北九州空港の挑戦
開港3カ月で33万人が利用
新たな航空需要を創造へ
2006年7月26日発行の11号より
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北九州市東部・曽根沖の周防灘に新しい北九州空港が開港して約3カ月が経った。東京便を中心に国内3路線1日20往復、国際線1路線(週3便)が就航し、3カ月で約33万人が利用した。東京便5便のみだった旧北九州空港の昨年同時期に比べて約4・2倍。市民や地元企業が待ち望んだ新空港は、新たな航空需要を創造しはじめている。
東京便の平均搭乗率は56.9%
2006年3月16日に開港した新しい北九州空港は、小倉南区の周防灘沖合3キロに建設された人工島方式の海上空港だ。面積は373ヘクタールで2500メートルの滑走路1本を有する。1994年に着工し12年かけて完成、総事業費は約1024億円。騒音の影響が少ないメリットを生かし、定期路線としては国内で初めて午前5時台の出発、深夜午前1時台の到着ダイヤを実現、8月22日から24時間運用となる。
北九州市がまとめた開港3カ月(3月16日〜6月15日)の利用状況によると、利用者数は国内線が32万3042人、国際線が8585人で、合計33万1627人。旧北九州空港の前年同時期に比べると、提供座席数は約5・8倍に増え、利用者数は約4・2倍となっている。
スターフライヤー(12便)とJAL(4便)が運航している東京便は提供座席数が約5・2倍に増え、利用者数は28万9292人で旧北九州空港の前年同時期に比べて3・7倍となった。平均搭乗率は56・9%と、採算ラインといわれる60%を下回った。細かく見ると3月はスターフライヤーが74・1%、JALが66・2%といい滑り出しだったものの、4月5月は両社とも50%台の前半から半ば、さらに6月はスターフライヤー、JALともに50%を切っている。6月は航空需要が少ない時期で、「それにしては健闘している」(北九州市港湾航空局)という声もあるが、厳しい数字であることは間違いない。健闘しているという評価の根拠は昼間の時間帯の実績だ。昼間の便だけで見ると、スターフライヤーでは6月こそ54・7%と落ち込んだものの、トータルで60%を超えている。スターフライヤーの早朝深夜便が全体の搭乗率を下げているのが実態で、特に東京発の早朝深夜便が6月は20%を切っている。
また、JALが1日3便運航している名古屋便は1万6412人で搭乗率59・5%、同じくJALが1日1便運航している沖縄便は1万7338人で搭乗率63・2%となっている。
国際線は、中国南方航空が週3便運航している上海便が搭乗率36・6%と苦しい滑り出しとなっている。北九州発が午後3時15分で上海に夕方着というダイヤとなっているため、北九州からの利用が不便であることが背景にある。現在、上海からの利用のてこ入れが行われており、夏場に向けて改善する見通しという。
福岡空港からの乗り替わりが大半
前年実績から3・7倍、約20万人増えた東京便の利用者が以前にどの交通手段を利用していたかの正式な調査は、まだない。考えられるのは(1)福岡空港利用(2)新幹線利用(3)新規需要の3つだが、開港1カ月時点で朝日新聞社が行ったアンケートによると、旧北九州空港利用者を除いた新規利用者の約8割が福岡空港からの変更で、新幹線・鉄道利用からの変更は1割弱だった。この調査を参考に計算すると、福岡空港利用者の乗り替わりは、月に約5万人強。月間70〜80万人が利用している福岡―東京便の利用者のうち、北九州エリアからの利用者は12%程度といわれており、約9万人。つまり、月間9万人のうち5万人が福岡空港から北九州空港にシフトしたと推計することができる。一方で福岡空港の利用者数に大きな変化はなく、「巨大な福岡空港から少しだけ削った程度」(北九州空港関係者)という実情だが、新たな需要が発生しているという見方もできる。その背景には運賃がある。旧北九州空港の時はJALのみの運航で基本運賃が3万1000円、特便割引1で2万3500円だった(昨年6月)。これが、スターフライヤーの参入によって、同社では普通運賃で2万5800円、割引のSTAR1なら1万5600円〜1万9600円(今年7月)で、JALも特割を値下げしている。JALの場合は「機材の大型化で予約が取りやすくなったことも利用促進につながっているのでは」(JAL広報)という。
同じ調査ではビジネス客が7割だったが、旧北九州空港ではほぼ100%がビジネス客だったことからすると、観光などの新しい航空需要を生み出し始めているということもいえる。例えばスターフライヤーの早朝・深夜便を利用したディズニーランドへの日帰り、あるいは一泊のツアーで週末の便は搭乗率が80%を超える便もある。
また、北九州市が6月14日に行った北九州空港の駐車場でのナンバープレート調査(見学者がほぼ帰った午後4時に調査)では、停まっていた960台のうち北九州ナンバーが70%。福岡が5・7%、筑豊4・0%、大分3・1%のほか、広島、山口、熊本、佐賀、久留米などのナンバーも見られた。北九州市では「早朝・深夜便を利用する福岡の顧客や、北九州空港に近い大分や筑豊地域など、これまで福岡空港を利用していた北九州市外の顧客の利用も着実に増えていると推定できるのでは」としている。
写真=開港3カ月を迎えた北九州空港。
1500台収容の駐車場は満杯状態が続いている。
課題として挙げられるのが交通アクセスだ。想定された通り自家用車による利用が多く、空港島内のターミナルビル前面にある1500台収容の駐車場は、24時間390円という安さもあって、3カ月累計で約21万6000台が利用した。1日平均2354台で、常にほぼ満車の状態が続いているという。休日の見学者が多い時間帯には入庫待ちの行列も発生しているが、搭乗者を優先するなどの対策によって大きな混乱はないという。その一方でバスアクセスについて不満や要望が利用者から多く寄せられている。現在、北九州市内の主要拠点を通るバスが航空便の発着時間に合わせて運行されており、小倉駅前からは1日17本と、本数が少ない。また、ルートについても例えば小倉南区の場合はいったん美萩野までモノレールで出てからバスに乗り継がなければならず、利用者からは「住宅地の中も停留してほしい」といった声が出ている。一方でバスの利用者は開港2カ月目の時点で1日あたり約1600人に留まっており、採算は厳しい。路線の充実は今後の課題ということのようだ。
小さく生んで大きく育てる…今後の可能性
北九州空港の開港にあたり、ターミナルビル建設などの基本的な考え方として「小さく生んで大きく育てる」という方針が立てられた。開港3カ月、まずまずのスタートを切った北九州空港だが、夏以降、新しい展開が見え始めている。
まずは路線。貨物専門の新規航空会社・ギャラクシーエアラインズが就航する。24時間運行開始の8月22日に就航の予定だったが、1機目の整備用の部品の調達などが間に合わず、いったん延期となった。11月には2機目が導入される予定でもあることから、遅くとも年内には就航できる見通しとなっている。同社は佐川急便系で、早朝深夜の時間帯に羽田と北九州を往復する貨物便を就航させる。当面は佐川急便の宅配便の荷物を運ぶとみられている。また空港ビルを管理運営する北九州エアターミナルはギャラクシー社の就航に対応するために貨物ターミナルを増築する。現在の貨物ビルの隣接地に1億2800万円かけて建築するもので、現在のほぼ倍の面積となる予定だ。ギャラクシー社の就航は遅れるものの、空港の24時間運用化と貨物ターミナルの増築は予定通り進められる。
8月19日からロシアのウラジオストク航空が週2便の定期便を就航させる。9月23日までの季節運航。同じダイヤでチャーター便の就航が決まっていたが、定期便となることでツアー客だけではなく個人客も利用可能となる。これによりモスクワ方面への乗り換えなどが可能となり、さらに北九州のネットワークが広がる。新たなビジネス需要を生み出せるかどうかが課題だといえよう。
また、スターフライヤーも来年3月に4号機、さらに11月に5号機を調達する。4号機を導入する来年3月からは東京便を15往復体制に増やす方針だ。また5号機導入にあたっては国内の他路線や上海などの東アジア路線への参入を検討することにしている。
空港島内の敷地のうち、連絡橋で入ってすぐの4ヘクタールについては地区計画が市議会で承認されている。このエリアにはホテルやタクシー事業者など8社が立地する計画で、すでに一部の航空会社施設が完成している。北九州市ではこのエリアの建物の色彩を統一し、景観に配慮することを決めている。
利便性を高めながら徐々に空港としての機能を充実させるという北九州空港の戦略が今後の利用者増にどのようにつながるか、注目される。
北九州空港の挑戦
地域再生の最重要インフラとして行政、企業、市民が新空港を応援
3カ月経っても週末は見学者8000人
搭乗者数を大きく上回る市民が
連日訪れている北九州空港のターミナルビル
新しい北九州空港には、北九州市民の多くが期待と関心を寄せている。開港3カ月のターミナルビルの入館者数は約72万人にのぼっている。1日の搭乗者数は4000人弱であるのに対し、ターミナルビルの入館者数は1日平均7800人にもなっている。6月に入っても週末には8000人前後の市民が見学に訪れているということだ。
これだけの市民が北九州空港に関心を寄せている背景には、北九州空港の開港を契機に地域の再生を本格化させようという狙いが浸透していることがある。
「これまでルネッサンス構想で港湾整備や学研都市など数々の大型プロジェクトを進めてきたが、市民のみなさんにとってはもし新空港が一番分かりやすい事業であったということでしょう。五市合併以来、最も明るいテーマかもしれない」と末吉興一市長。北九州市では開港前から見学会を行ったり、地域や団体の会合などに職員を派遣する「出前講座」を数多く開いて市民一人ひとりに北九州空港が地域の将来に果たす役割を説明してきた。その成果が高い関心となって現れているということだろう。
新空港を契機に新しい物流拠点都市づくりへ
新しい空港の開港を最も喜んでいるのは、その北九州市の職員かもしれない。企業誘致の担当者は「これまで、ものづくりのまちとしての技術や人材の蓄積、環境への取り組み、自動車産業の立地など、さまざまなメリットを説明する中で本格的な空港がないことが唯一にして最大の弱点でした。これからは堂々とプレゼンテーションできます」と話す。
北九州市では新空港の開港を受けて、物流拠点都市づくりへの新たな基本方針を4月に発表した。「創貨」と「集貨」を両輪として東アジア各地との物流拡大や環境配慮型物流の実現などを、2010年度を目標年度に数値目標を掲げている。「創貨」としては、企業誘致50件、新規雇用4000人、東アジアとの貿易額を現在の1兆円から1兆1000億円に増やすというもの。「集貨」では、北九州港の貨物取扱量を現在の1・2倍の1億1100万トンに増やし、北九州空港による航空貨物を323トンから一気に10万トンまで増やす計画だ。
こうした北九州市の戦略は、ものづくりのコアの部分は国内に置いておきたいという企業側の思惑や全体的な景気好転で投資意欲が高まっていることなどとタイミングが一致し、自動車、先端素材、環境関連メーカーなどの進出が進んでいる。また、空港そのものに関連した部分でも、北九州を拠点とするスターフライヤーや航空貨物専門のギャラクシーエアラインズといった新規航空会社が北九州空港を拠点に選んだということが、地域再生の最重要インフラとして、本格的な空港が誕生したことの効果であるといえる。
北九州商工会議所がフル回転
北九州空港の盛り上げ役として中心になったのが北九州商工会議所(重渕雅敏会頭)だ。スターフライヤーの就航では50億円を超える出資集めに協力し、経営面から支えている。利用促進でも積極的に呼び掛けを行っている。会頭の出身企業であるTOTOでは、年間延べ2万人の社員が福岡と東京を往復しているが、スターフライヤーの株主優待券を利用するなどして積極的に北九州空港を利用するように社内に周知されている。早朝深夜便によって日帰りが増え、出張コストが下がるなどのメリットも少なくないという。
また、商工会議所では北九州空港を利用して北九州への来訪者を増やし、企業誘致に結びつけることを目的とした独自のパンフレットを作成した。北九州市が環境事業やものづくりが盛んな都市として、北九州空港からの定期便の就航先の地域の商工会議所に6月末から配布を始めている。また、横浜市や千葉市などには直接職員が訪問してPR活動を行うなどしている。
商工会議所などによる北九州空港振興協議会では、利用促進や観光振興を進めるとともに、北九州空港の滑走路の延長や複数化などをビジョンに掲げ、福岡空港との連携強化なども進めようとしている。
新空港を地域再生につなげるという意識を行政、市民、企業が共有し、一体感のある振興活動が行われている北九州空港。認知度の高まりとともに「これならいける」という手ごたえを関係者の多くが実感しているようだ。(宮崎仁士)
「北九州空港の挑戦 開港3カ月で33万人が利用 新たな航空需要を創造へ」に対する皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
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※当ページの内容は、2006年7月26日発行の11号に掲載されたものです。




