フォーラム福岡

天神および博多駅の開発シナリオ天神写真

「容積率」加算で始まる、福岡市内の再開発「未来予想図」

2008年2月1日発行の18号より

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2010年度末に全線完成予定の九州新幹線(鹿児島ルート)の博多乗り入れ、新博多駅ビルの完成、そして周辺のまちづくりの進展……。「2011年」という年は、福岡にとってどのようなメルクマールになるのだろうか。

2016年福岡への旅‥「九州新幹線で博多へ」編

2016年3月、鹿児島市に住む小学校6年生・A君は福岡市へ一人で出掛けた。九州新幹線と同じ2004年3月生まれのA君は今年12歳。福岡市へは何度か家族で旅行したが、一人旅は今回初めてだ。


博多駅地区まちづくり研究会による博多駅前イメージ図

早朝、鹿児島中央駅を定刻通りに出発した九州新幹線「つばめ」は軽やかに加速して次から次へとトンネルを潜り抜け、あっという間に新八代へ到着した。新八代からは平野部を走り抜け、鹿児島中央駅を出発して45分で熊本駅に着いた。

さすがに熊本から乗り込む人たちも多く、車内は少し込み合ったが、列車の旅は快調そのものだった。筑後川鉄橋を超え、急勾配を加速して全長12キロの筑紫トンネルを過ぎると、熊本駅からわずか35分で列車はJR博多駅の九州新幹線専用ホームへ滑り込んだ。

2016年福岡への旅‥「新生・天神四つ角」編


上空から見た天神四つ角周辺の現況

博多阪急や東急ハンズが入っている10階建ての新博多駅ビルの前に降り立つと、広々とした駅前広場に人々が集い、楽しそうな雰囲気だった。駅前のオフィスビルは九州新幹線全線開業後に建て替えられ、どのビルも真新しく立派で、1階にはおしゃれなショップやカフェなどのお店があり、休日にも関わらず買い物客や観光客で賑わっていた。

まず、A君がまずキャナルシティ博多の方向を目指した。お目当ては、人気キャラクターをテーマとした屋内型レジャー施設だった。駅前からの通りは歩道も広々としており、オープンカフェやショップなどが立ち並び、歩いて楽しい街並みだった。屋内施設で一通り楽しんだ後、A君は地図を片手に天神へ向かった。

昔から九州最大の繁華街と言われてきた天神の四つ角に立ってあたりを見渡すと、博多駅前と同様に新しく建て替わった大型オフィスビルが立ち並んでいた。小学校に入った頃に家族で遊びに来た時は、元百貨店という古い建物が空き家状態で、周囲も古いビルばかりだったが、いまではすっかり趣が一変して、大いに驚いた。

「福岡市内を回るなら、観光ループバスが便利」と人から聞いていたが、たしかに便数も多く、行き先もわかりやすかった。さらに車内のアナウンスや表示が九州新幹線同様と日本語→英語→中国語→韓国語の4ヶ国語対応だったのも印象に残った。 

2016年福岡への旅‥「幻の福岡オリンピック」編 


ベイサイドプレイス博多埠頭

天神から観光ループバスで向かった先は、元祖・ウォーターフロントといわれたベイサイドプレイスだ。ベイサイドプレイスは一時期、寂れていたそうだが、地元企業などによる再開発が奏効、いまでは若者や外国人観光客の人気スポットとして息を吹き返している。

海辺で船を見ていると、一人の老人が話し掛けて来た。老人との会話のなかで、今年開催されるオリンピックの開催候補地に福岡市が10年前に名乗りを挙げていたとは、初耳だった。

たしかに2016年は、開催年だけにオリンピックに関して色々と話題になることは多いが、国内選考で福岡市が東京都と競り合っていたことを初めて知った。「もしも、いま福岡でオリンピックが開催されていたら…」、A君は寂しく、残念な気分になった。もっとも、開催予定地だったという対岸の倉庫街は依然、古色蒼然とした雰囲気だった。

博多駅へ向かう観光ループバスに乗ると、大博通りと呼ばれる駅前の大きな通りの片側は近代的なオフィスビルが林立し、反対側は対照的に昔ながらの大きなお寺が軒を連ねていた。それらのお寺も最近では、若者たちの人気を呼び、彼らの間ではブームになっているそうだ。

「夕飯までには家へ帰って来てね」と言う母親との約束を守るために4時半発の新幹線に飛び乗った。この列車は新大阪発・鹿児島中央行きの直通運転列車で、車内のデザインも雰囲気は「つばめ」と随分違っていた。運よく窓際の席に座れたA君は、飛ぶように流れ去る風景を眺めながら、「中学生になったら、大阪への一人旅に挑戦してみよう」と、心に誓った。

新博多駅ビルから始まる周辺再開発へ

いま、未来予想図への歩みが現実に始まろうとしている。

2011年春、九州新幹線の博多駅乗り入れ、新博多駅ビルの開業で博多阪急、東急ハンズ、アミュプラザなどがオープン……。これまで、天神一極集中状態だった福岡市における都心の力点が将来、天神地区―博多駅地区という二眼レフへと、大きく変わるという見方がある。

新博多駅ビルの開業に留まらず、博多駅周辺にある老朽化した大型ビルの建て替えが進み、さらに第2キャナルシティもオープンすると、博多駅地区の様相は一変する。

2011年頃には、現在工事中の電気ビルも順次建て替えが進み、新しいビジネスゾーンとしての「顔」もある程度見えてくるであろう。博多駅から渡辺通り方向へ、さらに足を伸ばすと、九州大学六本松キャンパスに行き着く。六本松キャンパスは、2009年春に伊都キャンパスへの移転する予定だ。そして、その跡地には裁判所をはじめとする法曹関係施設の移転が検討されている。

これらの計画や構想以外にも、各地での再開発プランが動き出していることも十分に考えられるだけに、新博多駅ビルが開業する2011年という年は、福岡という都市に大きな転機になるものと考えられる。

天神でも動き出した容積率緩和による再開発の動き

九州最大の繁華街である福岡市・天神地区―――。その中心部に位置する天神2丁目に自社およびグループ企業のビルを構える九州電力や福岡銀行などの大手企業は、福岡市をオブザーバーに迎えて、一帯の再開発に向けた研究会を発足させた。

昭和通りと明治通りという二大幹線道路に挟まれた天神2丁目の敷地面積は約1万5000平方メートルだ。かつて、黒田節で知られる母里太兵衛が屋敷を構え、その後は炭鉱王・伊藤伝右衛門の赤胴御殿もあった天神2丁目一帯には現在、天神ビルや福岡銀行本店ビル、福岡証券ビル、福岡天神センタービルなど13棟のオフィスビルが立ち並ぶ。

研究会では九州電力、福岡銀行、野村不動産などをメンバーとして、来年度に福岡市が予定している公共的な役割を取り入れた建築物に対して容積率を加算制度を視野に入れて、将来に向けた段階的な開発のありかたについての勉強会を開いている。

都心のビル更新へ向けた容積率緩和の動向


福岡市都市計画審議会で容積率の加算が認められた電気ビル(完成予想図)

福岡都心部の老朽化したビルの建て替えに際して、容積率についての問題が指摘されて来た。

容積率自体は、1973年に改正された建築基準法で大型建築物の乱立を防ぎ、「まち」としての景観を保つ目的で導入された。容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合を指す。たとえば、敷地の半分に平屋の建物を建てれば50%となり、敷地いっぱいに2階建てると200%になる。つまり、その敷地に対して、どれくらいの規模(床面積)の建物が建てられるかという割合でもある。

福岡市の場合、都心部における容積率は、400から800パーセントの指定がされている。もっとも、建築基準法改正の1973年以前に完成したビルについては、容積率の規定自体がなかったため、800パーセント超のビルも多々あるのが現状だ。

これらの老朽化した800パーセント超のビルをそのまま建て替えようとすると、現在の容積率が適用され、結果として建て替えたビルは、以前に比べて小さくなってしまうのだ。このため、福岡市都市整備局は昨年10月、都心部における老朽化したビルの建て替えを促し、機能強化と魅力づくりを推進するために条件付きで容積率の加算を拡充する方針を明らかにした。

まちづくり等のプロジェクト評価で容積率加算へ

これまでも文化ホールや太陽光発電施設など設置への特定施設評価、歩行者空間の整備や公開空地などへの公開空地評価で容積率を加算する既存制度があった。

現在、建替工事中の九電本店街区では、特定施設や公開空地整備にあわせて、2005年11月の福岡市都市計画審議会で、従来平均で480パーセントだった容積率の上限を700パーセントに変更することが認められた経緯がある。

来年度からの導入を計画している新しい制度では、従来の特定施設評価や公開空地評価に加えて、「まちづくり取組み評価」と「敷地外公共施設評価」という新しい項目を追加して、インセンティブとして容積率の加算を拡大していく考えだ。

容積率加算のポイントは何か

容積率加算の新たな対象となるまちづくり取組み評価としては、福岡市が目指す都市像や課題解決を踏まえ、「九州・アジア」「環境」「魅力」「安全・安心」「共働」などの取り組みを評価していくとしている。

まちづくり取組み評価とともに新たな評価対象となった敷地外公共施設評価では、地下歩道や道路付加車線の確保などを促進していく考えだ。具体的な容積率の加算量は、周辺への環境配慮や都市基盤との調和などを審査・チェックした上で、決定していく仕組みになるという。

来年度から始まる新制度の運用に向けて、福岡市都市整備局地域計画課では、「福岡には、地域の人々でまちづくりを考え、話し合っていく素地があり、良いプロジェクト提案を評価して、共働でまちづくりをしていきたい。都心部のビルは更新期を迎えており、まちのグレードアップを図るとともにエリアマネジメント組織とも連携しながら、まちづくりの機運を高めていくことで、新しい時代へのキックオフとしたい」(町田一彦係長)としている。

新制度適用による容積率加算が可能になると、博多駅周辺や天神地区にある容積率適用以前の老朽化した大型ビルの建て替えが一気に進むことも期待されるだけに、今後の動向が注目される。それだけに都市計画に代表される行政の施策が、民間開発を誘導していく効果は大きい。これらの点を踏まえながら、福岡市として「福岡をどのような都市にしていきたいのか」という全体構想をきちんと整理していくことも必要ではないだろうか。(近藤益弘)

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※当ページの内容は、2008年2月1日発行の18号に掲載されたものです。

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