フォーラム福岡

天神および博多駅の開発シナリオ天神写真

福岡県における「街なか再生」への取り組み

2007年6月9日発行の14号より

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まちづくり三法改正後の福岡県下のまちづくりは、どのように変わるのだろうか。現在、福岡県が策定を進めている「立地ビジョン」をもとに今後のまちづくりのあり方について考えてみる。

深刻な「街なか」空洞化への対策として中心市街地再生検討委員会が提言

大規模集客施設が幹線道路沿線や郊外部に進出する一方、中心市街地では、人口の減少や高齢化が進み、空き店舗が増加する分、「街なか」の衰退は、福岡県内の各都市でも深刻な状況を呈している。



福岡県下の大型店の立地状況をみると、91年には中心市街地をはじめバスターミナルや駅周辺などのいわゆる「街なか」への立地が54%を占め、郊外部は46%だった。その後、2002年になると「街なか」は23%にとどまり、77%が郊外への進出となっている。 

その一方で、福岡県内の商店街の空き店舗は増加傾向にあり、街なかの人通りは大幅に減少している。さらに商店街周辺に多くの空き地が点在している状況だ。

かつて、街なかにあった公共・公益施設までも郊外へ移転し、地方都市における従来の中心部は、完全に空洞化しているケースもある。

典型的な事例を見てみよう。旧甘木市(現朝倉市)では、かつて商店街を中心に中心市街地が形成されていた。しかし、60年代頃からモータリゼーションが進行し始め、住宅地の郊外開発がすすみ、さらに73年の市役所移転を皮切りに警察署、消防署など公共施設も郊外へ移転していった。

この間、街なかに空き店舗が出始め、次第に活気が失われていく。87年に大分自動車の開通に伴い甘木インターチェンジが開設した。街なかから甘木インターチェンジに通じる道路が整備され、90年代に沿道の商業開発が急速に進展していく。94年には市民センターも沿道沿いの郊外へ移転した。2000年代に入って、街なかのバスセンターが廃止され、街なかは衰退の一途をたどる。人・モノ・情報が交流し、都市機能が集積していたが、いまや崩壊しつつあると言っても過言ではないだ
ろう。

このような中心市街地の衰退を目の当たりにして、福岡県では2005年2月、有識者による「福岡県中心市街地再生検討委員会」(委員長:樗木武九州大学名誉教授)を設置した。少子・高齢化社会への対応をはじめ、都市が様々な活動を支える機能を持ち続け、持続発展が可能なまちづくりの観点から、現状の分析・検討に取り組み、2006年5月に「街なか再生」へ向けて提言した。。

都市機能が拡散するまちづくりから
「コンパクトなまちづくり」への転換

「街なか再生」が、なぜ必要か?


福岡県建築都市部
吉田信博・都市計画課長

この点について、福岡県建築都市部都市計画課の吉田信博課長は、街なかの衰退と同時に進行する「郊外への都市機能の拡散」の問題点を指摘する。

都市機能の郊外への流出する流れを放置して、低密度な市街地が拡散的に広がっていくと、道路や公園などの都市基盤の整備・維持が極めて非効率になるのだ。このような状況では公共交通の維持ができず、おのずと自家用車に依存せざるを得ない。

自動車に乗らない人にとって、不便な都市になってしまうのはもちろんのこと、自動車への依存によるエネルギー消費量の増大、環境負荷も大きな問題となるだろう。また、新たなインフラ投資や維持管理費など財政負担の増大も避けられない。そして、地域の歴史・文化・伝統が蓄積されていた街なかの衰退、そして郊外開発による自然環境の破壊は、都市としての個性をなくしてしまう結果も招きかねない。

「少子・高齢化が進む福岡県において、これからの持続可能なまちづくりを考えたとき、現在のような『都市機能が拡散するまちづくり』から『便利で、安全で、魅力ある都市生活を送ることができるコンパクトなまちづくり』へ転換していくことが求められる。そのためには、もともと様々な都市機能が集積し、都市の個性を育んできた『街なか』において、公共交通を活用していくことで自家用車に過度に依存せずに歩いて暮らせる『街なか』の生活空間を戦略的に再生していくことが有効となる」(吉田氏)

福岡県中心市街地再生検討委員会では、「都市機能を集積する都市づくり」への転換、「街なか再生への戦略的な取り組み」を掲げた上で、単に商業機能の拠点としての中心市街地の再生ではなく、商業、居住、医療、文化、雇用など多様な機能が適正に集積し、新しい魅力的な都市生活ができる「街なか再生」を提言している。この提言を踏まえ、福岡県では、優先的に取り組むべき施策として「街なか居住の推進」と「街なか集客力の向上」「大規模集客施設の適正立地」の3つを打ち出している。

「街なか居住の推進」については、福岡県でガイドラインを策定している。市町村と連携しながら、にぎわい施設を併設した優良な「街なか住宅」の整備をはじめ、既存ストックの有効活用によって居住機能の向上、さらにスムーズな住み替えが可能となるような住宅市場の環境整備などを進めていく考えだ。また、「街なか集客力の向上」のためには、市町村やTMO(Town Management Organization 中心市街地における商業まちづくりのマネージメント機関)、地域住民が一体となって活性化に取り組んでいる商店街を「戦略的モデル事業」として重点的に支援していくことで、目に見える成功事例を創出していきたいとしている。

一方、「大規模集客施設の適正立地」は、ゾーニング規制を強化し、ゾーニングで立地できない地域、すなわち郊外立地については、まちづくりの観点から都市計画の手続きの中でその可否を客観的に判断するとしている。さらに、この提言に基づいて、福岡県は「大規模集客施設の立地ビジョン」を策定した。

大規模集客施設の立地ビジョンを策定
都市機能が集積する拠点、広域拠点を設定

冒頭にあげたように、近年、福岡県では大型店の4分の3が郊外に立地し、このことが街なかの衰退の大きな要因となっている。街なかの活力の維持・再生など持続可能なまちづくりのためには、大規模集客施設の適正立地が不可欠である。このため、福岡県全体における大規模集客施設の立地方針を明示し、誘導していく指標となるのが、「福岡県大規模集客施設の立地ビジョン」である。

「適正立地の基本的な考え方は、『拡散する都市づくり』から、『都市機能が拠点に集積する集約型都市構造』への転換である。集約型都市構造を実現するためには、各種の都市機能が集積する拠点の形成が必要になる」(吉田氏)。

立地ビジョンでは、拠点を「都市機能(商業、業務、居住、文化、福祉、行政等)が集積し、多くの人が集まる場所であり、徒歩・公共交通等により、多くの人が到達可能な場所」と定義している。

この拠点の中でも「一つの市町村を超える広域的で、多様な都市機能が集積し、広域から多くの人が集まり、公共交通によるアクセスが確保されている」拠点を広域拠点と位置づけている。

この定義を踏まえた上で、都市機能の集積状況、徒歩でアクセスできる地域の人口、鉄道駅・バスターミナルからのアクセス性、道路・上下水道など都市基盤整備の整備状況、人口密度などを評価し、さらに県都市計画基本方針や用途地域、市町村の総合計画・都市計画マスタープランなどとの整合性を図りながら、福岡県内に107の拠点を設定している。このうち37の地点は広域拠点としている。

広域拠点について、福岡市内の例でみると▽JR博多駅/西鉄天神駅周辺▽JR姪浜駅周辺▽JR香椎駅周辺▽福岡ドーム周辺▽西鉄大橋駅周辺▽JR南福岡駅周辺▽JR箱崎駅周辺▽アイランドシティ、の8カ所だ。これらの広域拠点のほかに▽地下鉄六本松駅周辺▽JR今宿駅周辺▽西鉄高宮駅周辺などが拠点として設定されている。

これらの拠点のエリアについては、高度に機能が集中している地区では広く設定するなど、周辺の人口規模などを勘案して設定している。このため、拠点によっては10万平方メートル程度の拠点もあれば、300万ないし400万平方メートルにも及ぶところもある。

大規模集客施設立地を拠点に誘導
拠点以外ではゾーニング規制

大規模集客施設の立地については、これらの拠点に誘導し、拠点以外での立地は抑制するというのが基本的な考えだ。このため、土地利用制度においてゾーニング規制を導入している。具体的には拠点へ延べ床面積1万平方メートル以下の大規模集客施設を誘導し、広域拠点へは床面積の上限ナシで大規模集客施設が立地できることとする。

仮に延べ床面積1万平方メートル以上の商業施設を出店する場合、事業者はまず立地場所の都市計画や立地ビジョンの位置づけを確認し、広域拠点の範囲内で、かつ商業地域、近隣商業地域ならば、都市計画を変更せずに大店立地法による出店手続きを進めることができる。

一方、上記に該当しないケースでは、都市計画の変更による拠点形成の効果に対する評価することが求められる。市町村の都市計画審議会での審議はもちろん、周辺市町村、さらに住民にも公開して意見を求めた上で福岡県の都市計画審議会に諮る。都市計画審議会で同意が得られた場合には都市計画を変更して、はじめて立地が可能となる。

この立地ビジョンは、5月末の県都市計画審議会で承認された後、11月30日の改正都市計画法の全面施行までに都市計画区域マスタープランとして策定する予定だ。立地ビジョンについては、社会経済状況や都市機能の集積状況の変化などを踏まえ、必要に応じて拠点の設定などを見直していくとしている。

3つの施策の連携によって「街なか」を再生

福岡県では、福岡県中心市街地再生検討委員会からの提言に打ち出された「街なか居住」と「街なか集客力の向上」、そして「大規模集客施設の適正立地」という3つの施策を連携させることによって、街なかの再生を図っていく方針だ。

このため、都市再生機構や市町村との連携が必要となる。市町村では、福岡県が策定した立地ビジョンの実現に向けて、中心市街地活性化基本計画を策定していく。また、都市再生機構は敷地整備や老朽建築物の建て替え・共同化などをすすめ、都市再生へ向けて民間活力を誘導していく役割を担う。

福岡県内では久留米市では既に基本計画を策定中であり、今年度中に国から認定される見込みだ。そのほかに飯塚市、直方市、大牟田市などでも認定へ向けての計画づくりの動きがある。福岡県では、今年度中に1ないし2例の戦略的なモデルとなる地区が立ち上がることを期待している。

もっとも、このような立地ビジョンを制定しようとする動きは、全国の都道府県にみても2、3ぐらいしかない試みだ。それだけにまちづくり関係者や市町村の担当者のなかからは、「まちづくりの現状を省みずに策定されている面もみられる」「実際の運用に際しては、運用ルールの明確化が求められる」という声も聞かれる。また、「県の役割は本来、主体的にまちづくりに取り組む市町村の調整役であり、このように
率先して取り組む姿勢には疑問を感じる」という指摘もある。

立地ビジョンの取り組みへの期待と注目が集まるなか、本来の理念をまちづくりの現場に具現化できるのか、その動向から目が離せない。(永島順子)

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※当ページの内容は、2007年6月9日発行の14号に掲載されたものです。

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