九州新幹線時代の「交通」「観光」「まちづくり」について考える
2008年2月1日発行の18号より
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九州新幹線に代表される「交通」、域内および海外を視野に置いた「観光」、そして魅力ある都市を目指した「まちづくり」。交通、観光、まちづくりの観点から、いま求められる都市戦略、地域戦略について考えてみる。
福岡の発展を支えてきた外部要因は何か
山陽新幹線が博多駅に乗り入れた1975年は、福岡市の人口が初めて100万人を突破した節目の年でもあった。その後、福岡市は、新幹線並みのスピードで発展を続け、100万都市では先輩だった北九州市を抜き去り、現在では人口約142万人まで成長している。
福岡市が発展してきた歴史的な歩みを振り返りながら、「新幹線のターミナルとして、域外の力をうまく利用したという点が大きい」と指摘する声もある。この間、天神地区にソラリアプラザ・ステージ、イムズ、岩田屋本館・新館、福岡三越、福岡天神・大丸東館(エルガーラ)、などの商業施設が誕生した。また、屋上緑化の先駆けであるアクロス福岡、日本初となる開閉式の福岡ヤフードーム、福岡シティ劇場を併設する複合商業施設・キャナルシティ博多などのユニークな施設も話題を呼ぶ。一方、福岡タワー、マリゾン、ベイサイドプレイス博多埠頭などの湾岸スポットも人気を集めた。

九州経済調査協会 田代雅彦・調査研究部次長
このような背景を踏まえ、「周辺都市や九州が元気であってこそ、福岡も元気でいられる。今後は九州新幹線を活用して九州全域のために福岡が、どのようなサービスを提供できるかを考えなければならない」と、九州経済調査協会の田代雅彦・調査研究部次長は語る。
玄界灘の向う側を走る、もうひとつの「シンカンセン」
九州新幹線「つばめ」がデビューした翌月の2004年4月、お隣の韓国ではソウルと釜山を結ぶ韓国高速鉄道(Korean Train eXpress)のKTXが、高速専用線と在来線との組み合わせによる暫定運行を始めたのだ。

韓国高速鉄道(Korean Train eXpress)のKTX
従来4時間20分だったソウル〜釜山間を2時間40分でつなぐKTXは、韓国版「新幹線」と呼ばれることもあるが、日本の新幹線が電車方式なのに対し、フランスの高速鉄道・TGVを基本とするKTXでは機関車方式を取っている点が大きく異なる。
現在、KTXではソウルから途中の大邱までを時速300キロでの走行可能な高速専用線で走り、大邱から先は在来線を利用して釜山と結んでいる。
日本では在来線に狭軌、新幹線は国際的な標準軌と異なる規格を採用している。一方、韓国では在来線も高速専用線と同じ標準軌だ。このため、KTXは、在来線へ乗り入れ可能となっている。もっとも、在来線では線路の構造上、最高速度は時速120キロに制限されている。
「福岡賑わいのまちづくり戦略2011(仮称)」策定へ
現在、高速専用線の延伸として、大邱から慶州へ東進し、釜山へ南下するコースが計画されているが、建設自体は難航している。
将来、ソウルと釜山を高速専用線で結ぶ全線運行が始まると、所要時間は50分程度縮まって1時間50分前後となる見込みだ。

日韓航路を結ぶビートル
2010年度末に九州新幹線(鹿児島ルート)が全線完成し、さらに将来的にも韓国高速鉄道KTXが高速専用線による全線運行を始めると、ビートルが就航する日韓航路を介して、日韓の二つの高速鉄道が結ばれることになる。
このような状況を踏まえ、福岡市と韓国・釜山広域市との共同事業として海峡圏をひとつの観光交流圏に捉えたアジアゲートウェイキャンペーン2011(仮称)では、両国内はもとより、東南アジア・東アジアに向けたプロモーションを仕掛けていく構想だ。

好調な走りをみせる九州新幹線「つばめ」
海外渡航の自由化については、日本では東京オリンピックが開催された1964年4月だった。一方、韓国では、ソウルオリンピックが開催された翌1989年に海外渡航が自由化された。
今年、北京オリンピックが開催される中国でも早晩、海外渡航が自由化されるものとみられている。中国での海外渡航自由化が実現すれば、中国国内の富裕層が一挙に海外へ飛び出すことも十分にあり得る。このような中国からの観光客をいかに取り込むかが、一大ビジネスチャンスとなることも考えられるのだ。
アジアゲートウェイキャンペーン2011(仮称)における福岡市側の実施主体として、官民による「ビジターズ・インダストリー(VI)推進協議会」を予定している。VI推進協議会では、アジアからの集客力の向上に加え、博多駅地区―天神地区という2大核における都市回遊性の向上も含めた都市全体の活性化に向けた「福岡賑わいのまちづくり戦略2011(仮称)」も策定中だ。
都市・地域の魅力を生かしたテーマパーク的な効果
国内の都市で旅行者が最も多いのは、やはり東京だ。2006年に東京を訪れた旅行者は約4億2000万人で、このうち外国人旅行者は約480万人だった。
東京都の試算による、これらの観光客が訪れることによる生産波及効果は、都内生産額の5・7パーセントに相当する9兆4000億円と弾き出している。さらに雇用効果として、53万人が観光産業に従事していると推計している。
丸の内ビル、六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、秋葉原、原宿・表参道、お台場……。これら東京に誕生した人気スポットの数々を踏まえ、「東京という都市自体が、屋根のないテーマパークの集合体だ」とみる考え方もある。
「AKIBA」として世界的にも知られるようになった秋葉原では、産官学が連携して「先端技術をテーマに世界的産業観光地づくりを目指す」とする秋葉原先端技術テーマパーク構想がある。
この構想では、次世代に向けた新事業・サービスの開発をはじめ、まちを先端技術の「市」に見立ててパーツやデバイスなどの先端部材の集積・発信、さらに体験学習や実演販売などにも取り組む。つまり、まち自体をひとつのテーマパークとみなすことで、まちの魅力として打ち出していく考えだ。
構想にもとづいて策定された「秋葉原産業集客事業」は、2005年度の経済産業省委託事業として採択されるなど、実証的な試みとして、いま注目されている。
人はなぜ、その都市・地域へ向かうのか
人々が、その都市や地域へ向かうのは、賑わいや楽しみ、雰囲気、文化性、さらに癒しなどの精神的な満足を求めるからだといえる。
このような背景を踏まえた上で、まずなすべきことは、この都市や地域にしかない「個性」を磨き、強みとして打ち出していくことであろう。
かつて、温泉地として人気を集めたのは、九州では別府や雲仙などの大型の観光地だった。これらの温泉地には大型旅館や大型ホテルが立ち並び、来訪者は一旦建物の中に入ると、飲食や買い物などをすべて館内ですませ、結果として囲い込んでしまう状況だった。
その後、これらの温泉観光地が衰退する一方で、最近人気を集めているのは、由布院や黒川などの比較的小規模の温泉地だ。これらの温泉地では施設が小規模だったこともあり、温泉手形に代表される独自の連携やまちを歩く楽しみを生み、まち自体に回遊性をもたらした。これらの結果、由布院や黒川などには温泉を楽しむテーマパークのような趣もある。
また、歩きながら長崎の観光や見聞を深め、自分探しにつなげる《日本初のまち歩き博覧会》である「長崎さるく博」は、初年度に延べ1000万人以上が参加したといわれている。これらもある意味で、まちをテーマパーク化した試みともいえるのではないだろうか。
このような都市や地域の個性を色濃く打ち出して、まち歩きなどの要素を取り入れながら、「歩いて楽しい」まちづくりや観光政策づくりは、都市や地域の魅力を生かしていくことで、テーマパークとも相通じる要素があると考えられる。
個性を磨き、生かす「交通」「観光」「まちづくり」
社会が発展していくにしたがって、かつて地域色が濃く残っていた地方都市もミニ東京化し、本来の個性を失いがちだ。事実、日本の津々浦々にある都市の駅前には一様にオフィスビルとホテルが林立して、街角にはお馴染みのコンビニエンスストアのチェーン店が並ぶというありふれた風景になってしまった。

個性を生かした都市の魅力づくりが求められる
このような時代だからこそ、地方都市という点と点が新幹線という線で結ばれ、お互いを補完し合いながら個性を磨き、一体化した地域という面になって、全体を底上げてしていくことは重要となる。
たしかに新幹線が整備されることで、沿線に暮らす住民にとっては経済、文化、学術などのあらゆる面で交流を活発化する。しかし、その半面、商業流出や人工流出などで地域そのものが衰退してしまうという危険性もはらんでいる。つまり、両刃の剣のようにプラスとマイナスの効果があるといえる。
これらの点を踏まえ、九州新幹線(鹿児島ルート)の全線完成で到来するであろう、九州日帰り圏も見据えながら、これからの「交通」「観光」「まちづくり」を考えていくこと必要だ。(近藤益弘)
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※当ページの内容は、2008年2月1日発行の18号に掲載されたものです。

