フォーラム福岡

福岡の未来を決める 新「福岡空港」空港写真

「空飛ぶイチゴ」が切り拓く福岡空港の新・アジア物流

2005年3月31日発行の創刊4号より

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ワンポイントビュー

アジアの食に、福岡県産品が攻勢をかけている。人気のイチゴ「あまおう」を切り込み隊長として、野菜や果物が福岡空港から香港や台湾へ次々と輸出され始めた。急激に成長する中国経済と歩を合わせて、物流拠点としての福岡空港に新しい可能性が拓けつつある。

福岡空港の貿易額は2002年に年間1兆円を突破、物流拠点としての評価も高まっている。しかし、輸入で54%、輸出で61%が半導体関連の電子部品で占められており、九州の半導体産業に支えられているというのが実態だ。

一方で中国経済が躍進を遂げ、東アジアの物流が激増する中、福岡空港の地理的優位性を生かした新しい国際貨物の動きが見られるようになってきた。

そのひとつが、中国の巨大な市場をターゲットに福岡県産の農産物を輸出しようというプロジェクトだ。

健康志向強い富裕層 魅力的な東アジア市場

大きくて赤い果実が特徴の福岡県産イチゴ「あまおう」が、今、香港や台湾の百貨店やスーパーで人気を呼んでいる。価格は日本円で1パック(8個、約300グラム)1000円前後と、国内価格の約2倍。香港の輸入業者・味珍味有限公司では、香港そごうを中心に日系スーパー、現地の高級果物店など数店舗で、昨年末から3月前半(取材時点)にかけて毎週2200パックが売れているという。福岡・天神のある百貨店での販売数が同じ時期で週1200パック前後。「単純に比べられないが、値段が倍で、どうしてそんなに売れるのか」と福岡の百貨店関係者も驚きを隠せない。

福岡空港からのイチゴの輸出数量と金額

味珍味のデニス・ウー氏によると、購入者の9割以上が現地の富裕層で30代後半から40代の主婦。あまおうだけでなく、同じく福岡産の巨峰、桃、トマト、ミニトマトなどもよく売れているという。ちなみに、巨峰は1キロ4000円、桃は12個1万円前後だという。

「日本のものは安全・安心・おいしい、という評価が香港では定着しています。実際、例えばトマトはアメリカや中国、豪州産などと比べて糖度が高く好まれている。香港に限らず、東アジアの富裕層の間では健康志向が非常に強く、空輸のコストをかけても日本産なら十分に売れるのです」(ウー氏)という。

○福マークでブランド化 県とJAが輸出戦略

この魅力的な市場に積極的に取り組んでいるのが、福岡県とJAだ。

「アジアへ売り込もう!福岡ブランド」が県農業白書のトップ項目を飾るほどの力の入れようで、担当の福岡県農政部生産流通課では、2003年に総額2億円だった輸出総額を、5年後の2008年(平成20年)には10倍の20億円にしようという目標を立てている。

そのために力を入れているのが、「福岡産」のブランド化だ。

生産流通課では、昨年3月、丸に赤い「福」の字の「マル福」マークを福岡県産品の統一ブランドマークと決め、6月から果物や野菜などの農産物にこのマークのシールを張ってアジア市場の店頭に並べている。香港では商標登録が完了、台湾、上海、韓国でも申請中だ。

福の字のバックには福岡県のマークが金色で刷り込まれており、中国圏の人たちが好む金と赤の組み合わせに「福」というわかりやすい文字でブランドイメージの浸透と知名度の獲得を狙っている。

こうした取り組みと、あまおうの人気によって、香港では「福岡も、東京や北海道と並んで認知されてきている」(前出のウー氏)という。

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「マル福」マークをつけた野菜や果物が並ぶ香港の百貨店

この「マル福」ブランド輸出戦略の対象地域は香港、台湾と上海。これまでは香港を中心にアンテナショップの展開や、民間業者による独自の輸出が行われてきたが、2002年度から03年度を販路開拓期と位置付けて、商談会の開催、駐在員による取り引きサポートなどを実施してきた。同時に輸出に積極的なJAや生産者グループを積極的に支援。輸出に関するセミナーや輸出入業者紹介、アドバイザーの派遣なども行っている。

既に輸出が進んでいる香港に続いて、台湾では03年度から現地高級スーパーなどで試食販売を行い、04年度には台湾のバイヤーを福岡に招聘するなど具体的な商談に入り、台北市内の百貨店、高級スーパーでイチゴのあまおうや博多ラーメンの販売が始まっている。

市場が形成されている香港、親日的で日本の農産物への信頼が高い台湾に比べ、通関制度の厳しさなどで実績が薄いのが上海だ。日本全体でもリンゴとナシ以外の実績はない。しかし上海には200万人ともいわれる富裕層市場があり、福岡県でもここを最終ターゲットとしている。昨年は国際見本市への出展や試験輸出を行っており、そこで明らかになった通関制度や商習慣の課題をクリアして、販路を開拓するのが2005年度の取り組みとなる。

さらに05年度は香港、台湾も含めて現地の市場を意識した商品づくりに力を入れる予定で、モデル産地育成などによって、輸出に適した品目の生産方法、収穫方法、パッケージ、物流などを総合的に再構築する。例えば台湾では豪華なパッケージを好まれる傾向があり、そうしたニーズにも組織的に対応しようということだ。

アジアに近い地の利と航空インフラを活用

境参事

一連の取り組みについて、福岡県農政部生産流通課の境正義参事は次のように話す。

「私たちの最大の武器は高品質な農産物に加えて地の利と、優れたインフラを持っていることです。農産物、特に果物は鮮度が勝負で傷みやすい。通常ならなかなか輸出はできないところですが、福岡の場合は福岡空港の国際線を利用することで、八女や久留米からでも国内に出荷するのとほぼ同じ感覚で送り出せます。東アジアの市場で日本ブランドが信頼されていることもあり、手ごたえは十分です」

生産者サイドにしても、輸入野菜の増加によって、ただ作るだけでは農産品が売れない時代になっている中で、輸出というルートもあるのではないか、という位置付けだ。

福岡の場合、イチゴの「とよのか」や「博多万能ネギ」など、ブランド化で実績があり、意欲的、組織的に取り組める土壌があったことも背景にある。

溝口次長

輸出事業を担当するJA全農ふくれん園芸部の溝口精一次長は「輸出については、物量的に大きなことは望まないが、マーケットを意識しての取り組みなので、生産者と買い手の新しい流れを作り直すきっかけになればと思います。上海の市場は面白いと思いますよ」と話す。

さらに現場に近くなると意識も変わってくる。あまおうだけでなく、30品目近い農産物の輸出を目論んでいるのがJA八女だ。園芸部野菜課の甲斐田慎二課長は次のように話す。「物量的にはインパクトがなくても、自分たちの作ったものを世界の人たちに食べてもらうということは気持ちの上で意義が大きい。ただ、私たちとしてはアジアの市場で実も取りたい。そのためには、現在、国内の倍近くなっている現地での販売価格を引き下げて、もっとたくさんの人たちに気軽に私たちの野菜や果物を食べてもらえるようにしたい」。JA八女では現地販売店との直取引の可能性も含めて検討している。

市場が求める商品はある。あとはその商品を市場まで送り届ける物流をどう効率的に構築するか、だ。農業に限らず、地域の産業をよりグローバルに展開する中で、福岡空港の物流機能のより高度な取り組みが期待される。

中国発着の物流を取り込め

西鉄が中国3都市に国際航空貨物の現地法人

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福岡空港を通して運ばれる荷物

中国の経済発展に伴なう物流を取り込もうとする動きは、福岡に拠点を置く物流会社の中でも活発化している。

西日本鉄道は、海外50都市に拠点を置いて国際貨物事業(航空・海上)を展開しており、日本の航空貨物(運送)業者としては5指に入る大手だ。その西鉄が2003年に上海、2004年には北京と広州に相次いで現地法人を設立した。

同社では2003年度の全世界向け輸出重量が約6万7000トンで前年比で5%増であるのに対し、中国向けは約2500トンで73%という大幅な伸びになっている。輸入についても同様に伸びているという。

同社の主な顧客は現地に進出している日系企業。電子機器、半導体関連や自動車関連メーカーなどが主要な得意先で、中国で製造した部品を日本や欧米諸国に出荷するなどの動きが活発化しているという。

同社は北京では大連、天津や青島、上海では蘇州や杭州、華南地区では香港と広州を拠点として珠江デルタ一円をカバーしている。また、中国の政策で産業の拠点が内陸部に移動しつつあり、同社としては上記の3拠点を押さえた上で西部地域へも展開していく予定だ。

ただ、同社の中で、福岡空港が占める割合は、実は高くはない。福岡空港の場合、後背の産業として自動車や半導体関連の企業があるものの、世界的にはまだまだ絶対量が少なく、日本のゲートウエーとして福岡から国内各地に移送するにしても、国内コストが高いことなどが理由だ。国際航空貨物の現状からすると、福岡はアジアのどこかのハブ空港のスポーク先のひとつという位置付けだ。

上海→船→福岡→航空便 高速船と連結し可能性拓く

シーアンドエアサービス

福岡空港の特徴のひとつは、福岡の都心部と直結していること。これはすなわち、博多港と直結することが可能であることを意味する。

このメリットを生かしたシー&エアーのサービスが昨年末から始まった。福岡空港にとって、中国発貨物を取り込む新しいメニューとして注目される。

このサービスは、博多|上海間で現在週2便運航されている高速RORO船「上海スーパーエクスプレス」(SSE)と日本航空によるもの。SSEは日本通運と住友商事などによって設立され、2003年11月に就航した。上海|福岡を約27時間でつなぐ。このSSEで上海から博多に着いた貨物を福岡空港から航空便で各地に届けるというサービスだ。すべて航空便で送るよりは1日多くかかるが、運賃は安い。またすべて船便で送るよりは運賃は高いが早く届けられる。

「物流の世界では、時間とコストのせめぎあいで、多様な試みがなされている。このサービスもそのひとつ」(JALカーゴセールス九州販売部・小野健部長)
現在はアバレルや靴など中国で生産した商品を国内各地に配送するケースなどで利用されているという。JALとしては福岡|ホノルル線を利用して、上海から北米向けの貨物も取り込みたい考えだ。

空港と港、高速道路や鉄道など、あらゆる物流手段が結節しているのが、福岡の武器だ。この武器を生かしたサービスが存在すること自体が福岡にとって非常に重要なことだ。このシー&エアーサービス自体での物流量はそれほど大きなものではない。しかし、SSEに出資している日本通運では中国での事業展開を本格化させており、SSEもその重要なツールと位置付けている。そうした背景からも、「今は小さな雪のつぶてだが、ころがり始めたら大きな雪だるまになる」という期待の声も関係者の中からは聞かれる。

雪のつぶてが雪だるまになるには、条件がある。SSEは、現在1隻のみ。早い段階での増便が望まれるし、福岡空港としても、国際線を含めて路線を充実させ、拠点性を高めることが必要だろう。(宮崎仁士)

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※当ページの内容は、2005年3月31日発行の創刊4号に掲載されたものです。

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