九州新幹線を活用した、「人」を本位とする交通・まちづくり・交流へ
2008年3月29日発行の19号より
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新幹線が運ぶのは、「人」だ。「人」は文化やカルチャーを創造していく。人口減少や社会の成熟化にともない、「人」が集まる≪にぎわい≫のあるまちづくりが求められる。「人」本位の文化・カルチャー路線について考察する。
「人」を運ぶ新幹線、「モノ」を運ばない新幹線
高速運転で都市間を結ぶ新幹線は、出張や観光・レジャー、さらに通勤・通学など、「人」の移動において時間短縮効果を発揮する。この結果、新幹線が開業すると、人々の行動範囲が広がり、通勤・通学圏も拡大していく。
しかし、新幹線は、「人」を運ぶが、「モノ」は運ばない。旅客専用である新幹線は当然、物流機能はない。物流は、高速道路や一般道路などを走るトラック輸送が主に担っている。これまで、地方の都市や地域にとって「企業」や「工場」の誘致は、都市や地域の発展につながると考えられてきた。
しかし、日本が人口減少時代を迎え、成熟社会になると、状況は大きく異なってくる。これらの点を踏まえて、本号巻頭インタビューにおいて、藻谷浩介・日本政策投資銀行参事役は、「いままで福岡は『九州の東京』を目指してきたが、今後は『九州の京都』を目指すべきだ」と指摘する。
従来、福岡をはじめとする各都市は、東京をモデルとして、企業や工場を誘致する「経済優先のまちづくり」だった。今後、福岡が歩むべき道として「人」が集まり、文化をエネルギー源とする文化都市路線を藻谷氏は提唱する。
「企業」「工場」から「人」への誘致による文化路線
文化路線の成否を握るカギとなるには「人」だ。その基本となる文化とは、人の手をへてつくり出された、人の心を豊かにするものといえる。
これまでのような「企業」や「工場」を呼び込むのではなく、文化、あるいは文化を下支えするカルチャーの担い手である創造性豊かで個性的な「人」が集まってくることがポイントとなる。そして、そのような「人」の存在は、まちに活力やにぎわいをもたらす。
さらに彼らが、具体的なアクションを起こすと、広告・出版・印刷などのソフト産業を刺激して、あらたな文化やカルチャーも生まれ、そして新しい産業が誕生する可能性もある。

毎年9月に開催されているアジアンマンス
福岡の文化・カルチャーを考える上で、長年に亘るアジアとの交流や独自の都市構造は、大きな資産となる。京都の「日本の伝統文化」都市に対し、福岡はアジアも視野に入れた「文化&カルチャー」都市を目指すべきであろう。
都市の財産となるアジアとの交流実
うどん、そば、お茶、まんじゅう……。これらは、博多を発祥として全国各地へ広がっていったといわれている。古来、中国大陸との交流があった福岡は、地理的にも歴史的にもアジアの諸地域と深いつながりを持つ。

アジア太平洋こども会議・イン福岡でのヒトコマ
5月博多どんたく、7月博多祇園山笠に続いて、9月はアジア各国の文化や芸術を紹介するアジアンマンスとなる。この時期、アジア文化の保存や創造に貢献した個人や団体を表彰する「福岡アジア文化賞」授賞式も開催される。一方、1989年から始まったアジア太平洋こども会議・イン福岡は、アジア太平洋地域の子どもたちを招いて、福岡の子どもたちとの相互交流を図って、今年20周年を迎える。
文化面の交流においても福岡市が開設した福岡アジア美術館は、アジア各地から美術作家や研究者、学芸員らを招いての交流や制作活動を実施している。一方、アジア各国で制作された映画を上映するアジアフォーカス・福岡映画祭は、91年から毎年開催され、アジア映画の保存にも尽力している。さらに現在、福岡市内の大学・短大には中国・韓国をはじめとするアジアから約2100人の留学生が学ぶ。

アジアとの文化やカルチャー面での交流が強みだ
アジアとの歴史的なつながりに加えて、長年にわたる「人」を介した交流の積み重ねは、福岡の財産であり、個性のひとつとなっている。今後の都市戦略を練っていく上でも大きなポテンシャルになるといえる。
商業・サービス特化の都市構造を生かす
働く人の8割以上がの第三次産業に属する福岡という都市は、商業やサービスの色彩が濃いまちだ。
商業・サービス業に特化した都市だけに全国的にみてもデザイン関連産業の従事者も多い。地元のデザイン団体や教育機関で組織するFUKUOKAデザインリーグは、2008年4月にNPO法人化され、その取り組みが注目される。また、ゲームソフト産業が集積しているのも特色だ。
一方、音楽をはじめとするエンターテインメント関連産業も活発だ。毎秋開催のミュージック・シティ・天神は、各街角でライブ演奏を楽しめる音楽イベントとして定着している。また、国際的な美術展覧会である福岡アジア美術トリエンナーレは、3年に一度開催されている。01年世界水泳大会、04年国際青年会議所世界会議福岡大会、06年世界政治学会福岡大会など、スポーツや経済、学術などの各分野で様々な国際イベントを開いてきた実績がある。
商業・サービス業に特化した都市である福岡は今後、「人」を本位とした文化・カルチャー活動や国際的な交流・親睦をいかに生かしていくかが求められる。
文化・カルチャーの「にぎわい」都市づくり
今後、国内だけでなくアジアも巻き込んだ都市間・地域間競争において、福岡が勝ち残っていくためには、「交通機能」「まちづくり」「人的交流」がカギとなる。
交通機能としても九州新幹線は有力な武器になるといえる。まちづくりにおいても「人」をベースとした発想で、《訪ねたいまち》《学びたいまち》《働きたいまち》《住みたいまち》の実現が求められる。都市の魅力度が上がれば、「人」が集まり、さらに都市も魅力的になっていく。
「人」の行き来が活発になっていくなかで《訪ねる・遊びに来る》、《気に入る・リピーターとなる》、《活動拠点のひとつにする》、そして《定住する・本格的な活動拠点とする》というシナリオが描ければ、企業・工場に変わる、創造性豊かで個性的な「人」の誘致も可能となると考える。
その根底にあるのは、都市としての戦略であり、方向性だ。これまで福岡が培ってきた都市としての資産と個性を生かしながら、「人」が集まってくる文化・カルチャー路線をベースに、テーマパーク的な楽しさも織り込んだ『にぎわいのある都市』づくりが今後ますます重要だと考える。(近藤益弘)
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※当ページの内容は、2008年3月29日発行の19号に掲載されたものです。

