フォーラム福岡

パブリックアクセス誌フォーラム福岡

外部の目から見た福岡・九州の“現実”

2010年5月31日発行の31号より

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「アジアのゲートウエー」を標榜する福岡・九州だが、アジアにおいて目指すポジショニングとそれに向かうプログラムは未だに明確でない。グローバリゼーションの波の中で、福岡はその可能性と役割をどう広げていくべきか。福岡・九州の域外からやってきた福岡在住の方に、客観的な視点から率直な評価を語ってもらった。

座談会出席者(左から)
●アンドレアス・イバッハ (バイエルン福岡代表)
●茶木 正安 (福岡リアルティ代表取締役社長)
●ウェンディ・ホルデンソン (オーストラリア総領事館 総領事)
●グルミート・シン (オートロジステックスジャパン社長)
●ニック・サーズ (フクオカナウ代表取締役)
●坂口 光一 (九州大学大学院統合新領域学府教授 フォーラム福岡編集委員)

福岡の印象は「豊か」で「何でも揃っている街」

坂口(Sakaguchi) 今日は、「外部の目から見た福岡・九州の現実」をテーマに議論をしていきたいと思います。グローバリゼーションが新しい段階に入ってきている中で、福岡の可能性と課題を外部の環境にどうクロスさせていくか、様々な視点から意見をお聞かせいただきたいと思います。

まず福岡に対する印象から、一言ずつお願いします。

シン(Singh) ビジネスをするうえで、いろんな意味でバランスがすごくいい街だと思います。

茶木(Saki) 福岡は日本有数の豊かな街です。食も住環境も快適で物価は安く、東京に比べて生活水準が高い。その一方で、ここには競争がない。また、国際的なメーカーが一社もないためグローバルな動きにほとんど関心がない。行政は非常に熱心ですが、こうした動きを民間企業が受け皿となって実際のビジネスに結びつける力が弱い。そのため今はいいのですが、将来的に不安があります。

ホルデンソン(Holdenson) 福岡には何でも揃っています。大相撲も行われれば歌舞伎も見ることができる。毎年アジアマンスが行われていることや、福岡アジア美術館があることなども本当に素晴らしいことだと思います。

企業を見ても、中小企業でも資金を持っているところはあるのですが、アジアへの進出や国際企業化に対しては、思いはあっても踏み出す自信がないように思えます。

イバッハ(Ibach) 福岡の第一印象はローカルのビジネスシティでしたが、数年前に「ニューズウィークマガジン」で福岡がダイナミックシティとして紹介されたときに認識が変わりました。

昨年、バイエルン・ミュンヘンのオフィシャルスポーツバーをオープンして多くのメディアに取材されましたが、必ず「なぜ東京じゃなく福岡にオープンしたのか」と聞かれました。福岡の人もマイナスシティのイメージを持っていて、自信がないように思います。

サーズ(Szasz) 福岡は、アメリカに例えるとウェスト・コーストのようなところだと思います。そんなに働かなくても充実したライフスタイルを送れる一方、それが理由で街として大きく発展できていない面もあると思います。ただビジネスチャンスはある街ですから、外から来る人にとってはチャンスがある。課題は、こうした素晴らしい環境をもっと発信していくことだと思います。

活発なプロジェクトのとりまとめ役が不在

「アジアの優れたモノの窓口となる、福岡独自のビジネスができないか」

茶木 正安
福岡リアルティ代表取締役社長
Masayasu Saki Fukuoka Realty President/CEO

坂口 今年7月、福岡市で「国際知識経済都市会議(国際地域ベンチマーク協議会 第3回会議)」が開催されます。都市規模や経済特性などにおいて類似性を有した世界10都市が集まり、互いに比較しあい、それを、各々の地域をより良いものにするために活用していこうというもので、今回で3回目を迎えます。

バルセロナ、メルボルンなど各国で2番目、3番目の規模の都市が参加していますが、こうした地方都市は今後大きく成長する可能性を秘めていると思います。福岡にもその可能性はあると思いますが、そのための課題は。

茶木 一般的に他の地方都市は公共投資をベースに発展していくケースが多いのですが、福岡は民間が中心になって様々な事業が進められてきました。そのため活気はあるのですが街全体の視点に立った開発にはなりづらく、例えば博多駅から天神に直接抜ける大きな道路はありません。もう少し官民のバランスがうまくとれるとさらなる発展が期待できます。

また、当社が運営するキャナルシティ博多も休日は中国や韓国からの観光客で賑わいますが、消費にはつながっていません。それは我々が彼らに買物をしてもらえるような環境を作れていないからだと思います。例えばホームページは中国語、韓国語に対応していますが、韓国のマーケティングの専門家いわく、言語が対応していても内容的に韓国の人には受けないと。こうした細かな部分が改善されていくと、かなり変わってくると思います。

「福岡は充実したライフスタイルが送れるが、外国人を取り込む勇気がない」

ニック・サーズ
フクオカナウ代表取締役
Nick Szasz Fukuoka now/CEO Publisher

サーズ 観光マップの雑誌制作にあたって飲食店に広告掲載の提案をしますが、効果的な媒体だと言いながらも広告は出そうとしない。外国人を取り込もうという勇気がないんです。

不景気でどの店もお客さんは来て欲しいのですが、メニューを対応させたりスタッフを教育したり、そこまでの手間はかけようとはしません。

ホルデンソン 韓国の釜山に船会社の拠点が集中していることは、この問題を考えるうえで重要なポイントだと思います。博多港が釜山のような存在になれていたら福岡も違う進展の仕方があったと思います。さらにいえば韓国には仁川空港というハブ空港もありますが、仁川の役割を成田が担えていたら日本自体がもっと国際化を図れていたと思います。

私はオーストラリアの企業に福岡へのオフィス開設を推奨していますが、東京や大阪に比べて経費が3分の1で済むなどの魅力もあり、彼らも真剣に検討してくれます。またこれまでの話でもあったように部分的には素晴らしい面がたくさんあるのですが、それらが統括できていない点が課題だと思います。 

先日、福岡市の吉田市長とお会いして、姉妹都市である釜山の関係をさらに発展させるためにも福岡に「リトルプサン」を作ったらどうかと提案しました。そこには釜山の特徴的な、例えば店であったり、ソフト面のものであったり、そういうものを入れていく。同じように釜山にも「リトルフクオカ」を作り、文化的・経済的交流を活性化できないかと。県も市もやる気は十分ありますからメカニズムがうまく機能すれば、成果が期待できると思います。

シン 施設を造ったりイベントを企画したりして人を集める時代は終わったと思います。まずは外国から人が日本に入りやすい環境を整備して、人が集まるようになった後、彼らのニーズを分析してモノを作っていくべきだと思います。バルセロナ、メルボルンなどは人が行きやすいし、韓国は物価が安い。

「福岡の人はマイナスシティのイメージを持ち、自信がないように思える」

アンドレアス・イバッハ
バイエルン福岡代表
Andreas Ibach Bayern Fukuoka Representative

なぜインドと中国が経済的に成長しているかというと、海外から観光客が来ているからではなくて、ビジネスの需要があるからです。人が集まるとインフラもそれに合わせて整備される。福岡が10年前に比べて外国から入りやすい街になっているかというと、変わっていないと思うんです。

イバッハ 福岡は確かに多くの機会はありますが、障壁も多いと感じます。来年、バイエルン・ミュンヘンが来るのでイベントをしましょうと関係者に話をしましたが、実現は難しいと言われました。なぜなら福岡はミュンヘンの姉妹都市ではないからだと。それなら(姉妹都市の)札幌に行ってくださいと。結果として、大きな機会を逃すことになっています。

茶木 福岡だけでなく、日本全体が東京のミニチュア版の街をつくっているように思います。こうしたことを続けている限り、情報と人口が集中している東京に投資は集まってしまう。例えばアジアにも優れているものはたくさんある。日本人はそうしたものを認めることから始めないと国際化はできません。例えばキャナルシティのスペースを韓国のデザイナーに無料で貸し出す。すると韓国のアパレルブランドが日本に進出する際に福岡は窓口になる。そういう流れを作っていけば福岡独自のビジネスができると考え、我々なりに小さな穴を開けようと取り組んでいます。

「福岡は部分的に素晴らしい面が多いが、統括できていない点が課題だ」

ウェンディ・ホルデンソン
オーストラリア総領事館 総領事
Wendy Holdenson Australian Consulate-General Consul-General

ホルデンソン 最近自分のことを「マタドメ」と紹介する日本人が増えているそうです。これは「まったくドメスティック」の略だそうですが、ここにもアジアに対するコンプレックスが見て取れると思います。また上海万博も5月から始まっていますが、あまり話題にならない。何となく福岡の中国に対する心境を表しているようにも思います。

シン 単純に言えば福岡に行くとお金をつくれるという仕組みを作らないといけないと思います。ただ人を呼んで買物をしてもらって帰ってもらうだけでは効果は続きません。福岡に事務所を開いた方が、東京や大阪に出すよりもお金をつくれる、そう思ってもらわなければならない。今の福岡はお金を使うだけの街で、お金を生む街ではない。お金を生む街になると定住者が増え、生活に根ざした継続的な消費活動につながります。

問われる福岡市の街づくりの方向性

坂口 皆さんが福岡市長になったとしたら、まず何に取り組みますか。

サーズ オリジナリティをどう持たせるかでしょう。住みやすい街であれば企業誘致もしやすく、オフィスを開設しやすくなる。優秀な人材が集まってくると、お金が生まれる街にもなれる。

「福岡はお金を使うだけの街。お金を作れる仕組みがないと、定住者は増えない」

グルミート シン
オートロジステックスジャパン社長
Gurmit Singh Autologistics Japan President

シン 単にきれいな街だからという理由で人が集まるわけではないと思います。例えばインドのバンガロールは、ごちゃごちゃした街ですよ。物価は高いし街中は混んでいるし、インフラも整備されていない。それでも海外の企業はそこに支店を作りたいと思っている。そこにビジネスチャンスがあるからです。まずはお金を生み出す仕組みを作り、ハードの整備はその後でよいと考えます。

サーズ 福岡が力を入れている観光事業はお金を生み出すという意味で効果的ではありませんか。

シン その効果は一時的だと思います。例えば中国富裕層を乗せたクルージング船が博多に来ていますが、1、2回買い物をして終わりです。それが悪いということはないのですが、まず福岡市がどのような街づくりを目指すのか、その方向性を明確にすべきだと思います。

観光の街を目指すならクルージング船を誘致したりイベントホールをつくったりして外部に宣伝すればいいと思いますが、定住者の増加や企業誘致に力を入れるつもりなら別のところに投資が必要です。福岡の街を10数年見てきて、そこが曖昧になっているように感じます。

「各国で2番目、3番目の地方都市が今後大きく成長する可能性を秘めている」

坂口 光一
九州大学大学院統合新領域学府教授
フォーラム福岡編集委員
Kouichi Sakaguchi Kyusyu University Professor

ホルデンソン 人口減少からこういう問題が生じているとするなら人口を増やすほかない。そう考えると、中国からどれだけの人が入ってこられるかがポイントになります。今後の日本政府の政策にもよりますが、個人的には10年、20年後には中国人の入国が緩和され、多くの中国人が九州に住むようになると思いますし、人口を増やすという意味での解決策としてはそれしかないと思います。

茶木 ただ、パスポートが下りればすぐに中国人が福岡に住むかというと疑問です。やはり生活ができる基盤がなければ難しいと思います。ビジネスが芽生えてくる仕組みを作って、人が流れてきて、その中からここに腰を落ち着けてやろうという人が出てきて、そこが核になって定住者が広がっていくという形ではないといけない。ビジネスなくして外国人が福岡に住むというのは考えにくいと思います。

イバッハ 福岡にはインフラがあります。機会もあります。あとはそれを使うことが大事だと思います。

坂口 今日、皆さんのお話を聞いて、外に対する関心を持ち、そのうえで行動することが重要だと感じました。

本日はありがとうございました。

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※当ページの内容は、2010年5月31日発行の31号に掲載されたものです。

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