いま動き出す、まちづくり三法改正後に向けての戦略
2007年6月9日発行の14号より
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そもそも、まちづくり三法とは、どのような法律なのか。そして、今回どのように改正されたのだろうか。これらの基本的なポイントを押さえながら、日本におけるまちづくりの“バイブル”ともいえる、まちづくり三法について考察してみる。
関心が高い三法改正後のまちづくり
「無秩序だった郊外開発の適切なコントロール」「既存ストックを活用した中心市街地の活性化」――来る12月から全面的に施行される「まちづくり三法改正」を前に、まちづくり三法改正に関するシンポジウムには学識経験者やまちづくり関係者、行政担当者らが、多数詰め掛けた。
日本都市計画学会九州支部では今年4月、アジア太平洋インポートマート(北九州市)を会場に『まちづくり三法改正後の都市戦略―サステナブルな都市づくりに向けて―』とのテーマで講演会とパネルディスカッションを開いた。

日本都市計画学会九州支部のシンポジウム模様
円内は中井検裕・東京工業大学大学院教授
『まちづくり三法の改正をまちづくりに生かす』という演題で基調講演に立った中井検裕・東京工業大学大学院教授は、今回のまちづくり三法改正について、「背景として人口減少や高齢化問題、財政問題、環境問題などがあり、集約型へと都市構造の転換を図るべきである」「都市にいかに富をもたらすかという発想が求められる」と説いた。
引き続いてのパネルディスカッションでは、大型商業施設の立地に対する九州内の自治体による取り組みが発表された。郊外に大規模なショッピングセンターが出店した宮崎市の場合、「出店前に比べて中心市街地の歩行者は2割ないし3割が減少、約7割の店舗で売り上げがダウンした」という事実が報告された。
一方、郊外への大型商業施設の出店を退けた熊本市では「大型ショッピングセンターは地域核になり、消費者にとって魅力的な存在だが、まち全体の雇用や税収を考えた場合にマイナスとなる可能性もあり、交通問題や地下水などの環境問題なども含めて検討した結果」との説明があった。同じく大型商業施設が郊外の農地へ進出表明していた佐世保市では、公聴会などを開いた上で農業振興整備法の規定にもとづいて農地指定の解除をしない判断を下した経緯が報告された。
改正されたまちづくり三法の全面施行を目前に控えたタイミングで、依然として出店相次ぐ大型郊外店と衰退していく中心市街地という現実を目の当たりにした参加者らが熱心に耳を傾ける姿がみられた。
まちづくり三法とは、どのような法律なのか
今回、改正されて注目を集める、まちづくり三法とは本来、「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」、「中心市街地活性化法(中活法)」、「都市計画法」の3つを指す。3つの法律は98年から2000年にかけて、中心市街地の活性化に向けた商店街へのテコ入れなどを目的に整備された。
従来は、「大型店が出店する際には、地元業者と事前に調整する」とした大規模小売店舗法(大店法)で出店を調整していた。しかし、外資系流通業が相次いで日本へ上陸して来るなか、世界基準に沿った出店の仕組みづくりが求められる。そして、このような商業調整は世界貿易機関(WTO)のルールに反するという海外からの指摘があって、大店法が廃止となった。
まちづくり三法は、98年に大店法が廃止されることを受けて、整備されたという経緯がある。大店法に替わる大店立地法は商業調整でなく、駐車場の確保や騒音、廃棄物などの生活環境をチェックする内容になっている。大店法廃止で商業調整ができなくなった結果、中心市街地の衰退を防ぐ目的で制定されたのが中活法だ。まちづくり三法のうち、都市計画法は68年に制定された都市計画に関する法律だが、98年の改正で「特別用途地区」制度を拡充、市町村でも大型店の出店を規制できるようになった。
このような経緯で整備された大店立地法、中活法、都市計画法というまちづくりに関わる3つの法律をまとめて、一般的にまちづくり三法と呼ぶ。
まちづくり三法スタート後の「失われた10年」
これまでも長年にわたって、中心市街地などの商店街に対しては、カラー舗装やアーケード導入、共同イベントの開催、さらに共同ホームページの開設などの様々な振興策が取られてきた。しかし、それらの成果は一過性で終わるものが多く、本格的な再生・復活につながるものは皆無だった。

延べ床面積1万平方メートル超の大型店舗は、今年12月からの出店規制の対象になる
規制緩和と地方分権を背景に「鳴り物入り」で誕生したまちづくり三法だったが、前途は厳しかった。大店法に替わる大店立地法では生活環境面に配慮すれば、地元業者と調整せずに出店が可能となった。当初、大型店の立地規制としては改正した都市計画法にもとづき、各市町村が主体的に取り組むことが期待されていた。しかし、実際はほとんど機能せず、事実上「フリーパス」状態となった。
さらに中心市街地の活性化については、総務省が基本計画を作成した全国121市町に対して、過去5年間の状況を監査したところ、大半の市町で人口、商店数、商品販売額、事業所数、従事者数の数値が軒並みマイナスという実情がつまびらかになった。このような状況を踏まえ2004年9月、「中心市街地の活性化が図られていると認められる市町は少ない」とする勧告が出るという事態になった。
まちづくり三法がスタートした98年当時も地方都市を中心に商店街に空き店舗が目立ち、いわゆるシャッター通り状態となって、中心市街地の衰退が問題となっていた。しかし、その後10年を経っても状況は一向に改善されず、むしろ悪化の一途をたどったのだ。
久留米・佐賀にみる郊外と中心市街地の動向
この10年における地方都市の中心市街地が疲弊し、衰退していった状況について、佐賀市と久留米市におけるケースでみることができる。
佐賀県の県庁所在地である佐賀市の人口は約20万人だ。この都市規模に対して、99年3月のイオンショッピングタウン大和(売り場面積3万8000平方メートル、後に同4万1000平方メートルへ増床)のオープンを皮切りに、2003年3月にモラージュ佐賀(同3万7000平方メートル)、2005年4月のイオンスーパーセンター(同1万7000平方メートル)昨年12月ゆめタウン佐賀(同4万9000平方メートル)と続く。さらに大型商業施設の周辺には、さまざまな業種のロードサイド店が文字通り軒を連ねており、あきらかにオーバーストア状態となる。

休日にも関わらず、人通りもまばらな中心市街地の商店街(上:福岡県久留米市、下:佐賀市)
これらの大型ショッピングセンターやロードサイド店の郊外進出に先立ち、96年3月に国内では初めてとなる第三セクターのまちづくり会社「まちづくり佐賀」が発足した。まちづくり佐賀では98年4月、中心市街地にある商店街の隣接地に再開発ビルを建設する。しかし、過剰な投資とテナント誘致の失敗で経営が悪化、2001年7月に自己破産を申請した。
市町村合併の結果、佐賀市と隣接する久留米市にゆめタウン久留米(同4万7000平方メートル)がオープンしたのは2003年9月のことだった。その後、かつて筑後地区で随一の賑わいをみせていた久留米の中心商店街である久留米ほとめき通りでは、過去3年間で約10パーセントだった空き店舗率は20パーセント強に跳ね上がり、さらに売り上げ自体も約2割減少しているという。また、商店街に隣接する空き商業ビルを管理していた第三セクターである六ツ門プラザも今年5月、経営破綻に至った。
「商店街支援」から「都市機能集約」へ大転換
このような事態を目の当たりにして、「地方都市の中心市街地が寂れて商店街に空き店舗が目立ち、人通りが少なくなったのは、郊外にオープンした大型店が原因だ。都市計画法で大型店の出店を規制すべき」という声が各地から上がるようになる。また、商工業者の全国的な集まりである日本商工会議所からも「都市計画法を改正して、大規模商業施設に対する規制を強化すべきだ」という要望が出された。
このため、まちづくり三法を見直して都市計画法で大型商業施設の出店にブレーキをかけ、中活法で都市機能の中心市街地への集約をアクセルとするべく、中活法と都市計画法が改正された。なお、今回改正されなかった大店立地法については指針が見直されている。
これまで中心市街地活性化は、商店街へのテコ入れに重点が置かれていたものの、所定の成果を上げることはできなかった。郊外への買い物客の流出に加え、人口減少時代の到来や高齢化社会の進展が深刻化していくなか、今回のまちづくり三法の改正で、その目的を中心商店街の再生から中心市街地への商業施設、共同住宅、教育機関、医療機関、官公庁などの都市機能を集約していく方向へと大きく転換した。
改正まちづくり三法が目指すもの
今回のまちづくり三法の改正にともない、都市計画法では1万平方メートル以上の大型商業施設の出店について、「原則許可・例外規制」から「原則規制・例外許可」へと、原則と例外を180度転換している。
改正前までは「原則は緩い都市計画+規制できる」だった制度が、改正後は「基本は規制+緩和できる」へと路線を転換したのだ。事実、改正前は1万平方メートル以上の大型商業施設は、都市計画区域の約9割で立地が可能だった。しかし、改正後は近隣商業地域と商業地域と準工業地域に制限されるために都市計画区域の約3パーセントのエリアに限定されている。
一見、規制緩和に逆行してみえるものの、提案があれば、議論して弾力的に変えていくのが欧米の都市計画の規制のやり方だ。今回の改正では、アメリカの都市計画における手法のひとつであるゾーニング制度と同様に一旦禁止した上で、大型商業施設が出店を希望する場合は用途地域の指定・変更、あるいは地区計画策定などの都市計画の手続きを経て、地域が主体となって判断していく。つまり、欧米の都市計画に準じた国際的な手法になったといえる。
その一方で、まちづくりの主役は地域の住民であり、その声を反映させる仕組みも今回設けられた。中心市街地活性化協議会を設置していくことで、住民もまちづくりに参加でき、主体的に取り組んでいくことが期待されている。
また、中活法が改正された結果、総理大臣を本部長とする中心市街地活性化本部を設置して、市町村が策定したまちづくり基本計画のうち、意欲的な取り組みについては認定していく。まちづくり基本計画は、すべての市町村で策定する義務はなく、やる気のある自治体だけを「選択と集中」していく考えだ。まちづくり基本計画が認定された市町村では、国からの財政支援や税制優遇などの手厚い支援を受けることができる。いま、まちづくり三法改正をうけて、まちづくり自体が大きく変わろうとしている。(近藤益弘)
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※当ページの内容は、2007年6月9日発行の14号に掲載されたものです。





