フォーラム福岡

パブリックアクセス誌フォーラム福岡

経済開発としての都心再生が官民連携によって始まる

2013年7月31日発行の50号より

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都市の生態系は、社会、経済、交通、情報などのシステムが絡み合い、ヒト・モノ・カネ・情報などが循環している。国内外から人と投資を呼び込む都心再生には、地の利よりも戦略性が求められる。

アジアの中で新しい価値にチャレンジする都市

6月13日、福岡市の髙島宗一郎市長はスペインのビルバオで開催された「世界都市サミット市長フォーラム」の会場にいた。住みやすく持続可能な都市づくりをテーマにしたフォーラムは今年が3回目で、世界54都市(30カ国)の知事及び市長、政策担当者などが参加していた。福岡市は先進的にチャレンジしている都市として、ビルバオ、カイロ、ケープタウン、グアダラハラ(メキシコ)とともに選ばれ、プレゼンテーションの機会を与えられたのである。

髙島市長は、「人と環境と都市活力の調和がとれたアジアのリーダー都市」の将来像と、それらの具体的なプロジェクトとしてユニバーサル都市・福岡の取り組み、海水淡水化施設やゴミの埋立技術である福岡方式などの水・ゴミ対策、シーサイドももちの都市開発などをアピールした。参加者から好評を博し、ルワンダのキガリ市の市長から「福岡方式でゴミ処理が見違えるように改善された」と感謝の言葉を述べられたという。


世界都市サミット市長フォーラムでプレゼンテーションをした髙島宗一郎市長

髙島市長は、「福岡市は単なる日本の地方都市ではなく、アジアの中で先駆的に新しい価値にチャレンジし、それを発信していくことができる都市を目指しています。今回のフォーラムでは、国境を越えた都市のモデルとして、その価値観を世界へ伝えることができたと考えています」と話している。

都心にイノベーションのための生態系をつくる

福岡市では、「都心部機能更新誘導方策」による容積特例制度の第1号となる博多駅南西街区の建て替えを皮切りに都心での建替え計画や機能更新計画がこれから具体化していく。しかし、これを単なる再開発としてとらえるならば、増床に伴う空室率のアップに悩まされた仙台の二の舞になりかねない。それだけでなく、日本の一地方都市で終わってしまうかもしれない。

機能更新という都心再生の好機に、“東アジアのビジネスハブ”を目指す福岡地域戦略推進協議会(FDC)は経済開発のための都心はどのようにあるべきかという観点から、都心再生戦略をまとめている。その前提となる経済環境の変化を、①創造性とイノベーションが競争力の源泉である②都心そのものが人の交流や情報交換の場として、これまで以上に大事なっている③企業や投資は知的な人材に引き付けられ、知的な人材は都心に引き付けられる④小さなビジネス、特に企業向けのサービスを展開している会社がイノベーションを起こしている|と認識、「都心にイノベーションのための生態系をつくる」をコンセプトとした。

都心に焦点を当て、多種多様なビジネスをできるだけ高密度で都心へ誘導していこうというわけだ。ハードの整備だけでなく、起業家向けの教育訓練に取り組み、語学研修を手がけ、創業時の融資環境を整え、安価なオフィス空間をインキュベーション用として提供することなどである。シェアスペースなど新しい仕事の仕方に応える場の提供も必要となるだろう。

シンガポールはすべて戦略性を持って進めた

FDCは「福岡都市圏が東アジアのハブとして、日本・中国・韓国・台湾などのビジネスの交流・開発・営業の拠点となり、多様な人材が訪れ、働き暮らしている」姿を将来イメージとして描いている。それは福岡が世界で最も立地条件が良い都市という一面もある。飛行機で3時間以内に行ける人口集積は世界一であり、福岡の対極に位置するのがシンガポールである。

日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介さんは、「シンガポールは地の利があるから人が集まってくると思ったら、勘違いです。ドル箱路線の無いチャンギ空港は小さい路線をかき集め、港も大型コンテナ化を進め、ハブ空港、ハブ港にしました。すべて戦略性を持って進めてきたのです」と言う。水も自給できず、資源にも恵まれず、インフラ整備も遅れていたが、ビジネスハブにしようと治安が良く、緑の多い住んで楽しいまちを人工的につくりだした。現地語では誰も来ないので、英語を公用語化した。産業の育成も、シンガポール以外の事業所を統括する本部を徹底的に優先する制度で、アジア本部、東南アジア本部などを誘致している。

藻谷さんは、「条件の悪さが戦略性を生みました。地の利のある福岡が戦略性を持てば、シンガポールどころの騒ぎではありません」とみている。

都市の再生に官民連携による事業推進も始まった


(画像提供:福岡市)

日本がモノづくりによる輸出に力を入れて成長してきたのに対し、欧米は来訪者を増やすことで外需を稼ぐことに政策的な優先度を置いてきた。これらの部門に優秀な人材をそろえ、外部からヒト・モノ・カネを呼び込んできた。欧米に対し、日本が「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を始めたのは、わずか10年前、観光庁が発足したのが2008年4月であった。日本は輸出と対外直接投資に偏重した政策をとって、対内直接投資(海外からの直接投資)を増やす努力も怠ってきた。米国などは州別に外資誘致の組織を持っているが、日本にはそうした組織も整備されていない。その結果、海外からの直接投資が異常に低くなっているのだ。

今回の都心再生には、国内外から人と投資を呼び込むことが欠かせない。そのためには、民間からの信頼を得られる長期的なビジョンが必要で、民間活力の導入と行政計画との連動も求められている。

世界的に注目されている都市開発では、行政から大きな権限を委ねられた独立機関が主導的な役割を果たしているが、地域の経済開発推進を担う自治体と地域経済界との官民連携による事業推進も始まっている。政府の「骨太の方針2013」でも、「国際競争力のある都市を形成するために、官民の地域の多様な関係者が連携して地域の戦略に基づき、民間の知恵や資金を生かした都市再生や公共交通の活性化を推進する」とある。(神崎公一郎)

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※当ページの内容は、2013年7月31日発行の50号に掲載されたものです。

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