フォーラム福岡

九大学研都市の秘める可能性とその戦略

2005年10月1日発行の創刊7号より

「九大学研都市の秘める可能性とその戦略」に対する皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
コメント受付フォームよりお送りください。>> コメント受付フォーム

ワンポイントビュー

九州大学伊都キャンパスを中核とする九州大学学術研究都市は、福岡・佐賀両県の7つの大学・研究エリアから成る九州北部学術研究都市(アジアンス九州)構想の中心的な拠点でもある。さらに九州大学学術研究都市は、アジアにおける半導体産業の頭脳拠点を目指すシリコンシーベルト九州構想においても重要な役割を果たす。北部九州からアジアへ、そして世界へと連携しながら、拡がりをみせる九州大学学術研究都市づくりの可能性とその戦略を探る。

産学官の九州トップらによるケンブリッジ視察

イギリスを代表するケンブリッジ大学は、オックスフォード大学とならび称せられる歴史ある大学だ。首都・ロンドンから北へ約80キロに位置するケンブリッジ大学は1284年の設立以来、科学者・ニュートンやダーウィン、経済学者・ケインズ、詩人・ワーズワースらを輩出し、ノーベル賞受賞者は80人にのぼる。


視察団一行が訪れたケンブリッジ市


ルーバン・カトリック大学を中核とする
ルーバン・ラ・ヌーブ市

名門大学であるケンブリッジ大学を昨年7月、九州大学学術研究都市推進協議会の一行17人が訪れた。海外における学術研究都市の実態調査を目的とする視察団は推進協議会会長の鎌田迪貞九州・山口経済連合会会長を団長に、麻生渡福岡県知事、山崎広太郎福岡市長、梶山千里九州大学総長、石原進九州旅客鉄道社長らによる産学官のメンバーでの構成だった。

一行が訪れたケンブリッジ市は、1960年代まで文教都市として発展してきたが、1970年代以降は産学連携に力を入れ、大学と住宅、研究所、民間施設などが混在したサイエンスパーク型の開発がすすむ。

そして、ケンブリッジ大学を中核にケンブリッジ・サイエンスパークを含めた一帯は、“ヨーロッパのシリコンバレー”と呼ばれている。世界的な大企業の研究所をはじめ、ハイテク・ベンチャーなどを含むさまざまな知識集約型企業が集まり、『ケンブリッジ現象』とも呼ばれ、成功事例のひとつに数えられている。

大学まちづくりのお手本(!?)、ベルギー・ルーバン大学

その後、ドーバー海峡を越えて、一行が訪問したベルギーのルーバン・カトリック大学は、大学移転の成功例として世界中の大学関係者から注目を集めている。大学自体は1425年に設立した歴史ある大学だ。1968年にベルギー国内のオランダ語圏とフランス語圏との言語戦争と呼ばれる政治的背景により、フランス語を教育言語とするルーバン・カトリック大学は、首都・ブリューッセルから東南へ約30キロの現在地に分離移転した。世代的には、日本の筑波研究学園都市とほぼ同じだ。

ルーバン・カトリック大学を中核とするルーバン・ラ・ヌーブ市におけるまちづくりの特色は、中世の大学を街並みに復元している点といえる。いわゆるニュータウン的な機能性を追及することなく、規模的に小さくても「歩いて交流できる密度の高い街」を目指した知的な文化都市だ。

ルーバン・ラ・ヌーブ市の都市整備に関しては、ルーバン・カトリック大学が全面的に責任を負っている。その大学と関係自治体の関係は良好で、それぞれの代表者とで協議会を設け、利害関係の調整を図り、逐次解決に努めている。団長を務めた鎌田迪貞会長は、「大学と地域が一体となった素晴らしい『大学都市』であり、それぞれのサイエンスパークには世界中から企業が集積するなど、産学官の連携がうまくいっていることに深い感銘を受けました」と、視察した感想を報告書に記している。


イギリス,ベルギーの学術研究都市を視察した調査団のメンバー(九大広報No37より)

九大学研都市から北部九州、アジア、そして世界への連携

九州大学学術研究都市構想自体は、前述のケンブリッジ大学やルーバン・カトリック大学に加え、アメリカのシリコンバレーやスコットランドのアルバプロジェクトなどの『知の拠点』づくりの成功事例に学びながら、産学官が一体となって《あたらしい地域づくり》をすすめている。

九州大学学術研究都市構想は、科学技術基本計画や全国総合開発計画という国の施策に加えて、福岡・佐賀両県による『九州北部学術研究都市(アジアス九州)構想』などの一連の動きともリンクした一大プロジェクトといえる。

九州北部学術研究都市構想とは、『環境・人間・アジア』をキーコンセプトに、21世紀の九州・アジアをリードする文化・学術拠点づくりを目指していくプランだ。具体的には、福岡・佐賀県エリア内の7つの地域にある既設の大学や研究機関を核に、それぞれの特色を生かしながら連携していくことで、あたらしいタイプの学術研究都市としていこうという構想だ。この九州北部学術研究都市構想において、中核的な役割を担うのが、九州大学学術研究都市といえる。

さらに、福岡県では九州大学をはじめとする知的集積・産業集積を通じて、新産業の創出や人材の集積を図り、韓国・香港・台湾・シンガポールなどを含めたアジアにおける半導体産業の頭脳拠点として確立を目指す『シリコンシーベルト福岡構想』もある。


大学と母都市までの距離
(作成:坂井猛・九州大学大学院教授)

九州大学新キャンパスを核に、産学連携による九州大学学術研究都市を実現していくことで、北部九州にある他の学術・研究拠点との連携による九州北部学術研究都市構想の具体化も可能となる。この学術研究都市は、アジア各国がそれぞれ取り組んでいる研究学園都市と交流・連携ができる。事実、九州大学は、アジア圏の主要な大学との間でのアジア学長会議というネットワークを構築している。

九大学研都市の戦略的な役割とは…

『大学がある』まちづくりとして九州大学学術研究都市をつくりあげていくことの意義は大きい。学生・学界に向けた《教育・研究機関》としての機能だけでなく、地域に向けて活性化のいわば《エンジン》となり得るか、産業界に向けても産学連携を通じての《サイエンスパーク》との機能を担えるか、そしてアジア・世界に対して、九州/福岡の《牽引車》としての役割を果たせるか、ということが今後、問われる。

その『まちづくり』としての成果は20年ないし30年の年月を経て、はじめて評価が下せるものだ。箱崎キャンパスのある箱崎は、大学創立から約100年かけて、でき上がった街といえる。

いま、九州大学学術研究都市は産学官連携による『“大学がある”まちづくり』としてのスタートを切ったばかりだ。九州大学学術研究都市を《教育・研究機関》としてはもちろん、地域活性化の《エンジン》、産学連携による《サイエンスパーク》、アジア・世界に向けた九州/福岡の《牽引車》としての機能を発揮し、東の《ケンブリッジ》《ルーバン》としていくためにも市民を含む関係者の声を吸い上げ、知恵を集め、具体化していく仕組みづくりが今後、重要になってくるのは間違いない。(近藤益弘)

「九大学研都市の秘める可能性とその戦略」に対する皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
コメント受付フォームよりお送りください。>> コメント受付フォーム

※当ページの内容は、2005年10月1日発行の創刊7号に掲載されたものです。

<< トップページへ

Copyright © 2005 Forum Fukuoka. All Rights Reserved.

推奨ブラウザ:IE6以上・NN7以上・Safari・Firefox