東アジアの中核都市として成長する福岡を支える
――地域の将来像と福岡空港の役割
2006年7月26日発行の11号より
『東アジアの中核都市として成長する福岡を支える』に対する皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
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今回、紹介している福岡空港の総合的な調査PIリポート(ステップ2)は、ステップ1で整理した福岡空港と地域の現状と課題を踏まえ、様々な地域の将来ビジョンや航空・空港の動向などをもとに、「福岡・九州の将来像」を検討。その将来像の実現や福岡空港の課題解決に向けて、求められている「福岡空港の役割」を探っている。
米誌『ニューズウィーク』(国際版、6月26日発売号)が、世界主要国の中で特に急成長を遂げている都市を「最もホットな10都市」として特集。「アジアの交流拠点都市」を唱えてきた福岡市も選ばれた。
その中で、福岡市を上海やソウルに最も近い「アジアへのゲートウエー都市」として紹介。周辺地域にトヨタ自動車をはじめとした日本の大手企業が投資を続けており、九州が「シリコンアイランド」「カーアイランド」と呼ばれ、博多港とともに、福岡空港も活況でアジアとの橋渡し役として発展していると指摘している。
国際連合人間居住計画(ハビタット)特別顧問の野田順康さんは、「福岡が東アジアの中核都市として成長していくことは間違いなく、すでに避けられない状況になっています。ですから、東アジアの中核都市になることを前提に、市民、行政、企業が共同して魅力あるダイナミックな都市づくりをすることが大切です。空港問題も未来像を描く中で、いろいろな選択肢を柔軟に議論していただきたい」と言う。
2030年ごろまでを対象とする福岡・九州の将来像
概ね2030年ごろまでを対象とする福岡・九州の将来像の設定にあたって、地域の課題と既存の将来ビジョンから、空港・航空にかかわる7つの論点を抽出した。それは、(1)グローバル化(2)少子高齢化(3)地方分権(4)価値観の多様化(5)IT化(高度情報化)(6)社会資本形成(7)環境重視――。これらの論点ごとに、地域の現状と課題、将来ビジョン実現に向けた取り組み、地域の将来へのシナリオ、論点ごとに導かれる地域の将来像を整理、7つの将来像から福岡・九州の姿をまとめた。
〈地域の将来像〉
(1)グローバル化=『成長する東アジ アを中心とした国際社会と共生する地域』〜FTA(自由貿易地域)等の進展による「東アジア自由経済圏」、東アジアを中心とした海外観光旅客の増大で「観光立国、福岡・九州」
(2)少子高齢化=『国内外から多彩な人材を引きつける、多様な機会に充ちた地域』
(3)地方分権=『地域性を活かして競争力のある自立した地域』〜国際機関の立地、外資系企業の進出、福岡の企業の国際展開
(4)価値観の多様化=『様々な人々が交流し、ゆとりと豊かさを実感できる地域』
(5)IT化(高度情報化)=『ITを活かして優れた知識を創造し、国内外に情報発信する地域』
(6)社会資本形成=『戦略的な社会資本形成により、グローバルな競争力を持つ地域』
(7)環境重視=『都市の発展と環境への配慮が好循環した持続可能な地域』
この福岡・九州の将来像の実現と福岡空港の課題解決に向けて、「福岡空港に求められるもの」をまとめ、将来の「福岡空港の役割」として、次の4点に整理した。(1)海外・全国と福岡を結び相互交流の拡大を支える空港(2)サービス向上を促進し、航空需要を支える空港(3)福岡の交通結節機能を活かし、早く・安く・快適な移動を支える空港(4)地域と共存しながら、福岡・九州の自立的発展を支える空港――。
<福岡・九州の姿(将来像)>
『福岡』は2000年余りの歴史あるアジアとの交流や中世博多の自治都市の歴史と進取の気概などよき伝統を受け継ぎながら、グローバル化、少子高齢化などの大きな変化を前向きに受け止め、IT化など新時代の技術や地域が持つ学術・文化を深めながら、魅力あふれる都市環境を持ちつつ、高度な都市機能を活かしたコンパクトシティを形成していきます。
さらに、国内外からヒト・モノ・情報等が集積し、活気に充ちた創造性豊かな『交流拠点都市』に成長し、福岡の成長は、経済や生活面など様々な分野において九州全体に波及していきます。
『九州』は、地域の自立が求められる中、東アジアとの『地理的優位性』、ものづくり産業等をはじめとした様々な『産業集積・技術』や豊かに保全された『美しい自然環境』など九州の個性ある特徴を活かしていきます。時代の様々なニーズに、地域が主体となって的確・迅速に対処することで、地域の魅力や競争力が向上していきます。国内外からヒト・モノ・情報など様々な交流を受け入れ、地域内を循環することで地域の持続的な発展が可能となり、人々の暮らしが安定していきます。
(福岡空港の役割1)
「海外・全国と福岡を結び相互交流の拡大を支える空港」
「福岡から3時間以内(空港へのアクセス時間を含む)で到達できるアジアの都市の総人口は約6700万人、東京からだと約1000万人です。3時間アクセス人口とでも定義すると、将来の福岡は1億人近い人口を視野に入れていかなければなりません。東アジアで“一日国際会議”ができる唯一の都市という潜在力を大事にしたい」(野田さん)
福岡空港からは約2時間半で国内の主要都市へ移動でき、同じように国内線並みの所要時間で東アジアの主要都市へも移動が可能だ。地理学上の福岡の位置に加え、都心の事務所から30分以内で空港に着く近接性が大きく貢献している。福岡から半径1500キロメートルの「日帰り交流圏」と東京からのそれを比較したら、一目瞭然である(図1を参照)。ただ、それに対応する国際航空ネットワークがないため、現在、日帰り可能な海外の都市は、ソウルと上海にすぎない。東アジアを中心とした国際ネットワークの強化が望まれるが、それに見合うビジネス客がいるかどうかが問題だ。「観光客ばかりでは採算が合わず、ビジネス客がいないことには長距離国際線は成立しない」と九州大学工学部非常勤講師で元福岡空港ビルディング代表取締役の中里公哉さんは指摘する。
福岡は「支店経済都市」と言われるが、東アジアを往来する本社機能のある企業をいかに育てるかが課題である。現在、トヨタ自動車九州をはじめとした自動車工場や東芝大分工場などの半導体工場、大分キャノン工場など製造拠点の「アジアのマザー工場」(注1)化が進んでいる(図2)。九州の主要産業である自動車や半導体企業では、中国進出が続いており、今後も拡大することが予想される。また、韓国には、自動車産業が集積しており、地理的に近い九州の自動車関連産業やIC産業との部品物流や人材交流が今後、進展する可能性もある。そうなると、ビジネスでの往来も活発化しそうだ。
(注1)マザー工場 高付加価値製品・高度部材の生産拠点として最先端の製造技術やノウハウを用いて生産を行う工場で、生産を通じた工程の改善・改良を行い、成熟・確立していく役割が期待されるもの。または、このように確立した製造技術を内外の生産拠点へ移転するとともに、こうした生産拠点への技術指導、技術サポート、ものづくり人材育成等を支援していく役割が期待されている工場。
一方、福岡空港は国内の航空ネットワーク上も、(1)北部九州地域と東京・名古屋・大阪の3大都市圏との流動を支える役割(2)全国主要都市との流動を支える役割(3)福江、対馬などの離島と本土との流動をさせる役割――などが挙げられる。今後、2009年に供用開始する羽田空港の第4次拡張で、同空港の離着陸回数は年間28・5万回から40・7万回と大幅に拡大されるほか、静岡空港(開港予定09年)や百里飛行場の民間共用化(同)でも、福岡への就航が予定されている。また、福岡空港の国内定期路線は26路線あり、23県と直接結ばれている。今後の路線開設が考えられる県は、秋田、山形、和歌山、香川の4県である。
この国内航空ネットワークを活かしながら、東アジアと福岡・九州を密接に繋ぐ役割が求められている。
(福岡空港の役割2)
「サービス向上を促進し、航空需要を支える空港」
利用者が重視する項目は、路線数、便数、アクセス、航空運賃であり、出発地から目的地までのトータルの旅行時間と目的地での滞在時間、運行頻度が重要である(図3)。特に、ビジネス客は空港と市街地が離れていたりすると、時間を気にしてしまう。また、利用したい時間帯は朝・夕にピークがある。
(役割1)で述べたように、新規路線の開設や増便等への対応が求められており、世界的には、航空自由化の流れの中で、機材の小型・多頻度化の傾向が見られる(図4)。燃料効率がよく、騒音も低下する。しかし、福岡――羽田のように混雑する路線では大型機の方がむしろ適している。アラブ首長国連邦のエミール航空のように、イスラム教のメッカ参りの旅客用に800人乗りの超大型機A380を導入するところもあるぐらいだ。
要は、国際線では、相互交流拡大による需要増加と、観光利用の特徴である曜日や季節による変動にいかに対応するか。東アジア方面の国際線と全国各地への国内線との乗り継ぎの利便性をどう高めるか。国内線では3大都市圏との間で、季節・曜日・時間変動に対応し、多くのビジネス利用者に定時性も含め安定した航空サービスを提供できるか。旅行費用を安くする新規航空会社の参入もあり、空港容量の確保も必要である。今後、結びつきが強い首都圏への需要が増すことが考えられ、最も利用者が多い金曜日の時間帯対応も必要となっている。また、首都圏以外の地方都市との結びつきも進んでいる。離島便では、ビジネスとともに生活路線となっており、旅客機の小型化による多頻度化も求められる。
(福岡空港の役割3)
「福岡の交通結節機能を活かし、早く・安く・快適な移動を支える空港」
福岡空港は、欧米方面への直行便はないが、地理的に近い東アジア方面への路線数は多くなっている。主要な国際ハブ空港(仁川、台北、香港、バンコク、シンガポール等)とつながり、その他の主要都市とも結ばれている。この東アジアとの国際線と国内の主要都市、地方都市間の国内線との航空ネットワークの要(かなめ)の役割も果たしている。また、鉄道・道路など地域内の高速交通ネットワークにも支えられている。
九州新幹線の開通が、福岡空港の航空需要の後背圏を拡大させる一方で、地域内航空路線の減便や廃止も想定される。同じようなことが、韓国や台湾、中国での新幹線の開業でも考えられ、近距離の国際線開設の可能性も生まれる。博多港と釜山を結ぶ高速船の利用者も伸びており、高速船と国内は飛行機という「シー&エア」が物流だけでなく、人流でも可能性がある。
福岡は、空港、港、鉄道、高速道路など各種輸送モードが集まり、すべてのアクセスポイントが30分圏内にある。この利点を活かし、ヒトとモノをいつでも希望する都市へ早く・安く・快適に移動できる交通体系を確保して、利用者の利便性を高めていく役割が求められている。
(福岡空港の役割4)
「地域と共存しながら、福岡・九州の自立的発展を支える空港」
福岡空港は福岡都市圏の中心に位置し、都心に近接しているため、都心に向かうアクセスがそのまま空港アクセスになっている。10分程度で移動が可能な都心部において他の交通機関とも接続している地下鉄が乗り入れており、市民をはじめとした利用者のの航空利用に貢献している。その半面、周辺住宅地における騒音、大気汚染、航空法の規制による都心部の建築物の高さ制限等の課題を抱えている。空港周辺は、準工業地域および工業用地に指定され、流通・生産機能が集積している。
同空港は対馬、五島といった離島や天草地域との路線も運行されている。同地域の生活路線を維持するだけでなく、他地域とを結ぶ乗り継ぎの拠点としても利用されている。また、福岡市消防航空隊、福岡県警航空隊、国土交通省九州地方整備局、海上保安庁第7管区海上保安本部のヘリポートとしても運用され、防災・救急など周辺地域の安全で安心な生活に貢献。報道ヘリコプターも利用している。阪神・淡路や新潟県中越地震の直後、被災した他の交通機関に代わって、航空機がいち早く代替機能を担い復旧に貢献したことも空港の果たしている役割として挙げられる。
福岡空港があることで、航空だけでなく、他の交通輸送、旅行関連サービスなどの生産活動が地域において行われ、これらの生産活動により誘発される九州の経済波及効果は年間約8000億円と試算されている(表1)。また、空港内には、航空会社や物販・飲食店をはじめとする関連事業所において約6600人が勤務しており、幅広い経済波及効果による雇用創出効果は福岡県で約3万3000人、九州全体で約5万2000人と算出されている。
現在、「道州制のあり方」が検討され、九州はその先進地域である。そして、九州の面積・人口・総生産はオランダ1国とほぼ同じ規模であり、1国に匹敵する地域ポテンシャルを有しているとよく言われている。九州が自立した地域として、地域全体の活力を高めていくには、空港をはじめとして新幹線、高速道路、港湾などの交通基盤の充実を図ることが重要となる。(神崎公一郎)
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※当ページの内容は、2006年7月26日発行の11号に掲載されたものです。







