フォーラム福岡

天神および博多駅の開発シナリオ天神写真

機能集約型のまちづくりへ挑戦

2007年6月9日発行の14号より

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まちづくり三法改正後によって、どのようにまちづくりが変わるのだろうか。そして、われわれの生活に、どのような変化をもたらすのだろうか。都市機能を中心市街地にコンパクトに集約した、新しいまちづくりの考え方に迫る。

伸長著しい「郊外」と衰退する「中心市街地」

90年代から日本各地で中心市街地が空洞化していく現象が見られるようになった。なかでも鉄道などの公共交通ネットワークが不十分な地方都市では、日常生活において自動車に依存してきた。


九州経済調査委員会
片山礼二郎・主任研究員

60年代から郊外での住宅地開発が進み、70年代に入ると幹線道路沿いに物販や飲食系のロードサイド店も登場する。その後巨大なショッピングセンターに代表される大型商業施設の出店も相次ぎ、激しい競争が繰り広げられている。「郊外型店舗のライバルは、同じ業態の郊外型店舗である。郊外型店舗も進化していっており、新しい郊外型の大型商業施設ではシネマコンプレックスやカフェなどの都心的な機能を取り込み、時間消費型を志向している」と、流通関係に詳しい片山礼二郎・九州経済調査協会主任研究員は分析する。

その一方で中心市街地はクルマ社会に対応した道路アクセスが不十分な上に権利関係が複雑だったため、市街地開発は遅々として進まなかった。なかでも自然発生したような昔ながらの商店街は、道路が狭い上に駐車場も不足がちで、さらに魅力的なお店が少ないという悪条件が重なり、人々の足どりは途絶え、空き店舗ばかりが目立って、いわゆるシャッター通りとなったところも多い。

「活況を呈する郊外店」VS「衰退する中心市街地」という構図は、深刻の度を強める一方で「大型商業施設の立地は地域の経済活動にプラスに作用し、消費者からも支持されている」と、郊外の大型商業施設を擁護する声も多い。床面積4万ないし6万平方メートルの大型店が出店した場合、数億円の固定資産税が地元自治体に入り、さらにパート・アルバイトをふくめ2000人ないし3000人の雇用が発生するという試算も出ている。また、「中心市街地が衰退している原因は、商店街自体にあるのではないか」という指摘もある。

欧米で生まれた新しいまちづくりの考え方

日本と同様に欧米においても70年代以降、郊外開発による住宅供給の結果、都心部の老朽化や空洞化、スラム化などが都市問題となった。このような事態をうけて欧米では、商業や公共・公益施設、さらに住居などの都市機能を中心部へコンパクトに集約することで住民が歩いて暮らせるようなまちづくりの考え方が登場した。

80年代後半から90年代にかけてヨーロッパではコンパクトシティ、アメリカではニューアーバニズム、イギリスではアーバンビレッジと呼ばれる伝統回帰的なまちづくりが脚光を浴びる。これらの新しいまちづくりに共通する考え方は、自動車に依存した低密度となる郊外住宅地開発への反省として、自動車に頼らずに生活できる比較的高密度な都市生活圏を提案している点だ。

都市の空洞化と高齢化に悩まされるドイツでは伝統的な町並みを生かし、商店や住居を都市の中心市街地に集めて歩行者天国や路面電車を整備していくことで暮らしやすいまちづくりに取り組んでいる。また、最近注目を集めるアメリカの地方都市では、鉄道駅を中心に商業施設や住宅地で周りを囲み、「ヒューマンサイズな職住近接型まちづくり」に取り組んでいる。

中心市街地を衰退させた真の理由とは……

人口減少時代の到来、高齢化社会の進展という時代背景を踏まえ、国土交通省では、「中心市街地再生のためのまちづくりのあり方に関する研究アドバイザー会議」(座長 金本良嗣・東京大学教授)を設置して、全国の地方都市の中心市街地や都市構造を分析した。

その結果、あきらかになったことは人口規模を問わず地方都市では、中心市街地の人口割合が減り続けていることだ。さらに中心市街地で働く人や事業所数の割合も同様に減少し続けている。つまり、地方都市の中心市街地から「人がいなくなる」という構造的な問題が存在したのだ。

加えて、役所や市民会館・文化施設、大規模病院などの公共・公益施設も郊外への流出がみられる。これらの公共・公益施設は本来、地方都市の中心市街地にあった。しかし、施設の老朽化などによる建て替えに際して、中心市街地での建替用地の確保が難しかった。さらに改正前の都市計画法では役所や病院などの公共・公益施設については、開発許可が不要だったため、移転先として地価の安い市街化調整区域を選ぶという結果になってしまった。

まず、中心市街地に住んでいた人が郊外へ移り住み、働いていた人たちも減ってしまい、さらに人々が集まって来る公共施設も郊外へ去った。そうした状況下、90年以降になると、郊外への大型商業施設の出店が急増する。当時は、まだ大店法があった時代だったが、商業調整が通達で廃止されるという規制緩和になった途端、大型商業施設の出店ラッシュを迎えたのだ。

つまり、「住む」人が郊外へ去り、人々が「集まる」役所や病院などの公共・公益施設も郊外へ移転し、そして「商う(働く)」場がなくなっていく状況があって、「最後に留めを刺したのが、郊外に出現した大型商業施設である」(渋谷和久・九州地方整備局総務部長)。

いま求められる、機能集約型の都市構造への改革

日本経済が高度経済成長をみせた60年代に都市部への急激な人口流入が進んだ結果、無秩序な郊外開発が進み、市街地が拡散してしまった。このような拡大拡散は、都市としての持続的な発展に影を落とすだけでなく、自然保護や環境保護の面でも問題が生じた。

今後人口が減少していく日本において、高度経済成長期と同様に市街地を拡散していくと人口や都市機能の密度が減ってしまい、薄っぺらで効率の低い都市になりかねない。このように効率の悪いエリアでは公共交通ネットワークが機能しなくなり、日常生活においてさらに自動車に依存することになる。

人口減少時代の到来に加えて、高齢社会がすすんでいくと自動車を運転できない高齢者ら交通弱者にとっては、住みにくいまちになってしまう。

また、郊外への拡散がすすむと後追い的に道路や上下水道などのインフラ整備や維持をしなければならず、厳しい財政状況下にある地方自治体では大きな負担となる。例えば、青森市の試算によると過去30年間に中心市街地から郊外へと人口が流出したために道路や小・中学校や上・下水道の整備に約350億円を投じたと弾き出している。

つまり、拡大分散型の都市構造自体が問題であり、このような都市構造を変えないと、中心市街地問題の根本的な解決にはならないのだ。

今後のまちづくりのあり方について2006年2月、国土交通大臣に答申を提出した社会資本整備審議会は答申のなかで「抑制と誘導の手法を組み合わせて無秩序拡散型都市構造を見直し、『都市圏内で生活する多くの人にとって暮らしやすい、望ましい都市構造』を実現するために『都市構造改革』を行うことが必要である」と謳っている。この点に関して、前出の渋谷部長は「高齢者をはじめ多くの人々にとって、歩いて暮らせるまちづくりとして、都市機能にアクセスしやすいまち、都市機能が集積した賑わいのあるまち、都市のストックや歴史・文化を活用したまちを目指すべきではないか」と説く。

あたらしいまちづくりへの挑戦

これまで明らかになったのは、「住む」「集まる」「商う(働く)」という機能を中心市街地に集約して、多くの地域と公共交通ネットワークでつないだ機能集約型の都市構造が望まれるということだ。

このような都市機能を集約した都市としては、鹿児島市が挙げられる。日本の三大都市圏以外の県庁所在地で、都市全体の人口と小売販売額に対する中心市街地の割合を伸ばしている唯一の地方都市は、鹿児島市なのだ。鹿児島市の場合、中心市街地などへのマンション建設が相次いでいることで街なか居住が進み、人口密度が高い。また、市役所をはじめとする官公庁施設や文化施設、大規模な病院などの施設も中心市街地に存在している。

近年、地方都市でも地価下落や再開発用地の出現などで中心市街地でのマンション開発が進み、人口の都心回帰にみられる街なか居住の傾向が見られるようになった。

また、中心市街地の商業についても、これまでライバル視してきたショッピングセンターの手法を取り入れながら、都心回帰の傾向がみられる。高松市の高松丸亀商店街に開業した再開発ビル「高松丸亀町一番街」では所有権と使用権を分離して導入したショッピングセンターの手法について、全国各地の商店街や自治体からの視察が相次ぐ。静岡市の静岡呉服町名店街では、店舗所有者とテナントの商店主が定期的な会議を開催、商店街の店舗構成のあり方も検討している。従来家賃だけしか気に掛けてこなかった店舗所有者が、商店街自体としての資産価値に関心を持つようになった。愛知県豊橋市の花園商店街は、かつて50軒あった店舗が2002年には半減して存亡の危機に立たされていたが、店舗所有者と交渉で賃下げして約10店舗の誘致に成功、復活へ向けて踏み出した。

都市の中心市街地などの街なかに「住む」「集まる」「商う(働く)」などの機能をコンパクトに集約した都市では、街なかに賑わいが生じてくる。また、公共交通機関も活用した「歩いて暮らせるまち」としていくことで自動車に依存することなく、高齢者にもやさしく、環境にもやさしいまちづくりが可能となる。

たしかに目の前には「既に拡大してしまった郊外をどうするのか」「都市計画がツールとして有効に活用できるか」「自動車への依存体質を克服できるのか」「郊外を抑制することで、中心市街地を再生できるのか」 という課題があるのは事実だ。これらのハードルを乗り越えて、『住みやすいまち』『暮らして楽しいまち』『愛着と誇りが持てるまち』としていくために、まず何からなすべきか。あたらしいまちづくりへの挑戦はいま、始まったばかりだ。(近藤益弘)

郊外への大型店進出をバネに「日本一」元気な商店街へ脱皮
「さるくシティ4○3アーケード」(長崎県佐世保市)
させぼ四ヶ町商店街協同組合、佐世保三ヶ町商店街協同組合


佐世保市商店街連合会
竹本慶三会長

「日本一元気な商店街」――日本商工会議所情報誌『石垣』が紹介した「さるくシティ4○3アーケード」は、まちづくり専門家が「人口20万人級で日本一の元気さ」(藻谷浩介・日本政策投資銀行参事役)と太鼓判を押す。

近年、構造的苦境に陥っていた佐世保市では郊外へ大型商業店が進出表明、地盤沈下が続いた地元商店街に激震が走る。「このままでは『まちの顔』の商店街がダメになる」(竹本慶三・佐世保市商店街連合会会長)と、商店主が立ち上がり、2つの商店街と中心市街地の大型店が団結、連続したものとしては日本一長い総延長1キロのアーケードを《売り物》に迎撃策を練る。


さるくシティ4○3アーケードでの初売り(上)と年末のチャリティ大パーティ(下)

第一弾は「さるくシティ4○3」発足に地域住民も参加しての長さ1キロのテープカットだった。イルミネーションでライトアップする「きらきらフェスティバル」を市民や企業からの出資で成功、アーケードで地域住民ら5500人による大パーティーも開催し、一度火が着いた勢いは止まる所を知らない。

「商店街には商売という『経済的要素』、人との出会いや子どもの教育などの『社会的要素』、そして情報を発信する『文化的要素』があり、人が集まることで活気と活力が生まれる」と語る竹本理事長ら自称・佐世保のぼせもんは、九州初のヨサコイ祭り・「YOSAKOIさせぼ祭り」を立ち上げ、期間中観客は26万人におよんだ。


佐世保市企画調整課
蓮田尚課長

「佐世保の元気のよさは店舗の魅力の上を行く人的な魅力」と分析する蓮田尚・佐世保市課長は、「ショッピングセンターは市民の自慢にならない。元気な街なかや商店街に市民は自慢に思え、地元に誇りと愛着を持つ」。

たしかに商店街の人通りが多く、賑わいをみせるものの、商店街自体の売り上げは以前の水準まで回復していない。商店街としての真の実力が問われるのは、今後の取り組み次第だ。「まちが元気だと、ひいては自分の店、家族、そして自分も元気になる」とする竹本理事長は、かつて上杉鷹山が説いた自助・互助・公助の原則に則って、商店主・地域住民・行政の三位一体によるまちづくりに挑戦していく。

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※当ページの内容は、2007年6月9日発行の14号に掲載されたものです。

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