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新幹線がもたらす地域新時代新幹線写真

九州新幹線がもたらす、「効果」と「影響」について考える

2008年3月29日発行の19号より

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3年後に控えた全線開業に向けて、着々と建設工事が進む九州新幹線鹿児島ルート。九州新幹線鹿児島ルートが全線開業することで、地域社会やライフスタイルにもたらされる「効果」と「影響」について考えてみる。

九州新幹線開業で福岡県内の新幹線駅は5駅へ

2005年時点における福岡県の人口は国勢調査によると、505万人弱で過去最高を記録している。福岡県の人口増は、福岡都市圏の伸びが支えているためだ。たしかに現時点では、福岡県の人口は増え続けるが、1990年以降は、人口の伸び率自体も減少気味だ。近い将来人口増が頭打ちになって、福岡県も人口減少時代を迎える。


九州新幹線「つばめ」

福岡県内には山陽新幹線の既存駅に加えて、九州新幹線鹿児島ルートが開業すると、新幹線駅の所在地は、福岡、北九州、久留米、筑後、大牟田の5市となる。

県全体の人口が落ち込む状況になると、基本的にはパイの奪い合いとなる。長野県の例から分かるように新幹線駅のある地域と新幹線駅がない地域では、概して前者の方が後者に比べて、落ち込み幅は少さい傾向にある。

意外、福岡市の事業所数のピークは96年だった

5年に1度の割合で実施される事業所統計をもとに福岡県内における事業所の動向をみてみよう。

工業都市として一時代を築いた北九州市は、1986年以降、事業所数の減少が続く。県南地区の商都・久留米市は91年にピークを迎え、田園都市の筑後市も96年を境にマイナス基調だ。

さらに、「元気な都市」として自他共に認める福岡市の事業所数は、意外にも96年がピークだった。06年の事業所数は、ピーク時に比べて1割以上も減らし、7万件弱となっている。一方、福岡県における事業所数は91年の25万件強が最高で、以後は右肩下がりの状況にある。日本全体をみても91年をピークに事業所数は減少しており、全国的に事業所が増えている市町村はわずかだ。

96年を境に減り続ける福岡市・福岡県の従業員数

福岡県内において、事業所数が減少傾向にあるが、そこで働く従業員数については、一体どうなっているのだろうか。

事業所数と同様に大牟田市では、従業員数は1986年以降も減少の一途をたどっている。一方、平成の大合併で中核都市入りを果たした久留米市の事業所数は、上積み効果もあって、わずかな差で06年に過去最高を記録した。

しかし、福岡市、北九州市、筑後市はもちろん、福岡県全体では、96年がピーク時で以後、減り続けている。福岡市でさえも06年の従業員数は、ピークだった96年時点に比べて9割近くまで減らし続けている。

福岡県の場合、たしかに人口は依然として増え続けている。しかし、実際の経済活動を担う事業所数、そして事業所で働いている従業員数は、ピークを過ぎ去って減少傾向にある。福岡県においても、長野県と同様に1996年あたりが、事業所数や従業員数の頂点だったといえる。

新幹線駅タイプにみる開発手法の違い

新幹線駅のタイプは、開設の仕方で分けると、大きく二つに分けられる。ひとつは、在来線の既存駅に新幹線駅を付設するケースで、もうひとつは、既存駅とは関係なく、郊外などに新設する場合である。

福岡県内における九州新幹線駅で考えてみると、博多駅や久留米駅は既存駅への付設となる。一方、新大牟田駅は新設駅だ。船小屋駅は新幹線駅へ在来線の無人駅が移動することで既存駅との一体化となるものの、実質的には新設に近いといえる。

既存駅付設の場合は、周辺に住宅や商業施設が集まってきているケースが多く、駅周辺を再開発するという手法になる。一方、駅新設の場合、郊外にできるために区画整理などで開発していく場合が多い。

長野新幹線の事例をみると、新設の佐久平駅では周辺を区画整理することで郊外型商業施設の集積に成功した。佐久市と同じく商業集積に成功した軽井沢町では、既存駅に隣接していたゴルフ場跡地の再開発によってショッピングモールがオープンした経緯がある。

新幹線駅を生かす交通アクセスとまちづくり

新幹線駅はビジネスや観光だけでなく、通勤・通学の足としての使われ方も増えてきている。それだけに新幹線駅は、付設・新設に関係なく、交通アクセスがより重要だ。

福岡県は新幹線駅に関する整備として、主に道路整備を中心に進めている。郊外にできることが多い新設駅では自家用車で駅まで来て、新幹線に乗り換える『パーク&ライド』を可能にするためにも新幹線駅への道路整備と駅周辺での駐車場整備は必須といえる。新幹線ならびに新幹線駅を生かしていくためにも他の交通機関や連絡道路などの交通アクセスを確保することが重要だ。

そのためにも駅の基本機能である交通アクセスの確保が求められる。その上で、新幹線駅に関して、新幹線へ乗り換える『パーク&ライド』用の駐車場整備だけで留めるのか、あるいは区画整理による周辺開発まで手掛けるのかは、それぞれの地域の考え方や事情によって変わってくる。

また、在来線駅に付設する場合、周辺の再開発をするのかどうか、仮にするにしてもどの程度の規模が適正かを見定める必要がある。これらのもとになるのは、地域のビジョンであり、地域としての戦略であるだけに、いま新幹線という巨大な交通インフラを前に地域の知恵が問われている。

観光面における新幹線効果の期待と対策


善光寺

新幹線開業による時間短縮効果で、一時的に沿線の観光地は盛り上がる。長野新幹線が開業した1997年は善光寺御開帳とも重なり、過去最高となる約1億760万人が長野県の観光地を訪れた。以後は減っていったが、次の御開帳となる03年には一時的な盛り返しをみせたものの、05年には9560万人まで減少している。

長野新幹線で東京から1時間半の時間距離にある長野市は、もともと善光寺の門前町として栄えてきた。善光寺の観光客数をみてみると、6年に1度の御開帳時はたしかに多いものの、それを除けば、ほぼ横ばいなのが現状だ。

たしかに新幹線が開業すると、時間短縮効果に加えて、交通事情も便利になり、さらに沿線に存在する有名観光地の露出度やPRも増えるため、「一度は行ってみたい」と、観光需要が高まるのも事実だ。

しかし、観光地自体に魅力や個性がないと、結局は需要の「先食い」で終わってしまうことも多い。一度やって来た来訪者をリピーターとするためには、何度も足を運ばせるような魅力や工夫が必要だ。そのためにも地域が持っている自然、歴史、文化、個性、風土、人情などの魅力や個性を見い出し、生かしていくビジョンや戦略が求められる。

新幹線・駅を生かす地域の戦略・ビジョンへ

新幹線がもつ最大の武器である時間短縮効果によって、日帰り行動圏が広がり、通勤・通学圏も拡大する。

このため、ビジネス面では従来、沿線都市にあった支店や営業所に関しては、維持コストと新幹線を用いた出張コストとの兼ね合いで存廃が決まる。一般的な訪問頻度は高まる半面、宿泊は減る傾向にある。このため、新幹線の利用者は在来線時代に比べて増加するものの、宿泊者自体は減少することも考えられる。

観光面では、新幹線開業で沿線の有名観光地は一時的な集客効果は期待できるものの、持続するかどうかは、観光地の魅力と工夫、努力のあり方が大きく左右する。

また、新幹線駅を核にしたまちづくりは、郊外での新設あるいは在来駅への付設で取り組み方が変わってくる。最低限の交通サクセスを確保した上で、区画整理による周辺開発、もしくは周辺市街地の再開発を手掛けるかは、地域の事情を踏まえた上で戦略的に考えていく必要がある。(近藤益弘)

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※当ページの内容は、2008年3月29日発行の19号に掲載されたものです。

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