で構成する「天神・渡辺通まちづくり研究会」がまとめた提言が「人に 優しい街・天神へ...クルマを減らして広場で憩う みんな歩いて楽しい街に...」。
歩行者の回遊性を主眼に、天神を南北に貫く渡辺通りに焦点を当てている。研究会の事務局を務める福岡アジア都市研究所の後藤太一・研究主査は「通りを街の顔にしたい。パリと言えば、シャンゼリゼ通り、ニューヨークなら五番街、大阪は御堂筋。九州の顔として、市民にも来街者にも“天神は渡辺通り”と言われるようになれば」と、街の景観の象徴として道路中央部にシャトルラインの整備を提案している。
建物が更新時期を迎える博多駅地区と違って、天神地区は一部を除いてまだ先になる。民間の大規模開発は限られており、通りを整備することで民間企業それぞれの開発の方向を誘導していく考えのようだ。
提言のポイントは、
(1)快適に歩ける街路空間の整備
(2)人に優しい都市機能と交通システムの再編
(3)公民連携による都市経営
の仕組みの3点である。
快適に歩ける憩いと潤いのある通りに
提言は、通り全体を3つのゾーンに分け、既存の街並みを生かして、
(1)渡辺通りゾーンはビジネス街らしく整然とした格調と落着き
(2)天神ゾーンは建物壁面の連続性と建物高さの統一
(3)那の津・長浜ゾーンは都心から海へ繋がる期待と個々の建物の多様性
――とし、建物1階には店舗、カフェ、ギャラリーなどを設け、歩く楽しさを導入する。
また、渡辺通りが帯状の公園のような憩い空間となるように緑を整備する。既存樹木を基本街路樹として活用するほか、各ゾーンの個性に合わせて四季の変化を感じさせる、花の咲く落葉樹を植える。広場や歩道の各所に、ベンチ・噴水・彫刻などのある憩いの小空間を設け、沿道の建物の屋上や壁面を緑化する。

歩行者優先を重視
人が快適に移動でき、交通渋滞を解消するために、新たな交通システムを提案した。
北部の那の津・長浜地区から、南部の地下鉄七隈線(来年2月3日開業予定)渡辺通駅付近まで約2キロをシャトルラインで結び、南北両端のシャトル駅にはフリンジパーキング(都心外周部の駐車場)を整備、マイカーの都心部への乗り入れをできるだけ減らす。
シャトルは道路中央を走り、片側1車線で、従来の路線バスや高速バスも走らせる「公共交通専用車線」とし、定時制を確保する考えだ。シャトルについては低床型の電気バスないしは路面電車(LRT)など環境に優しい乗り物が想定されている。
また、歩行や公共交通機関の利用が困難な人向けの駐車場を確保しながら、都心の駐車場建設を抑え、駐輪場などへの転用を進める。合わせて、不法駐停車、自転車の対策、共同物流システムの改良、バス運航管理の見直しなども進めていくことにしている。
都市機能の面では、渡辺通りを北から3つのゾーンに分け、整備方針を提示しているが、一貫して歩行者の回遊性を重視している。とりわけ、天神ゾーンは歩行者優先エリアと位置付け、空中・地上・地下の3層で各施設を結ぶ歩行空間を整備する。空中回廊はビルの3階部分で、西鉄福岡駅・バスターミナルに、1階の地上はシャトル駅に、地下2階の地下街は地下鉄の駅につながる。渡辺通、那の津・長浜ゾーンで、建物を整備する時には壁面を後退させ、歩道を拡張する。
人に優しい都市機能
天神ゾーンの性格は、「買い物と知的交流の市民サロン」とし、市民が買い物と文化・環境を楽しめる社交場を目指す。吹きぬけ広場のある複合商業施設∇図書館・美術館・メディアライブラリー・知的交流サロンなどのある文化交流施設∇育児・教育・介護・住まいなどの情報を交換出来る市民生活交流センター∇デザイナーズ賃貸マンションなどが構想されている。
那の津・長浜ゾーンは、博多湾に面した立地を生かして都市型リゾートとする。競艇場などを移設して、水際のオープンスペースとするのをはじめ、魚市場と連携した飲食店を核とする複合商業観光施設▽家族向け分譲マンション▽都市型リゾートホテルなどを整備。現在、中央、博多ふ頭にある国内外の旅客線ターミナルの一部を受け入れ、都市高速直結のフリンジパーキングとシャトル駅を整備して、北部の交通ゲート機能を担う。
渡辺通りゾーンは、福岡アジアビジネスセンターとして、既存のビジネス関連施設に加え、国際特許申請の支援などを行う知的財産センター∇ビジネススクール∇職住一体のSOHO――などを設ける。シャトル駅と地下鉄渡辺通り駅を直結、フリンジパーキングも整備して南部の交通ゲート機能を担う。
「まちの共益費」で都市経営
今回の提言の大きな特徴として、まちづくり事業やサービスを行政任せにするのではなく、都市経営という視点から、民間と行政が連携して「都市経営機構」という新たな組織の構築を盛り込んだことが挙げられる。
この根幹には、「まちの共益費」という考え方がある。天神を一つの地域コミュニティとしてとらえ、企業や地権者も応分の資金を出し合って、これを財源に街づくりをする。市民も資金提供や労働によってまちづくりに参画しようというわけだ。
都市経営機構は、行政、民間、市民の間に立って、まちづくり全体を統括・コーディネートする。その基盤は、行政が委譲する権限と、民間が提供する資金・人材・情報である。組織は行政、地権者、商業者などの実務責任者で構成。都市計画やマーケティング、財務など、公募等で集められた専門家が常駐する。特定非営利活動法人(NPO)のような組織形態が考えられている。再開発や交通、警備、緑化、清掃、イベントなど具体的な事業は、それぞれの専門業者に委託する。
米国のいくつかの地域では、商業地やビジネス街を「ビジネス改善地区」(BID)に設定、地権者や企業から負担金を徴収して街づくりをする仕組みが定着している。ニューヨークやシカゴ市ののBIDが有名で、保安パトロールや清掃をはじめ、観光案内、ウエブサイトなども運営している。
国内に、このような例はないが、税金として一律に集めて広範囲の公共サービスに使うよりは、資金をその地域だけで循環させた方が効率的な面だけでなく、地域の人の当事者意識も高まるのではないだろうか。
天神・渡辺通りまちづくり研究会
福岡の顔である天神・渡辺通地区を、魅力ある都心として維持していこうと、今年5月に発足した。渡辺通りの沿道(福岡都市高速・天神北ランプから渡辺通1丁目交差点まで)を対象に、地区まちづくりや開発事業構想、都市経営の仕組みづくりなどについて検討する。メンバーは、幹事の九州電力をはじめ西日本鉄道、福岡銀行、ダイエー、新天町商店街、福岡都新開発、九州朝日放送の7者で、財団法人・福岡アジア都市研究所と特定非営利法人(NPO法人)ComPus(コンパス、東京)が事務局を務めている。

11月に実地された天神社会実験でのヒトコマ

一連の社会実験をマスコミも大きく取り上げた
「新・福岡都心構想」に向けて
今回の提言は、新・福岡都心構想検討準備会(座長=出口敦・九州大学助教授)がことし3月にまとめた「『新・福岡都心構想』の作成に向けて」を受けたもので、今年度中にも取りまとめられる福岡市の都心構想に生かしたい考えだ。
準備会では、都心の将来像を「挑戦する都心」として、4つの《楽》の創造を戦略に掲げている。
(1)楽市=アジアとのビジネス交流・直接投資が活発な都心
(2)楽芸=新しい人材、文化と産業の育成が活発な都心
(3)楽居=自律的なコミュニティと特色ある地区で構成された都心
(4)楽歩=歩行・交通基盤と水辺が再生された歩いて楽しい都心
この4つの戦略の実現に向けた仕組みづくりとして、ここでも「福岡型BID」が提唱されている。
また、来年2月3日に開業する地下鉄七隈線(3号線)と天神地下街の延伸のタイミングを逃したくないことや博多駅地区の再開発の動き、それに天神地区への来街者の減少などに対する危機感が今回の提言に結びついたと言える。
提言をまとめた研究会の事務局を務めた後藤さんは「地元企業が集まり、各社のビジネスを一歩踏み越えて、地域の視点からプランを出した点が大きい。提言には賛否両論が出てくるだろうが、そのような議論のきっかけを民間が出したことに意味がある」と自己評価している。
しかし、提言の実現までには、検討課題も多い。まず、資金の要るシャトルラインの整備費や採算性の問題だ。数億円ならともかく数十億円単位となれば、整備費は行政、運営は民間といった仕分けも必要で、「公設民営」の考え方も出てくる。手掛けやすいのは清掃や案内表示など金をかけないでもできるもので、通りにおけるまちづくりの指針(ガイドライン)が必要となる。
都市経営の仕組みを構築するために、都市経営機構の設計や道路占有許可などの規制緩和、まちづくり財源のあり方などの研究も欠かせない。天神だけでなく都心全体の将来ビジョンを描くことも求められる。
このほか、提言では触れていない、天神・渡辺通りの“顔”である旧岩田屋跡地周辺やマツヤレディース、ショッパーズダイエー、中央郵便局周辺――などの個々の再開発、賑わいの重心が南下しているなかで、街としてどんな集積を図っていくのか、といった問題も横たわっている。
まちづくり研究会では、天神の将来ビジョンを福岡市や企業、地権者、市民で共有。今回の提言を単なる提言ではなく福岡市の構想として制度的に位置付けた上で、具体的な事業計画を作成。社会実験、規制緩和などの関連制度を整備して都市経営機構を設立することにしている。事業の実現目標年次は2014年である。
フリンジパーキング/駐輪場の短時間無料開放/歩行者天国/水上バス
社会実験で天神の新しいまちづくり始まる
福岡市の《顔》である天神を歩行者優先の「憩いと魅力」に満ちた街にしようと、(1)交通混雑緩和 (2)駐輪対策 (3)憩いの空間の創造――の3つのプロジェクトが実施された。
主催したのは、地元商店街や百貨店、西鉄、福岡市などで今年7月に発足した「天神社会実験実行委員会」。狙いは、交通混雑や違法駐輪で魅力低下が懸念される天神の再生だ。
期待されるフリンジパーク利用者増
まず、交通混雑緩和策として、天神地区の外縁部(フリンジ)の駐車場を利用し、バスや歩いて移動することで都心への交通量を抑える試みが「フリンジパーキング」と呼ばれる。11月1日から21日まで毎日午前9時から午後11時まで実施された。
博多ふ頭と長浜の駐車場計3ヵ所(約1500台収容)に駐車した人には同乗者も含め、天神までのバス利用を往復一回ずつ無料にした。博多ふ頭―天神間は路線バスを利用し、長浜―天神間には循環のシャトルバスを運行。天神の3百貨店で5000円以上買い物した人には駐車場料金も5時間無料とした。
21日間で約2300人(1100台)の利用があり、実行委では市民に周知されれば、利用者は増えるとみている。ただ、無料シャトルバスは西鉄の協力がないと実現は難しいようだ。自転車の短時間無料開放は天神駐輪場(警固公園下)など4地区で実施している(11月1日〜12月31日)が、3時間無料といったお金の問題ではなく、使いやすい場所にあるかどうかがポイントのようだ。歩道上に対処療法的に増えている「サイクルポスト」も、歩道が狭くなって歩行者のとっては迷惑である。

西鉄が運行した無料のシャトルバス
見えてきた規制緩和の課題
歩行者天国は11月13、14の両日、サザン通りと新天町商店街東側の通りで行われた。自転車は押して歩いてもらい、オープンカフェや歩道をアートギャラリーとして開放したり、街頭パフォーマンスも登場した。オープンカフェは通常、道路占有が認められていないが、これを都心経営の観点から、どのように扱うのかも課題である。ストリートミュージシャン、ストリートパフォーマンスもオープンカフェと同じく規制の対象で規制緩和が課題となる。
歩行者天国では、清掃や警備を個店ではなく通り全体でしたり、ホスピタリティの実験でもあったようだ。
海上バスも検討課題に
水上バスは街づくり団体「水上交通研究会・福岡」(代表=樋口明・福岡県県議会議員)が福岡県などと連携して10月30日から9日間、那珂川の水上公園を発着点に、河口からキャナルシティ博多付近までを周遊した。水深や資金の問題などが、今後の検討課題となりそうだが、水上公園を発着点に、西戸崎や、百道のマリゾン―能古渡船場―今津湾の横浜と結ぶ海上バスの実験も合わせて行って欲しいものだ。博多ふ頭のアクセスが必ずしもいいと言えない中で、志賀島航路を利用して毎日200人余りの人が都心部へ通勤し、糸島半島から都心部へ通勤している人の多くがマイカーで職場へ向かっているからだ。(神崎公一郎)
「人に優しい街・天神への試み 渡辺通り大改造への提言」に対する皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
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