フォーラム福岡

福岡の未来を決める 新「福岡空港」空港写真

福岡空港総合調査にみる福岡空港の“明日”

2007年12月1日発行の17号より

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いま、福岡空港を巡る論議が活発化している。先日発表された福岡空港総合調査ステップ3において問題解決に向けての増設案と新設案が提示されたことが大きい。福岡空港総合調査とは、どのような取り組みで、提示された増設案、新設案とはどのようなものだろうか。その背景から、調査内容、そして今後のあり方について考えてみる。

現実味帯び始めた空港論議の行方

天神から地下鉄11分、博多駅から同5分と、「日本でもっとも便利」な空港と称される福岡空港の「周辺」が最近、騒がしくなってきた。市街地にあることで交通アクセスが便利な半面、1本の滑走路で年間14万回弱という過密な発着回数をこなし、騒音問題などを抱える福岡空港――。その「今後」が、地元では20年来の懸案となっている。


日頃の研究成果を発表し、活発な議論の場となった福岡空港意見発表会

福岡空港の「今後」を考える福岡空港調査連絡調整会議(国土交通省、福岡県、福岡市)は、福岡空港についての総合的な調査に取り組んでいる。総合調査では4段階に分け、ステップごとに調査結果などを住民らに公開し、それらに対する意見などを集めている。今年9月から、その第3段階となるステップ3でもレポート作成・配布、情報コーナーの開設、説明会や懇談会、見学会などを開いている。


福岡市総務企画局 馬場隆部長

先日、開催された「福岡空港意見発表会―福岡空港PIどんたく―」では、福岡空港の将来像を考える11の個人・団体が、日頃の研究成果を新空港派、現空港増設派、現空港維持派の立場で発表した。意見発表会を企画した福岡市総務企画局の馬場隆部長は、「市民相互のコミュニケーションを促し、空港問題への関心を高め、幅広い意見を期待したい」と語る。

日本一の過密状態ながら、伸び悩む福岡空港 

旅客数で全国4位、発着回数で同3位―――。羽田空港、成田空港に次ぐ主要国内空港の第3位グループの一角を占める福岡空港は、朝夕のピーク時に平均2分強の間隔で発着する。年間13万9千回強は全国の空港のなかで3位、滑走路1本あたりでは依然として日本一の発着回数だ。

福岡空港の滑走路処理容量は14万5000回とされているものの、2001年度の発着回数14万4000回をピークに頭打ち状態が続く。また、福岡空港の旅客数も同様に2000年の1968万人をピークに減少傾向をみせる。

一方、貿易港としての福岡空港をみると、2006年度の貿易額は1兆2946億円を記録している。品目別では、「重量換算で金より高価になる」という半導体電子部品が、輸出・輸入ともに過半数を占める。ただし、最近5年間の動きでは、9000億円強から1兆3000億円弱との間で上下している。航空貨物の最近5年間の動きでも24万トンから26万トン強の間で推移し、伸び悩みの感は拭えない。

100億円近い赤字を計上する福岡空港の実態

現在、主要地域拠点空港との位置づけにある福岡空港の収支をみると、毎年莫大な赤字を出している。2005年度の収入が125億円だったのに対し、年間支出は221億円にのぼる。差し引き96億円の赤字だ。

収入のうち約7割を着陸料で得ているのに対して、支出の大半を占めるのは賃借料・環境対策費だ。353ヘクタールの福岡空港用地のうち、3分の1にあたる116ヘクタールが民有地等を借地し、年間賃借料が84億円にもおよぶのだ。

環境対策費のうち移転補償費は2005年度で85億円だった。つまり、169億円の賃借料・移転補償費が福岡空港の収支に重くのしかかっている。福岡空港に借地が多い理由として、福岡空港の前身だった蓆田飛行場の建設に際して旧日本陸軍が強制的に土地を接収したことが挙げられる。終戦後、進駐したアメリカ軍の管理下でも引き続き拡張のために接収された歴史的な経緯があるためだ。

福岡空港の将来像を考えるPIとは何か

現空港での増設、新空港建設、近隣空港との連携、現状維持………。福岡空港の将来像に対して、さまざまな立場から、幅広い意見や考えが渦巻くなか、国土交通省、福岡県、福岡市の3者は、福岡空港調査連絡調整会議を組織、将来的な福岡空港のあり方を総合的に調査している。

その手法として採用しているのが、「パブリック・インボルブメント(PI)」というやり方だ。従来のパブリック・コメントが収集した意見をもとに意思決定をする「住民参加」に対し、PIでは「住民参画」として、構想段階から積極的に情報提供して意見を集めて、よりよい施策の方向性を見出す手法といえる。1990年代からアメリカやヨーロッパでは、高速道路をはじめとする社会資本の整備で採用する。日本でも2003年6月、国土交通省が公共事業にPIの導入を決定した。空港整備におけるPIの第1号が、福岡空港と那覇空港での取り組みだ。

福岡空港総合調査ステップ3の特徴と連携案「落選」

福岡空港調査連絡調整会議が取り組む福岡空港の総合的な調査では、過密状態の福岡空港の問題解決を目指している。これまで福岡空港の問題解決策として新北九州空港と佐賀空港に機能を分担していく「連携案」、現空港での機能拡張として滑走路を設ける「増設案」、新空港を建設する「新設案」の3案で検討していた。

ステップ3では、連携案を「抜本的な対応方策とはなり得ません」との文言で退けた。その上で、現空港での機能拡張として滑走路を設ける「増設案」と新空港を建設する「新設案」の2つを方策として打ち出す。さらに増設案では3プラン、新設案として6ゾーンのうち2プランを提示、それぞれに建設費と工期を概算で弾き出している。概ね新設で1兆円ないし1兆1000億円、増設で2500億円ないし7500億円の事業費を見込む。同じく工期についても新設で約13年、増設で8年ないし14年を想定している。


年間14万回弱もの発着回数をこなす福岡空港

これらの事業費の負担割合は明示されていないが、現在の福岡空港の施設整備では、国が2、地方が1の比率で負担する。地方分は福岡県と福岡市が6対4の割合となる。この比率を適用すると、国が66・7パーセント、福岡県が20パーセント、福岡市が13・3パーセントとなる。ただし、中部空港の事例からも明らかなように空港整備では地元に対して、相応の負担が求められることが十分に考えられる。

費用に対する増便効果は「視界不良」


国土交通省九州地方整備局 北出徹也・空港PT室長

福岡空港の問題解決に向けた増設および新設の建設費と工期などの「費用」は、おぼろげながらも見え始めた。しかし、肝心の「効果」については触れていない。この点を国土交通省九州地方整備局の北出徹也・空港PT室長は「滑走路増設案と新空港案の滑走路処理容量は現在検討中で、ステップ4でお示しする予定」とする。

一般的に並行する2本の滑走路の場合、発着の処理能力は滑走路1本の1・3倍程度といわれている。滑走路の間隔が1・6キロ以上あれば、それぞれ独立運用ができ、1・6倍ないし2倍になる。しかし、それ以下の間隔では、滑走路は2本でも、その先の航路は1本であるために1・3倍程度しか伸びない。つまり、費用対効果で考えた場合、1兆円ないし1兆1000億円を要する新設の場合、夜間利用を換算しても1・3倍+αと考えられる。また、増設案において7500億円を投じるケースで1・3倍、もしくは同等以上が見込まれる。

現空港の機能拡張として滑走路の増設案


現在、市街地に位置する福岡空港の全景図

増設案は、現行の2800メートルの滑走路と並行して2500メートル滑走路を増設していく。増設の仕方で、3つのプランを示している。新滑走路の増設工事は、福岡空港が運用しない夜間の時間帯に実施する。概算による事業費のうち約半分は増設の用地買収費用であり、残りは滑走路や空港施設の建設費を想定する。

●東側増設案
この案では現滑走路東側に300メートル間隔で2500メートル滑走路を増設する計画だ。

現在、空港東側にある国内線ターミナルは、国際線ターミナル側へ移転、国際線ターミナルと一体化していくことで、利便性の向上を図る。ターミナル移転にともない、地下鉄も延伸または分岐して駅も新設する。新旧2本の滑走路間に300メートルの間隔を確保することで大型機の一時待機スペースを確保し、計器誘導による航空機の着陸が可能とする。ただし、工期で14年もの長期を要して、さらに概算で約7500億円もの事業費を投じた増便効果は1・3倍、もしくは同等以上を見込む。

●西側増設A案(滑走路間300メートル)
この案では、現滑走路西側に300メートルの間隔を置いて2500メートル滑走路を増設する計画だ。

現在、空港東側にある国内線ターミナルおよび地下鉄福岡空港駅は、従来どおりとなる。ただし、国内線・国際線ターミナルが分離状態で、航空機の地上走行は複雑になる。また、増設する滑走路の進入区域の一部が付近を走る福岡都市高速と抵触するために付替工事が発生する。新旧2本の滑走路間に300メートルの間隔距離を確保することで大型機の一時待機や計器誘導による着陸が可能となるのは、東側増設案と同様だ。工期として10年の期間を要して、概算で約5000億円もの事業費を見込みながら、増便効果は東側増設案を下回ることになる。

●西側増設B案(滑走路間210メートル)
この案では、現滑走路西側に210メートル間隔で2500メートル滑走路を増設する計画だ。

◆増設案

[現空港データ]
面積:353ヘクタール
騒音:★★★
ターミナルの配置:分離状態
計器誘導(1本目)(2本目):○ -

項目/各案 東側増設案 西側増設A案 西側増設B案
配置図
面積 353+約90ヘクタール 353+約60ヘクタール 353+約30ヘクタール
増便効果 ☆☆☆ ☆☆
コスト ★★★
(約7500億円)
★★
(約5000億円)

(約2500億円)
工期 ★★★★★
(約14年)
★★★★
(約10年)
★★★
(約8年)
騒音 ★★★★ ★★★★ ★★★★
ターミナルの配置 一体型 分離型 分離型
滑走路間の大型機待機 ×
計器誘導
(1本目)(2本目)
○○ ○○ ○×

☆は効果の大小を5段階で表し、★は負担の大小を5段階で示しています。
※『福岡空港の総合的な調査 PIレポート ステップ3』の資料をもとに専門家らの意見を参考にしながら、本誌で作成しました。

福岡都市圏での新空港を目指す新設案

新空港としては、3000メートル滑走路を2本、300メートル間隔で平行に設置する。空港自体の広さは、約530ヘクタールとし、現在の福岡空港の約1・5倍になる計画だ。国内線・国際線ターミナルは一体化され、増便効果としては現空港に比べて1・3倍+αが見込まれている。

候補地選びは、博多駅から半径30キロ以内の福岡都市圏とし、陸地では地形の起伏がゆるやかで市街化区域面積や建物用地の比率が低い地域とし、海上では水深の浅い海域を対象とした。これらの条件をクリアした地点に対して、気象条件や運行空域の状況、さらに騒音も考慮して絞り込んだ結果、古賀・福津沖、三苫・新宮沖、志賀島・奈多沖、湾内東、湾内中央、糸島沖が選定されたうち、新宮沖と志賀島沖が現時点で実現性が高いと考えられている。

●新宮沖案
この案は、新宮沖から三苫沖にかけての海域を新空港の建設予定地とした。新空港の事業費として概算で1兆円、工期で13年程度を見込んでいる。新空港の事業費のおおまかな内訳としては、埋立費用(含漁業補償費)を6割、滑走路やターミナル施設建設費などに3割、鉄道などの交通アクセスに1割を想定している。

●志賀島沖案
この案は、志賀島沖から奈多沖にかけての海域を建設予定地とした。事業費としては、新宮沖案に比べて水深が深いために概算で1兆1000億円となっている。事業費のうち埋立費用が増える以外は、新宮沖案と同様だ。(近藤益弘)

◆新設案図

[現空港データ]
面積:353ヘクタール
騒音:★★★
ターミナルの配置:分離状態
計器誘導(1本目)(2本目):○ -

項目/各案 志賀島沖案 新宮沖案
位置図
面積 約530ヘクタール 約530ヘクタール
増便効果 ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
コスト ★★★★★
(約1兆1000億円)
★★★★★
(約1兆円)
工期 ★★★★★
(約13年)
★★★★★
(約13年)
騒音
ターミナルの配置 一体型 一体型
滑走路間の大型機待機
計器誘導
(1本目)(2本目)
○○ ○○

☆は効果の大小を5段階で表し、★は負担の大小を5段階で示しています。
※『福岡空港の総合的な調査 PIレポート ステップ3』の資料をもとに専門家らの意見を参考にしながら、本誌で作成しました。

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※当ページの内容は、2007年12月1日発行の17号に掲載されたものです。

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