フォーラム福岡

天神および博多駅の開発シナリオ天神写真

「街なか」活性化によるまちづくり

2007年6月9日発行の14号より

フォーラム福岡14号特集記事に関するアンケートを実施しております。ご協力いただいた方全員にフォーラム福岡14号をプレゼントいたします。皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
こちらのフォームよりご回答ください。» アンケート回答フォーム(回答締切7/31)

街なかの人のにぎわいが薄れ、商店街がシャッター通りになっていることに、気がついたのはいつの頃だったろうか。これから、この街なかをどう活性化し、新たなまちづくりに取り組んでいけばよいのかを考えた。

なぜ、街なか活性化なのか 
「コンパクト」「サスティナビリティ」をキーワードに

中心市街地、いわゆる街なかは、「街の顔」だ。風土や歴史に育まれ、人々の暮らしや産業、文化によって形成された、趣も造作もそれぞれに異なる顔だった。そこに住まい、働き、暮らし合う人々の生活の拠点、にぎわいの場としての機能を担ってきた。しかし今、多くの「街の顔」は、深いかげりを宿している。

にぎわいが失われていく中心市街地に対しては、98年以降、規制緩和や巨額の財政支出などによって活性化が進められたが、衰退傾向にほとんど歯止めをかけることができなかった。そこで、2006年に改正された「まちづくり三法」では、コンパクト・シティ構想がコンセプトとして挙げられた。中心市街地の都市機能の増進及び経済活力の向上のために、商業機能ばかりでなく、業務や居住機能などの都市機能を中心市街地に集中させようというものだ。その背景には、少子高齢化・人口減少社会、環境問題への関心の高まりなどとともに、財政面でも効率的な自治体運営による行政コスト削減があげられる。


高橋美保子さん

街なかの活性化については、さまざまなキーワードで語られるが、九州大学大学院人間環境学府で都市共生デザインを専攻する高橋美保子さんは都市のサスティナビリティ(持続可能)を数値化する研究に取り組んでいる。「サスティナブル」「サスティナビリティ」とは、87年に国連で出された報告書で、開発自体のあり方を問うた「サスティナブル・ディベロップメント」から派生した言葉である。

「私たちは、地球温暖化などの環境や人口減少という大きな問題に直面しています。今までは考えなくてもよかった車から排出されるCO2などの環境負荷、広がり続ける街を維持するためのインフラ(社会基盤整備)コストなどには、限りがあることを事実として突きつけられました。すべてに上限があることを認識した上で都市を見直そうとした時に、街なか活性化の必要性が出てくるのではないかと思います。例えば、CO2を削減するために環境税をかけるなど直接的な施策では、車を運転できなくなり、不便を強いられる人が出てくるかもしれない。そうした生活の質を低下させることなく維持しながら、負の部分をできるだけ少なくしていくには、ある程度インフラやサービスが整備されている街なかをもう一度見直し、都市のコンパクト化がサスティナビリティに与える影響を考えていかなければならないと思う」

離れた職場と住居、車社会は郊外に大型ショッピングセンターを出現させ、街なかは衰退し、開発は環境問題を多発させた。そして今、問題化した弊害を是正するためには、効率を考えて分離・拡大したものをもう一度コンパクトに混合し、都市としての公平さと自立性と多様性を持ったサスティナブル・シティとして再生させることが必要だと高橋さんは説く。

「環境負荷とコストの削減を数値として計算していくと、コンパクトであることが効率がよいという結果が導き出されます。コンパクトとは、低密度に分散していたものを集約して人口や機能の密度を高めていくというだけでなく、分離していた用途・機能を混合・融合させる、という2つの意味を持ちます。用途や機能の混合によって、職住近接の環境をつくり出すことで自立した地域をつくると同時に、病院・保育園・買い物などの生活施設や環境は確保され、車の移動による負荷も少なくできる。自立性が高まることで、外部の状況の変化による影響を受けにくくなり、多様な人や仕事、サービスなどが混在することで、変化に対する柔軟性が期待できる。時間の変化に強い都市の方向性がかたちづけられるのです」

すでに富山市や青森市で進められているが、コンパクト・シティには絶対的なモデルもなく、イメージもさまざまで、拒絶反応が示されることもある。街なかには、それぞれの歴史や立地環境などがある。それぞれの条件に似合った取り組みがなされるためには、固定されたモデルがつくられる方に、むしろ弊害は生まれたかもしれない。

高橋さんは、移動にかかるCO2の量、インフラにかかるコスト、駅からの距離(利便性)といった生活の質などを取り上げて、その数値化に取り組んでいる。それらの数値を指標に、評価するためのツールとして用いながら、街に合った地図を描いていくことがよいのではないか、というのが高橋さんの考えだ。 図表1では、福岡市のトリップ(人がある目的を持ってある地点からある地点へ移動する単位)あたりCO2量を表す。一極集中の福岡では都心から離れるにしたがって、高くなる傾向がある。公共交通機関の有無などによっても異なる。図表2は、仮想都市での分散モデルとコンパクトモデルを作成し、人口が増加する中で、30年間のコスト循環負荷の低減効果を求め、その差をコンパクト・シティの便益とし、コンパクト・シティの形成にかかる費用と比較したものだ。都市形成コスト(道路、上下水道、公園にかかるコスト)の削減効果が大きいことが見て取れる。

「コンパクト化による街なか再生は、街をヒューマンスケールに戻すことだと思う。車社会のための道路を取り戻し、人間を重視したライフスタイルを取り戻して、生活の質を維持しながら負荷も削減されていくサスティナブル・シティであるために、街なかを再生していくことは、目的であり結果でもある。失われ、損なわれたあらゆる機能は、見直して再生していかない限り、取り戻すことはできないのですから」

商業の活性化が、街なかのにぎわいを支える

街なかのにぎわいは、商店街やオフィス街をはじめ、行政機関や文化施設などの都市機能が集積する中心市街地に集まった人々によって生み出される。人は何を目的に街なかに集まり、それを呼び込み支えているのは何だろうか。

中心市街地に出かける目的を、居住区別に見たのが図表3だが、「買い物をするため」が圧倒的な多数を占めているのがわかる。中心市街地の活性化には、商業の活性化が最重要課題であることは、これまでの施策の取り組みを見ても明らかだ。街なかのにぎわいを取り戻すために必要なものを、商業の活性化を通して考えてみることにしよう。

「『商業の活性化とは商業がどうなることか』ということが定義されていないことが問題です」と言うのは、マーケティングコンサルタントでクオールエイド(武雄市)代表の武雄信夫さんである。目的や達成目標が掲げられないまま、個別の事業が自己目的化して一人歩きをし、その結果、成果の蓄積や相乗効果が実現されず、中心市街地の衰退、空洞化をとどめることができなかった、と続ける。インタビューで話を聞いた福岡大学の田村馨教授もまた、「商店街がなくなって困る地域は、だんだん減ってきている。商店街の社会的な機能がなくなっている」と話す。

中心市街地の商業街区の衰退については根が深い。活性化が叫ばれ、事業者の意識改革や世代交代の必要性が説かれ、内外からカンフル剤が打たれて試行錯誤も繰り返された。今回のまちづくり三法の改正では、街なかがさびれた原因には、郊外への移住による人口減があったとし、街なか居住を進めている。人口が増えれば、買い物客もにぎわいも増えるだろうという考え方だ。しかし、人通りは多いのに買い物客は少ないという佐世保市、居住者は多くても衰退するという愛知県刈谷市の商店街などの例もある。新たに街なかに高層マンションが建設され、人口や通行量が増えたとして、それが商業の活性化にいかなる影響を及ぼすのかという報告は、いまだ出されていないのが現状だ。


武雄信夫さん

武雄さんが考える商業の活性化とは、「どういう買い物の場づくりを目指せば存続できるのかを考え、その方向で商店街や店を再構築していくこと、実現へのシナリオをつくり、漸進的に必要な事業に取り組んでいくこと。これが中心市街地が目指すべきあり方であり、持続可能な都市の自立の一環」だ。もっと具体的に言えば、中心市街地の商業街区を改めてショッピングゾーンとして再生させる。都市及び周辺に住んでいる人々が生活をいっそう堪能するために不足しているものは何かを知って、品揃え、接客サービス、環境を整えていく。自らの商売の命運をかけて、勉強しながら実践すること。武雄さんは、今回の改正「中心市街地活性化法」に基づいて作成される「基本計画」には、そうした商業者が実現を目指すべき店づくり・ショッピングゾーンづくりの方向と自助努力について、しっかりと計画することが大切だと言う。その上で、商業者、行政、商工会議所やTMO(Town Management Organization)などが役割分担をして取り組んでいくことで結果が導き出されるのではないか。

都市の自立性は、高橋さんも挙げているサスティナブル・シティの理念の1つでもあるが、武雄さんはサスティナブルであることについても、「活性化にしてもコンパクト・シティにしてもそうだが、もっと『攻め』のマーケティングが必要。端的に、中心市街地を軸に都市の内部でお金が循環する仕掛けづくりと言ってもいい。削減や縮小ばかりでなく、人々が生活をいっそう堪能できるための条件を、中心市街地が提供するという、時代に不可欠な存在価値を目指すことで、雇用機会やビジネスチャンスが生まれ、人々の生活環境がよくなる。さらに日本や世界など広い視野で考えた時、どういう役割を担おうとするのか、的確なビジョンをつくることが大切だ。役割を分担することで事業機会が生まれ、お金が回ることによって、持続可能なまちづくりができるという発想の逆転が必要だ」と言う。

さまざまな街なか活性化の取り組みの中で
新たなまちづくりを考える

では、福岡市や北九州市のような大都市では、街なかの活性化はどのように取り組まれることになるのだろうか。天神や川端地区などの福岡市の商業集積地では、変わらぬにぎわいが繰り広げられているが、「元気な都市」福岡も決して安泰というわけではない。

福岡大学の田村馨教授によると、1998年と2003年の調査では、福岡市天神地区の来街頻度、通行量はともに減少している。なかでも大きく減少したのが周辺市町村からの来街者比率で、郊外に立地する大型SCの影響だと推定されている。さらに、02〜04年にかけての小売販売額は、福岡市でも0・6%と微増だが、天神地区(統計区)ではマイナス13・7%と減少し、額にして518億円分の減収となっている(04年商業統計調査データ)。大型施設等の立地によってにぎわいを生み出してきたという側面を持つ福岡市では、これから取り組むべきまちづくりをどう描いていけばいいのだろうか。

「空き地ができたら高層マンションを建てるというような画一的な街なか再生が進んでいるが、果たしてこれを街なか再生と呼んでいいのか、立ち止まって考えるべきだ」と田村教授は問いかける。景気は上向いてきているとはいえ、格差社会となっている現状で、高齢者や若者にも住める家賃なのか。さらに高齢者用マンションに入居しても、病院や買い物などの環境は整っているのかという問題もある。

田村教授は、そうしたリニューアルの対極に古いものをそのまま活かすというビジネスモデルをおいて、その間にいろんな街なか再生の方法論があっていいと考える。

その1つの手法が、福岡市博多区にある冷泉荘だ。築49年の5階建アパートが、若いクリエーターたちが思い思いに内装に手を入れた店舗として生まれ変わった。冷泉荘内の企画運営室を中心に取り組む3年間限定のプロジェクトである。福岡市内のほかの地域でも同様の取り組みが進められているが、住民では守れない古い建物を、壊わさずに手を入れることで再生しようという本格的なリノベーション会社は全国にいくつかあるそうだ。彼らは、どういう人に住んでほしいかというシナリオを構想し、プランニングをする、高い技術とノウハウと企画力を持ったプロの集団である。

古今和歌集に橋守という言葉があるそうだ。大切な橋だから大事に保守しながら200年、300年と使っていく。手入れをしながらものを大切に使うという日本人の美徳は、高度成長期に開発と消費という大きな波にのまれて流れ去ってしまったが、今再び、取り戻される時にきているのだ。

田村教授はまた、天神から少し離れた福岡市薬院周辺に散在するカフェやショップに注目する。この地区には単身の女性が多く住むが、店を経営しているのも同じような女性たちだという。「立地ですね。どういう人が住んでいるのか、ライフスタイルをイメージできるから、ターゲットもコンセプトも明確になる。商売の原点と言えます。住んでいる人が生活しやすいコンパクトさで、それは外から来た人にとっても回遊しやすい街であり、さらにハードのコンパクトさよりも、ソフトで補うことができるコンパクトさが、コンパクト・シティの定義だと思う」と田村教授は言う。

街なか活性化によるまちづくりは、改正まちづくり三法に則った行政や開発業者によるインフラなどの整備が行われる一方で、商業街区の事業者や関連機関、NPOや住人、学生や個人などによる取り組みがあることで、多様で重層的なまちづくりが可能になる。

かつて話題になり、小中学校の教科書にも載せられている「もしも世界が100人の村ならば」というメッセージがある。世界各地に住む人々の生存環境を100人の村に置き換えたものだが、世界規模では点としても描けない個人のイメージが、100人と限定された中では鮮やかな存在として浮かび上がってくる。

コンパクト化されることによって、都市機能をはじめ、街なかのさまざまなにぎわい、居住者の暮らしぶりなど、それぞれの大小入り混じった点が存在感を持って立ち上がり、線となり面となって、「街の顔」を描いていく。これからはさらに、意識された育てるまちづくりが必要だ。そして、すべてのものに限りがあることを知るからこそ、サスティナブルなまちづくりを目指していくことができるのではないだろうか。(遠山香澄)

フォーラム福岡14号特集記事に関するアンケートを実施しております。ご協力いただいた方全員にフォーラム福岡14号をプレゼントいたします。皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
こちらのフォームよりご回答ください。» アンケート回答フォーム(回答締切7/31)

※当ページの内容は、2007年6月9日発行の14号に掲載されたものです。

<< トップページへ

Copyright © 2007 Forum Fukuoka. All Rights Reserved.

推奨ブラウザ:IE6以上・NN7以上・Safari・Firefox