福岡空港が羽ばたくためにいま、何が必要なのか
2007年12月1日発行の17号より
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福岡空港は、交通アクセスによる利便性は、高く評価されているが、果たして空港自体としての評価は、どのようなものなのだろうか。現場や外部の声も拾いながら、福岡空港の実態に迫る。その上で福岡空港が抱える問題の解決に向けて、どのように考え、取り組むべきか。いま、われわれの主体的な取り組みが求められる。
中・韓・台が主体の福岡「国際」空港
戦後、日本の民間航空事業が再開した1951年、福岡空港に東京―大阪―福岡線が就航、第一便として「もく星号」が飛んだ。
1965年に本格的な国際線としてソウル―福岡―香港線が福岡空港に乗り入れ、相前後して福岡―釜山線も就航した。爾後、国際空港の顔も持つ福岡空港は今年10月現在、8カ国地域・17都市へ19路線が就航する。
最近の福岡空港における国際線の利用者数は、ほぼ横ばい状態だ。しかし、内訳をみると日本人客は長期下落傾向なのに対して、外国人客は着実な伸びを見せる。なかでも中国・台湾・韓国の3カ国は、福岡空港に就航する国際線の7割強を占め、外国人利用者の実に8割強となる。
近隣3カ国の各社からみた福岡空港
福岡空港の国際線の屋台骨を支える中・台・韓3カ国から乗り入れている外資系航空会社は福岡という都市、そして福岡空港をどのようにみているのだろうか。
福岡空港から北京、上海、大連などへ飛ぶ中国国際航空公司福岡支店の手嶋亮介・旅客営業課長は、「福岡空港における中国線の競争は激しくなっている」と語る。
一方、福岡と韓国間に就航しているアシアナ航空は、10月下旬から週18便から週24便へ増便している。「円安ウォン高を背景に、韓国から福岡・九州への旅行者が増えている」と、同福岡支店の韓光福・販売部長は説明する。
また、福岡―台北線を持つチャイナエアラインの栗林裕・九州山口マーケティング課長は、「競争も激しい東京、大阪に比べて福岡は、利用客が少ないだけに棲み分けができている」と、福岡の市場特性を分析する。
同様に福岡と台北を飛ぶエバー航空の首藤惠美課長補佐は「九州は台湾人に人気があり、九州の玄関口・福岡空港に台湾からのお客様を運んでいる」。
これら中国・韓国・台湾の3カ国にとって、福岡線は比較的近距離にあるだけでなく、日本と自国で相互の利用者が見込める基幹路線であり、福岡空港は重要な就航地のひとつになっているようだ。
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| 中国国際航空公司福岡支店 手嶋亮介・旅客営業課長 | 福岡支店 韓光福・販売部長 | チャイナエアライン 栗林裕・九州山口マーケティング課長 | エバー航空 首藤惠美課長補佐 |
福岡空港の路線維持に取り組む航空各社
中国・韓国・台湾の3カ国より遠距離から福岡空港へ就航しているアジア系航空会社は、どのような取り組みをみせるのだろうか。その状況についても見てみよう。
福岡就航20周年を来年3月に迎えるシンガポール航空は現在、シンガポール、オーストラリア、マレーシア、インドネシアで九州集客のプロモーションを展開、「各地からシンガポールのチャンギ空港に一旦集約して福岡空港へ飛ばす」と、天本秋生・旅客営業部長は説明する。
一方、福岡―マニラ線は週4便での運行だが、「ビジネス客や在日フィリピン人らの利用が多く、観光以外に帰省や日常的に往来する『生活路線』の観がある」と、フィリピン航空福岡支店の岡本泰輔・旅客営業次長は、特長を語る。
福岡とバンコクとの間を毎日飛ぶタイ国際航空の泉屋和則・旅客営業係長は、「地域の経済力が、旅客数に反映してくる」との見解をみせる。
燃料費高騰で経営を圧迫される一方で、格安航空会社の登場などで運賃の下落が続く航空業界では、各社が路線の維持に努力する一方で、「国際空港」としての福岡空港のあり方についても考える必要がありそうだ。
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| シンガポール空港 天本秋生・旅客営業部長 | フィリピン航空福岡支店 岡本泰輔・旅客営業次長 | タイ国際航空 泉屋和則・旅客営業係長 | ティエヌティエクスプレス営業本部 廣島博英・メジャーアカウントマネージャー |
航空貨物にみる福岡空港の弱点
旅客輸送とともに国際空港として一翼を担う航空貨物の状況を見てみよう。福岡空港に乗り入れている外資系航空会社からは、「使用している旅客機が小さいため、航空貨物では苦戦している」「航空貨物の需要に旅客機のサイズが追いつかない」「旅客機による混載では、搭載スペースが足りない状態が続いている」との答えが返ってくる。
世界の4大国際航空貨物輸送企業のひとつで、福岡市内に拠点を構えるティエヌティエクスプレス営業本部の廣島博英・メジャーアカウントマネージャーは、「旅客機の小型化にともない、貨物コンテナの搭載が難しいのが現状。貨物専用機による航空輸送へシフトしていく傾向が強い」とする。
現在、過密状態にある福岡空港には旅客機が主に就航し、貨物専用機の定期便は乗り入れていない。また、国際航空貨物の取り扱いについては、旅客機による混載では十分な対応ができないために福岡空港での通関手続き後、トラックによる陸送もしくは航空便で関西空港などへ搬送して、貨物専用機で海外へ飛ばしているのが実情のようだ。
貨物専用便が福岡空港を飛び去った理由
かつては、意外にも福岡空港に貨物専用機の定期便が就航していた時期があった。世界的な国際航空貨物会社であるカーゴルックス航空が1985年、日本への就航地として選んだのが福岡空港だった。しかし、1994年に小松空港へ就航地をに移した。移転理由として、小松空港の大規模な貨物ターミナルの存在が決め手になったという。現在でも福岡空港の貨物ターミナルが手狭なために屋外での作業も多く、「福岡空港は雨が降ったら、仕事にならない」との声も聞かれる。
その後、福岡空港への貨物専用機による定期便就航については、地元産業界からの要望で外資系航空会社が検討した経緯はあったものの、未だ実現に至っていない。陽の目を見ていない理由として施設面に加えて、受け入れ体制が十分でなかった点を指摘する向きもある。
本音で訊く、福岡空港の使い勝手の良し悪し
福岡空港国際線ターミナルでは午前中、出発便で込み合うものの、午後は閑散となる。「自国と相手国からの利用者がそれぞれ使う路線は採算が成り立つが、日本からの利用者だけに頼る路線は『片肺飛行』状態で、このままでは負担に耐え切れず、いずれは撤退するところも出てくる」という関係者の溜息も聞こえる。
都心から5分ないし11分という福岡空港の交通アクセスを評価される半面、使い勝手への指摘も多い。過密状態が続く福岡空港では、「国際線利用者からのニーズが高い午前中の時間帯に乗り入れができない」と、外資系航空会社担当者の頭を悩ます。国際線ターミナルと国内線ターミナルが分離していることによる乗り継ぎ上の不便さに加えて、「駐機場が少なく、さらに搭乗口の間隔が狭いので大型機が2機並ぶことができず、着陸後に時間を浪費することもある」というのだ。
「近くて便利だけど、使い勝手が良くない」福岡空港
福岡空港では、施設面だけでなく運用面でも「保安検査場前に構造的な欠陥がある上に十分な配置が取れていないために出発便が集中する午前中は利用者で混み合い、手続きに長時間を要する」「空港の利用時間7時から22時までなのに対して、入国審査は8時に始まって20時50分着の最終便分の手続きで終わる」との不満も漏れる。
さらに「基本的に『お役所体質』で、臨時便やチャーター便への柔軟な対応が難しく、このままでは福岡空港が取り残されてしまう」と、憂う向きもある。
これら航空関係者らの声をまとめてみると、福岡空港は「近くて便利だけど、使い勝手が良くない」というのが、どうも実像のようだ。今回の福岡空港を巡る論議について、「福岡空港は、交通アクセスの良さが最大の魅力だ。国際線を利用する日本人客が減っていくなか、移転・増設の費用は、結果的に航空会社が着陸料や施設利用料として負担するので反対」との声も多い。
ビジョン・戦略なき空港論議への危惧
『グローバル化』『少子高齢化』『地方分権』『価値観の多様化』『IT化』『社会資本の形成』『環境への配慮』………。将来に向けた地域プロジェクトとしての空港づくりには、様々なキーワードが登場する。
これらを踏まえ、前回の福岡空港総合調査ステップ2は、地域の将来像として「アジアを中心に共生する地域」「多彩な人材が引きつける地域」「競争力のある自立した地域」「ゆとりと豊かさのある地域」「国内外に情報発信する地域」「発展と環境との持続可能な地域」を謳っている。
しかし、福岡空港総合調査で描いている地域の将来像は総花的であり、具体的なイメージがしにくい。つまり、将来像として、わかりやすくイメージできるビジョンやスローガン的なメッセージが感じられない。
「どのような街・地域にしていくためのインフラとして、空港の存在を考えなければならない。ビジョンあっての空港づくりであるべきだ」と、九州大学大学院経済学研究院の星野裕志教授は、その方向性を示す。本来、福岡空港の今後を考えていく上で、地域の将来像は、戦略を立てる上でのビジョンとなるべきものである。しかし、その将来像やビジョン、さらに戦略が曖昧だと、3つのプランのなかから2つに絞り込み、さらに最終的には1つの案を選ぶというような人気投票的な空港論議で終わる危険性も孕んでいる。
いま問われる、問題解決能力

玄海キャピタルマネジメント 松尾正俊社長
福岡の都市機能の強みのひとつとして空港、鉄道、港湾などの交通インフラが半径5キロ圏内に位置していることが挙げられる。過密状態にある福岡空港の問題解決に向けて、単に空港だけで自己完結するのではなく、港湾や鉄道との交通ネットワークも視野に入れるべきだ。
「近くて便利だけど、使い勝手が良くない」現在の福岡空港を「近くて便利、使い勝手も良い」空港にしていく問題解決能力が、問われる。大規模な不動産投資や都市開発を手掛ける玄海キャピタルマネジメントの松尾正俊社長は、「福岡空港の存在は不動産投資の上でも大きい。大規模開発や不動産投資に際し、プロとしての確たる見通しを立て、最善のシナリオを考え出す必要がある」と力説する。
福岡を空・海・陸の一大交通拠点へ
空港、港湾、鉄道などの交通インフラは、それぞれをバラバラに考えるのではなく、有機的に結び付けていくことで、いままで無かった可能性を発揮させることができる。
交通インフラの社会的な役割を踏まえ、例えば、ひとつのアイデアとして博多湾内にメガフロート(巨大浮き舟)方式での建設が実現すると、本格的なエアー&シー(空海一体)の一大物流拠点が誕生する。このエアー&シー型となる新タイプ空港の出現は、現在整備中のアイランドシティの機能と役割を飛躍的に高めることにもなる。さらに新空港とアイランドシティから天神、博多駅へ鉄道で結ぶと、現空港と遜色ない交通アクセスが確保できる。
2011年に九州新幹線が乗り入れる博多駅、大型船も接岸できるアイランドシティの港湾機能、福岡空港の存在を生かした、空・海・陸の一大交通拠点づくりが可能となる。そして、福岡が、ヒト、モノ、カネ、情報、そして文化が行き交い、集う《クロースロード》として、広くアジアへ、そして世界へと羽ばたくことができる。
福岡空港問題において、与えられた選択肢の中から受け身的に選ぶだけでなく、自らのアイデアや考えなどを声を大にしていくことが、パブリックインボルブメント(PI)時代における、われわれの姿勢としても必要なのではないだろうか。(近藤益弘)
空港建設の新方式、メガフロートとは?
メガフロートとは、数キロにおよぶ巨大な浮体式の構造物を指す。主に造船所で各ブロックを建造して、海洋上で接合することで超大型化して係留する。海上空港や物流基地、エネルギー施設として利用可能。通常の航空母艦やタンカーに比べて、安価でかつ短期間で巨大な構造物を造ることができ、環境面への影響が少ない。羽田空港の新滑走路建設に向けて総工費1兆3000億円・工期10年の埋め立て方式が検討されているなか、造船業界から同5300億円・2年半のメガフロート方式が提案され、注目を集めた。かつて、作家の猪瀬直樹氏が著書のなかで、新福岡空港でのメガフロート方式に言及したことがある。
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※当ページの内容は、2007年12月1日発行の17号に掲載されたものです。















