フォーラム福岡

福岡の未来を決める 新「福岡空港」空港写真

産業界からみた福岡空港が持つ「地力」

2006年7月26日発行の11号より

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ワンポイントビュー

博多港・1兆5922億円、北九州港1兆5109億円、福岡空港・1兆1613億円――。九州と海外との窓口である海空の3つの港の輸出額が象徴するように福岡空港が担う役割は大きい。シリコンアイランド・九州を支える福岡空港を取り巻く人流と物流に迫る。

半導体産業と不即不離な福岡空港の航空貨物

北部九州にある海・空の3つの港、博多港、北九州港、福岡空港――。海外との玄関口でもある3つの港の輸出入貨物量を比較すると1250万トン(2003年)の博多港、3213万トン(2004年)の北九州港に対して、福岡空港のそれは5・2万トン(2003年)にすぎない。しかし、輸出入額に関しては、博多港が1兆5922億円(2005年)、北九州港が1兆5109億円(2005年)なのに対して、福岡空港は1兆1613億円(2005年)とほぼ互角の規模となっている。


博多港、北九州港とともに
海外の窓口である福岡空港

このように福岡空港での取扱額が高額となるのは、高付加価値製品を輸送する航空貨物の性格に加え、その約半分を占めるのが、「重量換算では、金より高価になる」といわれている半導体だからだ。福岡空港が取り扱う航空貨物に関しては、九州の半導体産業を抜きには語れないといえる。

「シリコンアイランドといわれる九州の半導体産業は、空港抜きでは成り立たない。九州域内で海外向けに毎日運行している空港は福岡空港だけであり、福岡空港のポジションは極めて高い」と、九州地域の産業動向に詳しい北九州市立大学経済学部の城戸宏史助教授はコメントする。

九州地区における主要産業のひとつである半導体産業に関して、集積回路の地域ブロック別出荷額でみると1兆3019億円(2003年 経済産業省「工業統計」)となる。さらに半導体製造装置についても同じく2026億円(同)という規模にのぼる。

そして、これらの半導体製品は世界のマーケットや分業先の工場向けに「毎日、航空貨物として送り出し、そして受け入れている」と、九州経済調査協会の岡野秀之・主任研究員は解説する。福岡空港税関支署の資料によると、2004年における国際航空貨物に関して、輸出額6289億円のうち49・2パーセントに相当する3096億円が半導体だ。また、輸入額3083億円のうち、47・5パーセントが半導体だ。

さらに半導体本体に加えて、関連分野となる化学製品ならびに科学光学機器、電気回路等機器の項目も合算すると、輸出額の66・7パーセント、輸入額55・1パーセントが半導体および関連分野が占める。

福岡空港が取り扱う航空貨物の過半を占める得意先が九州の半導体産業であり、九州の半導体産業も福岡空港という交通インフラによって、成長して来たという側面がある。

空港の存在が九州の半導体産業の裾野を広げる!?

「九州地区の半導体は、産業的な裾野が広い。大手メーカーと取引している地場企業は培った技術力で海外との直接的な取り引きに意欲的だ」。先日、九州地区の半導体産業を視察した東北地区の半導体関係者が卒直な感想を漏らした。

かつて、九州地区と肩を並べる半導体生産の一大拠点だった東北地区だが、現在では集積回路の出荷額で6562億円(2003年 経済産業省「工業統計」)、半導体製造装置の出荷額で1072億円(同)と、九州地区の約半分の水準に留まっている。


福岡空港が取り扱う国際航空貨物の
過半は半導体分野となっている

東京と新幹線で結びつき、拠点となる空港不在の東北地区に対して、九州は東京と空路で結びつき、アジア諸国の都市にもダイレクトに相互に乗り入れている。福岡空港が九州の空0の玄関口としての機能を担っているのである。これらの点も九州の半導体産業が結果として、東北の半導体産業に大きく水をあけることになったと指摘する関係者の声もある。

「モノが動くとヒトも動き、さらにモノが動く」と、岡野・九経調主任研究員は指摘する。国内の半導体産業における九州地区の位置づけとして、かつては生産拠点に過ぎなかったが、現在では開発拠点としての機能も持ち始め、それに伴い業務面での人の往来も増えている。

この点に関連して、九州経済調査協会が実施したMAP2005アンケートによる研究開発の実態に関する調査では、調査母数235事業所のうち45・5パーセントが開発エンジニアを配置している。また、このMAP2005アンケートの結果、地場の従業員規模で100人ないし150人規模の地場企業でも海外取引に意欲的であることが明らかになった。

半導体産業の伸展にともない、経済波及効果として半導体製品や関連製品などの物流の活発化に留まらず、打ち合わせや商談などの人的な往来も活発化しているのは間違いないようだ。

福岡空港が伸びた環境要因とは……

「九州各県には空港があり、全て羽田空港に乗り入れている。いかに東京との結びつくかが課題となる」と、前出の城戸助教授は指摘する。利便性が高いとされる福岡空港の場合、空港への交通アクセスもさることながら、便数の多さとともに運賃も安さも大きな要因になり、多くの人々が利用しているのが実態といえる。


福岡空港が活況を呈する背景には
産業構造と地域構造がある

では、どんな人たちが、どのような目的で福岡空港を多く利用しているのだろうか。「多くのバイヤーが、取引先の展示会や商品交渉等を目的に東京を中心に出張している」(福岡本社の企業)「東京への機能集約で一部の部署では人数は減ったが、逆に東京本社との往復回数は増加している。今後も東京を中心に人の行き来は増えていくだろう」(福岡支社の企業)「今後も営業の中心は東京で、東京への出張者は増えるでしょう」(福岡本社の企業)などの事実が、PIステップ1で実視した企業等インタビューで明らかになった。

これらの事実を踏まえながら、「福岡空港に関しては、公務員と流通業のバイヤー(営業マン)の利用が多い」と指摘する声もある。その背景には福岡空港を擁する福岡市には、国などの九州地区統括の出先行政機関が集中し、さらに商業・流通の一大拠点であることが大きいといえる。

時代の潮流と地域戦略のなかで空港のあり方を考える

誕生以来、60年余りを経た福岡空港は、年間1800万人あまりの人々が利用し、さらに北部九州で発生する航空貨物のうち、国内貨物で4分の3強を取り扱い、国際貨物においては実に9割余りを取り扱うに至っている。

福岡空港へは、全国で唯一地下鉄が乗り入れ、福岡市の都心と直接つながっているなど、交通アクセスの良さには定評がある。しかし、福岡空港は市街地に位置する立地上、深夜の貨物便による乗り入れが不可能という現実もある。

特に航空貨物に関して、もっぱら日中に運行する旅客便の貨物室を用いた輸送に限られ、貨物専用機での輸送が必要な半導体製造装置などは他の空港から送り出している。これらの現実を踏まえ、新北九州空港、佐賀空港との連携による航空貨物の機能を分担していく可能性はあるものの、「物流機能が福岡に集約されており、福岡空港を利用した方が便利」という物流業者の声もある。

これまでの航空輸送の流れのなかでは、「旅客が主で、貨物が従」ということがあり、旅客が増えることで旅客と貨物に対応した大型機を投入してきた。しかし、近年では貨物需要の伸びが大きく、貨物専用機の導入に対応した、深夜の利用などの対応が求められて来ている。

また、欧米の航空会社にみられるシャトル便的な活用による機材の中型・小型化という二つの流れもある。これは、福岡空港に対して、滑走路長の制約問題と増便制約問題の二つに直決した流れである。このような岐路に立つ航空業界の動向と福岡/九州の地域戦略のなかで、いま、将来に向けた福岡空港のビジョンを描かなければならない時点に差し迫っていることだけは間違いのない事実といえる。(近藤益弘)

空港問題に向けて、都市としてのビジョンと観光戦略が不可欠である


城戸宏史
北九州市立大学助教授

九州・1000万人の市場を背景に、福岡への都市型投資が続き、さらに相次ぐ出店にみられる流通業の繁栄が、結果として福岡空港の利用度を高めているという構図がある。

「札仙広福」と称される日本のブロック拠点都市の中で、札幌は後背人口が少なく、仙台は新幹線で東京と結びつき、広島は基本的には工業都市の性格が強い。これらの都市に対して、福岡は十分な後背人口を備え、さらに商業交流都市として機能を備えているのが強みだ。これらの点を踏まえ、空港問題を考える上で、まず都市としてのビジョンを明確にすることが不可欠である。

空港に関しては、これら業務的な利用に加え、観光面も視野にいれなければならない。なかでもアジアからの観光客が大きなカギとなる。かつて、台湾・韓国から九州への観光ブームがあったが、今後同様のことが中国でも起きる可能性がある。ゆえに、九州の観光においては明確な観光戦略が必要であり、戦略如何で観光需要は大きく変わる。つまり、九州の観光の玄関口といえる福岡空港の問題と九州の観光戦略はセットとして考えるべきである。

また、福岡空港の今後を考える上で、空港利用者が福岡/九州のみならず、山口・広島、さらに四国からも存在する現実を踏まえ、地元のみならず、広域の方々にいかに利用してもらえるかという視点も欠かせない。

今後、福岡という都市が海外と国内各地との結節点として国際交流都市を目指しつつ、成長を図ろうとするならば、新しい空港に対して前向きに検討すべきである。

空港の許容量が、福岡の成長余地のカギを握る


岡野秀之
九州経済調査協会主任研究員

「アジア経済圏における福岡」という視点でみると、都市としての福岡が持つ成長余地には大きいと考える。これは、福岡がアジア諸国の活力と需要を地域に導き入れるゲートウェイとして機能しているためである。しかしながら、アジアに近いという地域特性を生かした取り組みを進めていく上で、空港の許容量の問題は、アジアとの往来の制約を招くという、一種の「足かせ」を生じる可能性がある。

たしかに満杯状態となった空港のままで我慢しながら、いろいろな制約のなかでやっていくのも選択肢のひとつである。この場合、海外便の増便に制約がかかったり、離島便等の需要の少ない路線の切り捨てが生じたりするという危惧もある。

一方、新空港建設を検討する上での最大の懸念としては、財政負担があげられる。この点に関しては、建設の仕方次第で大きく変わるといえる。現在、福岡空港では土地賃料や環境対策費などに毎年150億円あまりの費用が発生している。空港自体は30年ないし50年もの長期間にわたって利用していく施設である点を踏まえ、新たな空港建設の検討において、これらの費用を原資として活用する発想もあり得ると考える。

現時点において、空港での混雑にともなう慢性的な遅れに加え、需要のある時間帯に自由な増便ができないという状況が発生しているのは、現実問題として空港が許容量に達しているととらえることができる。ピーク時の「渋滞」は、すでに生じているのである。

つまり、空港としての許容量の限界とは、将来に向けた成長余地というチャンスが失いかねないことを意味する。それらの点も踏まえながら、福岡という都市が今後成長していく上でどうあるべきか、いま真剣に考えなければならない。

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※当ページの内容は、2006年7月26日発行の11号に掲載されたものです。

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