フォーラム福岡

福岡の近未来図

部品産業を強化・育成、地域産業化へのロードマップ

2007年3月28日発行の13号より

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自動車産業は、すそ野の広い産業である。自動車産業を下支えする部品産業において地域のウェイトを高め、ひとつの自立した産業としていくことが求められる。自動車産業を地域の産業として、九州に根付かせるためには、いま何をなすべきか。

自動車産業を下支えする部品業界の現状

九州における自動車生産は2000年以降、急激に伸びを見せ、倍増の勢いにあるのに対して、自動車部品の生産については、伸びは鈍いのが実情だ。日本政策投資銀行九州支店が、工業統計をもとにまとめた資料によると、自動車製造業の出荷額は、2000年には1兆1381億円だったのが、2004年には2兆1994億円と、ほぼ倍増している。その一方で、自動車部品等製造業の場合は、2000年の7061億円から2004億円の8412億円へと、約2割増というゆるやか伸びだ。

日本の自動車生産システムでは、完成車を手掛ける自動車メーカーを頂点として、その傘下には各種の自動車部品メーカーが連なり、さらにその下には数多くの中小企業が組織される。いわばピラミッド型の生産分業体制だ。

一般的に自動車は、2〜3万点にもおよぶ様々な部品から構成されているといわれている。このような自動車部品の生産について、自動車メーカーではエンジン生産や車体パネルなどの基幹となる部品生産や最終的な組立を手掛ける。その自動車メーカー自体で生産している部品は、自動車全体の約3割といわれている。残り7割となる駆動・懸架系部品、電装部品、車体部品、内装部品、エンジン部品などの部品については、傘下の1次部品メーカーをはじめとする協力企業が担当するという、分業システムになっている。

このような自動車部品について、自動車メーカーが生産地域内の部品メーカーから調達している割合を示す域内調達率についてみると、自動車の先進地である関東、東海では8割にも達するとみられている。これに対して九州に生産拠点を構える自動車メーカーの場合、総じて50パーセント前後といわれている。

九州における部品調達の特色をみる


自動車産業への参入に向けての講演会や勉強会も多数開催されている(写真は九州自動車成長戦略フォーラムでの分科会模様)

九州内に生産拠点を構える自動車メーカーが域内で調達している部品は、シートやマフラー、ラジエーター、エアコンなど、軽量でもかさばる部品・重量のある部品が多い。このため、九州に進出している1次部品メーカー向けに部品を供給している地場企業の生産品目は重量物や容積が大きく、一般的に輸送コストの負担が大きい部品が多い。

その半面、自動車メーカーが域外から調達している部品は、電装品をはじめ駆動・懸架系部品、エンジン部品などの高機能な部品が多い。この理由として一次部品メーカーの多くが関東や東海などの自動車産業の先進地に主力工場を構えていることが挙げられる。これらの高機能な部品は大量生産に適した製品であることに加え、研究開発拠点に近接した工場での生産が効率的である。さらに軽量かつコンパクトな部品が多く、九州内の需要量や物流コストなどを勘案した結果、域外から調達しているといえる。

各メーカー別に部品調達を見てみると、トヨタ九州では、九州で生産する車種に必要な自動車部品を域内から調達するように取り組んでいる。系列の1次部品メーカーの九州進出に加え、部品メーカーとの技術提携による地場企業の育成を路線として打ち出している。現在、内装品や外装品を中心に約60社の部品メーカーから調達している。調達先についてはトヨタ本社で決めている。

一方、日産九州工場に納入する部品メーカーの大半が、福岡県や大分県内に工場を持ち、特に半径50キロ園内に集中している。エンジンやトランスミッションなどの駆動系などは関東から供給されている。調達先については日産本社が決定する。部品に求められる品質、価格、納期について、地元の企業は納期に関するリードタイムや在庫変動に有利となる。この点を踏まえ、地場メーカーの育成に向けて自治体ともタイアップしながら、技術者派遣による品質・生産管理などの改善支援に取り組んでいる。

また、ダイハツ九州の部品調達を見てみると、その調達先は中津近郊をはじめ、北九州、広島などの大分(中津)工場から半径100キロ以内の部品メーカーからの調達している。自動車の主要部品となるエンジンやトランスミッションなどはダイハツ本体から供給され、船便で送られて来ている。これら以外の高機能な部品は、資本関係にあるトヨタの本拠地の東海から調達しているケースが多く、トヨタ九州向けの物流を利用していくことの効率化も図られている。

系列化が緩い九州内の部品メーカーの事情

九州における自動車部品調達の実情を見てみると、系列にしばられないヨコ受け的な取引もさかんだ。某自動車メーカーの1次部品メーカーが、他の自動車メーカー系列の部品メーカーを通じて、部品を供給しているケースが多い。

部品生産の目安は生産台数で20万台ないし40万台といわれており、これまでの九州の生産台数が必ずしも十分ではなかった。このため、九州へ進出した1次部品メーカーのなかには仕事量の確保のために他系列の部品メーカーから受注していることも背景として挙げられる。

また、厳しい国際競争を戦っている自動車メーカーが部品に対して厳しく求める品質、価格、納期について的確な対応できる地場企業がまだ少ないという事情もある。

しかし、年間生産台数が100万台を突破し、今後150万台ベースも視野に入ると、状況そのものが一変すると考えられる。

官民挙げての部品産業育成への取り組み

九州における自動車生産150万台生産の達成へ向けて、大きなカギを握るのは、地元から自動車部品の調達をいかに引き上げるかということだ。域内からの調達率を引き上げることは、調達に関わる物流コストを抑えるだけでなく、《必要な部品を必要な時に必要な場所へ安く供給できる》ことであり、九州で自動車を生産していく上での競争力と魅力がさらに高まる。そのためには高い技術力をもつ部品メーカーの集積を図る必要があり、大学などの研究機関と連携した人材育成・技術支援も不可欠となる。

「自動車産業を支える中核的人材の育成」を掲げる福岡県では、〈産学官連携による人づくり〉を打ち出す。福岡県内に数多くある大学や工業系専門学校、工業系高校などの強みを生かし、産学官連携による取り組みで自動車産業を支える人材の育成を図っている。

そのひとつが、九州工業大学の先端金型センターを中核とした自動車関連金型中核人材育成プログラムだ。このプログラムでは、3次元デジタル設計から先端加工までに対応できる生産現場の中核人材の育成に力を入れている。 

また、県立工業高校への高度なCADプログラム導入による高校生の技能育成、工業高校などを対象とした大規模なインターンシップの実施、福岡県若年者仕事サポートセンターによるモノづくり人材育成を手掛けている。さらに大手自動車メーカーOBらを地場企業へ派遣していくことによる生産管理体制の改善支援にも取り組んでいる。

その一方で、企業独自の取り組みとしては、系列を超えた部品メーカーによる企業連携連合体であるリングフロム九州や地場の中堅・中小企業による共同受注・開発グループである「ガマダス」などの取り組みを挙げることができる。

自動車新時代に向け、高まる部品産業への期待

近年、経済成長が著しい中国やインドでは、自動車生産も急速に伸びている。その一方で、自動車においては、複数の部品をユニットとして組み立てるモジュール化の流れや加速するエレクトロニクス化、さらに将来的な燃料電池への潮流がある。これらの状況を踏まえ、従来からの半導体産業の蓄積や水素に関する産学官の先駆的な取り組みなど、九州でしか独創的なできない自動車部品の研究・開発・生産が可能となれば、日本の自動車産業において重要なポジションを築くことができる。

さらにアジアに向けて九州が持つ地理的な優位性から、中国、インドをはじめとするアジア経済圏への独創的な自動車部品の供給基地としての役割を担う可能性もある。日本国内の自動車市場は、成熟しつつあるものの、中国やインドなどの巨大市場が今後出現してくるだけに九州の自動車産業が発展する余地は十分あり、九州における自動車産業の振興は、地域経済の発展に大きく貢献するものと期待される。(近藤益弘)

【インタビュー】真の意味するカーアイランドへの取り組みとして、いま、何が必要か


九州経済調査協会研究主査
平田エマさん

自動車部品の域内調達率の引き上げと地場企業の育成は、必ずしも一致しない。

調達率を向上させるだけなら1次部品メーカーの誘致に尽きる。しかし、肝心なのは、域内の地場企業からの部品調達を引き上げることだ。そのためには地場メーカーの育成が重要だ。

自動車メーカーや1次部品メーカーは、地元にどのような技術や能力をもった地場企業があるかを十分に把握できていない。そのため、地場企業への興味と関心は高く、地場経営者の自動車産業への参入意欲やマインドが大事だ。

自治体や関係団体による商談会や講演会の機会を生かし、互いの敷居と垣根を乗り越えて行くことで、ビジネスチャンスや技術力向上のきっかけになる。また、成功事例を正しく伝え、また失敗についても次の成功につながる要因分析などを報じていく新聞やテレビ、雑誌などのメディアや私たち・シンクタンクの役割も大きいと考える。

このような積み重ねの結果、地元の自動車産業に関係する地場企業の取り組みが、日常的に接することができれば、「本当の意味でのカーアイランド」となるのではないかと思う。

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※当ページの内容は、2007年3月28日発行の13号に掲載されたものです。

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