いよいよ動き出した産学官での学研都市づくり
2005年10月1日発行の創刊7号より
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九州大学学術研究都市は《産学官連携》が、ひとつの特徴となっている。既設の筑波研究学園都市はいわば国がつくり、関西文化学術研究都市は関西経済界がつくったといわれているのに対して、九州大学学術研究都市は地域の大学、企業、自治体による『大学がある』まちづくりとしての取り組みが進む。そのなかでも、産学連携においては、産学官によって組織された九州大学学術研究都市推進機構を中心に動き出している。
産学官による九州大学学術研究都市構想
21世紀における産学官が協力しての、まちづくりの先導的なモデルプロジェクトとして、国内外から注目と期待を集めている九州大学学術研究都市構想―――。九州大学の統合移転を契機に、産学官が協力して九州大学新キャンパスを核とした、あたらしい学術研究都市づくりをすすめるために1998 年5月、九州・山口経済連合会内に九州大学学術研究都市推進協議会が誕生した。
九州大学学術研究都市推進協議会は2001年6月、福岡市から佐賀県唐津市にかけての玄界灘ゾーンに、知の時代といわれる21世紀にふさわしい地域の《知の拠点》《知的クラスター》づくりを骨子とする『九州大学学術研究都市構想』を打ち出したのだ。
この九州大学学術研究都市構想は、翌2002年7月、第四次都市再生プロジェクトとしても採択され、「北部九州圏におけるアジア産業交流拠点の形成」の中核的なプロジェクトとして位置づけられ、具体化に向けて動き出す。
そして、昨年10月には、九州大学学術研究都市構想の実現に向けて、地元経済界をはじめ九州大学、福岡県・福岡市などの産学官が一体となって、具体的な取り組みを推進していく中心的な役割を担う機関として『財団法人九州大学学術研究都市推進機構』を設立、本格的なスタートを切った。「昨年10月にできて以来、新キャンパスや学研都市のPRを手掛けており、産学官の連携をはじめ、企業・研究機関などの立地促進のための調査・検討や情報提供、先端技術に関する調査研究に取り組んでいく」と、九州大学学術研究都市推進機構の原徳登事務局長は語る。
国内外への構想のプロモーション活動などを手掛けてきた九州大学学術研究都市推進協議会に加えて、具体的な学研都市づくりの総合マネジメントに取り組む、いわば実働部隊として九州大学学術研究都市推進機構が誕生したのだ。
産学連携が生み出す、あたらしい学研都市像

九州大学学術研究都市推進機構
原徳登事務局長
学研都市づくりの実働部隊である九州大学学術研究都市推進機構の主な役割としては、《学術研究に関する広報活動》《産学官の共同研究による研究開発・支援事業》《企業・研究機関等の立地支援事業》《産学連携交流支援事業》《知の中央ステーション(HST)への各種機能の準備・推進》を掲げている。
これらの取り組みのなかでも、「九州大学の研究成果と研究者という知的資源と産業界の事業化需要とを結びつけて、産学連携を推進していくことで、学研都市の1次圏である糸島半島に研究所や企業、工場などの誘致を実現し、地域経済の活性化を図っていきたい」(真隅潔・九州大学学術研究都市推進機構事務局次長兼企画広報グループ長)としている。
九州大学そのものに関する評価としては、「九州ならびにアジアの頭脳拠点として重要な存在であり、その研究は各分野で世界的レベルにある」と高く評価する声がある半面、「研究成果の多くは産業化・事業化されておらず、地域の経済発展に十分反映されていない」と指摘する手厳しい見方があるのも事実だ。
大学の研究成果がシーズとして、どれだけ充実しているかが重要になる」と、山浦輝久・九州大学学術研究都市推進機構企業立地サポートグループ長は指摘した上で、「大手企業の出先や地元企業を訪問しながら、まず知ってもらうこと、目を向けてもらうことから始めている」と、産学連携事業の第一線で汗を流す。
産学連携に向けた九州大学学術研究都市推進機構の取り組みとしては、研究所、企業、工場の誘致を目指した立地支援・交流支援として、大学が持つシーズ、企業サイドのニーズをアンケート調査している。大学のシーズとしては、九州大学の教官約2000人を対象に調査し、シーズライブラリーを構築している。一方、企業のニーズについても約1000社を対象に調査し、発掘したニーズをもとにニーズライブラリーを取りまとめている。今後は、研究会の設置や産学官交流会の実施などを計画している。
九州大学学術研究都市推進機構では、研究支援も手掛けており、九州大学知的財産本部(リエゾン部門)とも情報交換を図っている。その取り組みのなかから、会員制による設備運用として超高圧電子顕微鏡の利用例などの成果も出始めている。
九大学研都市にみる経済的効果

今回の九州大学の新キャンパスへの統合・移転に要する費用については、2千数百億円が見込まれている。今後の経済状況や財政状態、そして移転スケジュールの如何などによって、金額が変動する可能性が大きく、確定していないものの、2000億円を上回る大規模なプロジェクトであることは間違いない。
また、学術研究都市関連も含めた九州大学新キャンパス外の周辺整備費用に関しても統合・移転費用に匹敵する金額が見込まれるという。このため、九州大学新キャンパスを核とした九州大学学術研究都市への全体としての投資額は4000億円ないし5000億円超になるという見方もある。
一方、九州大学学術研究都市をつくることによる経済的な効果として、福岡県が地域再生本部(本部長・小泉純一郎首相)あての地域再生計画として、昨年6月に申請した九州大学学術研究都市構想(福岡県・福岡市・前原市・二丈町・志摩町の共同申請)において、次のように見込んでいる。
申請前年度の2003年をベースに移転開始から約20年が経過した2025年時点において、九州大学学術研究都市の1時圏である糸島半島エリアでの人口を5万人の増加(15万人→20万人)を見込む。おなじく工業出荷額において約1350億円(1520億円→2870億円)、卸売小売販売額についても約1500億円(1530億円→3000億円)の増加を想定している。一方、企業の誘致および創出に関しては200社を見込み、これにともなう雇用創出として2200人を想定している。
これらの数字は、あくまで地域再生計画の実施にともなう地域への経済的、社会的効果を試算したものであり、今後の取り組みの如何によっては想定金額を大きく上回る可能性もあり、逆に下回る事態も考えられる。ただ、はっきりしているのは、九州大学学術研究都市という巨大な投資と、それにともなう大きな経済的・社会的効果があるということだ。あらたな『都市資産』である九州大学学術研究都市を有効に活用していくためにも産学官をはじめとする今後の取り組みがより重要になってくる。(近藤益弘)
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※当ページの内容は、2005年10月1日発行の創刊7号に掲載されたものです。

