フォーラム福岡

パブリックアクセス誌フォーラム福岡

いま、食から見直す、恵まれた福岡/九州の地域資産・魅力・感性

2011年1月31日発行の35号より

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《食》への関心が高まるなか、自然と気候に恵まれた九州は、国内食料生産のうち約2割を占める日本の食料供給基地でもある。これら福岡/九州が有する地域資産をはじめ、産業集積、感性などの魅力を生かしながら、今後の福岡/九州のあり方を考える。

日本の食料供給基地・九州の横顔

九州の農林水産業産出額で全国の約2割――。豊かな自然と温暖な気候に恵まれた九州は、日本における食料生産額・8兆3162億円のうち、19.42%に相当する1兆6144億円を産出するなど、日本の食料供給基地としての役割を担っている。なかでも肉牛は40.87%、ブロイラーは同44.43%と高いシェアを誇る九州の畜産算出額は6521億円で、全国シェアの24.73%を占めている。


九州経済調査協会 調査研究部 徳田一憲研究主査

また、九州における食品・飲料等製造業は2005年時点で、事業所5766カ所、従事者数15.4万人、製造品出荷額は3兆9292億円で、域内の工業出荷額の2割弱に相当する。食品・飲料等製造品の出荷割合も全国平均の2倍近いなど、大きなウェイトを占める。「全国的に注目される農業法人が多い九州は、先進的に農産物輸出に取り組むなど、それ相応の実力を持つ地域といえる」と、九州の農業事情に詳しい九州経済調査協会調査研究部の徳田一憲研究主査はみる。九州において農林水産業および食品・飲料などの加工製造業は、地域経済において重要な役割を果たしている。

食料自給率に違いアリ!日本40%・九州48% vs. 日本69%・九州120% 

日本の食料自給率は2009年時点(概算値)で、カロリーベースにおいて40%(1人1日あたり国産供給熱量964Kcal/1人1日あたり供給熱量2436Kcal)となる。もっとも、カロリーを生産額に替えて計算すると、比較的低カロリーで健康の維持・増進に不可欠な野菜や果物などの生産が的確に反映されるため、生産額ベース総合食料自給率は70%(食料の国内生産額9.8兆円/食料の国内消費仕向額14.1兆円)に跳ね上がる。

九州7県のカロリーベース食料自給率は2005年時点(確定値)で全国平均を上回る48%だった。一方、生産額ベースでみると、全国平均の69%を大幅に上回る120%にのぼることからも、九州が日本の食糧供給基地としての役割を担っていることが分かる。

就業者数2割、九州のフードビジネスの存在感

九州では農林水産業の生産(1次産業)に始まり、加工(2次産業)を経て、販売・サービス(3次産業)していく、いわゆる《6次産業》的な広がりと融合をもつ『フードビジネス』は、域内雇用をはじめ、地域経済への貢献は大きい。

九州・沖縄における農林水産業の就業者数(約54万人)に食品加工(約15万人)や食品流通業(約48万人)、外食産業(約26万人)などを加えたフードビジネスの就業者数は約151万人だ。九州の総就業者数677万人の2割強を占め、九州の基幹産業のひとつといえる。

九州経済同友会・九州はひとつ委員会が、2008年10月に発表した報告書『「フードアイランド九州」の形成に向けて』は、「九州は《安定供給》《安全・安心》《地球環境》の3つの課題に対応した先進モデルを実現しつつ、次代を担う戦略産業として付加価値の高いフードビジネスを再構築して、先進的地域『フードアイランド九州』を目指す」と、これからの方向性について提言した。

これら九州の恵まれた農林水産物を用いた、食についての取り組みや評価についてみてみよう。

郷土料理百選にみる九州の食の実力

郷土料理百選に九州から17料理――。農水省が発表した『農山漁村の郷土料理百選』99品中、九州7県からは『がめ煮』『卓袱料理』『馬刺し』など、17品が選ばれた。

選定に際しては全国から約1700点の候補を選び、インターネット投票も参考しながら、最終的に郷土料理百選が選定された。なお、『百選』と謳いながら、99品に留めたのは最後の1品は、各自に自らの郷土料理を選んでもらいたいとの考えによる。

郷土料理百選では各都道府県から原則2品を選定されるなか、北海道と九州の長崎県、熊本県、大分県、そして沖縄県からは3品が選ばれた。


日本政策投資銀行
九州支店
久間敬介企画調査課長

この結果、99品のうち、2割弱となる17品が九州だ。一方、郷土料理でないものの、地元自慢として愛されている『御当地人気料理』(ご当地グルメ)でも23品中、3割強の7品が九州から選ばれた。

博多ラーメン、シシリアンライス、佐世保バーガー、太平燕、とり天、チキン南蛮、しろくま……。日本政策銀行九州支店が2011年1月に発行した『九州ハンドブック平成23年度版』では今回初めて、九州の主なご当地グルメも収録している。掲載に際して、同支店の久間敬介企画調査課長は、「地元の食材を使って、食を提供するご当地グルメのすそ野は広く、地域経済全般における波及効果は高い。特徴や魅力などを積極的に情報発信していくことは、観光面での集客強化にもつながる」とコメントする。


もつ鍋(画像提供:福岡市)

がめ煮(画像提供:福岡市)

辛子明太子(画像提供:福岡市)

新鮮な食材で《食》を提供する飲食界

《食べた人に元気になってもらう》をコンセプトに健康志向の玄米菜食メニューが評判の自然食レストラン『マクロビオティックカフェ・エヴァダイニング』。オーナーの山本恵さんは、食にこだわって栽培する契約農家から無農薬・有機栽培の玄米や野菜など直接仕入れて料理に用いる。「食べたものから体はつくられる」と考える山本さんは、「選ぶ大切さを学び、賢く食べていくことが大切」と説く。


リーシングサポート 吉住征一社長

「生産者が比較的近い福岡では新鮮な食材を早く安く手に入れられる」と、飲食店・店舗向け不動産仲介業・リーシングサポートの吉住征一社長はみる。地元の飲食業界は消費所得がそう高くない割に地場中小の飲食店が多く、さらに大手チェーンの出店などで厳しい競争下にあり、「美味しくて安いは当たり前。熱し易く冷め易く、その上移り気でわがままな顧客のニーズをいかにつかんでいくかが重要」と語る。競争の厳しさや『うるさい』消費者の存在が切磋琢磨や創意工夫を生み、独自の飲食シーンをつくり出しているとみられる。

事業所統計にみる福岡県の産業・就業状況、

フードアイランド九州においてフードビジネスが存在感を際立たせる中、九州における福岡の機能や役割は産業構造上、どのようなものだろうか。

福岡県内の事業所数および従業員数は、『平成18年事業所・企業統計調査』(2006年10月1日時点)で22万4954カ所(除不詳事業所)、221万6448人(同)だった。事業所数自体は1991年の25万5382箇所をピークに1割余りも減っている。従業員数も同様に1996年の233万7850人を境に5%強の減少状況にある。

一方、福岡県の雇用者を産業大分類別でみると、卸売・小売業が44万8801人、サービス業28万1073人、製造業23万2038人、医療・福祉22万2392人の順だ。福岡県内の雇用者の5人に1人が従事する卸売・小売業における2007年の年間販売額は22兆1000億円だった。これは、九州の年間販売額40兆1000億円の半分強を占め、九州の流通分野で重要なウェイトを占める。

もっとも九州における卸売業・小売業の年間販売額は1997年の50兆2000億円から2割強も落ち込んでいる。同じく福岡県の年間販売額も1997年の28兆3000億円から3割強も減らしているのが現状だ。たしかに一部でネット通販などの影響はあるものの、背景には九州の人口減と高齢化がある。

つまり、九州経済が沈むと、福岡の経済も落ち込む構図にあるだけに、福岡が牽引していくことで九州全体を浮揚させていく取り組みが求められる。

産学官の《福岡方式》で次世代産業の育成に取り組む

「グローバリゼーション下、内外の地域間競争を勝ち抜き県民の雇用と所得の維持」を産業振興の方向性とする福岡県は《ベンチャー・中小企業育成》《先端成長産業の育成・拠点化促進》《アジア戦略・観光振興》に取り組む。

自動車、半導体、水素、バイオ、Ruby、コンテンツ、ロボット、ナノテク…。これら先端成長産業の育成や拠点化への取り組みについて福岡県商工部商工政策課の関好孝企画広報監は、「企業、大学、行政が密接に連携しながら産学官での研究開発や人材育成、ビジネス支援を手掛ける福岡方式が定着し、着実に成果を上げている」と解説する。

一方、アジア向けの新しい成長拠点・福岡の形成で日本経済の牽引を目指して福岡県などが国へ提案する『福岡・アジア国際戦略特区』でも《イノベーション・新成長産業育成戦略》を掲げる。いま、先端成長産業や新成長産業の育成に向けて産学官での取り組みが活発化しつつある。

感性価値創造でワンランク上を目指す

《いい商品》《いいサービス》とは何か?―。産業革命以来の工業社会からITに代表される脱工業化への社会変革においては、商品やサービスへの価値観が大きく変わる。

経済産業省は2007年5月、日本人の感性を活用しての暮らしぶりの向上と経済の活性化に向けたものづくり・サービス活動を推進していく『感性価値創造イニシアティブ』を発表した。同イニシアティブは、「作り手の感性に由来するこだわりや美意識などが技術やデザインなどによって裏打ちされて、《可視化》して《モノ語り》化をすることで生活者の感性に『感動』『共感』をもって受け止められ、特別の経済価値を生み出す」と提唱する。

生産(1次産業)、加工・製造(2次産業)、販売・サービス(3次産業)などの全ての分野において、こだわりや嗜好、美意識、スピリットなどの感性に基づいた創造的(クリエイティビティ)な取り組み、ワンランク上をいく栽培や肥育、モノづくり、おもてなし・サービスの提供が、今後激しさを増す地域間競争の時代においては強く求められると考える。(近藤益弘)

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※当ページの内容は、2011年1月31日発行の35号に掲載されたものです。

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