自動車150万台生産へのアクセルを踏む
2007年3月28日発行の13号より
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いまや、半導体と肩をならべるリーディング産業の観もあるのが、九州の自動車産業だ。昨年の100万台生産をバネに150万台生産に向かって、加速度を増す。九州における自動車産業の現状、そして自動車産業を取り巻く産学官の動きを追う。
九州における自動車産業の「いま」
トヨタ車40万台、日産車38万台、ダイハツ車23万台……。昨年、自動車生産台数が100万台を突破した九州は、東海、関東に続く日本の自動車生産拠点となりつつある。
北部九州には福岡県宮若市のトヨタ自動車九州(トヨタ九州)、同じく苅田町の日産自動車九州工場(日産九州工場)、福岡県と隣接する大分県中津市のダイハツ九州という異なる大手自動車メーカーの最新工場が集中する全国的にめずらしい地域でもある。
なかでもトヨタ、日産が生産拠点を構える福岡県では、自動車をはじめとする輸送機械の製造品出荷額(2005年速報値)が2兆円にのぼる。この数字は県内工業出荷額の4分の1を占め、品目別では首位を独走する。また、自動車生産や部品製造の従事者も1万7千人と、自動車産業はいまや、福岡県におけるリーディング産業の観さえある。
相次ぐ進出・増強で第3次ブームへ
いま、自動車工場および関連工場の進出・増設ラッシュに沸く九州は、日産の九州進出による第1次自動車産業ブーム、トヨタ九州の宮田工場操業による第2次自動車産業ブームにつづく、第3次自動車産業ブームの真っ只なかにあるといえる。
第3次自動車産業ブームの発端となったのは2004年11月、ダイハツ工業グループのダイハツ九州(旧ダイハツ車体)が群馬県前橋市から福岡県と隣接する大分県中津市へと全面移転だった。当初12万台の生産能力で立ち上げ、その後矢継ぎ早に増強して、昨年23万台を生産した。現在、ダイハツ九州は、第2工場の建設を進めており、今年末には年産能力を46万台(2直定時)まで拡張する計画だ。
一方、2005年9月にはトヨタ九州の第2工場が完成、トヨタの最高級ブランド車種である「レクサス」の生産を始めた。同年12月には、トヨタグループにおいて愛知県外としては、国内では初めてとなるエンジン工場が福岡県苅田町に完成、宮田工場向けのエンジン供給が始まった。トヨタ九州での好調な車両生産を受けて、エンジン工場の生産能力を倍増、来年春には年産能力44万基と倍増させる予定だ。
一方、日産グループにおいても日産車体が、日産九州工場内での新工場建設を発表、この結果、2009年には日産グループの九州における生産能力は65万台となり、日産グループの国内における生産能力の約4割を占める。
関心高まる九州の自動車産業の動向

左から)麻生渡・福岡県知事、伊奈功一・トヨタ自動車常務役員、渡辺義章・日産自動車常務執行役員、本田哲也・ダイハツ工業常務取締役
太宰府天満宮に隣接する九州国立博物館で今年1月、一風変わった展示会が催された。「クルマの歴史と未来展」と題した展示会には、自動車ファンをはじめ、家族連れや学生、社会人らが詰め掛けた。わずか11日間という開催期間にも関わらず、会場には9万4000人もの来館者が足を運んだ。なかでも1月14日の日曜日には1万8千人もの人々が押し寄せ、オープン時に次ぐ来館者数を記録した。
また、今年2月に福岡市内で開催された『自動車成長戦略フォーラム』では、予定を大幅に上回る480人余りの関係者らが詰め掛け、会場は熱気に包まれた。席上、来賓としてあいさつした麻生渡・福岡県知事は、現在取り組む自動車産業振興に触れ、「自動車生産150万台という数字は巨大であり、これだけの自動車を生産している国は世界でも9カ国しかなく、一国の自動車生産台数に匹敵する」と、その意義を力説した。

レクサスシリーズの生産を手掛けるトヨタ自動車九州

専用埠頭から海外向けに出荷する日産自動車九州工場

矢継ぎ早の増強でグループ最大生産拠点のダイハツ九州
引き続いて、『グローバル戦略と九州への期待』という特別講演では、九州に生産拠点を構える自動車メーカー3社の担当者が壇上に上がった。
トヨタ自動車の伊奈功一・常務役員は、トヨタグループの九州における自動車生産に関して「国内の第2拠点であり、トヨタの世界戦略の一翼を担っている」と、解説した。
一方、日産自動車の渡辺義章・常務執行役員は、「九州から付加価値の高い部品、コスト競争力のある部品の調達の必要性」を語り、地場メーカーへの新規参入や事業展開を促すとともに自治体による企業支援の重要性を説いた。
さらにダイハツ工業の本田哲也・常務取締役は、九州への期待として「東九州自動車道をはじめとする高速道路の整備、港湾整備、モノづくりに携わる人材の育成や即戦力となるU・J・Iターン者の人材確保、自動車関連メーカーへのインセンティブ」を挙げた。
産学官による自動車産業振興
「2007年度までに北部九州における自動車の生産台数100万台」を目標とする『北部九州自動車100万台生産拠点推進会議』を福岡県が主体となって2002年2月、発足させた。当時、年間で100万台もの自動車を生産している国は、アメリカやドイツをはじめ世界でも13カ国しかないのが現状だった。
これらの国々に匹敵する世界有数の自動車生産拠点を目指す九州が、自動車生産100万台の達成に向けて、福岡県を中心に地元経済界や自治体が一体となって工業団地や道路・港湾などのインフラ整備、さらに地場企業の育成などに取り組んで来た。
この結果、昨年8月には目標より1年早い2006年での前倒し達成が見込まれたため、目標生産台数を150万台に「上方修正」して、『北部九州自動車150万台生産拠点推進会議』と改称、新たなスタートを切った。
北部九州自動車150万台生産拠点推進会議の会長には、同100万台会議の会長だった麻生渡・福岡県知事が就任、顧問には北部九州に自動車生産拠点を置く日産自動車、トヨタ自動車九州、ダイハツ九州の3社が顔をそろえる。会員数は、307企業、26団体、32市町村の合計365会員(昨年12月末)で、産学官による取り組みだ。
「九州はひとつ」でカーアイランドへアクセル
北部九州自動車150万台生産拠点構想の戦略として「生産台数150万台」「地元調達率70パーセント」「アジアの最先端拠点」「次世代のクルマ開発拠点」の4つを掲げる。実現に向けた取り組みとして、「企業誘致の強化」「地場企業の参入支援」「産業インフラの整備」「関連施策の強化」を挙げている。
生産台数150万台に向けた取り組みとして、地域の競争力を高めていくために自動車の外注部品について、地域からの調達率を現状の50パーセントから70パーセントまで向上させるとしている。高い成長力をみせるアジア地域との地の利を生かし、アジアに向けたマザー工場化や部品産業の集積を高めて、アジアにおける先端的な自動車産業拠点を目指している。そして、九州で先進的に取り組んでいるシステムLSIや水素エネルギーなどの研究・開発技術との連携を図ることで、次世代に向けた自動車の研究開発拠点化にも取り組む考えだ。
また、昨年10月に開かれた九州地方知事会では、九州7県による取り組みとして「九州自動車産業振興連携会議」を設置することが決定した。従来、福岡県、佐賀県、熊本県、大分県の九州北部4県で連絡会議を構成していたのに対して、今後は「九州がひとつ」になって自動車産業に向けた人材育成や技術支援などに取り組む。「カーアイランド」への新たなスタートを切ったといえる。(近藤益弘)
レクサスを生産する最新鋭拠点 -トヨタ自動車工場九州-

レクサスIS350/IS250

レクサスES350

ハリアー

クルーガー
トヨタ自動車九州は、設立15年で九州電力に次ぐ九州第2位の売り上げ規模の企業になっている。
トヨタグループの高級ブランド「レクサス」シリーズの生産をトヨタ本体の田原工場とともに担っている。
レクサスIS・ESとともにハリアーなどのSUV車の生産する。完成車の9割を輸出しており、北米向けが約3分の2を占めている。
2000年と2001年には米国市場調査会社であるJD POWER社によるユーザー調査の結果、世界最高品質を生産する工場に贈られる「プラチナ賞」を連続受賞した。
愛知県外では初となるエンジン工場も2005年12月から生産を開始した。同じく愛知県外で初めてのハイブリットタイプの基幹ユニットの生産から車両組立までを手掛けており、トヨタグループの最新鋭の生産拠点となっている。
| トヨタ自動車九州 宮田工場 | |
|---|---|
| 所在地 | 福岡県宮若市 |
| 生産開始 | 1992年12月 |
| 生産能力 | 43万台(2直定時) |
| 生産台数 | 40万台(2006年実績) |
| 生産車種 | ハリアー、ハリアーハイブリッド、クルーガー、クルーガーハイブリッド、レクサスIS、レクサスES |
| 従業員数 | 約6800人 |
| 敷地面積 | 113ヘクタール |
| トヨタ自動車九州 苅田工場 | |
|---|---|
| 所在地 | 福岡県苅田町 |
| 生産開始 | 2005年12月 |
| 生産能力 | 22万基※能力倍増を計画 |
| 生産台数 | 14万基(2006年実績) |
| 生産車種 | V6・3.5リットルエンジン |
| 従業員数 | 約700人 |
| 敷地面積 | 31ヘクタール |
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| 九州宮田工場の全景 | 同苅田工場の全景 |
日産グループ最大規模の生産工場 -日産自動車九州工場-

エクストレイル

ティアナ

プレサージュ

ムラーノ

ラフェスタ
九州に生産拠点を構える自動車メーカーのなかでも最先発の日産九州工場は現在、日産グループ最大の生産規模を誇る。
操業30余年の第1工場、同15年の第2工場の設備更新に取り組み、フレキシブルな生産が可能な最新鋭工場に生まれ変わった。今後、日産車体の新工場も加わると、生産能力は年産65万台に達する。
九州工場内の専用埠頭では通関手続きが可能なため、世界各地向けて直接輸出している。「輸出が7割強、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどの地域、そして国内向けのバランスがよく取れ、特定地域の需要変動による影響を受けにくい工場」(斎藤淳・日産九州工場総務部長)だ。
アジアとの連携を視野に入れながら、日産の主力工場として海外生産拠点のマザー工場としての役割も担っている。
| 日産自動車 九州工場 | |
|---|---|
| 所在地 | 福岡県苅田町 |
| 生産開始 | 1976年(車両生産) |
| 生産能力 | 38万台(2006年実績) |
| 生産台数 | 年産53万台(2直定時) |
| 生産車種 | ティアナ、エクストレイル、プレサージュ、ムラーノ、ラフェスタ、アルメーラ |
| 従業員数 | 約4500人 |
| 敷地面積 | 236ヘクタール |
| 日産車体 | |
|---|---|
| 所在地 | 福岡県苅田町 |
| 生産開始 | 2009年(予定) |
| 生産能力 | 12万台(計画) |
| 生産台数 | エルグランド、クエスト(予定) |
| 生産車種 | V6・3.5リットルエンジン |
| 従業員数 | 約1000人(予定) |
| 敷地面積 | 日産自動車(株)九州工場内 |
軽生産を主体に好調なスタート -ダイハツ九州-

ミラ

ビーゴ

アトレーワゴン

ハイゼット カーゴ

ハイゼット トラック
軽自動車の売れ行きが好調だ。昨年の販売では200万台を突破、3台に1台は、軽自動車という盛況振りをみせる。
群馬県前橋市からの移転当初は年産12万台の計画だったが、矢継ぎ早に増強を重ね、昨年23万台を生産した。昨年6月、社名をダイハツ車体からダイハツ九州に変更、「地元との共生を高め、ダイハツグループの西の拠点としての位置付けを明確にした」。
移転にともない以前の従業員のうち約半数が九州に移り住み、その後現地採用を進めた結果、現在では正社員の約7割が九州出身者で占める「地元企業」になっている。
軽自動車(乗用・商用)・小型乗用車などを生産する第1工場に加え、建設中の第2工場では軽自動車に特化、両工場の生産能力は年産46万台(2直定時)に達する。ダイハツグループにとって九州は最大の生産拠点だ。
| ダイハツ九州 大分(中津)工場 | |
|---|---|
| 所在地 | 大分県中津市 |
| 生産開始 | 2004年12月 |
| 生産能力 | 23万台(2直定時) |
| 生産台数 | 23万台(2006年) |
| 生産車種 | ミラ、ビーゴ、アトレーワゴン、ハイゼットカーゴ、ハイゼットトラック |
| 従業員数 | 約2100人 |
| 敷地面積 | 130ヘクタール |
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