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新博多駅ビル開業と博多駅地区のまちづくり

2008年2月1日発行の18号より

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2011年春の新博多駅ビル開業へ向けて工事が進んでいる。交通結節、商業集積、文化情報発信など、その規模や機能の大きさの持つ効果、影響力はいかばかりのものか。そして、駅ビル開業と九州新幹線開通を起爆剤に、新たな都市再生のシナリオを描く博多駅地区を中心としたまちづくりの取り組みを紹介する。

工事が進む新博多駅ビル

現在、JR博多駅では、2011年春の新駅ビル開業へ向けて、工事が着々と進んでいる。在来線の隣では新ビル開業と同時に全線開通する九州新幹線ホームの工事、在来線ホーム下では新ビル地下部分の掘削後の躯体工事、また百貨店の博多井筒屋が入っていた旧駅ビルも今年度中に解体を終えて、4月から新ビルの基礎工事に入る予定だ。

新駅ビルは、開発面積約2万2000u、延床面積約20万u、地下3階地上10階建て、旧駅ビルの約6・6倍の広さになる。総事業費は600億〜700億円。売場面積4万uの核店舗には九州初進出となる阪急百貨店(大阪)、シネマコンプレックスにはティ・ジョイ(東京)の出店が決まっており、生活雑貨大手の東急ハンズ(東京)とも出店について基本合意している。

JR九州では、新駅ビル開発の特徴として、分かりやすい駅、象徴的な場、賑わいの場、心に適う場をあげている。具体的には現コンコースの南側にも筑紫口と博多口を結ぶルートをつくり、2階部分に、福岡交通センターやいずれ博多郵便局方面などと結ばれることで周辺への回遊性が向上するデッキを設ける。社会人向けのサテライトキャンパスなどの設置の検討や、バリアフリー対応なども進められている。

また、駅ビルのアートディレクターには千住博氏が迎えられ、ビル中央の吹き抜け空間の天井画をはじめ、主要な空間のアート計画のプロデュースを行う。千住氏は幅広い活動を行う世界的な芸術家で、2004年にオープンした羽田空港第2ターミナルビルの吹き抜け空間に展示された和紙に滝を描いた巨大な作品が話題をよんだ。

博多駅地区の概要と現状


解体工事が進む旧博多駅ビル

博多駅地区では、1957年度から78年度に施行された「博多駅地区土地区画整理事業」により都市基盤の形成・公共交通の整備がすすめられてきた。63年に博多駅が現在地に再移転して高架化され、75年には山陽新幹線が開通。博多港、福岡空港にも近い、陸・海・空の交通の結節点として、博多駅周辺地域は事業所やホテルなどが集積するビジネス拠点に成長し、九州・アジアの玄関口として大きな役割を担ってきた。そして今、博多駅地区では駅移転時に整備された建物の多くが更新時期を迎え、さらにビルの空室率も高いという現実もある。

ビジネス集積が進む一方で、例えば、駅周辺地区に位置する博多部では小学校が統廃合され、御供所町を中心に由緒ある古い寺社が数多く点在する歴史ある地域の衰退に歯止めがきかない。このような博多部をはじめ博多駅周辺は、近年の都市回帰現象で人口は増えつつあるが、その内訳はワンルームに居住する若者に代表される単身者が多い。博多駅周辺には商業施設や文化施設、公園などの空間に乏しく、ゴミや落書き、違法駐輪、風俗店舗やピンクチラシ、街灯が少ないことによる引ったくりなどの犯罪、公園内のホームレス対策など、定住者にとっての環境は決して快適とは言えないのが現状だ。

まちづくりに向けた提言

2004年5月、博多駅周辺地域は、博多駅ビルの整備事業を主要プロジェクトとする都市再生緊急整備地域に指定された。そこでは、九州新幹線の開通を契機に、交通結節機能の充実化とあわせて、業務・商業機能等の高度化により、九州・アジアの陸の玄関口にふさわしい魅力ある都心拠点を形成させる必要性を説く。また、駅周辺における都市再生、まちづくりの機運の高まりに連動したものであることを述べている。この指定を受けると、民間業者らによる都市計画の提案や規制緩和、金融支援などの制度が利用できる。

駅周辺地区のまちづくりに関しては、地域の事業所や店舗、住民などの団体などにより個々の取り組みが行われてきたが、2004年に九州・山口経済連合会(現九州経済連合会)がJR九州などの駅周辺の地権者に呼びかけて設立された民間主導の「博多駅地区まちづくり研究会」と、05年に福岡市総務企画局に事務局を置き、地元経済界や学識経験者らによる「新・福岡都心構想」策定委員会が設置され、06年には、それぞれ提言書、最終報告書が出された。

博多駅地区は、その機能と集積を高めながらも、天神地区の持つ商業集積や周辺地域への回遊性などの都市としての魅力や人のにぎわいには及ばない。また、博多駅地区での再開発やまちづくりなどの取り組みとともに、天神地区から川端・キャナルシティ博多を経て、博多駅地区への回遊ルートをつくることも繰り返し提案されてきたが、人の流れを大きく変えるまでにはいたらなかった。

しかし今回、九州新幹線開通・新駅ビルの開業が、住民・企業・団体・行政などが一体となったまちづくりの波に乗って、大きなうねりを生み出すことになるのは間違いない。

阪急百貨店の出店が生む人の流れ

そのうねりを起こす大きな要因のひとつと考えられるのが、新駅ビルの複合商業施設であり、その核店舗となる阪急百貨店は駅ビルの地下1階から8階部分、売場面積約4万u、開業後1年間の売上目標約400億円を見込む。阪急百貨店は1929年、世界で初めてのターミナル百貨店として大阪・梅田で開業した。その後47年に阪急電鉄から分離独立、2007年には阪神百貨店と経営統合しエイチ・ツー・オー リテイリングを持株会社とする小売グループとして、阪急阪神ホールディングス、東宝とともに阪急阪神東宝グループの中心を担っている。現在、売上高西日本一、入店来客数年間5000万人を誇るうめだ本店と、関西、首都圏で10支店を展開する。

阪急百貨店は地の利を活かし、その強みと言われる「ファッション」では天神地区より大きなビジネス街のOLを取り込み、「食品」でも公共交通機関を使って博多駅に集まる人々を《デパ地下》に呼び込むことが予測される。平日は通勤圏内を出ることはなく、休日に集中して天神地区に出かけて買い物をする傾向にあると言われる博多駅周辺に働くOLの多くがアフター5に立ち寄れる環境を手にし、博多駅を乗降、乗り継ぎ点とする通勤・通学、買い物客にとっても、天神地区の買い物機能を駅ビルで満たされることは、大きな魅力であるに違いない。もちろん、阪急百貨店は足元だけでなく、そのブランド力を活かした商品展開や文化、情報、アメニティ関連の発信、強力な特典を付加したカードなどを駆使して、JRとも連携して九州一円に商圏の拡大を図り、天神地区のデパートとの新たな競合も生まれるだろう。

さらに、東急ハンズやシネマコンプレックスのティ・ジョイなどの専門店ゾーンも含めて、一大商業集積を形成することになる駅ビルは、天神地区に集中していた人の流れを博多駅へと少なからず変えていくに違いない。天神地区と博多駅地区との人の回遊を促すハード面の整備やソフト面の仕掛けも必要となる。

「博多駅地区まちづくり推進組織準備会」設立

2007年4月、博多駅地区で事業を営む21(現在23)の企業・団体、地区内の5自治協議会、学識経験者、福岡市で構成される「博多駅地区まちづくり推進組織準備会」が設立された。これは、06年12月からJR九州など9団体がワーキンググループとして勉強会を開き、前述した「博多駅地区まちづくり研究会」の提言と「新・福岡都心構想」の報告を引き継いでスタートした。

同会は、まちづくりの準備期として、マネジメント、事業(アクション・プランニング)部会ごとに検討やワークショップ、シンポジウム、ガイドライン骨子案の策定などに取り組み、08年春の「博多駅地区まちづくり推進組織(仮称)」設立を目指している。

博多駅地区の再創造・まちづくりにおいて、ポイントとなるところを整理していくと次のように集約される。まず、交通結節点である博多駅、集積されたビジネス街など、現在ある機能・環境の強化、形成を行って、九州・アジアのゲートウェイシティを目指す。そして、現在欠けているにぎわいや回遊性創出のための戦略と整備だ。その中でも特に、にぎわい創出のための重要なエリアとしているのが、新たに誕生する「駅前広場」と、博多駅とキャナルシティ博多を結ぶ「はかた駅前通り」、「筑紫口」、そして「御供所地区」の寺院などを中心とする博多部の歴史的文化資産だ。

まちづくり戦略のポイント


博多駅前から真直ぐに伸びるはかた駅前通り

この3つの戦略点のうち、駅前広場の重要性については、巻頭インタビューで唐池恒二博多駅地区まちづくり推進組織準備会会長も述べている。はかた駅前通りは、博多駅の正面からキャナルシティ方面へと向かう4車線の道路で、歩道に沿って並ぶビルはオフィスや営業所が多い。ほとんどオープンスペースもなく、歩いていて通りとしての華やぎや楽しみはあまり感じられない。歩道ぎりぎりにまで建てられたビルと、交通量の多い道路にはさまれた空間に人の流れを引き寄せるには、工夫やアイデアなどのソフト面とともに、行政によるハード面での誘導も必要だ。福岡市は、博多駅周辺地域など都市再生緊急整備地域を中心に、容積率インセンティブの評価視点に新項目として、まちづくり取り組み評価をあげた「都心部機能更新誘導方策」を検討している。航空法による建物の高さ制限がある福岡市だが、将来的な制限緩和の検討も望まれている。

実際に、はかた駅前通りを歩いてみると、バス移動に比べキャナルシティとの距離が近いことに驚かされる。それが、この通りの大きな魅力と可能性だ。だが、キャナルシティの手前で道路がいくつも交差して、動線が方向性を失う。ここから川端地区を経由して天神へと人の流れを導く回遊性の確保は、これからの大きな課題だ。

一方、博多駅地区では、各地区の自治協議会やまちづくり協議会のほか、主に博多部を中心に、はかた部ランド協議会、NPO博多まちづくり、NPO博多の歴史と文化の寺社町ネットなどの団体、あるいは個人レベルで、それぞれまちづくりに取り組んでいる。


博多部の祭りとして定着した灯明ウオッチング

07年10月〜11月、福岡市博多区役所総務部企画課に事務局を置く博多情緒めぐり実行委員会は、地祭りや各種団体による催しなどを包括した「博多情緒めぐりキャンペーン」をPRした。期間中、ボランティア団体「福博まちめぐり協議会」による寺社めぐり、博多昔話めぐりなど8つの散策モデルコースでの「ガイドと街歩き」が11日間にわたって実施され、また、御供所ライトアップウォークや博多灯明ウォッチングなど多彩な催しが開かれた。

同課博多部活性化推進担当の満江正博主査は、「博多部ではこれまでもハード、ソフト面でまちづくりが取り組まれてきましたが、人の流れが通年化しているわけではない。一方、地域の住民にとっては生活を営む場所という現実もあります。しかし、地域資源の活用で、次の世代につなぐ「まち」が変わり得るという視点は確実に浸透し始めています。今回の博多駅の変化は大きな影響力があります。この変化を絶好の機会と捉え、官民が少しずつサポートし合うことで、地域の力を大きくしていく取り組みが、博多部の振興につながると思います」と話す。

天神地区のエリアマネジメント


自転車は押して歩こうという「おしちゃりロード」をキャンペーン

最近、まちづくりのキーワードとして使われるエリアマネジメントとは、個々に開発するのではなく、地区全体で管理・運営・開発などを行い、継続的で質の高いまちづくりを行っていこうというもの。運営には住民・企業などを含めた地域の関係者に、行政などが加わり、組織形態は任意、中間法人、NPO法人、株式会社などさまざま。それぞれに一長一短があり、地区の現状に適した形が選択されているようだ。オフィス街に無料巡回バスを走らせた東京都の大手町・丸の内・有楽町地区の大丸有エリアマネジメント協会はNPO法人、福岡天神地区で活動している「We Love 天神協議会」は任意団体である。同会事務局の草場康文さんは次のように話す。

「天神モビリティタウン協議会の提言や社会実験『TENJIN PICNIC』を行っていく中で、恒常的な組織の必要性を感じ、準備会を経て、2006年4月に『We Love 天神協議会』を設立しました。会の立ち上げは、費用負担や参加形態など、もちろん参加者の思いはそれぞれで、大変でした。しかし、天神の商業者の団体『都心界』、さらに設立時に合併した『天神発展会』もあり、問題解決や取り組みを個々ではなく、みんなでやっていくことについての一定の理解があったことが大きいと思います。

今年度も、福岡市と連携して行っている自転車危険走行対策『おしちゃりロード』や、秋からクリスマスシーズンにかけたオープンカフェ、『天神のクリスマスへ行こう』などの様々な事業を実施してきた。同会の会員数はおよそ100、天神地区関係者の間での認知度は以前より上がった。「活動内容や地区で求められていることを整理しながら、天神地区にとってプラスになるように長期的な視点で取り組んでいきたい」と、草場さんは言う。

博多駅地区のまちづくりが目指すもの

博多駅地区まちづくり推進組織準備会は、08年春に本組織を設立しまちづくりをスタートさせる。まちの理念は、「『九州』『アジア』の玄関口である博多駅地区を舞台に、住む人、働く人、訪れる人が主役となったまちづくりを進め、皆に愛され誇れるまち、新たな時代の魅力的な風格のあるまちを創造していく」とし、まちの将来像は、進化し続ける九州・アジアのゲートウェイシティ「博多」▼ビジネスと商業が融合する新商都「博多」▼歴史と共生し新しい文化や情報を生み出すまち「博多」▼いつも賑わいのある楽しいまち「博多」▼モラルとやさしさがある安全安心なまち「博多」▼さまざまな人と地域が交流しともに育むまち「博多」、である。   

現在、博多駅地区には準備会以外に、はかた駅周辺および駅前通り発展協議会、博多大博通りクラブ、博商会、博多駅東街づくり連合会などの団体が個々に街の活性化事業に取り組んでおり、準備会は、現段階では連携を図って事業を推進することとしている。

設立が予定されている「博多駅地区まちづくり推進組織(仮称)」では、まちづくりガイドラインを作成し、にぎわい創出、安全安心、環境などソフト面のマネジメントと、建物更新などハード面でのマネジメントや、賑わい回遊性を検証する社会実験を行う予定である。ソフト面では地域のまちづくりの団体やNPO、地域資源である寺社などとの連携も必要となってくる。さらに、住人の生活環境も含めた全体をカバーするトータルな視点も忘れてはならない。エリアに住む人、エリアで働く人、エリアを訪れる人、そしてエリアを越えて回遊する人、すべてにとって快適で安心なまちづくりが望まれている。

2011年を目指して、キャナルシティ博多は「第2キャナル」計画を進め、ディズニーの屋内型娯楽施設も誘致テナント候補のひとつであることが明らかになった。天神地区のデパートも次々にリニューアル計画を打ち出す。2011年春に向けて動き出し、加速するムーブメントが、まちづくりという共通の言葉で語られる時、そこに未来の福岡市の都市像が描き出されていくことになるのではないだろうか。(遠山香澄)

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※当ページの内容は、2008年2月1日発行の18号に掲載されたものです。

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